Blenderで図面を下敷きにモデリングする2つの方法|Image EmptyとDXFインポートの使い分け
建築の3DCG制作で「CAD図面をBlenderの下敷きにしてモデリングしたい」と思ったとき、ネット上の情報を集めるとDXFインポート系の手順とPNG画像を貼り付ける手順が混在していて、どちらを選べばよいか迷いがちです。海外の建築モデリングコミュニティでは、PNG/JPG画像をImage Empty(参照画像として3D空間に配置する仕組み)として下敷きにする方法が主流です。DXFインポートは、レイヤー管理や頂点スナップを使いたいときの選択肢として位置づけられています。
この記事では、Blender 5.1 / 4.5 LTS を前提に、Image Empty方式とDXFインポート方式の2つの下敷き手順を順番に解説します。
Jw_cad(mm単位の国産CAD)とAutoCAD(建築設計の世界標準CAD)の両方を対象に、スケール設定の核心とレイヤー整理を扱います。「図面のどこまでをBlenderに持ち込み、どこからをBlenderで作るか」の判断基準まで踏み込む内容です。読み終わると、自分の図面に合った下敷き方式を選び、実寸通りにモデリングを始められる状態になります。
Blenderで図面を下敷きにする「前に」知っておくこと
CAD図面をBlenderの下敷きにする前に、押さえておくべき前提が3つあります。下敷きには2方式あること、CADとBlenderで単位系が違うこと、そしてBlender 5.1 / 4.5 LTS ではDXFインポートが拡張機能扱いになっていることです。この3点を最初に理解しておくと、手順の途中で「設定がうまくいかない」と詰まる場面が大きく減ります。
下敷きには2方式ある:Image Empty方式とDXFインポート方式
下敷きの作り方は、Image Empty方式とDXFインポート方式の2つに大きく分かれます。それぞれ得意な場面が違うため、最初に使い分けのポイントを押さえます。
| 項目 | Image Empty方式 | DXFインポート方式 |
|---|---|---|
| 使うデータ | PNG / JPG画像 | DXFファイル(線データ) |
| 必要な準備 | なし(標準機能) | DXFアドオンのインストール |
| 頂点スナップ | できない | できる |
| レイヤー管理 | なし(1枚の画像) | コレクション化で可能 |
| 実寸合わせ | Sizeプロパティで手動 | スケール係数(mm→m変換) |
| 向いている場面 | 短時間で下敷きを用意したいとき | 線をなぞって正確にトレースしたいとき |
Image Empty方式は、CAD図面をPNG/JPGに書き出して Shift+A > Image > Reference で3D空間に配置するシンプルな方法です。インストール作業が不要で、Jw_cad・AutoCAD・Vectorworksなど書き出し元のCADを問わず使えます。実寸は画像のSizeプロパティで手動指定する形になります。
DXFインポート方式は、DXFファイルから線データそのものをBlenderに取り込む方法です。読み込んだ線の頂点にスナップできるため、壁の角を正確にトレースしたいときや、レイヤーごとに表示・非表示を切り替えたいときに向いています。ただしBlender 4.2 LTS 以降は標準バンドルから外れているため拡張機能のインストールが必要で、複雑なDXFは読み込みでエラーが出るリスクもあります。
選び方の目安はシンプルです。「とにかく早く下敷きを作りたい」「Jw_cadのDXF出力が不安定」と感じるならImage Empty方式、「壁の頂点を正確にスナップしてトレースしたい」「建具と注記をレイヤーで分けて管理したい」ならDXFインポート方式です。
CADとBlenderの単位系の違いで最初につまずく
Blenderと国内主要CADでは、デフォルトの単位系が異なります。この差を理解せずにインポートすると、図面が1/1000のスケールで読み込まれて操作不能になることがよくあります。
Blenderのデフォルト単位はメートル(m)です。これに対してJw_cadは mm 単位固定、AutoCADはファイルごとに mm またはインチが指定されています。日本の建築実務では mm 単位のDXFが大半を占めるため、そのままBlenderに入れると壁が1/1000の長さになり、画面で見えないほど小さく展開されます。
対処は2通りあります。1つ目は、DXFインポート時にScale係数 0.001 を指定する方法です。多くのチュートリアルで紹介されている定番手順で、mm単位の図面を直接m単位に変換しながら取り込みます。2つ目は、Scene Properties > Units > Unit Scale を 0.001 に変更しておき、DXFは Scale=1 のままインポートする方法です。1 Blender unit を 1mm として扱う設定になり、建築実務での寸法感覚と合わせやすくなります。どちらを選んでも結果は同じ実寸モデルになります。
スケールを間違えたまま気付かずにモデリングを進めると、たとえば「2000mの壁」が生成されてビューポートで全体が見えなくなり、操作が困難になります。インポート直後に必ず実寸を確認する習慣を持つことが大切です。
Blender 5.1 / 4.5 LTS ではDXFアドオンを別途インストールする
Blender 4.2 LTS 以降、DXFインポート機能は本体に同梱されなくなり、Extensions Platform(拡張機能配信プラットフォーム)から個別にインストールする方式に変わりました。Blender 5.1 と 4.5 LTS でも同じ仕組みです。
導入手順は次の流れになります。Edit > Preferences > Get Extensions を開き、検索窓に「Import AutoCAD DXF」と入力します。表示された拡張機能のInstallボタンを押すと、Blender Extensionsの公式リポジトリから自動でダウンロードされ、有効化まで一括で完了します。インストール後は File > Import メニューに「AutoCAD DXF (.dxf)」が追加されるので、そこからDXFを開けるようになります。
拡張機能はオンライン配信のため、初回のインストール時はネット接続が必要です。社内ネットワークで外部接続が制限されている場合は、別環境でダウンロードしたパッケージをローカルインストールする方法もあります。
シンプルに下敷きにする「Image Empty 方式」3ステップ
Image Empty方式は、CAD図面を画像化してBlenderの3D空間に半透明で配置するシンプルな手順です。インストール不要で、3ステップで下敷きが完成します。
ステップ1|図面をPNG/JPGに書き出す
最初の作業は、CAD図面を画像ファイルに変換することです。書き出しの経路はCADソフトによって少し違います。
Jw_cad の場合は、印刷プレビューからPDF出力する経路が一番安定しています。出力したPDFを別のツールでPNGに変換すれば、解像度を保ったまま画像化できます。シンプルな方法として、Jw_cadの作図画面を全画面表示にしてOSのスクリーンショット機能で撮る方法もあります。表示倍率を最大に上げてから撮ると線が鮮明に残ります。
AutoCAD の場合は、レイアウトタブからPNG/JPG書き出しが直接できます。コマンドラインで PLOT を実行し、プリンタの代わりに「PublishToWeb PNG」や「PublishToWeb JPG」を選ぶ方法も使えます。レイアウトのビューポート設定で表示範囲を平面図に絞っておくと、書き出した画像の構図が整います。
推奨解像度は、住宅の平面図なら2000×1500ピクセル以上を目安にしてください。壁の線が拡大しても潰れない程度の鮮明さがあれば、後の実寸合わせや視覚的なトレース作業が進めやすくなります。
ステップ2|Image Empty として配置し、サイズを実寸合わせ
書き出した画像をBlenderに配置します。テンキー7を押してTop Orthographic View(真上から見た平行投影ビュー)に切り替え、Shift+A > Image > Reference を選択して書き出したPNG/JPGを開きます。3Dビューポートに画像が配置されます。
次に実寸合わせをします。配置されたImage Emptyを選択した状態で、Properties > Object Data Properties > Empty の Size プロパティを開きます。ここに入力した数値が、画像の表示サイズ(m単位)になります。
実寸合わせの実務手順は次の通りです。図面に書かれた既知の寸法線(たとえば「2000mm」と明記された壁の長さ)をBlender上で測ります。MeasureItアドオン(標準同梱の寸法測定機能)を有効にしておくと、2点間の距離が画面に表示されます。最初は仮の数値でSizeを入れて配置し、測定結果を見ながらSizeを調整して、2点間が2.0m(=2000mm)になるよう合わせていきます。
ドア幅900mm、玄関ドア高さ2000mm、住宅の柱間910mmまたは1820mmといった建築の基本寸法を覚えておくと、画像の縮尺がおおよそ合っているかをすぐ判断できます。
ステップ3|半透明化&セレクト不可で「下敷きらしさ」を仕上げる
サイズが合ったら、下敷きとして使いやすい状態に仕上げます。Object Data Properties で Opacity(不透明度)を 0.3〜0.5 程度に下げて、画像を半透明にします。この状態にしておくと、後から作るメッシュ(3D形状)と下敷きの両方が同時に見えるようになり、図面に沿ったモデリングが進めやすくなります。
仕上げの最後にもう1つやっておきたいのが、誤クリック対策です。アウトライナー(画面右上のオブジェクト一覧)で該当のImage Emptyを探し、「セレクト不可」を表す矢印アイコンを有効化します。これでビューポート上で誤って下敷きをクリックしても選択されなくなり、モデリング中に下敷きの位置を動かしてしまう事故を防げます。
Image Emptyはそもそもレンダリング対象外の仕様なので、最終的にレンダリングしても画像は出力に含まれません(Blender 5.1 Manual: Empties)。「下敷きとしてだけ機能し、最終パースには映らない」という運用が、追加設定なしで成立する形です。
線データを活かす「DXFインポート方式」4ステップ
DXFインポート方式は、CAD図面の線データそのものをBlenderに取り込む手順です。頂点スナップで壁の角を正確にトレースしたい場合や、レイヤーごとに表示を切り替えたい場合にこちらを選びます。
ステップ1|CAD図面を「2Dのみ」のDXFに整理する
DXFを書き出す前に、CAD側で図面を整理する一手間が後工程の安定性を左右します。Blenderに持ち込むのは「平面図」または「立面図」の2Dデータのみと割り切ります。ハッチング(斜線塗り)・寸法線・注記・引き出し線は、書き出し前に削除するか、別レイヤーに移して非表示にしてください。
AutoCAD の場合、3D要素(3Dソリッドや曲面)が混在しているとインポートが複雑になります。2Dビューに切り替えてDXF書き出しするか、2D図面専用のDXFファイルを別途準備します。書き出し時のDXFバージョンは「DXF R2010」または「R14」形式を選ぶと、Blender側で読み込めない不具合が起きにくくなります。
Jw_cad の場合、ハッチングレイヤーは非表示にしてから書き出すと、Blender側での整理が一気に楽になります。Jw_cadのハッチングはBlenderで大量の短線データに展開され、後の作業を妨げる原因になりやすいためです。
ステップ2|Blenderにインポートする(スケール設定が核心)
整理したDXFをBlenderに取り込みます。File > Import > AutoCAD DXF (.dxf) を選択し、ファイルを指定すると、インポートパネルが画面右側に表示されます。ここでスケール設定を正しく行うことが、この手順全体の核心です。
スケール係数の設定は2つのアプローチがあります。1つ目は、インポートパネルの「Scale」を 0.001 に設定する方法です。Jw_cad(mm単位)でもAutoCAD(mm単位設定)でも同じ値で対応できます。2つ目は、Scene Properties > Units > Unit Scale を 0.001 にしてから、インポート時の Scale を 1 のままにする方法です。建築実務で 1 Blender unit を 1mm として扱いたい場合は、こちらの方が後の作業と相性が良くなります。
インポートパネルの「Import types」では、CURVE(線データ)のみをチェックし、TEXT(文字)とHATCH(ハッチング)のチェックを外してください。不要なデータを最初から除外することで、Outliner(アウトライナー)が見通しやすくなり、レンダリング時の負荷も軽くなります。
ステップ3|インポート後のスケール実測検証
インポートが完了したら、すぐに実寸の検証をします。最初に Ctrl+A > Apply Scale でスケールを確定させてください。これを怠ると、後でオブジェクトを編集したときに変形量がずれてしまうことがあります。
検証は、Nキーでサイドバーを開き、Dimensions(寸法)の数値を確認する形が早いです。建築実務の基本寸法を頭に入れておくと、すぐに判断できます。ドア幅は0.9m(900mm)、住宅の柱間は0.91m(910mm)または1.82m(1820mm)、玄関ドアの高さは2.0m(2000mm)が一般的な値です。表示される数値がこれらと大きく食い違っていたら、スケール係数の設定ミスを疑ってください。
もしビューポートに「2000m」のような異常な数値が出ている場合は、いったん全選択してDeleteで削除し、最初からインポートをやり直すのが手堅い対処です。Scale係数を 0.001 から 1 や 0.0254(インチ→m変換)に変えて、図面の出力単位と合致する値を探していきます。
ステップ4|図面データをコレクションに整理する
インポートした線データをそのまま放置すると、後のモデリング作業で誤って選択したり動かしたりする原因になります。コレクションに整理して「消せる下敷き」にしておくのが実務的な運用です。
アウトライナーで右クリックし、New Collection を選んで「下敷き図面」のような名前を付けます。インポートされたDXF由来のオブジェクトを、このコレクションにドラッグして格納します。コレクション単位でアイコンを操作できるようになるため、目のアイコンで表示・非表示を切り替え、カメラのアイコンでレンダリング対象から除外といった一括設定が1クリックで済むようになります。
ここでもう1段階、矢印アイコン(セレクト不可)を有効にしておくことを強く勧めます。下敷きの線データは何度もカーソルが当たる位置にあるため、選択できる状態のままだと誤操作で動かしてしまう事故が起きやすくなります。「セレクト不可」にしておけば、ビューポートでクリックしても選択されず、下敷きとしての位置が固定されます。
Jw_cadとAutoCADの注意点
Jw_cadとAutoCADは、どちらもDXF出力に対応していますが、出力時の癖と注意点が違います。両者の差を押さえておくと、トラブル発生時の対処が早くなります。
| 項目 | Jw_cad | AutoCAD |
|---|---|---|
| デフォルト単位 | mm(固定) | mmまたはインチ(ファイル指定) |
| Blenderインポート時のScale | 0.001(必須) | 0.001(mm時)または 0.0254(インチ時) |
| 推奨DXFバージョン | 標準形式(バージョン選択肢なし) | DXF R2010 または R14 |
| ハッチングの扱い | 非表示にしてから書き出す | 2D図面ビューで書き出す |
| 文字(注記) | Blenderで正しく表示されないことが多い | ブロックとして読み込まれる |
| ブロック・繰り返し配置 | (概念なし) | コレクションインスタンスに変換 |
Jw_cad|mm単位とハッチング処理が2つのポイント
Jw_cadはmm単位が固定されているため、Blenderインポート時は必ず Scale 0.001 を指定するか、Scene Unit Scale を 0.001 に設定してください。これを忘れると、住宅の平面図が0.01m四方の点のように小さく表示されてしまいます。
ハッチング(斜線・塗りつぶし)の扱いも要注意です。Jw_cadのハッチングはDXFに変換されると大量の短い線データになり、Blenderのアウトライナーが膨大なオブジェクトで埋まります。後の作業を妨げるため、書き出し前にハッチングレイヤーを非表示にしておくか、インポート時に HATCH タイプのチェックを外して除外します。
文字(テキスト)もBlenderで正しく表示されない場合があります。フォント情報が引き継がれず、注記が読めない記号として展開されることがあるためです。文字レイヤーも、書き出し前に非表示にする方針が無難です。
それでもDXF出力が崩れる場合は、現実的な逃げ道として「Jw_cad画面のスクリーンショット→PNG化→Image Empty方式で下敷きに」という代替ルートがあります。線データとしての精度は落ちますが、視覚的な下敷きとしては十分機能します。Jw_cadのDXF互換性に悩むくらいなら、最初からImage Empty方式に切り替える判断もありです。
AutoCAD|DXFバージョンと3D要素の確認が重要
AutoCADでDXFを書き出す際は、バージョンの選択が成否を分けます。最新のDXF形式(2018形式以降)はBlenderの拡張機能で正しく読み込めない場合があるため、「DXF R2010」または「R14」形式を選ぶのが安全です。古い形式の方が拡張機能の対応範囲に収まりやすく、線データの欠落が起きにくくなります。
3D要素が混在したファイルも要注意です。AutoCADは3Dソリッドや曲面も扱えるため、設計データに3D要素が含まれていると、インポート時にBlenderが解釈に苦労します。2D図面専用のビューに切り替えてからDXF書き出しをするか、平面図・立面図のみのDXFを別途準備する手順が、もっとも安定する選択肢です。
AutoCADのブロック(繰り返し使うドア・窓・家具などのパーツ)は、Blenderではコレクションインスタンスとして読み込まれます。便利な機能ですが、ブロックが多い設計データだとアウトライナーが入れ子構造で複雑になります。シンプルな平面図に整理してから書き出す方が、後の作業負荷を抑えられます。
下敷き図面をモデリングに活かす実務の考え方
下敷きが整っただけでは、モデリングは進みません。スナップ機能の使い方、図面から持ち込む情報の境界線、立面図の活用といった実務的な判断基準を押さえると、図面を本当の意味で「活かす」ことができます。
下敷きでトレースする際のスナップ設定
正確にモデリングを進めるには、スナップ機能を活用します。3Dビューポートのヘッダーにあるマグネットアイコン(吸着の意味)をクリックして有効化し、その横のドロップダウンでスナップ先を選びます。
DXFインポート方式の場合、スナップ先を「Vertex(頂点)」に設定すると、DXFの線データの頂点に正確に吸い付くようになります。壁の外形をなぞるとき、図面の角に自動で点が打てるため、ミリ単位の誤差なくトレースできます。「Edge(辺)」を併用すると、線の途中にも引っかかるようになり、開口部の位置取りが楽になります。
Image Empty方式の場合、画像は頂点を持たないため、Vertexスナップは効きません。代わりに「Snap to Increment」(グリッドへの吸着)を有効にし、グリッド間隔を100mmや500mmに合わせると、おおよその位置に正確に点を置けます。微調整は、Gキー(移動)に数値入力(たとえば G > X > 0.9 でX方向に0.9m移動)を組み合わせて行います。
どちらの方式でも、テンキー7でTop Orthographic View に切り替え、真上から見た状態でトレースする手順が基本です。平行投影ビューにすることで遠近感がなくなり、図面と1対1の対応で作業できます。
「図面に書いてあること」と「Blenderで作ること」の境界線
下敷きから何をどこまで持ち込むかは、最初に決めておきたい切り分けの基準です。すべてを持ち込もうとすると、かえって作業が遅くなります。
| 分類 | 内容 | Blenderでの扱い |
|---|---|---|
| 持ち込む情報 | 壁の外形、部屋の形状、建具の開口位置 | 図面の線を頂点スナップでトレース |
| Blenderで作る情報 | 壁の高さ、建具の3D形状、細部ディテール | 押し出し(Extrude)で立体化 |
| 持ち込まない情報 | ハッチング、寸法線、注記、引き出し線 | 書き出し前に削除 |
判断の基準はシンプルです。「平面的な位置と寸法の正確性が必要な要素」はCAD図面から引き継ぎ、「3D形状としての造形」はBlenderで自由に作ります。たとえば壁の位置は図面通りでなければなりませんが、壁の高さは図面ではなくBlender側でExtrude(押し出し)の数値入力で作る方が早くて正確です。
建具の開口位置も、図面の方が正しい寸法を持っています。一方で、建具そのものの3D形状(ドアの厚み、取っ手、枠の断面など)は図面に書かれていないため、Blender側で別途モデリングするか、家具・建具のアセットライブラリから持ち込みます。
立面図を追加することで高さ情報も図面から引き継ぐ
平面図だけでは高さ方向の情報が手に入りません。立面図(建物の正面・側面から見た図)も下敷きに追加すると、Z軸方向の精度も上がります。
手順は、平面図と同じ流れで立面図のDXFまたはPNGをインポートし、Front View(テンキー1)用に配置します。立面図は本来「正面から見た図」なので、Top View に展開された状態から Rotation X を 90 度回転させて立てると、Front View で正しく見える向きになります。Image Empty方式の場合は、追加した立面図のEmptyを選択し、Properties > Object Data Properties で Rotation X = 90° を入力すれば完了です。
平面図と立面図の2方向の下敷きが揃うと、壁の高さ・窓の高さ・建具のサイズも図面通りに作れるようになります。建築実務での寸法精度がそのまま3Dモデルに反映される状態です。
ただし立面図のインポートは作業が複雑になります。初めて下敷きモデリングに挑戦する方は、まず平面図のみからスタートし、平面の壁を立ち上げる作業に慣れてから立面図を追加する流れが安心です。最初から両方を扱おうとすると、ビューポートが複雑になって迷いやすくなります。
よくある失敗と対処法3つを編集部の見立てで整理
下敷き設定でつまずきやすいポイントは、おおむね3つに集約されます。海外チュートリアルや国内フォーラムの報告を編集部が読み解いた範囲でも、ほぼこの3つに収まっています。あらかじめ知っておくと、再現性のある対処ができます。
「図面が小さすぎる・大きすぎる」はスケール係数の設定ミス
もっとも多いトラブルが、スケールの設定ミスです。インポートしても3Dビューに何も見えない場合や、画面のはるか彼方に小さく図面が展開される場合は、Scale係数が合っていません。
対処は、いったん全選択してDeleteで削除してから、インポートをやり直す形が確実です。Scale係数を 0.001 から始め、それでもダメなら 1 や 0.01、AutoCADでインチ単位の可能性がある場合は 0.0254 を試していきます。
予防策は、インポート後すぐにNキーで Dimensions を確認する習慣を持つことです。住宅の柱間が0.91m(910mm)または1.82m(1820mm)、ドア幅0.9m(900mm)、玄関ドア高さ2.0m(2000mm)といった既知寸法と照合すれば、スケールが合っているかどうかが一瞬で判断できます。
「図面が原点から遠い位置に表示される」はCAD座標の問題
2つ目のトラブルは、図面がBlenderの世界座標の原点(0,0,0)から遠く離れた位置に展開されるケースです。
これはCAD図面の座標系に起因します。CAD側で図面が原点から離れた場所に描かれている場合、Blenderにインポートしてもそのまま遠い座標に展開されます。建築設計では地理座標を使う場合があり、その場合だと数キロメートル離れた位置に展開されることもあります。
対処は2通りあります。Blender側で対処するなら、インポートされた図面を選択して Object > Set Origin > Origin to Geometry を実行し、オブジェクトのOriginを図面の中心に再設定します。その後 Gキーで原点付近に移動させれば、扱いやすい位置に持ってこられます。
根本対処としては、CAD側で図面を原点付近に移動させてからDXFを書き出す方が安定します。AutoCADの場合は MOVE コマンドで全体を選択して原点近くに移動、Jw_cadの場合は「移動」コマンドで全選択して座標を整える形になります。
「DXFが正しく読み込めない・線が崩れる」はImage Empty 代替への切り替えで解決
3つ目のトラブルは、DXFインポート自体がうまくいかないケースです。線が大量に欠落する、形が崩れる、最悪の場合はBlenderがフリーズすることもあります。
原因はいくつか考えられます。DXFバージョンの非互換性、3D要素の混在、ブロックの複雑な入れ子構造、文字エンコードの問題などです。原因の特定に時間をかけるよりも、対処の優先順位を決めておく方が現実的です。
第1の対処は、CAD側でDXFをR2010形式で書き直すことです。これだけで読み込めるケースが半分以上あります。第2の対処として、3D要素や文字・ハッチングを全て削除した「線データのみ」のDXFを別途作り直します。それでも読み込めない場合の第3の対処が、Image Empty方式への切り替えです。
CAD画面のスクリーンショットをPNG化してImage Emptyで下敷きにすれば、頂点スナップこそ効かなくなりますが、視覚的な下敷きとしての機能は十分に保てます。DXFの読み込みに時間を溶かすより、Image Empty方式に切り替えてモデリング作業に進む方が、結果として建築パースの完成までが早くなる場面は多くあります。
下敷きを使いこなした先に広がる景色
下敷きモデリングが手に馴染むと、建築実務の制作フロー全体が変わってきます。図面を起点にBlenderで3Dモデルを作る流れが確立すると、設計者が日常的に描いている平面図・立面図がそのまま3DCG制作の入口になります。
たとえば、住宅案件で意匠設計が固まったタイミングで、平面図のPDFを受け取ったらすぐにImage Empty方式で下敷きを置き、壁・床・建具を立ち上げてプレゼン用のラフパースを作るといった運用が現実的になります。手作業で寸法を再入力する必要がなくなり、CADで決まった通りの寸法がそのまま3Dに引き継がれるため、設計者の意図を取り違えるリスクが減ります。
DXFインポート方式に習熟すれば、コンペや実施設計の段階で「図面と完全に一致した3Dモデル」を短時間で組み立てられるようになります。施工図段階での詳細パースや、家具配置の検討用パースを、設計の進行と同じスピードで出していける状態です。立面図も併用するようになると、Z軸方向の寸法も図面通りに揃うため、外観パースやファサード検討の精度も上がっていきます。
図面起点のモデリング手順そのものを順を追って身につけたい場合は、Blenderの建築モデリング手順|壁・床・建具から組み立てる基本で、下敷きの先に続く壁・床・建具の組み立て工程を通しで解説しています。下敷き化から3Dモデル完成までを1本の流れで掴めるようになります。
まとめ
Blenderで図面を下敷きにモデリングするには、Image Empty方式とDXFインポート方式の2つを使い分けるのが現実的です。それぞれの特性を理解し、自分の図面と作業内容に合った方を選んでください。
要点を整理すると次の5点になります。
- 下敷きには Image Empty方式(PNG/JPG画像をReferenceとして配置)と DXFインポート方式(線データをBlenderに取り込み)の2つがある。シンプル重視ならImage Empty、頂点スナップ・レイヤー管理重視ならDXFインポート。
- Blender 5.1 / 4.5 LTS では、DXFインポート機能は Edit > Preferences > Get Extensions から「Import AutoCAD DXF」を別途インストールする。
- スケール係数の設定が核心。Jw_cad(mm単位固定)もAutoCAD(mm単位指定時)も、インポート時に Scale 0.001 を指定するか、Scene Unit Scale を 0.001 に変更する。
- アウトライナーで「セレクト不可」(矢印アイコン)を有効化し、誤って下敷きを動かす事故を防ぐ。Image Empty は半透明(Opacity 0.3〜0.5)にしてモデルと両立させる。
- 「持ち込む情報(位置・寸法)」と「Blenderで作る情報(3D形状・高さ)」を切り分ける。すべてを図面から持ち込もうとせず、3D形状の造形はBlender側で進める方が早くて正確。
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