ComfyUI×Flux Kontext|建築マテリアル変更・家具差替え実務

建築パースのマテリアルを変更したいとき、従来は3DCGソフトで素材を貼り直してレンダリングし直す必要がありました。壁紙の色を1つ変えるだけでも、数十分から数時間かかるケースは珍しくありません。

Flux Kontextを使えば、テキスト指示だけで壁材・床材・家具を差替えられます。空間の構図やパースの整合性を保ったまま、素材だけをピンポイントで変更できる点が大きな強みです。

この記事では、ComfyUI(ノードをつないで画像生成AIを動かすツール)でFlux Kontextを活用し、建築パースのマテリアル変更・家具差替え・照明調整を行う具体的な手順を解説します。バリエーション提案資料を短時間で作成するフローや、インペインティングとの使い分けもあわせて紹介します。

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目次

Flux Kontextが建築パースの編集に向いている理由

Flux Kontextは、入力画像のコンテキストを保持したまま編集できる特徴を持つ編集モデルです。ここでは空間構造を崩さないコンテキスト保持の仕組みと、Dev/Pro/Maxの使い分けを整理します。

コンテキスト保持で空間構造を崩さない

Flux Kontextは、入力画像のコンテキストを高精度に保持する設計です。120億パラメータの大規模トランスフォーマーが、画像のレイテント情報とテキスト指示を統合的に処理します。

建築パースで重要なのは、壁の位置関係や天井高、窓の配置といった空間構造ではないでしょうか。従来のimg2imgでは、素材変更のつもりが間取りごと変わってしまう問題がありました。Flux Kontextではコンテキスト保持により、変更したい箇所だけを的確に書き換えられます。

テキスト指示だけで部分変更できる手軽さ

Flux Kontextの編集はテキストプロンプトで完結します。マスク作成や領域指定といった前処理は不要です。たとえば「Change the wall color from white to dark gray」と入力するだけで、壁面の色が変わります。

実務では、設計の打ち合わせ中にクライアントから「この壁をもう少し暗くできますか」と聞かれる場面があります。Flux Kontextなら、その場でテキストを入力して数十秒で結果を見せられます。

Dev / Pro / Max の違いと建築実務での選び方

2026年4月現在、Flux KontextはDev・Pro・Maxの3グレード体制で提供されています。建築実務でどれを選ぶかは、運用環境とコスト構造で判断するとわかりやすくなります。

  • Dev版(12Bパラメータ、OSS公開):ComfyUIローカル環境で動作。自社PCのNVIDIA GPUで回す前提。初期コストはGPU代のみで、枚数を刷るほど単価が下がる
  • Pro版(API経由):クラウド推論で高速・安定。枚数課金のため、単発の提案制作や突発的な大量生成に向く
  • Max版(最上位API):細部描写や複雑な指示の再現度が高い。最終提案用の仕上げカットで選択肢に入る

日常的なマテリアル検討はDev版でローカル処理し、クライアント提出前の仕上げだけPro/Max APIで再生成するハイブリッド運用が、試行回数とクオリティを両立しやすい進め方です。ローカルとAPIを併用することで、コストと品質の両面で柔軟な運用ができます。

ComfyUIでのマテリアル変更ワークフロー

2026年4月現在、ComfyUI公式にはFlux Kontext用のネイティブワークフローが2種類搭載されています。1つは「単画像編集」、もう1つは「2画像結合編集」です。建築パースのマテリアル変更は前者の単画像編集ワークフローで対応するのが基本となります。

壁紙・壁材の変更手順

ComfyUIでFlux Kontextを使った壁材変更の基本フローは次のとおりです。

  1. Load Imageノードで建築パースを読み込む
  2. Flux Kontext Samplerノードを配置し、モデルを接続する
  3. プロンプト欄に変更指示を英語で記述する
  4. ステップ数を20〜30に設定して生成する

壁材変更のプロンプト例をいくつか示します。

  • 「Change the wall material to exposed concrete」(コンクリート打ちっ放し)
  • 「Replace the white walls with warm beige plaster」(ベージュの塗り壁)
  • 「Add wood paneling to the accent wall behind the sofa」(アクセントウォール)

動作検証では、壁材の指示で素材名だけでなく質感の形容詞を添えると精度が上がる傾向が確認されています。「rough concrete」「smooth matte plaster」のように書くと、意図した仕上がりに近づきます。

床材の変更(フローリングからタイルへ)

床材の変更も同じワークフローで対応できます。ポイントは、床材特有の光沢感やパターンをプロンプトに含めることです。

  • 「Change the flooring from light oak hardwood to large gray stone tiles」
  • 「Replace the carpet with herringbone pattern wood flooring」
  • 「Change the floor to polished white marble with subtle veins」

床材はパースの面積を大きく占めるため、変更の影響が目立ちます。Guidance Scale(ガイダンススケール)を3.5〜5.0の範囲で調整すると、周囲との色調バランスが安定します。

天井・建具の素材変更

天井や建具(ドア・窓枠)の変更にも対応できます。ただし、小さなパーツほど指示の具体性が求められます。

  • 「Change the ceiling to exposed wooden beams with white plaster between them」
  • 「Replace the door from white painted to natural walnut wood」

実務では、建具の変更は壁材と同時に指示すると統一感のある結果が得られます。「Change all door frames and baseboards to dark walnut to match the new flooring」のように、複数要素をまとめて指示するテクニックが有効です。

応用Tips:Flux Depth併用で構造保持を安定させる

マテリアル変更時に空間構造のズレが気になる場合は、Flux Depthで深度マップを抽出し、Kontextと併用する手法が有効です。査読論文(MDPI Buildings 2026)でも、Flux ReduxとFlux Depthを組み合わせた建築ファサードのスタイル転写で、構造保持の有効性が検証されています。壁の奥行きや天井高を崩さずに素材だけ書き換えたい場面で検討しましょう。

家具の差替えと照明変更のテクニック

Flux Kontextが得意とする編集の代表例が、家具の差替えと照明条件の変更です。ここでは家具差替えのプロンプト設計から、時間帯や光源の切り替えまでを実例とともに紹介します。

家具の差替え(ソファ・テーブル等)

家具の差替えはFlux Kontextが得意とする編集の一つです。形状の変更を伴うため、プロンプトには形・色・素材の3要素を含めると成功率が上がります。

  • 「Replace the 3-seater sofa with an L-shaped sectional sofa in light gray fabric」
  • 「Change the dining table to a round marble top table with brass legs」
  • 「Replace the office chair with a mid-century modern lounge chair in brown leather」

注意点として、家具のサイズ感が空間と合わない結果が出ることがあります。その場合はプロンプトに「appropriately sized for the room」と追記すると改善されます。

照明条件の変更(時間帯・光源の切り替え)

照明の変更は、同じ空間の印象を大きく変えたいときに役立ちます。

  • 「Change the lighting from bright daylight to warm evening sunset light coming through the windows」
  • 「Replace the overhead fluorescent lighting with warm indirect LED strip lighting along the ceiling edges」
  • 「Add dramatic side lighting from the left window, creating long shadows」

照明変更は他のマテリアル変更よりもステップ数を多め(25〜35)に設定すると自然な仕上がりになります。光の回り込みや影の方向を正確に再現するには、モデルがより多くの推論ステップが必要になるためです。

バリエーション提案資料を高速作成するフロー

クライアント提案では、同じ空間で複数の素材パターンを見せると効果的です。ここでは1枚のパースから複数バリエーションを生成する具体手順と、提案での活用ポイント・LoRAによる一貫性確保までを紹介します。

1枚のパースから複数バリエーションを生成する手順

クライアントへの提案では、同じ空間で複数のマテリアルパターンを見せると効果的です。Flux Kontextを使えば、1枚の基準パースから短時間で複数案を生成できます。

手順は次のとおりです。

  1. 基準となるパースを1枚用意する
  2. バリエーションごとにプロンプトを変えて順番に生成する
  3. 生成画像を一覧にまとめて提案資料化する

たとえば、リビングの内装提案なら以下の3パターンを10分程度で作成できます。

  • パターンA ナチュラル(オーク床+白壁+リネンソファ)
  • パターンB モダン(グレータイル+コンクリート壁+レザーソファ)
  • パターンC 和モダン(畳風床+漆喰壁+ローテーブル)

クライアント提案での活用ポイント

バリエーション提案で気をつけたいのは、生成画像をそのまま最終成果物として使わない点です。あくまで方向性の確認ツールとして位置づけ、決定後に正式な3Dレンダリングで仕上げるフローが現場では安全です。

生成画像には「AI生成によるイメージ案」と明記し、実際の素材や色味とは異なる可能性があることをクライアントに伝えましょう。信頼関係を損なわない運用が長期的には大切な視点になります。

応用Tips:Flux Kontext LoRAで提案シリーズの一貫性を確保

同一クライアント向けに複数の提案を出す場合、Flux Kontext LoRA(軽量な追加学習ファイル)で特定スタイル(北欧・和モダン・インダストリアル等)を固定しておくと、シリーズ全体のトーンを揃えやすくなります。海外のワークフロー配布サイトでもKontext+LoRAの事例が増えており、2026年4月現在、RunComfy等で公開されているLoRAワークフローが参考になります。

インペインティングとの使い分け

Flux Kontextの指示ベース編集は、従来のインペインティング(Flux Fill)と役割が異なります。ここでは両者の得意場面を整理したうえで、併用のKontext Inpaintingという第3の選択肢へと進みます。

Flux Kontextが得意な場面

Flux Kontextのテキスト編集は、指示ベース編集(instruction-based editing)と呼ばれる新しい編集パラダイムにあたります。従来のimg2imgが画像全体を描き直して細部を失うのに対し、Kontextはマスクなしで指定箇所だけを外科的に書き換えられる点が決定的な違いです。

具体的には次のような場面で力を発揮します。

  • 空間全体のトーンや素材感を統一的に変更したいとき
  • 複数の要素を同時に変更したいとき(壁と床を同時に変える等)
  • マスク作成が面倒な広範囲の変更

テキスト指示だけで完結するため、作業スピードを重視する場面に適しています。

インペインティング(Flux Fill)が適する場面

一方で、インペインティングのほうが向いているケースもあります。

  • 特定の小さな領域だけを精密に書き換えたいとき(スイッチプレートやコンセントの位置変更等)
  • 変更範囲を厳密にコントロールしたいとき
  • 周囲に一切影響を与えずに1か所だけ修正したいとき

Flux Fill(2026年4月現在、Flux.1 Fill dev)は従来型のマスクベース編集に強みがあり、境界の精密制御が必要な仕上げ工程に向いています。

マスク併用Kontext Inpaintingという第3の選択肢

2026年4月現在、コミュニティではKontextにマスクを併用する「Kontext Inpainting」ワークフローも登場しています。CivitaiやGitHub(ZenAI-Vietnam/ComfyUI-Kontext-Inpainting等)で配布されており、テキスト指示の柔軟さとマスク指定の精密さを両立できる点がメリットです。

現場では、まずFlux Kontextで大まかなマテリアル変更を行い、細部の微調整にKontext Inpaintingやインペインティングを使う「2段階フロー」が効率的です。全体の方向性をテキスト編集で素早く固めてから、気になる箇所だけマスクで仕上げるイメージになります。

まとめ

Flux KontextとComfyUIを組み合わせれば、建築パースのマテリアル変更・家具差替え・照明調整をテキスト指示だけで実行できます。壁材や床材の変更、家具の入れ替え、照明条件の切り替えまで、従来は3DCGソフトで時間のかかった作業を大幅に効率化できます。

バリエーション提案資料の作成では、1枚のパースから短時間で複数案を生成し、クライアントとの打ち合わせをスムーズに進められます。Dev/Pro/Maxの使い分けや、Flux Depth・LoRAとの併用、Kontext Inpaintingという第3の選択肢まで押さえておけば、建築実務のあらゆる場面で柔軟に対応できます。

Flux Kontextの基本操作を押さえたうえで、建築実務の現場でぜひ活用してみてください。

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この記事を書いた人

橘 美咲のアバター 橘 美咲 PERSC 専任講師

「CADは裏切らない。昨日引けなかった線が、今日は引ける。それが楽しいの」

元・完全未経験の文系女子。新卒で入った建築現場で「図面が読めない」と絶望し、悔し涙を流しながらCADを独学で習得した過去を持つ。 その後、設計事務所、ゼネコンを経てフリーランスへ転身。現在はPERSCにて「現場で本当に使える技術」を伝授する鬼(?)コーチとして活動中。 「線一本にも意味がある」が口癖。趣味は、完成した建物を見上げながらのビールと、深夜の猫動画巡回。

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