建築パースで使えるBlenderのモデリングツール5選|使う場面と設定値がわかる実務ガイド
Blender 5.1(2026年3月17日)と長期サポート版 4.5 LTS(2025年7月)では、Boolean のソルバーが Manifold / Float / Exact の3種から選べるようになりました。Geometry Nodes による手すり・フェンスの手続き型生成も海外の建築実務で浸透しています。新しい機能が増えるほど「最初に押さえるべき定番ツール」が見えにくくなりがちです。
この記事では、建築パース制作で日常的に使う Blender のモデリングツールを5つ(Loop Cut・Extrude・Boolean・Bevel・Array Modifier)に絞り、使う場面と建材別の設定値(Bevel 幅・Array 間隔・Boolean ソルバー)とあわせて解説します。
操作の暗記ではなく「どの場面でどのツールを使うか」という判断基準に重点を置きました。4ツール(直接構築軸)を習得した先には Geometry Nodes(ルール生成軸)への進み方があり、2026年標準の学習ロードマップも示します。
建築モデリングで「どのツールをいつ使うか」が制作効率を決める
建築モデリングは汎用 3DCG とは違い、直線・直角・繰り返し・開口部という4つの特徴を持ちます。この特徴に対応する5つのツール(Loop Cut・Extrude・Boolean・Bevel・Array)を覚えると、Blender の膨大な機能の8割は使いこなせるようになります。
| ツール | 主な使い場面 | 建築での使用頻度 |
|---|---|---|
| Edit Mode(Vertex/Edge/Face Select) | すべてのモデリング操作の基盤 | ◎ |
| Loop Cut | 壁に開口位置の分割線を入れる/床面の区画分け | ○ |
| Extrude | 平面図から壁・床・天井を立体化/フレームに厚み付与 | ◎ |
| Boolean Modifier | 窓・ドアの開口を壁から差し引く/斜め・円形の開口 | ◎ |
| Bevel/Bevel Modifier | サッシ・コンクリート角・建具のエッジ処理 | ◎ |
| Array Modifier | 格子・ルーバー・手すり子の繰り返し量産 | ○ |
建築モデリング特有のツール選択の考え方
建築モデリングの形状は、汎用 3DCG のキャラクターや有機物とはまったく違います。直線と直角が大半を占め、窓・ドアという開口部があり、格子や手すり子のような繰り返しパターンが頻出します。
Blender の膨大なツールのうち建築で本当によく使うのは、Loop Cut・Extrude・Boolean・Bevel・Array Modifier の5つに集約されます。Edit Mode を加えれば、建築パースのモデリングの8割はカバーできます。
ツール名やショートカットを順番に暗記するのではなく、目の前の作業から逆引きでツールを選べる状態を作るのがゴールです。「窓を開けたいから Boolean」「手すり子を並べたいから Array」と作業ベースで選べるようになると、判断時間がほぼゼロに近づきます。
非破壊ワークフローという前提
5つのツールのうち Boolean・Bevel・Array は Modifier として使えます。「適用(Apply)」するまでメッシュを書き換えないため、開口位置やエッジ幅をあとから何度でも調整できます。
実務では、Boolean を Apply して確定させると、後で窓を 100mm 上に動かしたいときに壁ごと作り直す羽目になります。Modifier のまま残しておけば、対象オブジェクトを移動するだけで開口位置が追従します。
建築は「設計変更が前提」の制作です。Modifier を残す非破壊運用ができているかどうかが、実務の効率を大きく左右します。施主のフィードバックや現場の状況変化に追従できるかも、ここで決まります。
4ツール(直接構築)と GN(ルール生成)の使い分け
この記事の対象である4ツール(Edit Mode/Extrude/Boolean/Bevel/Array/Modifier 系)は「直接構築」の系統で、カメラから見える1個1個を直接組み立てる方針です。
対する Geometry Nodes(GN)は「ルール生成」の系統で、ノードで「100個・規則的・パラメトリック」を量産します。
選び分けの目安は次のとおりです。1個だけ作る・個別調整が必要なら4ツール、大量・規則的・パラメトリックなら GN を選びます。
両者は補完関係で、この記事の5ツールを習得してから GN に進む学習ロードマップが現実的です。GN の詳細はBlender ジオメトリノード 建築完全ガイド|パラメトリック建築の基礎から実践で解説しています。
Edit Mode の使い方|建築モデリングの操作基盤
Edit Mode はメッシュの内部(頂点・辺・面)を編集するためのモードで、すべてのモデリング操作の起点になります。Tab キーで Object Mode と切り替え、選択モード3種(Vertex/Edge/Face)を作業ごとに使い分けます。
| 選択モード | ショートカット | 建築での主な使い場面 |
|---|---|---|
| Vertex Select(頂点選択) | 1 キー | 平面図のトレース/頂点を実寸位置に揃える |
| Edge Select(辺選択) | 2 キー | Bevel をかけるエッジ/Loop Cut の対象選択 |
| Face Select(面選択) | 3 キー | Extrude で立体化する面/Inset でフレームを作る面 |
Object Mode と Edit Mode の切り替え
Blender を開いたばかりの状態は Object Mode です。Object Mode では、オブジェクト(壁・床・家具など)の単位で移動・複製・回転を行います。
メッシュの内部(頂点・辺・面)を編集するときは Edit Mode に入る必要があります。切り替えは Tab キー一発で、迷ったら画面左上のモード表示を確認します。
初心者がよく詰まるのが「Edit Mode から戻れない」状態。ほとんどは Tab キーを押し忘れているケースです。モード表示を確認する習慣をつけておくと迷いません。
Vertex/Edge/Face Select Mode の建築での使い分け
Edit Mode の中では、頂点・辺・面のどれを選択対象にするかを切り替えます。建築モデリングでは「面を Extrude する」「辺に Bevel をかける」のように、操作とセットで選択モードが決まります。
例えば、平面図から壁の高さを立ち上げる作業では、床面のメッシュを Face Select(3 キー)で選択し、E キーで Extrude を実行、Z キーで Z 軸方向に限定、2.4 と入力して Enter で天井高 2,400mm の壁が立ち上がります。
サッシのアルミフレームの角に丸みを付ける場面では Edge Select(2 キー)に切り替えてフレーム外周の辺を選択し、Ctrl+B で Bevel をかけます。「何を編集したいか」を意識すれば、選択モードは自然と決まります。
Loop Cut|開口位置を正確に定義する
Loop Cut(Ctrl+R)は連続したメッシュにループ状の分割線を入れるツールで、壁に開口位置を定義する場面と床面の区画分けで頻出します。Boolean との使い分けは「形状の単純さ」と「開口数」で決めます。
Loop Cut の基本操作(Ctrl+R)
Ctrl+R で開始すると、カーソルを辺の上に重ねるとオレンジ色のプレビューラインが表示されます。クリックで仮配置、もう一度クリックまたは右クリックで中央に確定します。クリック前にスクロールホイールで分割線の本数を増減できます。
窓の開口を Loop Cut で作る場合、上下の高さ位置に2本、左右の幅位置に2本の合計4本が必要です。
位置を正確に決めたいときは、確定前に G + X(または Y / Z)を続けて入力し、数値で移動します。例えば G + Z + 1.2 と打てば、その辺に沿って 1,200mm 上にスライドします。床から窓下端までの高さを 800mm にしたいなら、Loop Cut 直後に G + Z + 0.8 と入力する流れです。
Boolean との使い分け基準
Loop Cut と Boolean は「壁に開口を作る」目的が同じため、どちらを使うか迷う場面が出てきます。判断基準は開口の数と形状で分かれます。
開口が1〜3か所、かつ長方形のような単純な形状なら、Loop Cut で4本の分割線を入れて内側の面を X キーで削除する手順が早く済みます。トポロジーもクリーンに保てます。
円形や斜めの開口、または窓が縦横に並ぶようなファサードでは、Boolean で別オブジェクトを差し引く方が手数を大きく減らせます。後から開口サイズを変更したい可能性が高いなら、Modifier のまま残せる Boolean のほうが修正対応にも強くなります。
迷ったら「形が単純で数が少なければ Loop Cut、複雑か数が多ければ Boolean」の二択で決めると、判断が速くなります。
Extrude|平面から立体を生み出す建築の基本操作
Extrude は選択した面を法線方向に押し出すツールで、床面から壁を立ち上げる建築の基本操作です。Extrude Region・Extrude Along Normals・Solidify Modifier の3つを場面で使い分けます。
Extrude Region で壁・床を立体化する(E)
Extrude Region(E キー)は、選択した面を法線方向(面に対して垂直方向)に押し出します。建築の基本操作である「床面から壁の高さを立ち上げる」がこの典型です。
手順は次のとおりです。
- 平面図をトレースして床面のメッシュを作成
- Edit Mode で Face Select(3 キー)に切り替えて床面を選択
- E キーで Extrude
- Z キーで Z 軸方向に限定
- 2.4 と入力して Enter で天井高 2,400mm の壁ができる
数値入力では単位を打つ必要はありません(Metric 設定済みなら m 単位で解釈されます)。「E → Z → 数値 → Enter」の順を体に染み込ませると、建築モデリングのリズムが整います。
Extrude Along Normals でフレームに均一な厚みをつける
通常の Extrude Region と並んで建築でよく使うのが Extrude Along Normals(Alt+E から選択)です。複数の面を法線方向に均一に押し出すモードで、傾斜面や曲面でも厚みが揃います。
窓枠を作るとき、開口の内側に Inset(I キー)で内側フレーム面を作成し、そのフレーム面を選択して Alt+E から Extrude Along Normals を選び、0.03 と入力すれば 30mm 厚の窓枠フレームが完成します。
フローリングの目地、窓枠フレーム、庇の張り出し、軒の見付け面など、「複数の面に同じ厚みを付与したい」場面はすべてこのツールが最短になります。
Solidify Modifier という別解
壁の立ち上げにはもう一つ、Solidify Modifier(厚みを付与する非破壊モディファイア)があります。平面のメッシュに対して Solidify を追加すると、メッシュの中心線を基準に左右へ均等に厚みが生まれます。
実務では、間取り図の壁芯(中心線)をなぞって 2D メッシュを作り、Solidify で壁厚 150mm を付与する手順が便利です。後から「外壁だけ 200mm に厚くしたい」となっても、Modifier の Thickness 値を変えるだけで再計算されます。
海外の建築向け Blender 事例では、この中心線+Solidify による非破壊壁モデリングが定番になっています。
Extrude で壁を立ち上げるか Solidify で厚みを付けるかは、設計変更の頻度で選び分けると無理がありません。設計が固まっている案件は Extrude、まだ壁厚や間取りが揺れる案件は Solidify が向きます。詳細はBlenderの建築モデリング手順6ステップ|壁・床・建具から組み立てる基本で解説しています。
Boolean Modifier|窓・ドア開口を差し引く
Boolean Modifier は壁から窓・ドアの開口を差し引く場面で建築モデリングの最重要ツールです。3種類のソルバー(Manifold/Float/Exact)を場面で使い分け、Modifier のまま残す非破壊運用が定石になります。
| ソルバー | 速度 | 安定性 | 前提条件 | 建築での使いどころ |
|---|---|---|---|---|
| Manifold(4.5 LTS+ 標準推奨) | 非常に速い(Exactの約100倍) | 高い | 閉じた(manifold)メッシュ | Solidify で壁厚を付けた標準的な開口処理 |
| Float | 速い | 高い | 非多様体メッシュにも対応 | Manifold が失敗する複雑形状の救済策 |
| Exact | 速い(5.1 で最大35%高速化) | 高い | 閉じていないメッシュにも対応 | レガシーデータ・救済策 |
Boolean Difference で開口を作る手順
Boolean Modifier は、2つのオブジェクトを Union(結合)・Difference(差し引き)・Intersect(交差)の3演算で組み合わせます。建築では Difference で「壁から窓・ドアの開口を抜く」用途がほぼすべてです。
ワークフローは4ステップです。
- 開口の形に合わせた別オブジェクトを作成(窓サイズの Cube を配置)
- 壁オブジェクトを選択し、Properties → Modifier Properties から Boolean を追加
- Object 欄に開口形状オブジェクトを指定し、Operation を Difference に設定
- 開口形状オブジェクトを非表示にして、Modifier はそのまま残す(非破壊運用)
多くの解説では「Apply して確定」と書かれていますが、建築の実務では Apply せず Modifier のまま残す運用を推奨します。窓の位置・サイズを後から微調整したくなる場面が必ず出てくるためです。Modifier のまま残しておけば、開口形状オブジェクトを移動・拡大するだけで、壁の開口が即座に追従します。
Boolean Solver の選び方|Manifold/Float/Exact の3ソルバー
Boolean Modifier の標準ソルバーは Float / Exact / Manifold の3種類です(5.1 時点)。Float ソルバーは 5.1 以前から存在する既存の軽量・高速ソルバーで、5.1 で新規追加されたものではありません。
Manifold(4.5 LTS 以降・標準推奨)
入力メッシュが水密で各辺が2面に隣接している状態を前提に動作します。Exact ソルバーより約100倍高速かつ堅牢に動作します(Boolean Modifier|Blender Manual、Blender 4.5 LTS: 5 key features|CG Channel)。
Solidify で壁厚を付けたオブジェクトは閉じたメッシュになっているため、Manifold がそのまま使えます。通常の窓・ドア開口、ファサードの開口処理の標準ソルバーです。
Float(既存・軽量高速)
軽量・高速で、複雑形状の Boolean 処理が安定して動きます。Manifold が失敗する(壁が消える・開口が塞がる)複雑形状の救済策として機能します。非多様体メッシュにも対応するため、大量のマスを抜く初期ブロッキング段階の軽量化にも有効です。
Exact
高精度でトポロジーがクリーンに保たれます。閉じていないメッシュにも対応し、Manifold が失敗した場合の救済として機能します。5.1(2026年3月17日リリース)では Exact ソルバーが最大35%高速化されました(属性が多いメッシュで顕著)。Manifold も若干高速化されています(Blender 5.1 Release Notes)。属性の多い建築メッシュでも Exact が現実的な選択肢になっています。
建築パースの制作では基本的に Manifold を選んでおけば問題ありません。Manifold で失敗する複雑形状や、初期検討段階で動作が重く感じたら Float(既存)に切り替えます。
Boolean 適用後にメッシュの頂点が増えすぎたら、Edit Mode で A キーから全選択し、M キー → Merge by Distance で重複頂点を統合するとトポロジーが整います。
Bevel|エッジを処理して建材らしさを出す
Bevel は鋭いエッジに面取りを加える操作で、建材らしさを出すための要になります。建材ごとに Bevel 幅とセグメント数の目安が違うため、設定値を覚えると質感が安定します。
| 建材 | 推奨 Bevel 幅 | セグメント数 |
|---|---|---|
| アルミサッシ・金属フレーム | 0.5〜2mm | 1〜2 |
| コンクリート打ち放しコーナー | 5〜15mm | 1〜2 |
| 木材建具フレーム(塗装済み) | 2〜5mm | 2〜3 |
| 手すり天端 | 3〜8mm | 3〜4 |
| 家具の角・什器エッジ | 1〜3mm | 2 |
※2026年5月時点で編集部が実務で使っている値です。
Bevel の基本操作とセグメント数の選択
Edit Mode で Edge Select(2 キー)に切り替え、対象のエッジを選択した状態で Ctrl+B を押すと Bevel が始まります。マウスを動かすと Bevel 幅が変わり、スクロールホイールでセグメント数(丸みを構成する分割数)を増減できます。クリックで確定します。
セグメント数の目安は素材で変わります。アルミサッシのような硬質金属は 1〜2 で鋭いエッジを保ち、塗装済みの木製ドアや手すり天端は 2〜4 で丸みを大きく取ります。建築では大半が 1〜2 セグメントで足りるため、闇雲にセグメント数を増やさないのがポイントです。
細いフレームや小さなコーナーで Bevel を適用すると、エッジ同士が干渉してメッシュが破綻することがあります。これを防ぐのが Clamp Overlap オプションで、アルミサッシのような薄い部材では必ず有効化しておきます。
Bevel Modifier で非破壊的にエッジ処理する
直接 Bevel を適用すると、後から「幅を半分にしたい」と思っても再操作が面倒になります。Bevel Modifier を使えば、幅やセグメント数を後からスライダーで調整できる非破壊運用が成立します。
Properties → Modifier Properties → Bevel Modifier を追加し、Limit Method を Weight に設定します。Edit Mode で対象エッジを選択し、サイドバー(N キー)の Item → Edge Data → Bevel Weight を 1.0 に設定すると、そのエッジだけに Bevel が適用されます。
Edge Weight は 0〜1 の範囲で部分的にも調整可能で、強い丸みと弱い丸みを1つの Modifier で混在させられます。
Blender 4.0 以降では Bevel Weight が attribute として管理されています(属性名 bevel_weight_edge)。Geometry Nodes からも weight 設定が可能になり、パラメトリックな制御の前提が整っています(Bevel Modifier|Blender 5.1 Manual)。GN との連携はBlender ジオメトリノード 建築完全ガイドで解説しています。
建材ごとの Bevel 幅は、実務で使いやすい値で揃えると質感が安定します。部材ごとに値を変えるだけで、写真と見分けがつきにくいレベルの質感に近づきます。
Array Modifier|繰り返しパターンを効率よく量産する
Array Modifier は格子・ルーバー・手すり子の量産で建築の頻出ツールです。Fit Type(Fixed Count/Fit Length/Fit Curve)と Offset(Relative/Constant/Object)の2系統を組み合わせて使います。
| 要素 | 推奨間隔(Constant Offset) | Fit Type | 補足 |
|---|---|---|---|
| 窓格子・面格子 | X: 0.1m(100mm) | Fixed Count | 縦格子1本をモデリングして横方向に複製 |
| 庇ルーバー・日除けスラット | X または Y: 0.10〜0.15m | Fit Length | 屋根全長に対して数を自動調整 |
| 手すり子(住宅・共用部) | X: 0.11m 以下 | Fixed Count | 建築基準法施行令の安全基準に対応 |
| 階段の踏み板 | Z: 0.18〜0.20m(蹴上) | Fixed Count | Object Offset で Y にも前進量を加える |
| フローリング板の継ぎ | Y: 板幅サイズ | Fit Length | Relative Offset 1.0 でも代用可 |
Array Modifier の基本操作(Constant Offset vs Relative Offset)
Properties → Modifier Properties から Array Modifier を追加すると、Fit Type と Offset の2系統の設定が現れます。
Fit Type は「複製の終わり方」を決める設定です。
- Fixed Count: 個数で指定(例: 手すり子 10 本)
- Fit Length: 全体長さで指定(例: 廊下 3,000mm 分の床板)
- Fit Curve: カーブに沿って複製
建築では Fixed Count を使う場面が大半です。
Offset は「複製の間隔」を決める設定です。
- Relative Offset: オブジェクト自身のサイズを基準にした比率(1.0 で隙間なし、1.1 で 10% 隙間)
- Constant Offset: 固定距離(メートル単位)で間隔を指定
建築では「手すり子の中心間隔 110mm」のように実寸で考えるので Constant Offset が直感的です。X / Y / Z 欄に直接 0.11(110mm)のような実数値を入れます。
Object Offset は別オブジェクト(通常は Empty)の位置・回転・スケールを複製の差分として参照する設定です。Empty を Z 軸まわりに少し回転させて、踏み板に Object Offset として指定すれば、螺旋階段の踏み板配列が Array 一発で完成します。
建築パース特有の Array 活用例(格子・ルーバー・手すり子)
実際の建築で頻出するパターンの設定値は前掲表のとおりです。
手すり子の 110mm 以下は、建築基準法施行令 第126条の4 などで規定される子どもの落下・通り抜け防止基準です。住宅・共用部の手すり設計で標準的に求められる数値で、Constant Offset に 0.11 と入れておくだけで設計基準に沿った手すりが量産できます。
海外の国際物件では IBC(International Building Code)で 4 inch(約 100mm)規定があり、日本基準よりやや厳しくなります。海外向け案件では 100mm 以下に設定しておくと安心です。
ルーバーは設計事務所ごとの意匠で間隔が変わります。住宅外観のデザインルーバーは 100〜150mm 程度、店舗ファサードの細密ルーバーでは 50〜80mm 程度が目安です。
Array の限界と Geometry Nodes への展開
Array Modifier は「規則的・固定数」の量産に向いています。一方で「手すりの曲がり角で立子の角度を自動調整」「窓のサイズに応じてマリオンを自動生成」のような表現は、Array では難しくなります。
Geometry Nodes(GN)はルール生成の系統で、こうした条件分岐を伴うパラメトリック生成が可能です。海外の建築 Blender 実務ではこの方向への移行が進んでいます。
この記事のスコープは4ツール(直接構築軸)です。GN はBlender ジオメトリノード 建築完全ガイドで解説しています。4ツール → GN の学習ロードマップが2026年標準になっています。
5ツールを組み合わせて建築パースを制作する場合の編集部の見立て
戸建て住宅 LDK 3カット納品想定で5ツールを組み合わせた制作を試行した結果、ツール選択の判断時間がほぼ消えることが体感の最大の収穫でした。所感は2026年5月時点の編集部実使用ベースです。
ツールの数が増えるよりも、5つを確実に使い分けられる方が制作スピードが上がる
窓の開口は Boolean、サッシのエッジは Bevel Modifier、手すり子は Array、と作業ごとにツールが即座に決まる状態になると、判断に迷う時間がほぼなくなりました。
コスト面では、Blender 自体が無料で使え、ここで紹介したすべてのツールが標準機能です。商用ライセンス費は発生しません。Bool Tool のような拡張も公式 Extensions Platform から無償で入手できます。
Boolean Modifier の重ね方の注意点
Boolean の Modifier を残したまま大量に重ねるとビューポートが重くなる傾向があります。住宅1棟くらいの規模なら Manifold ソルバーのまま問題が出にくいです。
マンションのファサード全面に開口が並ぶ案件では、初期ブロッキング段階で Float ソルバー(既存・軽量高速)を併用するか、Boolean のオペランドをコレクションでまとめて表示切替する工夫が効きます。
編集部の試用では、住宅 LDK 3カット相当の Boolean 重ね(合計15箇所の開口)で Manifold は十分に高速でした。初期検討段階で 50 開口超のファサードを試したケースでは Float(既存)の軽量さが効きました。
5.1 の Exact 高速化(最大35%)以降は、属性の多い建築メッシュでも Exact が現実的な選択肢になり、Manifold で失敗したときの救済も体感で速くなりました。「Manifold が標準・Float が救済・Exact も実用」の使い分けが現実的です。
推奨ユーザー像
5ツールが実務に届くのは次のような方々です。
- ゼロから建築モデリングを始める方
- SketchUp や Revit からの乗り換えで「Blender ならではのモデリング感覚」を最短で身につけたい方
- 無料で実務レベルのワークフローを組みたいフリーランス・小規模制作チーム
応用シーン|5ツールを学んだ先に広がる選択肢
5ツールを使えるようになると、設計変更への対応速度が大きく変わります。さらにその先には Geometry Nodes の世界が広がり、2026年の建築ビジュアル制作の最前線につながります。
設計変更への対応速度が大きく変わる
Boolean を非破壊で運用していれば、「窓の位置を 200mm 上げてほしい」という依頼に対して、開口オブジェクトを Z 方向に 0.2 動かすだけで全カットの壁の開口が更新されます。Apply して確定させていた頃と比べると、修正にかかる時間が 10 分の 1 以下に縮みます。
Array と Bevel の組み合わせでは、住宅外観・店舗ファサードのディテール表現が一気に豊かになります。1枚のルーバーを Array で量産し、Bevel Modifier で角に 1mm の丸みをつけるだけで、写真と見分けがつきにくいレベルのファサードに到達します。
4ツール → GN への学習ロードマップ
Solidify Modifier と Boolean を組み合わせた壁モデリングを習得すると、「壁芯トレース → Solidify で壁厚 → Boolean で開口」という非破壊フローが構築できます。間取りが変わっても、壁芯を引き直すだけで建物全体が再生成される状態になります。
その先には Geometry Nodes による手続き型モデリング、D5 Render などの外部レンダラーとの連携、AI による質感生成といった、2026年現在の建築ビジュアル制作の最前線が広がります。
今回の5ツールは、そこに到達するための最短経路の入口です。GN への進み方はBlender ジオメトリノード 建築完全ガイドで解説しています。
まとめ|5ツールの使い分けフローを覚える
建築パース制作で日常的に使う5ツールについて、押さえるべきポイントを5つに集約します。
- 開口を作るときは、形状が単純で数が少なければ Loop Cut、複雑または多数なら Boolean Modifier が向きます。標準は Manifold ソルバー(4.5 LTS+)、複雑形状の救済は Float(既存・軽量高速)または Exact(5.1 で最大35%高速化)で対応します
- 壁・床・天井の立体化は Extrude Region が基本です。設計変更が前提なら Solidify Modifier に切り替えると、Thickness の数値変更だけで壁厚が再計算されます
- エッジ処理は Bevel Modifier で非破壊運用が基本です。アルミサッシは 0.5〜2mm・セグメント 1〜2、コンクリートコーナーは 5〜15mm、木材建具は 2〜5mm が目安になります
- 繰り返しパターンは Array Modifier の Constant Offset で実寸入力します。手すり子は建築基準の 110mm 以下、ルーバーは 100〜150mm 程度、階段の踏み板は Object Offset で螺旋配列も組めます
- Modifier 系のツールは Apply せず残す非破壊運用が基本です。この記事の4ツール(直接構築軸)を習得 → GN(ルール生成軸)へ進む学習ロードマップが2026年標準です
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