ComfyUIアウトペインティングの始め方|画像拡張の設定4手順
「レンダリングした建築パースの画角がもう少し広ければ」と感じた経験はありませんか。撮影やレンダリングのやり直しは手間がかかりますし、Photoshopで手作業に頼るのも限界があります。そんなときに役立つのが、ComfyUI(ノードをつないで画像生成AIを動かすツール)のアウトペインティング(画像拡張)機能です。3Dソフトでカメラを引き直して再レンダリングする手間が消えるので、納期が迫った案件の画角調整に大きく効いてきます。
この記事では、ComfyUIでアウトペインティングを行うワークフローの組み方から、自然な仕上がりを実現するパラメータ設定、建築パースでの具体的な活用方法までを解説します。
アウトペインティングとは?インペインティングとの違い
アウトペインティングは、写真の外側にもう少し背景を継ぎ足すような技術です。パノラマ合成の要領に近く、元の画像を軸にして「この先にはこんな景色が続いているはず」とAIが予測して描き足してくれる仕組みだと考えるとわかりやすくなります。
画像の「外側」をAIで広げる技術
アウトペインティングとは、既存の画像の境界を超えて外側に新しい領域を生成する技術です。元の画像の内容やスタイルを維持しながら、まるで最初から広い画角で撮影したかのように仕上がります。
たとえば、512×512ピクセルの画像を左右に256ピクセルずつ広げて、1024×512ピクセルの横長画像にできます。AIが元画像の色調・構図・テクスチャを読み取り、拡張領域を自動で生成する仕組みです。
インペインティングとの使い分け
似た名前の技術に「インペインティング」があります。両者の違いは明確で、処理する領域が異なります。
インペインティングは、画像の内側にある不要な要素を消したり、特定の部分だけを差し替えたりする技術です。一方、アウトペインティングは画像の外側を新たに生成して拡張します。
実務では、不要な電線を消すならインペインティング、画角を広げるならアウトペインティングと使い分けるのが基本です。ComfyUIではどちらもインペインティングモデルを活用する点が共通しています。インペインティングの詳しい手順はComfyUIインペインティング完全ガイド|部分修正の実務6手順で解説しています。
ComfyUIでアウトペインティングを行うワークフロー構成
ワークフロー全体の流れは、「写真の周りに白いキャンバスを継ぎ足して、AIにその白い部分を元写真の続きとして描かせる」作業に近いものです。キャンバスを広げるノード、続きの絵を描くノード、それぞれの役割を押さえれば、組み立ては意外とシンプルです。
必要なノードと接続の流れ
ComfyUIでのアウトペインティングは、次のノードを順に接続して構成します。
- Load Checkpoint:ベースモデルの読み込み
- Load Checkpoint(2つ目):インペインティング専用モデルの読み込み
- Load Image:拡張したい元画像の読み込み
- Pad Image for Outpainting:画像の周囲にパディングを追加
- VAE Encode (for Inpainting):パディング済み画像とマスクのエンコード
- KSampler:拡張領域の生成
- VAE Decode:生成結果のデコード
- Save Image:最終画像の保存
ポイントは、Pad Image for Outpaintingノードが画像とマスクの両方を出力する点です。このマスクが「どの領域を新しく生成すべきか」をKSamplerに伝える役割を果たします。Flux Fill系(後述)を使う場合のノードも、ComfyUI公式で標準サポート済みです(2026年4月現在、公式Docs)。
モデルの選び方として、ベースモデルにはsd-v1-5-pruned-emaonly.safetensorsなどの標準モデルを使います。インペインティングモデルにはsd-v1-5-inpainting.ckptやSDXL inpaint系が代表的です(2026年4月現在)。より高品質を求める場合は後述のFlux.1 Fill [dev]が有力な選択肢になります。
Pad Image for Outpaintingノードの設定
このノードがアウトペインティングの核となる部分です。主要なパラメータは5つあります。
- left:左方向に追加するピクセル数
- right:右方向に追加するピクセル数
- top:上方向に追加するピクセル数
- bottom:下方向に追加するピクセル数
- feathering:元画像と拡張領域の境界をぼかすピクセル数
たとえば横長パノラマにしたい場合は、leftとrightに256程度を設定し、topとbottomは0にします。上方向に空を広げたい場合はtopだけに値を入れるなど、方向を自由に指定できます。
featheringは境界のなじみ具合を左右する大切な値です。0だと元画像と拡張領域の間にくっきりした境目が出やすくなります。まず40〜60程度で試し、仕上がりを見ながら調整する進め方が扱いやすく、過剰なやり直しを防げます。ただし、featheringの最大値は画像の短辺の半分までという制約があるため注意してください。
自然に繋がる拡張のためのパラメータ調整
自然な拡張を出すコツは、絵画の継ぎ合わせと同じ発想です。新しく描き足した部分と元の絵が違和感なくつながるように、境界のぼかし具合とAIへの「どれだけ自由に描かせるか」の指示を調整します。
デノイズ強度の最適値
KSamplerのdenoise(デノイズ)パラメータは、生成結果にどれだけ自由度を持たせるかを決める値です。
- 0.8〜1.0:拡張領域を大きくとる場合に向いています。AIが自由に描画するため、広い面積を違和感なく埋められます
- 0.4〜0.6:元画像との連続性を重視する場合に向いています。色調や質感の一貫性が保たれやすい設定です
実務では、まず0.8前後で生成し、境界が不自然な場合に値を下げて再生成するアプローチが効率的です。一度の生成で完璧を目指すよりも、複数回試すほうが良い結果を得やすくなります。
grow_mask_byとフェザリングの使い分け
VAE Encode (for Inpainting)ノードにはgrow_mask_byというパラメータがあります。これはマスクの境界を指定ピクセル数だけ外側に広げる設定です。
海外コミュニティで広く使われているcubiq氏のComfyUI_Workflowsでは、grow_mask_by=64 を推奨値としています(2026年4月現在)。この値まで広げると、元画像の端部も再生成の対象に入り、拡張領域との接合部がかなり自然に仕上がります。featheringは0でも問題ないケースが多く、まずはgrow_mask_byから詰めて、それでもシームが残る場合にfeatheringを追加する流れが実務的です。
シームライン(接合部の目立つ線)が残る場合は、2パス手法が有効です。1回目の生成後、接合部付近だけをdenoise 0.3〜0.45(2026年4月現在の実務知見、OpenArt Outpainting With Seam Fix参照)で再度インペインティングすると、境界が目立たなくなります。
プロンプトとモデル選択のコツ
プロンプトには、拡張領域に生成したい内容を記述します。建築パースの背景を広げるなら「blue sky, trees, landscape, photorealistic」のように、周囲の環境を具体的に指示してください。
元画像の内容と矛盾しない表現を心がけるのがコツです。室内パースの壁面を広げるなら、元の内装スタイルに合わせた記述が仕上がりの質を左右します。プロンプトと元画像がちぐはぐだと、継ぎ目が浮いてしまう原因になります。
モデルについては、img2img変換ワークフロー|デノイズ強度の考え方と同様に、元画像のスタイルに近いモデルを選ぶと整合性が高まります。リアル系の建築パースにはリアル系のチェックポイント、イラスト調にはアニメ系モデルを組み合わせてください。
モデル選択の指針:SDXL inpaint vs Flux.1 Fill
アウトペインティングで選べる主要モデルは大きく2系統に分かれます(2026年4月現在)。
- SDXL inpaint系:軽量で動作が速く、VRAM 8〜12GBクラスでも扱いやすい。建築パースのような定型的な背景拡張に十分な品質
- Flux.1 Fill [dev]:Black Forest Labsが2024年11月に公開した新世代モデル(RunComfy)。境界の自然さや細部描写で頭一つ抜けており、海外では事実上の標準。VRAM要件は高め
海外で定番化している進め方として、「SDXLで粗く拡張 → Flux.1 Fillで精緻化」という2段階ワークフローがあります(MyAIForce)。SDXLで大きく面積を稼ぎ、仕上げをFlux Fillに任せると、速度と品質のバランスが取りやすくなります。
低VRAM環境では、Flux.1 Fill [dev]のfp8版やNF4量子化版(ComfyUI-Flux-Inpainting)を使えば8GB前後のGPUでも動かせます。手持ちのPCスペックに応じて、段階的に試してみてください。
建築パースでのアウトペインティング活用シーン
アウトペインティングは、既存の画像を外側に拡張する手法で、建築パース制作でも実用的な使い所があります。ここでは画角不足の補正やトリミング後の復元といった具体的な活用シーンを順に紹介します。
画角が足りないパースの拡張
建築パースの制作では、レンダリング後に「もう少し空を入れたかった」「隣の建物まで見せたい」と感じる場面があります。アウトペインティングを使えば、3Dソフトに戻ってカメラ設定をやり直す手間を省けます。レンダリング1回あたり30分〜数時間かかるような重いシーンでも、数分の追加生成だけで画角を調整できるのは大きな時短効果になります。
横長のパノラマ画像への変換も得意な用途です。左右に200〜400ピクセルずつ拡張するだけで、通常の4:3画像を16:9のワイドビューに変換できます。建築外観パースの自動生成で生成した画像をさらに広げたい場面にも向いています。
実務では、建築パースの画角調整にアウトペインティングを取り入れることで、再レンダリングの回数を大きく減らせる事例が多く見られます。
トリミング後の復元と構図調整
SNS投稿やプレゼン資料では、プラットフォームごとに求められるアスペクト比が違います。Instagram用の正方形、YouTube用の16:9、X(旧Twitter)用の16:9など、1枚のパースを複数のフォーマットに展開する場面は少なくありません。
アウトペインティングなら、足りない方向だけを拡張して必要なアスペクト比を作り出せます。単純な引き伸ばしと違って、AIが文脈を理解して自然な背景を生成するため、違和感のない仕上がりになります。
また、プレゼンボードに配置するときのテキストエリア確保にも使えます。画像の上部や下部を拡張して余白を作り、そこにキャプションやロゴを配置する手法です。1枚の絵を使い回す場面が多い方ほど、この手法が効いてきます。
まとめ
ComfyUIのアウトペインティングは、Pad Image for Outpaintingノードを中心としたシンプルなワークフローで実現できます。left・right・top・bottomで方向を指定し、featheringとdenoise値で仕上がりの自然さを調整する流れです。建築パースの画角拡張やアスペクト比の変換など、実務で役立つ場面は多くあります。
まずは手持ちの画像で一方向だけ拡張してみると、パラメータの感覚がつかめます。慣れてきたら複数方向の同時拡張や、2パスによるシームライン除去にも挑戦してみてください。
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