Blender建築パース マテリアル6テクニック|タイル・壁紙・ファブリック・植栽・夜景の質感設定

建築パース制作でいざBlenderのマテリアルを触り始めると、コンクリ・木目・ガラスといった主要素材は専用解説が見つかる一方、床タイル・壁紙・ファブリック・植栽・夜景の発光体といった「現場で頻繁に出てくるその他の素材」の設定値が散らばっていて、毎回ネットを探し回ることになりがちです。

この記事では、建築パースで使用頻度が高いタイル・石材/壁紙/ファブリック/植栽の4素材に加え、夜景パースに必要な発光マテリアル(エミッシブ)と、建物全体の素材を一括で管理する機能であるMaterial Slotsまで、合計6テクニックの実務値と落とし穴をまとめました。

記述は Blender 4.5 LTS(2025年7月リリースの長期サポート版)と最新の Blender 5.1 を基準にしています。テクスチャ素材はambientCG(CC0ライセンスで2,000点以上)やPoly Haven(CC0、4K/8K対応)の無料PBRライブラリから調達できます。はじめての方はまずこの2サイトを押さえておくと安心です。なお、コンクリート・木目・ガラスは専用解説があるため、この記事では深入りせず該当記事へ案内する形にしています。

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初めての建築3DCGパース

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目次

床タイル・石材の光沢設定

床タイル・石材の質感は、Roughness(表面の粗さ)とSpecular IOR Level(ハイライト強度)の2軸で決まります。とくにMetallic(金属度)を0に固定することが石材を金属化させない最重要ルールです。

素材 Roughness IOR Metallic
磨き大理石 0.05〜0.15 1.5〜1.6 0
マット大理石 0.3〜0.5 1.5〜1.6 0
磁器タイル(光沢面) 0.05〜0.1 1.5〜1.6 0
磁器タイル(マット面) 0.5〜0.7 1.5〜1.6 0
テラコッタ 0.6〜0.8 1.5〜1.6 0
ガラスタイル 0.05〜0.1 1.5 0

磨き大理石・光沢タイルの設定値(Roughness・IOR)

光沢系の床材は、Roughnessを下げてハイライトを残しつつ、Metallicを0で固定するのが基本セットです。磨き大理石ならRoughness 0.05〜0.15、IOR 1.5〜1.6が目安になります。磁器タイル(ポーセレン)の光沢面はさらに低めの0.05〜0.1、マット面は0.5〜0.7まで上げて光沢を抑えます。

ここで初心者が最も引っかかるのが、IORを上げれば反射が強くなる、という直感的な操作です。石材類でIORを1.8以上に上げると、表面が金属のような異常反射を示し、大理石が鏡面金属に見える失敗が起きます。石材・タイル類はIORを1.5〜1.7の範囲に必ず固定し、ハイライトを強めたいときは後述のSpecular IOR Levelを使うのが正解です。

なお Principled BSDF v4 系(Blender 4.0 以降)では、Transmission(透過)用のIORとは別に、Specular IOR Level というハイライト強度の独立パラメータがあります。両者の名前が似ていて混同しやすいですが、石材の光沢を強めたいときに触るのは Specular IOR Level のほうです。Transmission用のIORは透過率に関わるため、不透明な石材で動かす意味はありません。

実務では数値手打ちよりも、Color Map・Roughness Map・Normal Map の3点セットのPBRテクスチャを読み込んだほうが、現実的な揺らぎが出てクオリティが安定します。テクスチャ4〜5枚を1枚ずつ接続するのは手間がかかるため、Blender 標準同梱の Node Wrangler アドオン(Edit > Preferences > Add-onsから有効化)の Ctrl+Shift+T ショートカットを使って一括接続するのが、海外archviz実務の標準ワークフローです。Color/Roughness/Normal/Metallicが自動でマッピングされるため、テクスチャ調達後の作業時間が大きく短縮されます。

タイリング問題の対処(Mapping Nodeとスケール調整)

同じテクスチャがそのまま繰り返されると、人間の目は規則性を即座に検知して「CGっぽさ」を感じます。建築パースでタイル・石材を広い床に貼る場合は、必ずタイリング対策をセットで考えてください。

最初の調整ポイントはスケールです。Mapping NodeのScaleで、テクスチャ1枚あたりのサイズを実寸メートル換算で指定します。たとえば60cm角のタイルなら、Scale X/Y を 0.6 に設定すれば、1ループが現実の60cmと一致します。スケールが大きすぎる(パターンが豆粒)と質感が崩れ、小さすぎる(1枚で床全体)とテクスチャの解像度不足が目立つので、必ず実寸を基準に逆算してください。

それでも繰り返しが目立つときは、隣接タイルに微妙な色ムラを足します。Object Info(Random出力)→ Hue/Saturation → Mix Color の接続で、タイルごとに色相を少しずつシフトさせると、規則性が大きく緩和されます。

さらにプロ品質に近づけたいときは、回転ランダム化(0°/90°/180°/270°)で同一テクスチャの向きをタイルごとに変える手法が有効です。Blender公式拡張の Procedural Tiles(無料)や、有償の Ceramic Tiles Randomizer などのノードグループを使うと、位置と回転を一括ランダム化できます。

最高品質を狙うシーンでは、Adaptive Subdivision + Displacement Map の組み合わせも選択肢に入ります。Blender 4.5 LTS でUVサブディビジョン・モーションブラー対応が改善され、production用途で現実的に使えるようになりました。Displacement Map で目地の凹凸まで実体化できるので、玄関・ロビーのアップカットでは効果が大きい設定です。

UV展開が必要かどうかの判断は、形状で決めます。平面の床・壁ならGenerated座標やBox投影で済みますが、複雑な曲面ではUV展開が必須になります。タイル・石材のスケール調整に関わるUV展開の手順は、建築パースで使えるBlenderのUV展開・テクスチャマッピングで解説しています。

壁紙・クロスの質感再現

壁紙は面積が広く、視線が必ず触れる部位のため、設定値の精度が建物全体の質感印象を決めます。素材タイプ別のRoughnessを正しく設定し、Normal Map で凹凸を演出するのがポイントです。

ビニールクロス・布クロスのRoughness設定

ビニールクロス(無地・ローラー仕上げ)はRoughness 0.7〜0.9 が基本です。これより下げると表面に光沢が出すぎて、住宅用のクロスではなくプラスチック板のような印象になります。

凹凸織物クロス・布張りパネルは0.85〜0.95 まで上げて、Normal Map で布目やエンボス模様を加えます。Roughnessが高い素材ほど、Normal Map による表面の凹凸表現が見た目に効くため、Normal Map をオフにすると「ベタっとした壁面」になりがちです。

例外として薄地・光沢クロス(ホテルの一部や商業空間で使う光沢系壁紙)は0.3〜0.5 の低めに設定します。メタリック箔貼りタイプの特殊壁紙に限り、わずかにMetallicを足すケースがあります(0.05程度、入れすぎ厳禁)。一般的な光沢ビニールクロスはMetallic=0のまま運用するのが原則です。

壁面は1枚の面積が広く、Roughness Map の変化が少ない無地クロスでも、Normal Map による微細な表面粗さを必ず入れたほうが自然に見えます。光がムラなく反射する平面は、CG的な単調さを生む原因になります。

タイリング密度の調整(実際の壁紙リピートに合わせる)

国内の住宅用壁紙は、横幅が約92cm(クロス幅)でリピートする規格品が主流です。商業用クロスやインポート柄では幅53cmや52cm程度のリピートもあります。CGで壁紙を貼るときは、Mapping NodeのScaleをこの実寸に合わせて逆算してください。

スケールが過小(パターンが大きすぎ)だと壁紙のデザイン感が出ず、安っぽい印象になります。逆に過大(豆粒状)だと模様が認識できず、ただのテクスチャノイズに見えます。実寸ベースで設定すれば、カメラを近づけても引いても自然な見え方が維持されます。

無地クロスの場合は、テクスチャを使わずColorを直打ちするだけで十分なケースもあります。Roughness Mapが必要なほど表面の差がない無地壁紙では、Color + Normal Map(凹凸感のため)のシンプル構成で素材として成立します。

ファブリック素材の設定(カーテン・ソファ・クッション)

布素材の最重要ルールは、Roughnessを高くする・Metallicを0にする・Sheenを活用するの3点です。これを守るだけで、ソファ・カーテン・クッションがプラスチックに見える定番の失敗を回避できます。

素材 Roughness Sheen Weight
ソファ布地 0.85〜0.95 0〜0.3
ベルベット 0.90〜1.0 0.5〜0.8
シルク 0.2〜0.4 0.3〜0.5
リネン 0.7〜0.9 0.1〜0.3

ソファ・クッション布地のSheen設定

ソファやクッションの張地は、Roughness 0.8以上 が基本になります。これより下げると、布の繊維感が消えてプラスチックの質感に近づくため、ファブリック設定で最も多い失敗パターンです。

Principled BSDF v4 系(Blender 4.0以降)では、Sheen Weight が独立スロットになりました。ベルベットや高密度の織物では、Sheen Weight を 0.3〜0.8 に設定すると、布特有の縁にうっすら光が回り込む光沢感(リム的な質感)が再現できます。

さらに v4 系で独立パラメータ化された Sheen Roughness は、0.3〜0.5 を目安に設定するのがおすすめです。Sheen Roughness の値が大きいほどSheenの光沢感が表面全体に広がり、ベルベットやスエードの再現精度が上がります。スエードのソファや、起毛感のあるクッション材を表現するときに調整すると効果が見えやすいパラメータです。

Metallic=0は絶対ルールです。ファブリックに少しでも金属度を入れると、布が金属箔のような不自然な光沢を持ち、人物・植栽と並べたときに違和感が際立ちます。

具体的な目安値としては、一般的なソファ張地はRoughness 0.85〜0.95、ベルベット 0.9〜1.0、リネン 0.7〜0.9、シルク 0.2〜0.4。シルクだけは例外的に低めです。

半透過カーテン(レースカーテン)の設定

レースカーテンや薄地ドレープは、Transmission Weight 0.3〜0.7 と Roughness 0.3〜0.5 の組み合わせで再現します。Transmissionで物理的に光が透過し、Roughnessで透過光をやわらかく拡散させる、という考え方です。

ここで使い分けたいのが、Alpha透過(Blend Mode: Alpha Hashed や Alpha Clip)と Transmission Weight(Principled BSDFの物理透過)です。レースの細かい網目を再現したい場合はアルファマップを使った Alpha Clip(描画負荷が軽い)が向き、薄手シルクのような半透明の連続面なら Transmission Weight のほうが自然です。

ドレープカーテン(厚地・遮光カーテン)は透過なしで、Roughness 0.7〜0.9 のみで十分です。Transmissionをわずかに入れる人がいますが、厚地カーテンでは光は透けないため、Roughnessのみで質感をコントロールするのが基本です。

植栽・観葉植物のマテリアル

植栽は建築パースで最も「CGっぽさ」が出やすい要素です。葉の透過設定とSubsurface Scattering(半透過散乱)の使い分けが、自然な植物表現の分岐点になります。

葉の透過設定(Alpha ClipとAlpha Hashed)

植物の葉は、葉の形状をアルファチャンネル付きテクスチャで定義するのが標準です。Blend Modeは Alpha Clip が描画が最速で、まずはAlpha Clipから始めるのが推奨です。

対して Alpha Hashed は、Cycles では好みで選んで問題ない一方、旧 Eevee では描画順の乱れが出やすく、葉が手前後で前後関係を間違って表示される現象が起きていました。Eevee Next(Blender 4.2 以降)では Alpha Hashed の品質が向上し、Cycles と挙動を揃えやすくなっています。それでも乱れが出る場合は、Alpha Clip に切り替えるのが安全策です。

葉面のRoughnessは 0.4〜0.6、茎・幹は 0.7〜0.9 が目安です。葉を過剰にマットにすると、光を受けた艶感が消えてプラスチック観葉植物のように見えるため、0.4〜0.6 のレンジを守ってください。

建築パース向けの植物アセットは、BlenderKit(無料・有料あり)に多数登録されています。屋内観葉植物・街路樹・低木など、用途別に既製マテリアル付きのアセットが揃っているため、ゼロから作るより既製アセットを活用したほうが時間効率が良いケースが大半です。

SSSで葉の透過感を演出する(逆光シーン向け)

逆光で葉が透けて緑色に輝くシーンは、Subsurface Scattering(SSS)で再現します。Subsurface Weight 0.1〜0.3、Subsurface Scale 0.05〜0.1m を目安に設定すると、薄い葉を光が透過したような自然な質感が出ます。

Subsurface Colorは、葉の薄緑〜黄緑(明度高めの緑)を指定します。Diffuse Colorと同じ濃い緑にすると効果が薄まるため、SSS用には別途明るめの色を設定するのがコツです。

Eevee Next(Blender 4.2 以降)ではSSSの精度が改善され、Cycles に近い結果を得やすくなりました。それ以前の旧 Eevee ではSSSが正確に計算されないため、Translucent BSDFを Diffuse BSDF にMixして逆光透過を疑似的に再現する代替手法が一般的でした。Blender 4.2 以降を使っているなら、まずはPrincipled BSDFのSubsurfaceパラメータを試して、品質が足りない場合のみTranslucent BSDFのMixを検討する流れで問題ありません。

SSSの効果がよく見えるのは、屋外バルコニーの植栽・エントランスのグリーン・庭園パースなど、日光が斜めから差し込む逆光〜半逆光のシーンです。室内の観葉植物では効果が控えめになるため、シーンの光条件に応じてSSSの強さを調整してください。

夜景パース向けエミッシブマテリアル

夜景パースの発光体は、設定値そのものよりファイアフライ(白い孤立点ノイズ)の対策が成否を分けます。Emission Strengthの目安と、Clamp設定の優先順位を押さえてください。

用途 Emission Strength
一般室内蛍光灯・LED天井灯 1.0〜5.0
ペンダント・ダウンライト 3.0〜10.0
夜景LEDテープ・間接照明 2.0〜10.0
ネオンサイン・看板 5.0〜20.0

Emissionの設定方法と強度目安

エミッシブマテリアルは、Principled BSDF の Emission Color(発光色)と Emission Strength(強度)を組み合わせて設定します。Blender 4.0 以降では Emission Weight が統合的な調整スロットとして加わり、発光全体のオン・オフがしやすくなりました。

強度の目安としては、一般的な室内蛍光灯やLED天井灯で 1.0〜5.0、ペンダント・ダウンライトで 3.0〜10.0、夜景のLEDテープや間接照明で 2.0〜10.0、ネオンサインや看板で 5.0〜20.0 が現実的なレンジです。

ここで重要なのが、「見た目で発光して見える物体」と「実際に周囲を照らす光源」を切り分ける考え方です。エミッシブマテリアルは光って見える物体を再現する役割を持つ一方、実際にシーンを照らす光量が必要なら Area Light を別途設置するのが実務標準です。夜景パースでは、ペンダントの照明カバーにEmissive・周囲の落ち影は Area Light、という分担が安定します。

Blender 4.0 以降の Light Linking(Cycles 限定)を使うと、エミッシブメッシュが照らす対象オブジェクトを限定できます。たとえば、室内のペンダントが意図せず外壁にも光を漏らしてしまう状況で、Light Linkingで照射対象を室内オブジェクトのみに絞れば、夜景外観で光漏れが抑えられます。複雑な照明計画パースでは精緻な光制御が可能になる便利な機能です。

ファイアフライ(白点ノイズ)の対処法

ファイアフライは、Emission Strengthがシーン全体の光量に対して突出して高いときに発生する、孤立した明るい白点ノイズです。発光体を強く設定するほど起きやすく、夜景パースで頻繁にぶつかる問題です。

対策①は Clamp Indirect の優先調整です。Render Properties > Sampling > Clamping > Indirect Light(Blender 4.x のパス)を、10.0 を起点としてファイアフライが消えるまで徐々に下げていきます。実用域は 5.0〜10.0 で、これより下げるとシーン全体の間接光が弱くなり室内が暗くなるため、消えた時点で止めるのがコツです。Indirectは反射・屈折のバウンス光由来のファイアフライを抑える主役で、ハイライトを残しつつノイズだけ消せます(参考: Blender Guru|7 Ways to Get Rid of Fireflies)。

対策②は Clamp Direct の最後の調整です。Clamp Direct は通常そのままで運用し、Clamp Indirect を下げても消えないファイアフライがある場合のみ 3.0〜5.0 まで下げます。Clamp Direct を最初から下げてしまうと、ネオン直射やエミッシブメッシュのハイライトが潰れて夜景の見せ場が消えるため、最後の手段として扱うのが安全です。

対策③として、Emission Strengthを下げて、周囲への照明効果を Area Light に分担させる方法もあります。発光体を強くしすぎているケースでは、これだけでファイアフライが大きく減る場合があります。

対策④は Caustics(反射・屈折コースティクス)のオフです。Render Properties > Light Paths > Caustics の Reflective / Refractive をオフにすると、ガラス越しのファイアフライが消えることがあります(屈折コースティクスが必須でないシーンに限る)。

ライティングとマテリアルの責任分界点について、より詳しい光の設計はBlenderのライティング技術|建築パースに最適な光の設定で解説しています。

複数マテリアルの管理(Material Slots)

ここまでは個別素材ごとの設定値を扱ってきましたが、ここからは建物全体に複数の素材を割り当てる管理機能の話に移ります。Material Slotsは、1つのメッシュオブジェクトに複数のマテリアルを同居させる仕組みで、建築モデルのように1棟に何十種類もの素材が必要なシーンで威力を発揮します。

Material Slotsの基本操作

操作手順はシンプルです。Material Propertiesの「+」ボタンでスロットを追加し、選択中のスロットに新規マテリアルを作成します。次にEdit ModeでAssignしたい面を選択し、Assignボタンを押すと、その面に選択中のスロットのマテリアルが割り当てられます。

建築実務の典型的な使い方は、外壁メッシュ1つに「タイル貼り面」「コンクリート面」「サッシ枠」を同居させる構成です。1メッシュで完結するため、後からタイル貼り範囲を変えるときも、Edit Modeで面選択 → Assignし直すだけで済みます。マテリアルごとにメッシュを分けてしまうと、後修正のたびにメッシュ分割と結合を繰り返すことになり、運用が破綻します。

さらに高度な使い方として、Solidify Modifier との組み合わせが海外archvizでは定番ワークフローになっています(参考: Blender 3D Architect|Solidify Modifier for non-destructive wall materials)。Slot 0 を内壁マテリアル(塗装)、Slot 1 を外壁マテリアル(タイル・サイディング)、Slot 2 を切断面の rim(断面の縁取り)に割り当てる構成です。この3スロット構成にすると、建築壁を1メッシュで完結させながら、壁厚と材料を非破壊で後から差し替えられます。リフォーム前後の比較カットや、材料替えのバリエーション展開に強い構成です。

スロット数は20〜30以内が実務目安です。これを超えるとビューポート表示が重くなり、マテリアル一覧の見通しも悪くなります。同じマテリアルを複数オブジェクトに使い回したい場合は、スロットで追加するのではなく、リンクマテリアル(Object/DataのLink切り替え)を活用してください。

マテリアル変更の効率化(リンクと一括更新)

マテリアルのUser数(参照元の数)が複数になっている場合、1箇所のマテリアル設定を変更すると、すべての参照先に自動反映されます。Blenderのデータブロック共有という仕組みで、「外壁タイル共通」「コンクリート共通」など命名規則を決めておけば、後からの一括調整が非常に楽になります。

無料アドオンの Material Utilities を使うと、複数オブジェクトへの一括割り当てや、未使用マテリアルの一括削除が効率化できます。大規模シーンでマテリアルが100種類を超えてきたタイミングで導入すると、整理コストが大きく下がります。

よく使う素材設定は、ノードのグループ化(Ctrl+G)でノードグループとして保存しておくと再利用が楽になります。たとえば「PBR標準セット(Color+Roughness+Normal を Node Wrangler で繋いだ構成)」をノードグループ化しておけば、新しいプロジェクトでもImportするだけで同じ品質の素材を量産できます。

なお、ノード操作の詳細な使い方はBlenderのノードエディターを活用したマテリアルの作り方で解説しています。

6素材についての編集部の見解

公式ドキュメントを読み解き、海外archvizコミュニティのチュートリアル・レビューを横断して見ると、6素材それぞれに「優先して直すべきポイント」がはっきり分かれていることが見えてきます。編集部の見立てを、設定の難易度・改善幅・落とし穴の3軸でまとめます。

海外レビューの共通見解では、6素材のうち改善幅が大きいとされるのが床タイル・石材とファブリックです。床タイルはNode Wranglerの一括接続を覚えるだけで作業工程が大幅に短縮され、回転ランダム化を取り入れるとタイリングの規則性が消えて、写真に近いレベルまで質感が上がるという報告が多数見られます。ファブリックも、Roughness 0.8以上 + Sheen Weight + Metallic=0 の3点を機械的に守るだけで、家具がプラスチックに見える定番の失敗をほぼ避けられるとされています。

コスト・実用面では、テクスチャ調達を ambientCG と Poly Haven で完結させると、素材の費用がゼロで実務品質に到達できる設計になっています。BlenderKit の植栽アセットを組み合わせれば、屋内パース1案件分の素材コストを実質ゼロに抑えられる構成です。

制約・注意点として、エミッシブとSSSはバージョン依存が強い点に注意してください。Light Linkingは Blender 4.0 以降の Cycles 限定、Eevee Next のSSS改善は Blender 4.2 以降のみ、Adaptive Subdivision の本格的な実用域は Blender 4.5 LTS から、というように機能ごとに対応バージョンが異なります。古い Blender 3.x 系で作業している場合は、この記事の手法の一部が使えないケースがあるため、まずは Blender 4.5 LTS への更新を検討するのが現実的でしょう。

推奨ユーザー像としては、建築パース実務でBlenderを使いこなしたい設計事務所スタッフ・フリーランスパース制作者・建築学生に向いた内容です。コンクリ・木目・ガラス・PBR概念の専用解説と組み合わせて読むと、Blenderマテリアルの建築実務スキルがひととおり揃います。

6素材を整えた先に広がる景色

6素材の設定値を機械的に守れるようになると、建築パースの仕上がりが「CG然とした絵」から「実物の質感をもつ絵」に切り替わります。ここから先のスキルアップで、制作シーンがどう変わっていくかを描いておきます。

最初の変化は、案件あたりの制作時間が短くなることでしょう。素材ごとにRoughnessや IORを試行錯誤していた段階から、目安値を即座に当てはめられるレベルへ進むと、マテリアル設定の工程が大幅に短縮されます。住宅パースの内観1カットなら、素材設定の試行錯誤に1日かかっていた工程が、半日以内で済むスピード感まで圧縮できます。

次に、複数素材の組み合わせ判断が身につきます。Material Slotsで建物全体を1メッシュ管理する習慣がつくと、外壁・内装・サッシ・カーテンの全素材を見渡しながら、シーン全体の色温度や質感バランスを調整できるようになります。素材を1つずつ独立して設定していたフェーズでは見えなかった「シーン全体のトーン設計」が、実務レベルで考えられるようになるでしょう。

さらにその先には、AIレンダラーや D5 Render・Twinmotion など、他ツールとの連携が見えてきます。Blenderで素材を作り込み、レンダリングだけ別ツールに渡す、というハイブリッドワークフローが、海外archvizでは2026年現在の主流の1つになりつつあります。Blenderのマテリアル設定スキルは、そのハイブリッド構成の土台になる技術です。

逆に、6素材の基本を覚えずにいきなり別ツールへ移行すると、「PBRの考え方が身についていないため、別ツールでも同じ失敗を繰り返す」という遠回りに陥りがちです。Blenderで素材設定の判断ができる状態を作ってから他ツールに広げると、習得速度が大きく変わります。

まとめ

建築パースの実務頻出6素材について、Blenderのマテリアル設定値と落とし穴を整理しました。要点は次の5つです。

  1. 床タイル・石材は、Roughness(光沢系0.05〜0.15、マット系0.3〜0.7)とIOR(1.5〜1.7に固定)の調整、タイリングスケールの実寸換算が品質の決め手になります。
  2. 壁紙はビニールクロス0.7〜0.9、布クロス0.85〜0.95を目安に、Normal Mapで凹凸を必ず入れます。タイリングは実寸(クロス幅92cmまたは52cm前後)に合わせます。
  3. ファブリックはRoughness 0.8以上・Metallic=0・Sheen Weight 0.3〜0.8の3点を守れば、布がプラスチックに見える定番の失敗を回避できます。
  4. 植栽は Alpha Clip + Roughness 0.4〜0.6で基本完成、逆光シーンには Subsurface Scattering を Subsurface Weight 0.1〜0.3で追加します。
  5. エミッシブはファイアフライ対策の Clamp Indirect 優先(10.0から下げる)を先に確認し、Material Slotsは Solidify Modifier との組み合わせで建物全体管理に使えます。

6素材をひと通り設定できるようになっても、建物全体のクオリティ管理(素材一貫性・ライティングとの連携)を体系的に身につけるには、案件想定の課題に取り組める学習環境が近道になります。学習リソースの選び方はBlender入門・始め方ガイドで解説しています。

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CONTENTS

3 LESSONS


基礎編① インストール&7項目の初期設定

Blenderの導入から制作に必要な基本設定

基礎編② 画面構成と基本的な操作方法

未経験でも迷わない画面の見方と操作の基本

実践編① 太陽光の入る白い部屋

建築パースを1作品完成させるまでを体験


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体験カリキュラム限定の3大特典


実践編完成データ(.blend)

ショートカット・チートシート

マテリアル ライブラリセット

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