Jw_cadでリフォーム図面を描く実務手順|現況復元から計画図まで3図面セットで解説
リフォーム案件の図面作成は、新築とは進め方が大きく異なります。新築では白紙から描き起こしますが、リフォームでは既存の建物情報を正確に拾い上げたうえで、撤去箇所と新設箇所を描き分ける必要があります。Jw_cadでこの描き分けを実現するには、レイヤとカラーを組み合わせた管理が求められます。しかし、具体的な手順を解説した情報は多くありません。2026年1月にはVersion 10.02がリリースされ、DXF 2010形式のサポートが加わったことで、他社からもらう図面データの互換性も向上しています(2026年4月現在の最新版は10.02.1)。
この記事を読むと、Jw_cadを使ってリフォーム図面を描く実務手順を、現況復元図・撤去図・計画図の3図面セットで通しで確認できます。
リフォーム図面が新築図面と異なる3つのポイント
リフォーム図面は新築図面と違い、「既存建物の情報をまず受け止める」工程が加わります。この違いを理解せずに描き始めると、手戻りや図面の不整合が頻発します。
「既存→撤去→新設」の3段階で図面を構成する
新築図面はゼロから描く一方向の作業ですが、リフォーム図面は3段階で構成されます。まず既存の建物を正確に記録し、次に撤去箇所を明示し、最後に新設箇所を描き加えます。
この3段階に対応するのが「現況復元図」「撤去図」「計画図(提案図)」の3図面セットです。施主への提案では3図面を並べて見せることで、何がどう変わるのかが一目で伝わります。施工者に対しても、撤去範囲と新設範囲を正確に共有するための基本資料になります。
図面がない物件が大半という前提で動く
中古住宅のリフォーム案件では、竣工図面(完成時の図面)が残っていないケースが珍しくありません。施主が紛失している場合や、そもそも図面が作成されていない物件もあります。
図面がない場合は、現地実測から「現況復元図」を新たに作成します。これがリフォーム図面すべての起点です。竣工図がある場合でも、増改築や経年変化で現状と一致しないことがあるため、現地での照合は省略できません。
確認申請の要否をまず判断する
リフォーム図面を描き始める前に、確認申請が必要かどうかを判断しておきましょう。この判断によって、図面に求められる精度と記載事項が大きく変わります。
内装リフォーム(壁紙・床材の張替え、設備交換など)のみであれば、確認申請は不要です。増築を伴う場合は、防火地域・準防火地域以外の地域で床面積10m2以下であれば確認申請は不要になります(建築基準法第6条第2項、2026年4月現在)。ただし、防火地域・準防火地域内では1m2の増築でも確認申請が必要です。
確認申請が必要な場合は、現況復元図の精度を高め、法適合性の確認まで行う必要があります。不要な場合でも、施工品質を確保するために図面の精度は保つのが基本です。どちらに該当するか、着手前に方針を固めてください。建築図面全体の作成フローはJW_cadで建築図面を描く方法|平面図・立面図・設備図の手順で俯瞰できます。
Jw_cadでリフォーム図面を管理するレイヤ設計
リフォーム図面の品質は、レイヤ設計で8割が決まります。既存/撤去/新設を別レイヤに分け、線色で視覚的に区別する仕組みを最初に整えておくことが、後工程の効率と正確性を左右します。
既存/撤去/新設を3レイヤグループに分ける基本構成
Jw_cadには16レイヤグループ x 16レイヤ、合計256レイヤの管理枠があります。リフォーム図面では、以下の割り当てが実用的です。
| レイヤグループ | 用途 | 線色の目安 |
|---|---|---|
| 0 | 図面枠・表題欄 | 黒 |
| 1 | 既存部分(現況) | 黒 |
| 2 | 撤去部分 | 赤 |
| 3 | 新設部分 | 青 |
| 4 | 寸法・文字注記 | 緑 |
各レイヤグループ内の16レイヤは、さらに「壁」「建具」「設備」「家具」などで分割します。たとえばレイヤグループ1(既存)内では、レイヤ0を壁、レイヤ1を建具、レイヤ2を設備に割り当てます。レイヤグループ2(撤去)・レイヤグループ3(新設)も同じ構成にしておくと、図面要素の対応関係が明確になります。
レイヤグループ名の設定も重要な対策です。米国AIA(米国建築家協会)のCADレイヤ標準では、レイヤ名に「-EXST」(既存)、「-DEMO」(撤去)、「-NEW」(新設)のサフィックスを付与するルールがあります(AIA CAD Layer Guidelines、2026年4月確認)。Jw_cadでもこの考え方を応用し、レイヤグループ名を「1-既存」「2-撤去」「3-新設」のように設定しておくと、作図中のレイヤ取り違えを防げます。
Jw_cadのレイヤ機能の基礎はJw_cadとは?日本建築設計の現場に根付く無料CADのすべてで全体像を確認できます。
線色とレイヤの組み合わせで描き分ける実務ルール
色分けの基本は、既存=黒(線色1)、撤去=赤(線色2)、新設=青(線色3)です。この3色があれば、図面上で変更箇所が即座に判別できます。
モノクロプリンタで出力する場合はどうすればよいでしょうか。色の違いは線幅の違いに変換して表現します。Jw_cadの「基本設定」→「色・画面」タブで、線色ごとの印刷線幅を設定できます。たとえば、既存=0.25mm、撤去=0.35mm(太め)、新設=0.5mm(さらに太め)のように差をつけると、モノクロでも判別しやすくなります。
実務では施工会社や施主によって色ルールが異なることがあります。着手前に「既存は何色、撤去は何色、新設は何色」を確認しておくと、やり直しを防げます。線色の一括変更が必要になった場合は、「属性変更」コマンドで対象を範囲選択し、線色を変更してください。
レイヤの表示/非表示切替で3図面を1ファイルから出力する
3図面セットをJw_cadで効率よく管理するには、1つのファイル内でレイヤの表示/非表示を切り替えて出力する方法が有効です。
| 出力する図面 | 表示するレイヤグループ | 非表示にするレイヤグループ |
|---|---|---|
| 現況復元図 | 0, 1, 4 | 2, 3 |
| 撤去図 | 0, 1, 2, 4 | 3 |
| 計画図 | 0, 1, 3, 4 | 2 |
Jw_cadのレイヤ一覧画面で、各レイヤグループの表示状態を「表示」「非表示」「編集可」「表示のみ」に切り替えられます。印刷前に表示設定を変更するだけで、同じファイルから3種類の図面を出力できます。
1ファイルで管理する最大のメリットは、既存部分を修正した際に全図面に自動で反映される点です。ただし、図面要素が増えるとファイルサイズが大きくなります。動作が重くなった場合は、別名保存でファイルを分割する判断も必要になります。
現況復元図の作成手順(図面がない物件の場合)
図面がない物件では、現地実測の精度が後工程すべてに影響します。「計測→記録→照合」の3ステップで進めることが、正確な現況復元図を描くための基本フローです。
現地実測で押さえる計測ポイント
現地実測で最低限押さえるべき項目は以下のとおりです。
| 計測項目 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 各部屋の内法寸法 | 壁の内側から内側までの幅・奥行き | 部屋の対角線も計測し、直角の歪みを確認 |
| 壁厚 | 石膏ボード+下地+石膏ボードの合計値 | 在来工法は120mm前後、2×4は140mm前後が目安 |
| 窓・ドアの位置と寸法 | 壁端から開口端までの距離、開口幅、高さ | 開き勝手(右吊り/左吊り)も記録 |
| 天井高 | 床面から天井面までの距離 | 部屋の四隅で計測し、傾きや段差を確認 |
| 柱の位置 | 壁面から柱芯までの距離 | 木造在来工法では柱が壁内に隠れている場合がある |
| 床段差 | 隣室との床面レベル差 | 和室→洋室で40mm前後の段差があるケースが多い |
計測ツールはメジャー(5.5m)とレーザー距離計の併用が実務標準です。レーザー距離計があれば1人でも計測できます。手描きスケッチはA4方眼紙に部屋ごとの概形を描き、計測値を書き込みます。写真も各部屋・各方向から撮影しておくと、CADへの転記時に確認できます。
英語圏の建築実務では、現地実測を「Survey(計測)→ Document(記録)→ Verify(照合)」の3ステップで標準化しています(First In Architecture、2026年4月確認)。計測して終わりではなく、スケッチへの転記ミスがないかを確認し、現地に戻って照合する工程を入れることが品質を担保します。
手描きスケッチからJw_cadに起こす手順
Jw_cadでの作図に入る前に、用紙設定を確認します。住宅リフォームではA3/縮尺1:50が標準的です。全体俯瞰を優先する場合は1:100を選びます。
描き始めの手順は以下のとおりです。
- 基準となる外壁の角を原点に設定する
- 補助線(グリッド線)を引き、外壁の外形を決める
- 「2線」コマンドで壁を描く。壁厚は計測値に合わせて120mmや150mmを指定
- 建具(窓・ドア)を配置する。Jw_cadの建具平面データ、またはブロック図形を挿入
- 設備(キッチン・洗面台・便器など)の位置を記入
- 「寸法」コマンドで通り芯間・開口部の寸法を記入。レイヤグループ4に統一
平面図の描き方の基本操作はJw_cadで平面図を描く完全手順で詳しく解説しています。ここでは現況復元図に特有の注意点に絞ります。
復元図には、建物の歪みや施工誤差をどこまで図面に反映するかという判断が伴います。実測値をそのまま反映すると壁が平行にならないケースがあるためです。実務では、5mm以内の誤差はグリッドに吸着させ、10mm以上の歪みは実測値を優先して描くのが一般的な基準になっています。
竣工図がある場合のトレース手順
竣工図が手元にある場合は、スキャンしてJw_cadの下絵として読み込むことでトレースできます。スキャン解像度は300dpi以上が推奨です。
Jw_cadの「文字」メニューから「画像挿入」で読み込み、下絵として配置します。画像の縮尺を合わせるには、既知の寸法(部屋の幅など)で画像を拡大・縮小し、実寸と一致させてください。
トレースの進め方は通常の平面図と同じで、壁→建具→設備の順にレイヤグループ1へ描いていきます。完了後は必ず現地実測値と照合しましょう。増改築や経年変化による差異が見つかった場合は、実測値を優先して修正します。
撤去図と計画図の作成手順
現況復元図が完成したら、その図面を基に撤去図と計画図を作成します。現況復元図を「壊さずにコピーして加工する」のが鉄則です。元図面のレイヤに直接赤線を描き込むのは避けてください。
撤去図の描き方(撤去箇所を赤で明示する)
撤去図は、現況復元図のレイヤグループ1をそのまま残し、撤去対象をレイヤグループ2に赤色で描き加えることで作成します。
壁の撤去は、撤去する壁の位置に赤色の実線を重ねて描きます。完全に撤去する壁は実線、部分撤去(開口を設ける等)は該当範囲のみを赤色にします。建具の撤去は、該当の窓やドアに赤色で「X」印を入れる方法が一般的です。
設備の撤去(既存キッチン・洗面台・便器の撤去など)は、対象を赤色で囲み、「撤去」と文字注記を添えます。撤去範囲が広い場合は、ハッチング(斜線)を赤色で描くと視覚的にわかりやすくなります。
たとえば、築30年の木造住宅でLDKを一体化する場合はどのように撤去図を描くでしょうか。キッチンとリビングの間仕切り壁をレイヤグループ2に赤色で上書きし、既存キッチンの位置に「撤去」の注記を入れます。このとき、構造壁(筋交い入りの壁)は撤去対象にできないため、現地調査の段階で構造壁の位置を確認しておくことが前提です。
計画図の描き方(新設箇所を青で追加する)
計画図は、レイヤグループ3に新設部分を青色で描くことで作成します。新しい壁、建具、設備をこのレイヤグループに集約します。
施主に見せる計画図は、レイヤグループ0(図面枠)+ 1(既存)+ 3(新設)を表示し、撤去レイヤを非表示にします。こうすることで、リフォーム後の完成イメージが伝わる図面になります。施工者に渡す図面は、0 + 1 + 2 + 3 の全レイヤグループを表示し、撤去と新設の両方を重ねて確認できるようにしてください。
新設部分の寸法は、既存部分との取り合い寸法(既存壁からの離れ寸法)も忘れずに記入します。仕上げ記号や材料名(フローリング、クロス、タイルなど)も計画図に記載しておきましょう。見積もりや施工の段階で齟齬が減ります。
リフォームに伴って設備の位置が変わる場合は、Jw_cadで電気図面・設備図面を描くコツも参照してください。
Before/After比較図を作成するコツ
施主プレゼンでは、Before(現況復元図)とAfter(計画図)を左右に並べた比較図が効果的です。変更箇所が視覚的に伝わるため、打ち合わせがスムーズに進みます。
Jw_cadには画面分割やファイル比較機能がないため、1枚の用紙内に2つの図面を配置する方法で対応します。用紙設定をA3横にし、左半分にBefore、右半分にAfterを配置するのが基本的なレイアウトです。
具体的な手順は以下の流れになります。
- 用紙をA3横に設定する
- 左半分に現況復元図の範囲を「複写」で配置する
- 右半分に計画図の範囲を「複写」で配置する
- 「Before」「After」のタイトルを文字コマンドで記入する
- 新設部分を太線で強調し、変更箇所が目立つようにする
印刷時は、カラー印刷とモノクロ印刷の両方に対応できるよう、色だけでなく線種(実線/破線/一点鎖線)でも区別しておくと安全です。
リフォーム図面でよくある失敗と対処法
リフォーム図面の手戻りは、レイヤの取り違えと現地実測の抜け漏れから発生するケースが多くを占めます。対策を知っておくだけで、修正工数を減らせます。
レイヤの取り違えによる描き分けミス
もっとも多い失敗が、既存レイヤに新設部分を描いてしまうケースです。こうなると、撤去図と計画図の切り替えが破綻します。
対策として、書き込みレイヤを変更するたびに画面右下のレイヤバーで現在のレイヤグループを確認する習慣をつけてください。前述のレイヤグループ名設定(「1-既存」「2-撤去」「3-新設」)が、ここで効果を発揮します。
描き間違えた場合は、「属性変更」コマンドで該当図形を範囲選択し、レイヤを一括変更できます。「属性変更」→対象を範囲選択→「書込【レイヤ】に変更」にチェック→移動先のレイヤを指定、の手順です。Jw_cadのフォーラムでも、新設壁を既存レイヤに描いてしまい撤去図に新設壁まで出力されたという報告は頻出します。この種のミスは「属性変更」で修復できますが、手戻りの時間は返ってきません。レイヤ確認を習慣化するのが最善の予防策です。
現地実測の抜け漏れへの対処
現場から戻った後に「天井高を測り忘れた」「梁型の位置を記録していなかった」と気づくケースは少なくありません。特に見落としやすいのは、天井高、梁型の下端高さ、床段差(和室→洋室で40mm前後)、点検口の位置です。
リフォーム実務の解説では、実測チェックリストの事前作成が図面品質をもっとも左右する工程として挙げられています。チェックリストを現場に持参し、1項目ずつ確認しながら計測する運用が有効です。
再計測が必要になった場合は、すでに描いた復元図の該当箇所に「仮」マーク(たとえば赤色の「?」記号)を付けておきます。再計測後に確定値を入力し、マークを消す流れにすると、未確認箇所が残ったまま作業が進むリスクを防げます。
印刷時に色分けが正しく反映されない問題
カラー印刷なのに赤/青の区別が出ない、モノクロ印刷で全部同じ線幅になるといった問題に遭遇したことはないでしょうか。
原因の多くは印刷設定にあります。カラー印刷の場合、「印刷」ダイアログで「カラー印刷」にチェックが入っているか確認してください。モノクロ印刷の場合は、「基本設定」→「色・画面」タブで線色ごとの印刷線幅を変更します。
印刷前に必ずプレビューで確認する習慣をつけましょう。PDF出力してPC上で色分けを確認する方法も有効です。特に施主に提出する図面は、印刷物の品質が信頼に影響します。
まとめ
Jw_cadでリフォーム図面を描く際の要点を確認します。
リフォーム図面は「現況復元図」「撤去図」「計画図」の3図面セットで構成します。 新築と違い、既存建物の情報を正確に拾い上げることが起点です。
レイヤグループと線色で既存/撤去/新設を分離し、表示切替で1ファイルから3図面を出力してください。 レイヤグループ名に「1-既存」「2-撤去」「3-新設」と設定しておくと、描き分けミスを防げます。
図面がない物件では、現地実測の精度がすべてを左右します。 計測→記録→照合の3ステップでデータの抜け漏れを防ぎましょう。
確認申請の要否は着手前に判断が必要です。 内装のみなら不要、増築は面積と地域で判断が分かれます(2026年4月現在)。
平面図の基本操作を確認したい方はJw_cadで平面図を描く完全手順を、リフォームに伴う設備図面の作成はJw_cadで電気図面・設備図面を描くコツを参照してください。
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