ComfyUIインペインティング完全ガイド|部分修正の実務6手順
AI画像生成で「全体は気に入っているのに、一か所だけ直したい」と感じた経験はありませんか。ComfyUI(ノードをつないで画像生成AIを動かすツール)のインペインティング(部分修正)を使えば、画像の指定した領域だけをAIで再生成できます。Photoshopのスポット修復ブラシをAIに置き換えたイメージが近く、建築パースの家具を入れ替えたり、壁紙の色を変えたりといった作業も、全体を崩さずに実現できます。
この記事では、ComfyUIでインペインティングを行うためのマスク作成方法、2系統のワークフロー構築手順、デノイズ強度の具体的な目安値まで、初心者にもわかる形でステップごとに解説します(2026年4月現在)。
インペインティングとは?画像の一部だけをAIで再生成する技術
インペインティングとは、画像の特定の領域だけをAIに再生成させる技術です。変更したい部分を「マスク」で指定し、そのマスク範囲内だけを新たに描き直します。マスクの外側はそのまま残るので、全体の構図やスタイルを保ったまま部分的な修正ができます。建築パースの修正でいえば「現場を壊さずに一部屋だけリフォームする」ような感覚で、既存の仕上がりを活かしながらピンポイントで直せる手法です。
マスクで「変えたい場所」を指定する仕組み
マスクとは、白と黒で「変更する範囲」と「変更しない範囲」を区別した画像のことです。白く塗った部分がAIによる再生成の対象になり、黒い部分はそのまま維持されます。
実務では、マスクの精度が仕上がりを大きく左右します。たとえば家具だけを差し替えたい場合、家具の輪郭に沿ったマスクを作れば、周囲の壁や床に影響を与えません。逆にマスクがはみ出すと、意図しない領域まで書き換わります。精密さでいえば、塗装現場で養生テープを貼る工程と似ていて、ここが甘いと周囲まで塗料がはみ出すのと同じ結果になります。
img2imgとの違い
img2img(画像から画像への変換)は画像全体を変換対象にするのに対し、インペインティングはマスクで指定した一部分だけを変換します。「全体のテイストを変えたい」ならimg2img、「特定の箇所だけ直したい」ならインペインティングが適切です。
img2imgの詳しい使い方はimg2img変換ワークフロー|デノイズ強度の考え方で解説しています。
ComfyUIでマスクを作成する方法
ComfyUIでインペインティングを行うには、まずマスクを用意する必要があります。マスク作成は画像編集ソフトでの選択範囲作成と似ていて、「AIに直してほしい範囲を白く塗る」だけのシンプルな作業です。方法は大きく2つあります。
LoadImageノードのマスクエディタを使う手順
最も手軽な方法は、ComfyUI内蔵のマスクエディタです。手順は次のとおり。
- Load Imageノードで修正したい画像を読み込む
- 読み込んだ画像を右クリックし「Open in MaskEditor」を選択する
- マスクエディタが開いたら、ブラシツールで変更したい領域を白く塗る
- 「Save to node」をクリックしてマスクを確定する
ブラシサイズは画面上部のスライダーで調整できます。ここで注意したいのが「細すぎるブラシで輪郭をなぞらない」という原則です。海外コミュニティでもよく指摘されるポイントで、マスクは対象の輪郭より少し広めに塗るのが基本。細線のマスクはデノイズ時に破綻しやすく、境界が不自然になります。
外部ツールでマスク画像を用意する方法
より精密なマスクが必要な場合は、PhotoshopやGIMPなどの画像編集ソフトで白黒のマスク画像を作成し、別のLoad Imageノードで読み込む方法もあります。建築パースのように直線的な境界が多い場面では、外部ツールのほうが正確なマスクを作りやすくなります。
実務では、簡易な修正にはComfyUI内蔵エディタ、精密な範囲指定には外部ツールと使い分けるアプローチが扱いやすく、作業効率も安定します。
インペインティング用ワークフローの2系統と使い分け
ComfyUIのインペインティングには2系統のワークフローが存在します(2026年4月現在)。どちらを選ぶかで、向いているデノイズ値も変わります。家の修繕で「全面張り替え」と「部分補修」をどちらの業者に頼むかで見積もりが変わるのに似ていて、目的に合った方を選ぶと仕上がりと効率の両方が良くなります。
系統①:VAE Encode for Inpainting+インペイント専用モデル
1つ目は、VAE Encode (for Inpainting)ノードとインペイント専用モデルを組み合わせる方式です。
標準的な構成は次のとおり。
- Load Image:修正したい元画像を読み込む
- VAE Encode (for Inpainting):画像とマスクを受け取り、潜在空間(Latent)に変換する
- CLIP Text Encode(正・負):再生成したい内容をプロンプトで指示する
- KSampler:潜在空間上でマスク領域を再生成する
- VAE Decode:潜在空間からピクセル画像に戻す
- Save Image:結果を確認・保存する
VAE Encode (for Inpainting)ノードは、通常のVAE Encodeと違って、マスク入力端子を持っています。このノードはマスク境界の処理に最適化されており、高デノイズでの物体差し替えに向く構成です。
2026年4月現在、インペイント専用モデルの主流は次の3系統。
- SD1.5系インペイント専用モデル:古くから存在する定番。軽量で扱いやすい
- SDXL Fooocus Inpaint:SDXL系で高品質なインペイントを実現する事実上の標準(Acly/comfyui-inpaint-nodesで導入)
- Flux.1 Fill Dev:Black Forest Labs公式のインペイント・アウトペイント専用モデル。Fluxベースで最も自然な仕上がりが得られる
通常のFluxモデルではインペイント品質が不安定なため、Flux系で部分修正をするならFlux.1 Fill Devを選ぶのが現実的です。
系統②:VAE Encode+Set Latent Noise Mask+通常モデル
2つ目は、通常のVAE EncodeにSet Latent Noise Maskノードを挟む方式です。
- Load Image:元画像を読み込む
- VAE Encode(通常版):画像を潜在空間に変換する
- Set Latent Noise Mask:Latentにマスクを適用する
- KSampler:指定領域だけノイズを乗せて再生成する
- VAE Decode → Save Image
この方式ではデノイズ強度を0.3〜0.8など柔軟に調整できます。元画像のニュアンスを残しながら修正したい「色味の変更」「質感の微調整」に向く構成です。通常のチェックポイントモデルがそのまま使えるのも利点。専用モデルを追加ダウンロードしなくていいので、初めて試す方にはこちらのほうが手軽になります。
使い分けの判断基準
用途で整理すると、次のように判断できます。
| 目的 | 推奨系統 | 推奨モデル | デノイズ目安 |
|---|---|---|---|
| 家具の完全差し替え・背景入れ替え | 系統① | SDXL Fooocus Inpaint / Flux Fill | 0.85〜1.0 |
| 壁紙や床材の素材変更 | 系統①または② | 用途次第 | 0.6〜0.85 |
| 色味・質感の微調整 | 系統② | 通常チェックポイント | 0.3〜0.5 |
大きな画像を扱うときのInpaint Crop/Stitch
4K級のパース画像の一部を修正する場合、画像全体をそのままKSamplerに流すとVRAMを大きく消費します。このときに便利なのがInpaint Crop → KSampler → Inpaint Stitchのワークフロー。
マスク周辺だけを切り抜いて処理し、修正後に元画像へ縫い戻す仕組みで、海外では大きな画像の部分修正における定番ワークフローとして扱われています。Acly/comfyui-inpaint-nodesなどで導入可能です。必要な箇所だけ細かく作業して最後に元の図面に統合する、という建築設計の現場フローにも近い考え方になります。
ノードの基本的な接続方法や操作についてはComfyUI ノード基礎・基本ワークフローガイドをご覧ください。
デノイズ強度とマスク境界の調整テクニック
インペインティングの品質を左右するパラメータが、デノイズ強度とマスク境界の処理です。デノイズ値は「どれだけ大胆に書き換えるか」のダイヤル、マスク境界の処理は「差し替えた部分と周囲をどれだけ馴染ませるか」の仕上げ工程にあたります。
デノイズ値の用途別目安
デノイズ強度はKSamplerノードの「denoise」パラメータで設定します。海外コミュニティで共有されている実務目安をまとめると次のとおり(2026年4月現在)。
| デノイズ値 | 変化の度合い | 向いている用途 |
|---|---|---|
| 0.3〜0.5 | 微調整 | 色味の変更、質感の微修正、ライティング調整 |
| 0.6〜0.8 | 中程度 | 壁紙変更、家具の素材変更、部分的な形状変更 |
| 0.75〜0.85 | 大幅変更 | 家具の差し替え、オブジェクトの置換 |
| 1.0 | 完全再生成(非推奨) | 周辺文脈を無視したノイズが出やすく、基本的に避ける |
とくに系統②(Set Latent Noise Mask方式)で1.0に設定すると、マスク領域の文脈が完全に失われて違和感のある結果になります。海外フォーラムでも指摘が多く見られる挙動で、物体の完全差し替えでも0.85前後で止めるほうが周辺と馴染む結果になりやすい傾向があります。
実務では、まず0.5前後で試し、仕上がりを確認しながら徐々に値を調整するのが効率的です。
マスク境界のFeatheringとSoft Inpainting
マスクの境界がくっきりしすぎると、修正した領域と周囲の間に不自然な境目が生じます。対策は3段階あります。
- grow_mask_by(Feathering):VAE Encode (for Inpainting)の「grow_mask_by」パラメータでマスクを数ピクセル拡張する。6〜10ピクセル程度が扱いやすい目安
- Expand Mask(grow + blur):マスクを拡張したうえでぼかしを追加する。境界のグラデーションが滑らかになる
- Soft Inpainting:マスク境界を段階的にブレンドする手法。Differential Diffusionも同系統で、ブラシ跡を完全に残さずに馴染ませられる
Soft InpaintingはカスタムノードやComfyUI本体の機能で実現でき、高解像度の建築パースで「家具を差し替えたけれど境界が浮く」といった問題の解決策として有効です。塗装でいえば「周囲と馴染むようにグラデーションで色をぼかす」工程に近く、差し替え感を消すための仕上げ技になります。
拡張しすぎるとマスク外まで変更されるため、プレビューで確認しながら調整してください。
建築パースでのインペインティング活用例
インペインティングは建築パースの修正作業と相性が良い技術です。代表的な活用パターンを紹介します。
家具の差替えと壁紙・床材の変更
建築パースで最も多い修正要望が、家具の入れ替えや内装材の変更です。
たとえばリビングのソファを別のデザインに差し替える場合、ソファ部分だけをマスクし、プロンプトで「a gray fabric L-shaped sofa」のように新しいソファの特徴を指示します。壁紙の変更なら壁面をマスクし、「white brick wall texture」のように素材を指定します。
この手法を応用すれば、1枚のベース画像から複数のインテリアバリエーションを短時間で作成できます。同じ構図で家具違い・素材違いのパースを用意できるので、クライアントへの提案幅が広がります。バーチャルステージングとの組み合わせについてはバーチャルステージング&AIリノベーション|ComfyUIで空室を演出で詳しく解説しています。
空や窓の外の景色を入れ替える
窓から見える景色や空の表情を変更するのもインペインティングの得意分野です。曇り空を晴天に変えたり、昼の景色を夕景に差し替えたりできます。
窓ガラス部分をマスクし、「clear blue sky with some clouds, green garden view」のようにプロンプトを書くと、窓越しの景色だけが変わります。広範囲の景色置換ではFlux.1 Fill Devを使うと、空のグラデーションや遠景の樹木が自然に生成されやすい傾向があります(2026年4月現在)。建物の外観パースでも、空全体をマスクして時間帯や天候を自由に変更できます。
まとめ
ComfyUIのインペインティングは、マスクで指定した領域だけをAIに再生成させる技術です。ワークフローには「VAE Encode for Inpainting+専用モデル(高デノイズ向き)」と「VAE Encode+Set Latent Noise Mask+通常モデル(低デノイズ向き)」の2系統があり、目的に応じて使い分けるのが実務的。
デノイズ値の目安は、微調整なら0.3〜0.5、物体差し替えなら0.75〜0.85が再現性の高いレンジです。1.0は文脈が壊れやすいため避けるのが無難。境界のFeatheringやSoft Inpaintingを組み合わせれば、建築パースの家具差替えから空の入れ替えまで、幅広い部分修正に安定した品質で対応できます。
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