D5 Render ライティング完全ガイド|HDRI・IES・太陽光5光源の実務
D5 Render は2026年1月15日にリリースされた3.0で、Volumetric Cloud(立体雲)と Ocean、AI Scene Match、HDRI Resolution Control(2K/4K/8K切替)が追加され、ライティング表現の幅が広がりました。リアルタイムGPUレンダラーとしてパラメーター変更が即ビューポートに反映される強みは健在で、太陽光・HDRI・IES・Volumetric・人工光源を物理ベース単位で扱える設計も継続しています。
一方で光源の種類が多いため、どの組み合わせをどんなシーンで使うか、IESや HDRI素材はどこから入手するかで迷いやすいのも実情です。
この記事では、D5 Render のライティング機能を5光源で整理し、緯度経度・ケルビン色温度・ルーメン光束といった物理単位の建築実勢値と、Poly Haven や国内6社のIES配布先、4シーンごとの組み合わせまで、編集部方針として実務に必要な範囲をまとめます(2026年4月現在)。
D5 Render のライティングは5光源で構成される
D5 Render のライティングは、太陽光・HDRI(環境光)・IES(照明器具光度分布)・Volumetric(霧と雲)・人工光源の5つに整理できます。すべてリアルタイムGPU × 物理ベースの共通設計で動いていて、緯度経度・ケルビン・ルーメンといった現実世界と同じ単位で制御できる点が、D5 のライティング設計の出発点です。
| 光源カテゴリ | 物理単位 | 主な用途 | 該当セクション | 設定難易度 |
|---|---|---|---|---|
| 太陽光(Sun / Daylight) | 緯度経度・日時 | 屋外の基本光・日影検討 | 太陽光 | ◎(自動) |
| HDRI | カラー強度・回転角度 | 反射・環境色・空の表情 | HDRI | ○(読込のみ) |
| IES | .ies配光データ | 実照明器具のリアリティ | IESライト | △(DLが前提) |
| Volumetric | 濃度・高度・雲量 | 光条・空気感・雲 | Volumetric | △(GPU負荷) |
| 人工光源(公式7種) | カンデラ・ルーメン・ケルビン | スタジオ光・建築化照明・夜景 | 人工光源 | ○(数値入力) |
5光源の役割マップ
5光源は建築パースの異なる要素にそれぞれ効きます。太陽光は屋外の基本光、HDRI は反射と環境色、IES は実照明器具のリアリティ、Volumetric は空気感と雲、人工光源はスタジオ光や夜景の演出を担当する分業です。
住宅外観の案件であれば「太陽光」「HDRI」「Volumetric Cloud」を優先して読むのが近道で、インテリア中心なら「IES」「HDRI」「人工光源」、動画提案なら「太陽光(時刻アニメ)」「Volumetric」を最初に押さえると、自分の案件への結びつきがつかみやすくなります。
機能全体の俯瞰はD5 Render 機能ガイド|実務で使い分ける7カテゴリ全体像【2026年版】でまとめているので、ライティング以外の機能(マテリアル・AI・アニメ等)も含めた全体像が知りたい方はそちらを起点にしてください。
物理ベース単位(緯度経度・ケルビン・ルーメン)の意味
D5 Render が物理ベース設計であることのメリットは、現実世界の単位がそのまま使える点にあります。緯度経度・日時を入力すれば日本国内の冬至の日影や夏至の南中太陽角を実地に近い精度でシミュレーションできます。ケルビン色温度はパナソニックなどの照明カタログ表記と一致するため、施主への説明と CG の見た目が乖離しません(D5 Render Features 公式、2026年4月現在)。
ケルビン値は2700K(電球色)/ 3000K(温白色)/ 4000K(白色)/ 5000K(昼白色)/ 6500K(昼光色)が建築照明の基準帯です。ルーメン光束はダウンライト100〜400lm、ペンダント600〜1200lm、シーリング3000〜6000lm が住宅実勢値で、メーカーカタログの数字をそのまま D5 に入れて空間全体の明るさを積み上げる運用ができます(編集部方針・2026年4月現在)。
5光源を学ぶ順序とこの記事の構造
初めて D5 のライティングを触る場合、太陽光 → HDRI → IES → 人工光源 → Volumetric の順で学ぶと、基本光から演出光へ段階的に積み上がるので迷いが少なくなります。住宅外観の単発案件なら太陽光と HDRI だけでも仕上げられるので、IES や Volumetric は必要になった案件で都度足していく形でも問題ありません。
Community 版(無料)と Pro 版以上のライティング機能差は、後ほど『Community/Pro のライティング機能境界』で整理しているので、自分の制作環境がどちらに該当するかは記事末で確認すれば十分です。
太陽光|緯度経度・日時指定で自然光を作る
建築外観パースの基本光は太陽光です。D5 Render の太陽光は緯度経度と日時を指定するだけで、物理ベースの太陽角度(方位・高度)が自動算出されます。冬至の日影検討や夏至の南中時の影の長さを図面レベルで正確にシミュレーションできます(D5 Render Sky 公式Doc、2026年4月現在)。
| 都市 | 緯度(°N) | 経度(°E) | タイムゾーン |
|---|---|---|---|
| 東京 | 35.7 | 139.8 | UTC+9 |
| 大阪 | 34.7 | 135.5 | UTC+9 |
| 名古屋 | 35.2 | 136.9 | UTC+9 |
| 札幌 | 43.1 | 141.4 | UTC+9 |
| 仙台 | 38.3 | 140.9 | UTC+9 |
| 福岡 | 33.6 | 130.4 | UTC+9 |
| 広島 | 34.4 | 132.5 | UTC+9 |
| 那覇 | 26.2 | 127.7 | UTC+9 |
| 金沢 | 36.6 | 136.7 | UTC+9 |
| 高松 | 34.3 | 134.0 | UTC+9 |
緯度経度・日時の基本設定手順
太陽光の操作は Environment パネルで Geo Sky を有効化し、緯度・経度・日時を入力するだけで完結します。注意点は形式で、D5 は Decimal Degree(DD、十進法度)形式・小数点1桁精度 で値を受け取ります。度分秒(例: 35°41′23″)は入力できないため、国土地理院の値を使う場合は「度+分/60+秒/3600」で換算してから入力してください(D5 Render Sky 公式Doc、2026年4月確認)。
経度は東経が正で西経が負(−180〜+180)、緯度は北緯が正で南緯が負(−90〜+90)です。日本国内の主要都市は前掲の表をそのまま使えます。最初は東京 35.7°N, 139.8°E から触ってみると勝手がつかみやすくなります。時刻スライダーを動かすと影の方向と長さがリアルタイムで変わるため、打ち合わせ中に「冬の朝9時の日射し」「夏の夕方17時の西日」を即座に切り替えて見せられます。
方位・高度の手動オフセットと日影図検討
日時から自動算出された太陽の方位・高度は、手動でオフセットすることもできます。提案資料用に「実際より少し夕焼け寄り」へ寄せたいケース、コンペ応募で建物の正面に光が当たるよう微調整したいケースなどで使う運用です。
日影図検討(建築基準法の北側斜線などのシミュレーション)には、冬至(12月22日)の8時から16時を時刻アニメで連続再生する方法が有効です。アニメーションのキーフレーム設定や書き出し設定の具体手順はD5 Render のアニメーション・動画書き出し完全ガイドで解説しているので、動画として残す場合はそちらが詳しいです。
Sun Disk Radius と影の柔らかさ/3.0の Geo Sky 強度分離
D5 の太陽光には Sun Disk Radius(サンディスクラディウス、太陽の見かけ径)というパラメーターがあり、これが影の柔らかさを制御します。値を大きくすると影の輪郭が柔らかくなり、夕焼け・朝焼けの大気拡散らしい雰囲気が出ます。値を小さくすると輪郭がシャープな日中光になります。
注意したいのは、Sun Disk Radius は 物理精度ではなくアーティスティック効果 として実装されている点です。シーン全体の明度は変えずに影の輪郭だけ柔らかくする設計なので、写真の物理シミュレーションというより演出ノブとして扱うのが正確です(D5 Render Sky 公式Doc、2026年4月確認)。
3.0 で追加されたのが Geo Sky の強度分離調整 です。従来は太陽光と空の明るさが連動していましたが、3.0以降は sunlight intensity(直射日光の強さ)と sky background brightness(空の背景明度)を独立して動かせるようになりました(D5 Render 3.0 公式、2026年4月確認)。たとえば「太陽の眩しさはそのまま、空の色だけ少し落ち着かせたい」場面で、夕方の落ち着いたトーンを作りやすくなります。
太陽光単体では空色の反射成分が薄いため、外観パースでは次の HDRI と併用するのが基本セットです。
HDRI|環境光と取得先
HDRI(High Dynamic Range Image、360度撮影された実写の光情報)は、D5 Render の環境光の主役です。太陽光と併用すると反射・環境色・空の色味が補強され、外観パースの「実写らしさ」が一段階上がります。D5 には200以上の標準HDRIが用意されていて、外部の .exr / .hdr ファイルもドラッグ&ドロップで読み込めます(D5 Render Features 公式、2026年4月現在)。
| サイト | 料金 | ライセンス | 建築向け推奨カテゴリ | URL |
|---|---|---|---|---|
| Poly Haven | 無料 | CC0(商用可) | 晴天・曇天・夕焼け・スタジオ | polyhaven.com/hdris |
| HDRI-SKIES | 有料 | 商用ライセンス | 都市・建築写真ベース | hdri-skies.com |
| Chaos Cosmos | 一部無料 | 商用可 | V-Ray互換のスタジオ・屋外 | chaos.com/cosmos |
| HDRI Haven | 無料 | Poly Havenに統合済 | 旧サイトはリダイレクト | polyhaven.com |
| D5 標準ライブラリ | 同梱 | D5ライセンス内 | 晴天/曇天/夕焼け/夜景/スタジオ200+ | アプリ内 |
HDRI の読込と回転・強度設定/3.0の解像度切替
HDRI の操作は Environment パネルの HDRI スロットで標準ライブラリから選ぶか、外部の .hdr / .exr ファイルをドラッグ&ドロップするだけで適用できます。読み込み後は水平回転(0〜360度)で太陽光との方位を合わせ、強度倍率で全体の明るさを調整します。
3.0 で追加された大きな変化は HDRI Resolution Control で、HDRI の解像度を 2K / 4K / 8K で切り替えられるようになりました(D5 Render 3.0 公式、2026年4月確認)。プレビュー作業中は2Kで軽量に動かし、最終出力時に4K以上へ上げる運用が GPU VRAM を節約しながら品質を確保できる流れです。手持ちの GPU が VRAM 8GB 程度なら2K中心、12GB以上なら4Kを常用、16GB以上で8Kを最終出力に、というのが編集部の目安です(2026年4月現在)。
建築向け HDRI 取得先(無料・有料)
D5 標準ライブラリだけでは案件のシチュエーションが足りないとき、外部素材を使い分けると引き出しが増えます。無料配布の本命はPoly Havenで、CC0ライセンス(商用可・帰属不要)の HDRI が数千点、2K〜16Kまで揃っています。32-bit 360×180 equirectangular の unclipped 形式 で配布されているため、ガンマ補正や強度倍率を上げても破綻せず、正確な反射と GI(Global Illumination、間接光)が得られます(Poly Haven 公式、2026年4月確認)。
有料の建築特化ならHDRI-SKIESが選択肢になります。建築写真ベースの都市風景や時間帯バリエーションが豊富で、商業施設パースで「現実の周辺環境を再現したい」案件に向きます。V-Ray ユーザーならChaos Cosmosも一部無料で使えるので、ライセンスを跨いだ素材共有がしやすくなります。
選び方は、住宅外観なら Poly Haven の sunny / partly cloudy / golden hour 系から始めて、商業施設や都市部の案件で物足りなくなったら HDRI-SKIES を追加で検討する流れが、コスト面でも素材面でも無理がない選択になります(編集部方針・2026年4月現在)。
AI Atmosphere Match との使い分け
D5 には参照画像から HDRI・太陽光・色温度・曇り具合を自動で合わせる AI Atmosphere Match 機能が2.10以降で搭載されています。この記事の手動設定とは別系統で、既存の街並み写真に新築建物を合成するケースや、現況写真とパースの色味を寄せるケースで威力を発揮します。
使い分けの目安は次のとおりです。シリーズパース全体の色味を細かく揃えたい場合や案件固有のライティング意図がある場合は手動設定、参照写真を素早く再現したい場合は Atmosphere Match、という使いどころの違いがあります。Atmosphere Match の具体操作と Before / After はD5 AI Atmosphere Match 完全ガイドで解説しています。
IESライト|照明器具の実物感を作る
IES(IESNA LM-63 標準)は、照明器具メーカーが実機を測定して配布する 光度分布データ(.ies 形式)です。D5 Render に読み込むと、Panasonic やコイズミ照明のカタログと同じ配光がそのまま再現できます。ダウンライトの床面グラデーション、ペンダントの卓上光だまり、ウォールウォッシャーの垂直照射といった実物の見え方を、インテリアパースの説得力を最も大きく押し上げる機能として使えます。
| メーカー | 主な配光カテゴリ | 配布形式 | URL |
|---|---|---|---|
| Panasonic | 住宅・商業全般 | .ies 個別/ZIP | panasonic.biz/ls/lighting |
| コイズミ照明 | 住宅・デザイン照明 | .ies 個別 | search.koizumi-lt.co.jp |
| DAIKO | 住宅・店舗 | .ies 個別 | lighting-daiko.co.jp |
| オーデリック | 住宅・商業 | .ies 個別 | odelic.co.jp |
| ENDO | 店舗・ホテル演出 | .ies 個別 | endo-lighting.co.jp |
| YAMAGIWA | インテリアデザイン | 問い合わせ/個別 | yamagiwa.co.jp |
IES とは何か、なぜインテリアで効くのか
IES ファイルは、照明器具メーカーが測定室で計測した「光の広がり方の立体分布」を記録したデータです。Spotlight のような単純な円錐形ではなく、器具固有の配光パターン(中心が強く外に向かって緩やかに減衰する、特定方向だけ強い、左右非対称、など)が再現されます。
建築実務での効きどころは、ダウンライトの壁面グラデーション、ペンダントライトの卓上の柔らかな光だまり、ウォールウォッシャーの均一な垂直照射などが「実物の器具で見える光」と一致する点です。施主に「この器具を使うとこう見える」と提示する根拠になり、設計判断と CG が連動するメリットが大きい機能だといえます。
なお IES は光量(ルーメン)を含むデータですが、実測照度(ルクス)の計算用途には適していません。配光シミュレーションは D5 で見せ、照度計算は DIALux や DIALux evo といった別ソフトで行うのが分業の基本です(2026年4月現在)。
D5 への IES 読込手順
D5 で IES を使う流れは、Spotlight 光源を配置 → 光源プロパティの IES スロットに .ies ファイルを指定する、という2ステップです。注意点は IES が適用できるのは Spotlight 光源のみ で、Point / Strip / Rect / Disc には適用できません(D5 Render Lights 公式Doc、2026年4月確認)。これは Spotlight 固有の仕様として設計されているため、IES を使いたい器具は必ず Spotlight として配置する必要があります。
配光の向き(X/Y/Z軸回転)も後から調整できるので、天井埋込ダウンライトなら下向き、ウォールウォッシャーなら壁面向きに合わせます。D5 のビルトインIES は6個 が一般的な配光プロファイルとして用意されているだけなので、実案件では各メーカーのデータをダウンロードして使うのが前提です(D5 Render Lights 公式Doc、2026年4月確認)。
国内・海外照明メーカーのIES配布先リンク集
国内案件で実器具指定がある場合は、まず Panasonic・コイズミ照明・DAIKO・オーデリック・ENDO・YAMAGIWA の6社の公式サイトを押さえておくと、住宅から店舗まで主要な案件はカバーできます。ダウンロード方法は各社の検索ページで「.ies」「IES」「配光データ」をキーワードに型番から探すパターンが多く、ZIP一括または個別ダウンロードに分かれます(2026年4月現在)。
海外メーカー指定の案件や汎用配光が欲しい場合は、海外配布先も併せて確認しておくと選択肢が広がります。
| サイト | 強み | URL |
|---|---|---|
| IES-Library | 140万点超の無料DB、プレビュー付き | ieslibrary.com |
| Lithonia Lighting | 北米シェア大、商業・店舗・オフィス | lithonia.acuitybrands.com |
| ERCO | 欧州ハイエンド、美術館・建築化照明 | download.erco.com |
| Philips Photometric Database | 住宅・商業全般の世界標準 | philips.com |
選び方は、国内案件で実器具指定があれば国内6社、海外メーカー指定や汎用配光なら IES-Library を最初に当たる、欧州・美術館系の高品質照明なら ERCO、というのが編集部の目安です(2026年4月現在)。
色温度・ルーメンの上書きとカタログ値合わせ
IES を読み込んだ後でも、D5 側でケルビン(K)とルーメン(lm)を上書きできます。カタログに「電球色2700K / 光束800lm」と書かれている器具なら、その値を D5 に直接入力すれば、配光は IES から、色温度・光束はカタログから、という二段構えで実物と完全に一致させられます。
配光データが配布されていないメーカー(海外の一部や国内新興メーカー)の器具を使う場合は、Spotlight の Cone Angle(円錐角度)と Light Source Radius で代替する形になります。具体的な数値感は、後述の『人工光源』で解説します。
Volumetric|Fog と Cloud で空気感を作る
Volumetric(ボリュメトリック)は、光が空気中の粒子に散乱して生まれる「空気感」を表現する機能です。D5 Render には Fog(霧・靄)と Cloud(雲)の2系統があり、朝の窓光に差し込む光条(God Ray、神の光)や、外観パースの立体的な雲を物理ベースで再現できます。2026年1月15日リリースの D5 Render 3.0 で Volumetric Cloud が正式搭載され、9種の物理ベース雲プリセットと天候システムの統合が加わりました。これにより外観パースの表現力が拡張しています(D5 Render 3.0 公式、2026年4月確認)。
| プリセット | 日本語訳 | 建築での用途 | 推奨シーン |
|---|---|---|---|
| Cumulus | 積雲 | 明るい住宅外観の鉄板 | 戸建て・低層集合住宅 |
| Stratocumulus | 層積雲 | 午前の柔らかな光 | 都市住宅・オフィス外観 |
| Stratus | 層雲 | 中天空の高テクスチャ | 曇天演出・落ち着いた商業 |
| Altocumulus | 高積雲 | 日中ショット向け | リゾート・ランドスケープ |
| Cumulonimbus | 積乱雲 | 重く劇的な雲 | シネマティック演出・夕立前 |
| Cirrus | 巻雲 | 高高度のすじ雲 | ゴールデンアワーの隠し味 |
| Clear Blue Sky | 晴天 | ミニマル美学 | 商品写真風の住宅外観 |
| Legacy | 旧版互換 | 旧シーンとの互換性 | 既存プロジェクトの維持 |
| その他 | 追加プリセット | バリエーション拡張 | 案件に応じて |
Volumetric Fog|屋内光条と屋外靄
Volumetric Fog は屋内外の空気感と光条を作る機能で、濃度・色・高度を設定すると、Spotlight や窓からの光に沿って自動的に光条が生成されます。屋外では朝靄や夕方の靄として距離感と時刻雰囲気を出せます。
濃度の目安は、屋内のスポットライト光条なら 0.1〜0.3、霧の強い演出なら 0.5以上、というのが編集部推奨の出発点です(2026年4月現在)。3.0 では Fog の color と density が独立 して動かせるようになり、霧の濃さを変えずに色味だけ寄せる、あるいは色は維持して濃度だけ上げるといった微調整がしやすくなりました(D5 Render 3.0 公式、2026年4月確認)。
Volumetric Cloud|9プリセット+3階層+Coverage Mode
Volumetric Cloud は3.0で正式搭載された立体雲機能で、空に物理ベースの雲を配置し、時間変化(日の出から日没まで)で雲の色が動的に変わります。前掲の表のとおり 9種類の物理ベースプリセット が用意されています。住宅外観の鉄板である Cumulus(積雲)から、シネマティック演出の Cumulonimbus(積乱雲)、ゴールデンアワーの隠し味になる Cirrus(巻雲)まで、案件のトーンに合わせて選べます(D5 Render Volumetric Clouds 公式、2026年4月確認)。
雲の構成にはもう2つの軸があります。Coverage Mode は空のどこに雲を配置するかの3モードで、Entire Sky(全天ランダム)/Skyline(地平線から天頂、上部はクリア)/Direction(建築のフォーカルポイントに向かってリーディングラインを作る)から選択します。さらに 3階層雲レイヤー(Low / Middle / Cirrus)が用意されていて、各層で高度・濃度・形状を独立に制御できます。
たとえば住宅外観の正午カットなら Cumulus + Skyline + Low層中心、夕景カットなら Cirrus + Direction + Middle層を効かせる、といった組み合わせで雲の表情を作り込めます。
3.0のユニファイド天候システム
3.0 で実装された大きな変化が 天候・大気の統合システム です。雨や雪を有効化するだけで、Volumetric Cloud が自動的に曇天モードへ移行し、シーン全体が一貫した曇天ライティングへシフトします。手動で雲・霧・太陽を個別に調整しなくても、シーンの天候が破綻なくまとまるようになりました(D5 Render Volumetric Clouds 公式、2026年4月確認)。
もうひとつの変化が Volumetric Fog Intensity Follows Skylight で、太陽強度に霧の明度が追従します。日没時に太陽が落ちると霧も自然に暗くなるため、時刻アニメ(朝6時 → 正午 → 夕方18時)の途中で大気が破綻しなくなり、動画提案の一貫性が大幅に上がりました。手動でキーフレームを打たなくても済む点が、アニメプレゼンの作業時間短縮につながります。
GPU負荷と Community/Pro での実用可否
Volumetric Cloud は美しい一方で GPU 負荷が大きい機能です。RTX 3060 12GB では4K静止画の Volumetric Cloud 出力に数分から十数分かかり、1080p なら数十秒で済みます(編集部実測・2026年4月現在、シーン規模により変動)。RTX 4070 以上で4K出力が実用レンジに入り、RTX 4090 になれば4Kアニメも視野に入ります。
Community 版でも機能自体は使えますが、4K静止画出力は GPU 負荷の面で現実的ではないため、無料プランで試す段階では1080pでまず動作確認、4Kを常用するなら Pro 版+ RTX 4070 以上の組み合わせが編集部推奨です。
人工光源|公式7種から建築実務常用4種を選ぶ
IES データが配布されていない器具、あるいはスタジオ的な大面積光源を作りたい場合に使うのが人工光源です。D5 Render の人工光源は 公式7種類(Point / Spotlight / Strip / Rect / Disc / Stage / Projector)あり、建築実務で常用するのは Point・Spotlight・Strip・Rect の4種類に Disc を加えた範囲です。光度はカンデラ(cd)が一次単位(最大8,000,000)で、ルーメン(lm)入力にも対応しているため、Panasonic などのカタログ値を直接入れて使えます(D5 Render Lights 公式Doc、2026年4月確認)。
| 光源タイプ | 用途 | IES適用 | 建築実務での頻度 |
|---|---|---|---|
| Point(点光源) | 電球・裸球、全方向に拡散 | × | ◎ |
| Spotlight(指向性) | ダウンライト・ウォールウォッシャー | ○ | ◎ |
| Strip(帯状光) | 建築化照明・天井スリット・間接照明 | × | ◎ |
| Rect(矩形面光源) | 天井照明・ソフトボックス・大面積 | × | ◎ |
| Disc(円盤面光源) | 撮影スタジオ・大空間の補助光 | × | ○ |
| Stage(演出用) | イベント空間・展示演出 | × | △ |
| Projector(プロジェクション) | 投影演出・サイネージ | × | △ |
公式7光源タイプと建築実務での選び方
7種類のうち建築実務で常用する5種類について、それぞれの位置づけと使いどころを押さえておくと配置で迷わなくなります。
Point は電球・裸球のような全方向拡散光源です。Light Source Radius(光源半径)を大きくすると影の輪郭が柔らかくなるため、住宅のシャンデリアや裸電球の演出で使います。Spotlight は円錐角度(Cone Angle)で範囲を制御する指向性光源で、IES 適用可は Spotlight 固有の機能 です。ダウンライト・ウォールウォッシャー・アッパーライトといった建築照明の主役を担う光源で、IES データを使うときは必ずこのタイプを選びます。
Strip は長辺比の大きい帯状光源で、Barn Door Angle(0〜90度)と Length(0〜100)で方向性を制御できます。建築化照明の天井スリット、間接照明、コーニス照明など線状の光を作るときに使います。Rect は幅・奥行きを指定する矩形の面光源で、Strip と同じく Barn Door 搭載です。天井全体を発光させるオフィス照明、ソフトボックス的なスタジオ照明、大面積の建築化照明に向きます。Disc は円形の柔和な面光源で、撮影スタジオのリングライト的な使い方や、大空間のソフトな補助光に使えます。
Stage と Projector は演出用で、建築では通常使いません。イベント空間や展示空間の演出シーンで稀に登場する程度です。Sphere という光源タイプは存在しない ので、名前を覚えるときに混同しないよう押さえておくと安心です(D5 Render Lights 公式Doc、2026年4月確認)。
光源数が多いシーンで効くのが Attenuation Radius(減衰半径)です。範囲内は逆二乗則で光が減衰し、範囲外では計算が停止する仕組みなので、商業施設のように100灯規模のシーンでも各光源の影響範囲を絞れば GPU 負荷を抑えられます。
ケルビン色温度の建築実勢値
色温度は、空間の印象を決める一番大きな要素です。Panasonic などの照明カタログ表記と D5 のケルビン値が一致するため、カタログから値を引いてそのまま入力すれば、施主の合意した色のまま CG が出てきます。
| ケルビン値 | 印象 | 建築での用途 | 実物例 |
|---|---|---|---|
| 2700K | 電球色 | 住宅リビング・寝室・飲食店 | 白熱電球・温かい雰囲気 |
| 3000K | 温白色 | 住宅ダイニング・ホテル客室 | 落ち着いた店舗 |
| 4000K | 白色 | オフィス・キッチン・作業空間 | 自然な明るさ |
| 5000K | 昼白色 | オフィス・商業空間・医療施設 | 太陽光に近い |
| 6500K | 昼光色 | 店舗の清潔感訴求・外構照明 | 青みがかった白 |
迷ったときは「住宅は2700K〜3000K、オフィスは4000K〜5000K、商業の清潔感訴求は6500K」を出発点に、カタログ値で微調整すると外しません(編集部方針・2026年4月現在、Panasonic カタログ基準)。
光度単位(cd / lm)と建築カタログ実勢値
D5 の光度単位は カンデラ(cd)が一次単位 で最大8,000,000まで設定でき、ルーメン(lm)入力にも対応しています(内部換算)。建築実務で直感的なのはルーメン指定で、Panasonic などのメーカーカタログは光束をルーメン表記しているため、カタログ値をそのまま D5 に入力できます。
| 器具 | 光束(lm) | 用途 |
|---|---|---|
| ダウンライト(住宅) | 100〜400(60形相当) | 廊下・玄関・部分照明 |
| ペンダントライト(ダイニング) | 600〜1,200 | 食卓上 |
| シーリングライト(リビング) | 3,000〜6,000 | 主照明 |
| ブラケット(壁面) | 200〜600 | 寝室・廊下の補助 |
| スポットライト(店舗・ギャラリー) | 400〜1,500 | 商品演出・アート照明 |
複数の光源を配置するときは、各器具のルーメン値を積み上げて空間全体の明るさを設計すると、カタログから引いた値が部屋全体の印象を左右します。
ハーシュシャドウ(硬い影)が出てしまったときは Light Source Radius を大きく設定すると、影の輪郭が柔らかくなり、壁面のスカロップ(光のホタテ模様)も消えます。インテリアの仕上げで「なんとなく硬い」と感じたら、まずここを動かすのが公式推奨の対処です(D5 Render How to Light Dark Rooms 公式、2026年4月確認)。
5光源×4シーンの使い分けマトリクス
光源を1つずつ理解したら、次は制作シーン側から逆引きで「この案件ならどの組み合わせ」を即断できる状態を目指します。住宅外観・インテリア・商業施設・アニメプレゼンの4シーンで、編集部方針の組み合わせを整理しました(2026年4月現在)。記号は ◎主役 / ○常用 / △場面次第 として読んでください。
| 光源\シーン | 住宅外観 | インテリア | 商業施設 | アニメプレゼン |
|---|---|---|---|---|
| 太陽光(緯度経度) | ◎(基本) | ○(窓光) | ○(差し込み光) | ◎(時刻アニメ) |
| HDRI(環境光) | ◎(基本) | ◎(反射・環境色) | ○(外観寄り) | ◎(空の変化) |
| IESライト | △(屋外補助) | ◎(実器具) | ◎(カタログ照明) | ○(インテリアカット) |
| Volumetric Fog | ○(朝靄・夕靄) | ◎(光条演出) | ◎(高天井光条) | ◎(雰囲気) |
| Volumetric Cloud | ◎(空の立体感) | △(窓外のみ) | ○(外観寄り) | ◎(時刻変化) |
| 人工光源(公式7種) | ○(夜景補助) | ◎(建築照明) | ◎(演出光) | ◎(夜景アニメ) |
住宅外観|太陽光+HDRI+Volumetric Cloud
住宅外観パースの定番セットは「太陽光(緯度経度・14時前後の南中寄り)+ Poly Haven の晴天系 HDRI(強度0.7〜1.0、太陽方位に合わせて回転)+ Volumetric Cloud の Cumulus プリセット」の3点です。Smart Planting で周辺植栽を自動散布し、前景樹木を1〜2本だけ手動配置すると、奥行きと立体感が一段上がります。
既存の街並み写真への合成が必要な場合は、AI Atmosphere Match を加えると周辺の色味と寄せやすくなります。具体的な操作と Before / After はD5 AI Atmosphere Match 完全ガイドで解説しています。
インテリア|IES+HDRI+人工光源と公式Tips
インテリアパースで勝ち筋になるのが IES と人工光源の組み合わせです。Panasonic / コイズミ / DAIKO などの実器具 IES を Spotlight に適用して主照明と装飾照明を作り、窓外環境光は Poly Haven の曇天・朝光系 HDRI を弱強度(0.3〜0.5)で添えます。建築化照明(天井スリット、コーニス照明)は Strip や Rect、ブラケットは Point で補助、というレイヤー構成が基本です。
D5 公式のインテリアライティングTipsから、編集部が実務でも有効と判断したのは次の5点です(D5 Render How to Light Dark Rooms 公式、2026年4月確認)。
- 作業可視化: Section Plane(断面)に「Affected by Light」を有効化しておくと、断面で部屋を切ったまま光と素材を確認しながら配置できます。
- 実器具配置: 壁付灯(sconce)/キャビ下ストリップ/天井ダウンライトといった実在器具の位置に光源を置くと、施主への説明と整合します。
- Light Source Radius を大きく: ハーシュシャドウや壁面スカロップを消去します。
- 暖色×寒色のレイヤード: 暖色4000-4300Kの常設照明と寒色6000K寄りの全体光を組み合わせるとメリハリが出ます。
- 最終出力での Path Tracing accumulation: SPP 100+max bounces を増やすと、コーナーへの光の回り込みと素材の深みが出ます。
カメラは焦点距離18〜24mmの広角寄り、Aperture F2.8〜F5.6 で被写界深度を演出してソファやキッチンに視線を誘導すると、雑誌写真風の仕上がりに寄ります。
商業施設|Volumetric+多灯人工光源+太陽光
商業施設の大空間表現では Volumetric Fog が威力を発揮します。吹抜けのスポットライトからの光路、エントランスホールの差し込み光、店舗内の演出光を、Volumetric Fog(濃度0.2〜0.4)と Spotlight 配置の組み合わせで作り込めます。
人工光源は Spotlight(スポット演出)と Rect(建築化照明)の多灯配置が中心で、店舗ファサードや高天井の演出を作ります。日中シーンでは太陽光を窓からの差し込み光として併用し、夜景シーンでは無効化して人工光源主体に切り替える運用です。商業施設の作例ベースの参考は、D5 Render 完全ガイド|建築パースを最速で仕上げる2026年版経由で作例ガイドへ進めます。
アニメプレゼン|太陽光時刻アニメ+Volumetric Cloud+IES
動画提案で使う光源セットは「太陽光の時刻アニメ(朝6時 → 正午 → 夕方18時)+ Volumetric Cloud の時間変化 + IES の室内光 + 外構の人工光源」です。3.0 のユニファイド天候システムによって時刻変化中の大気が破綻しなくなったため、手動でキーフレームを大量に打たなくても自然な日の移ろいが作れます。
書き出しは Pro 版で4K 60fps をベースに、SNS用に1080p縦の30〜60fpsを追加で書き出すと、提案先と SNS 配信を1本のソースから両対応できます。具体的な書き出しプリセットの使い分けはD5 Render のアニメーション・動画書き出し完全ガイドで解説しています。
Community版/Pro版のライティング機能境界
D5 Render のライティング機能の大半は Community 版(無料)で利用できます。Pro 版以上との差は「4K解像度での出力」と「Volumetric Cloud の実用的な処理速度」に集中していて、ライティングを学ぶ段階では Community で十分、納品物の4K出力が必要になった時点で Pro へ切り替えるのが編集部推奨の流れです(2026年4月現在、D5 Render Pricing)。
| 機能 | Community(無料) | Pro | Team | Education |
|---|---|---|---|---|
| 太陽光(緯度経度・日時) | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 時刻アニメ書き出し | ○(1080p) | ◎(4K 60fps) | ◎ | ◎ |
| HDRI(標準・外部読込) | ○ | ○ | ○ | ○ |
| HDRI Resolution Control(2K/4K/8K) | ○ | ◎ | ◎ | ◎ |
| IES読込(標準6個・外部) | ○ | ○ | ○ | ○ |
| Volumetric Fog | ○ | ◎ | ◎ | ◎ |
| Volumetric Cloud(3.0) | △(1080p推奨) | ◎(4K実用) | ◎ | ◎ |
| 人工光源(公式7種) | ○ | ○ | ○ | ○ |
太陽光・HDRI・IES・人工光源の基本機能は Community でも Pro と同等に使えるため、ライティングの設計と検証は無料プランで完結できます。Volumetric Cloud は機能としては Community でも使えますが、4K静止画出力は GPU 負荷が重いため1080p推奨で、4K運用は Pro + RTX 4070 以上の組み合わせが現実的です。プラン全体の比較はD5 Render 料金プラン徹底比較で深掘りしています。
まとめ|D5 Render ライティングを実務に乗せる3つの要点
D5 Render のライティングは、太陽光・HDRI・IES・Volumetric・人工光源の5光源で構成されます。すべて緯度経度・ケルビン・ルーメンといった建築実務と同じ単位で扱えるため、現実の照明設計と CG の見た目をそろえやすくなります。HDRI 素材は Poly Haven(CC0・商用可)から数千点が無料で入手でき、IES 配光データは Panasonic・コイズミ照明・DAIKO・オーデリック・ENDO・YAMAGIWA の国内6社公式サイトと、IES-Library や ERCO といった海外配布先から実器具のデータが手に入ります。
実案件で迷わない一番のコツは、住宅外観・インテリア・商業・アニメの4シーン別に光源組み合わせを引き出しに持っておくことです。住宅外観は太陽光+HDRI+Volumetric Cloud、インテリアはIES+HDRI+人工光源、商業は Volumetric+多灯人工光源+太陽光、アニメは時刻アニメ+Volumetric Cloud+IES、というのがこの記事で示した編集部方針の起点になります(2026年4月現在)。
ライティング設定だけでパースの仕上がりが大きく変わるため、まずは Community 版でこの記事の組み合わせを再現してみると、自分の案件でどの光源を深掘りするかが見えてきます。
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