Blenderコンポジットとは|建築パースで使う4つのノード操作と仕上げのコツ

Blenderのコンポジット(後処理)機能は、建築パースの仕上げ品質を一段引き上げる工程です。2025年11月リリースのBlender 5.0で、CompositorがVideo Sequencerに統合されました。2026年3月の5.1ではGlare/Blur系ノードが1.2〜2倍高速化し、コンポジットの仕様は直近2年で大きく動いています。

この記事では、Blender 5.xで生まれ変わったコンポジットの最新事情と、建築パース実務で本当に使う4つのノード操作(色調補正・Glare・Defocus・Cryptomatte)を解説します。Mistパスの使い方やPhotoshopとの併用基準も、4.5 LTS / 5.1の両対応で押さえます。

コンポジットの全機能を覚える必要はありません。建築実務で使う範囲だけに絞って、レンダリング後の仕上げ工程をBlender内で完結させる感覚をつかんでください。

Blenderで作る
初めての建築3DCGパース

Blenderの導入から基本操作、太陽光の入る白い部屋の制作まで。全3本のカリキュラムを体験できます。

Blenderの導入から基本操作、
太陽光の入る白い部屋の制作まで。
全3本のカリキュラムを体験できます。

目次

Blenderコンポジットとは|レンダリングの「後処理」を担当する機能

Blenderのコンポジットは、レンダリング後の画像にノードベースで色補正・グロー・ボカシ・マスク合成を加える「仕上げ専用工程」です。レンダリングが「撮影」だとすれば、コンポジットは「現像」にあたります。建築パースの最終品質はレンダリングだけでなく、この後処理の使い方で大きく変わります。

コンポジットが「仕上げ(後処理)」を担当する理由

建築パース制作では、レンダリング側で色や光の正確さを詰めようとするほど計算時間が伸びます。そこでBlenderコンポジットを併用すると、レンダリング側で80%の完成度を作り、コンポジット側で残り20%を仕上げる発想が現実的になります。制作時間あたりの品質を考えると、この使い分けが効率を押し上げます。

5.0で安定化したRealtime Compositorは、3D Viewport右上のシェーディングドロップダウンからCompositorをDisabled / Camera / Alwaysで切り替えられる機能です(Real-time Compositor blog)。建築外観の最終確認ではCamera限定にしておくとビューポート操作が重くなりにくく、グレーディングの試行錯誤がはかどります。

Blender 4.2以降は最終レンダリングでもGPU Compositorが既定有効化されています。Color Balance・Glare・Defocus・Cryptomatteといった建築でよく使う主要ノードはGPU処理に対応済みです。4.5 LTSではDenoiseノードもGPU対応化、5.1ではGlare/Blur系ノードが1.2〜2倍高速化と、コンポジット周辺は世代ごとに着実に速くなっています。

建築パースで「コンポジットを使う場面」と「使わなくていい場面」

建築パースの実務でコンポジットが効くのは、主に次の4場面です。

  • トーン調整・色補正:すべての建築パースで使う基本工程
  • Glareによる照明演出:室内照明・窓からの太陽光・外観の街灯
  • Defocusによる奥行き演出:遠景ボカシや内観の家具奥行き
  • Cryptomatteによる素材別マスク生成:壁の色だけ別案で変えたいときなど

これに加えて、外観パースで頻出する「Mistパスを使った遠景の大気感」があります。Defocusと混同しやすい工程なので、この記事では別ステップとして扱います。

一方で、Motion Blur・Lens Distortion・Vector Blur・Sun Beamsといった複雑フィルタ系は、建築の静止画ではほぼ出番がありません。Motion Blurは静止画では不要、Lens Distortionは建築で意図的な歪みが稀なためです。コンポジットの全機能を理解してから使い始める必要はなく、上記4ノード+Mistパスから着手すれば十分です。

コンポジット画面の基本操作|Use Nodes ON・ノード追加・接続の3手順

Blenderコンポジットの基本操作は3手順で覚えられます。

  1. STEP 1:上部のCompositingワークスペースに切り替え、ヘッダーの「Use Nodes」をONにする。「Render Layers → Composite」の基本接続が表示されます
  2. STEP 2:ノード追加はShift + A。建築で頻繁に使うカテゴリはFilter / Color / Matte / Vectorの4つ
  3. STEP 3:黄色のImageアウトプットから次のノードのImageインプットへ接続。基本フローは「Render Layers → 各種ノード → Composite」

Compositeノードへの接続を忘れると、いくら手前で色補正しても最終レンダリング画像に反映されません。Blender 4.5 LTS以降はViewer Nodeが既定配置されており、途中経過のプレビュー確認に便利です。

Blender 5.x で生まれ変わったコンポジット|Sequencer統合・Realtime Compositor 進化・建築応用の広がり

Blender 5.x(2025年11月の5.0/2026年3月の5.1)はコンポジット周辺で過去最大級の変革が入った世代です。建築archviz実務に直結する変更を順にまとめます。

5.0 で Compositor が Video Sequencer に統合|動画ワークフローの統一化

Blender 5.0最大の変革は、CompositorがVideo Sequencerに統合された点です。Sequencer内でCompositorノードツリーをStrip Modifier(ストリップモディファイア)として直接適用できます(Blender 5.0 Compositor docs / Video Sequencer 5.0 notes)。

操作手順は、Compositor editorを開いてeditor sub-typeをSequencerに切り替え、ノードツリーを編集する流れです(Strip Modifiers 5.1 Manual)。Strip ModifierのAddメニューはポップアップ化されサーチとサブメニューに対応しました。UIはパネルのドラッグ&ドロップ対応に整理されています。Multi-scene workflowとSync Scene Timeオプションを使えばシーン横断編集も可能です。

建築archvizでの活用は次のとおりです。

  • ビデオウォークスルー・連番出力の色補正・トーン調整を統一タイムラインで処理可能
  • フライスルー動画、昼夜遷移アニメーション、360度パノラマ動画など、従来は「連番出力 → 外部ソフト合成 → 動画書き出し」の3段構えだったワークフローがBlender1ソフトで完結
  • 各stripごとに異なるCompositorノードツリーを適用できるため、シーン別の色補正バリエーション展開が容易

現状制約として、VSE Compositor modifierはCPU使用です(GPU加速は今後対応予定)。長尺動画や4K解像度では処理時間が伸びる点に注意してください。これは2026年5月時点の制約で、2026ロードマップにはVSE GPU supportが公式リスト入りしており、2026年内に対応する可能性があります。ビデオプレゼン需要が増えた小規模事務所・フリーランスにとって、外部の動画編集ソフトなしで仕上げまで完結できる利点は今後さらに強くなります。

5.0 で Realtime Compositor が安定化|ビューポート即時プレビュー標準化

Blender 4.x(3.5)で導入されたRealtime Compositorは、GPU加速で動作するビューポート専用コンポジターです。5.0で安定化し、Camera / Alwaysモードでビューポート上の即時プレビューが標準運用化しました。

  • Cameraモード:カメラビュー時のみCompositor結果を表示。建築外観の最終確認に向いており、ビューポート操作が重くなりにくい
  • Alwaysモード:常時プレビュー。グレーディングやグロー演出を試行錯誤するときに有効

Color BalanceやGlareのStrengthを動かしながらリアルタイム結果を確認できるため、「数値を当てて → レンダリング → 確認 → 戻る」の二度手間が減ります。

Realtime Compositorには次の制約があります(Realtime Compositor 公式マニュアル / Real-time Compositor Feedback Page 25 devtalk)。

  • macOSは非対応(modern OpenGL未サポートのため)
  • 同時に1つのrender layerのみ使用可(複数layer不可)
  • 一部コンポジットノードは非対応(非対応ノードは警告表示)
  • 2026改良でviewport compositingはcamera regionのみに限定(passepartoute値に関係なく外側はコンポジット非適用 → 最終レンダリングと一致しやすい)

5.1ではGlareに加えてDirectional Blur / Vector Blur / Lens Distortion / Anti-Aliasingも含めて20%〜100%高速化されました。5.1全体テーマは「Built for Speed」、Winter of Qualityプロジェクトで350件のissueが解決されています(Blender 5.1 Release Notes / Blender 5.1 5 key features (CG Channel 2026-03))。Realtime Compositor上の試行錯誤がより滑らかになっています。

5.0 で旧 options 完全削除|Glare ノードは inputs 操作前提

Blender 4.4でGlareノードの旧options(固定スライダーUI)がinputsに置き換わりました。新規入力としてStrength / Saturation / Tint / Smoothness / Maximumが追加されています。Blender 5.0では旧optionsが完全削除されました(Blender 5.0 Compositor 公式リリースノート)。

実務影響として、Blender 4.5 LTS / 5.1ではGlareノードをinputs経由でしか制御できません。旧バージョン向けチュートリアル動画の手順そのままでは機能しません。Blender Guru / CG Cookieなど3.x時代のGlare解説を参考にする場合は、UIの差分を意識する必要があります。

この記事の「照明演出のグロー」セクションでは現行inputs構造で解説するため、4.5 LTS / 5.1ユーザーは安心して参照できます。

その他の5.x コンポジット周辺改良|SDF・Volumes・OIDN 2

5.0と5.1ではコンポジット周辺の改良も同時に進みました。

  • 5.0 SDF / Volumes ノード標準化:Signed Distance Field・Volumeシェーダノードが標準化、コンポジット側でも参照可能。建築のガス・霧演出が一段扱いやすくなります
  • 5.0 Geometry Nodes Bundles & Closures:Compositor単体ではなくGeometry Nodes側の変革ですが、procedural textureとの連携でコンポジット表現の幅が広がります
  • 4.5 LTSのOpenImageDenoise GPU対応:コンポジット側DenoiseノードもGPU動作し、CPU処理よりノイズ除去の待ち時間が短縮
  • 5.1 OIDN 2 GPU加速さらに強化:OpenImageDenoise 2のGPU加速が一段高速化(Blender 5.1 Release Notes
  • 5.0 ACES 1.3/2.0 標準対応:コンポジット内のConvert ColorspaceノードでACES変換が標準対応。VFXパイプライン統合やHDRディスプレイ納品で業界標準色管理が利用可能に。詳細はBlender 5.x ACES カラーマネジメント完全ガイドで解説しています

色調補正の基本|Color Balance・Hue/Saturation・RGB Curves

建築パースのコンポジットで最も使う頻度が高いのが、トーンと色の補正です。Blenderでは主にRGB Curves・Color Balance・Hue/Saturationの3ノードを組み合わせて全体の質感を整えます。

RGB Curves・Color Balance・Hue/Saturationの使い分け

3ノードはそれぞれ得意分野が異なります。建築パース実務での使い分けは次のとおりです。

ノード 役割 建築での使い所
RGB Curves コントラスト・輝度のカーブ調整 S字カーブで全体にメリハリ。明部を持ち上げ暗部を締めると建材の質感が立つ
Color Balance Lift(シャドウ)/ Gamma(ミッドトーン)/ Gain(ハイライト)の3色輪 シャドウに薄い青、ハイライトに暖色を足すと自然光の写真らしさが出る
Hue/Saturation 全体彩度・色相 彩度を0.85〜0.95に下げると素材感がリアルに近づく

推奨フローはRGB Curves → Color Balance → Hue/Saturationの順です。順番を逆にすると「コントラストを上げた後に色味を載せる」のが難しくなり、結果が濁りやすくなります。

AgX色空間とCompositor編集の順序関係

Blender 4.0以降のデフォルトview transformはAgXで、広いダイナミックレンジを自然に圧縮します。重要なのは、Compositorの編集はAgX変換が適用される前のリニアデータに対して行われる点です。

普通のトーン補正・色補正であれば順序関係を意識する必要はありません。極端なカラーグレーディングをかけたいときだけ、「Render Rawワークフロー」を使います。view transformをRawにして、Compositor内でConvert Colorspaceノードを使いAgX変換を明示する方法です。AgX自体の詳細設定はリアルな建築パースを作るためのBlenderレンダリング設定7選で解説しています。

Blender 5.0からはACES 1.3/2.0が標準対応となり、View TransformをACESに切り替えてコンポジット内でACES変換ノードを置くワークフローも実用化しました。VFXパイプライン統合やHDRディスプレイ納品では、業界標準色管理が選べるようになっています。

照明演出のグロー|Glare(グレア)ノードの設定

Glareノードは、ハイライト部分ににじみ・グローを加える建築パース向けの定番ノードです。Blender 4.4以降のinputs構造で、5.1の高速化を最大限活かす設定を見ていきます。

Glareノードの5種類と建築パースでの使い分け

GlareノードはBloom / Fog Glow / Streaks / Ghosts / Simple Starの5モードを持ちます。建築実務での使い所は次のとおりです。

モード 効果 建築での推奨用途
Bloom(4.2追加) 光源周辺がふわっとにじむ・計算が速い 室内照明全般。初心者の第一候補
Fog Glow(5.0で物理ベース改良) より物理ベースに近い拡散 ダウンライト・写実重視シーンに最適
Streaks 放射状の光芒 太陽光・窓からの強い光
Ghosts レンズフレアのゴースト ドラマチック演出に限定
Simple Star 星型の光芒 建築での使用頻度は低い

実務ではBloomで全体のにじみを作り、Streaksを強度0.2〜0.3で重ねる組み合わせが自然です(Gachoki Studios – Blender Glare Node for Cycles)。

Glareノードの主要inputsと建築パース推奨値

Blender 4.4以降のGlareノードは、すべてinputs経由で制御します。建築パースで使うinputsと、2026年5月時点の建築archviz向け推奨値は次のとおりです。

inputs 役割 建築推奨値
Strength グレアの効き具合 0.3〜0.8(1.0超はCG感が強くなる)
Threshold HDR輝度のしきい値 0.5〜1.0(光源だけ拾うなら0.8〜1.0)
Smoothness(4.4追加) しきい値境界の滑らかさ 0.5前後
Maximum(4.4追加) ハイライト上限クランプ 極端な白飛び防止
Size グレアの拡散範囲 0.1〜0.5(Bloom/Fog Glow)
Saturation グレアの彩度 1.0標準
Tint グレアの色味 暖色照明強調時に微調整

出典: Blender 4.4 Compositor 解説 (Digital Production) / Glare Node 公式マニュアル (Blender 5.1)

Blender 4.5 LTS / 5.1ではすべてinputs経由で制御するため、旧バージョン向けの解説そのままでは操作できません。5.1でGlareノードが1.2〜2倍高速化されたことで、試行錯誤コストが下がりました。Realtime Compositor上でリアルタイム確認しながら詰められるようになっています。

Glareの前段にあたるライティング設定はBlenderライティング&カメラガイド|HDRI・室内・焦点距離を3ステップで整理で解説しています。

被写界深度(DOF)と大気感|DefocusノードとMistパス

建築パースの奥行き感は、被写界深度(DOF)と大気感の2つで作ります。Blenderコンポジットでは、DOFをDefocusノード、大気感をMistパスで担当させるのが基本構成です。

Z-passを有効にしてコンポジターでDOFを設定する手順

DefocusノードはZ(Depth)パスと組み合わせて使います。設定は3ステップです。

  1. STEP 1:View Layer Properties → Passes → Data → Z をON
  2. STEP 2:コンポジット画面でRender LayersノードからShift + A → Filter → Blur → Defocusを追加。Render Layersのdepth(またはZ)アウトプットをDefocusのZインプットに接続
  3. STEP 3:Z-distance(フォーカス距離)とF-Stop(ボケ量)を調整。建築の目安はF-Stop 0.5〜2.0

重要な注意点として、MistパスをDefocusに渡してはいけません。Mistパスにはanti-aliasingが入っているため、ボカシ境界にアーティファクトが発生します(Blender Artists – Z pass with Defocus 議論)。

DefocusノードはCyclesで正確に動作します。Eevee Next(4.2+)でも改善されていますが、最終納品DOFはCycles推奨です。

建築パースでDOFが有効な場面と注意点

建築でDOFが効くのは主に次の2場面です。

  • 外観:遠景をボカして主要ファサードに視線誘導
  • 内観:ダイニングテーブルにフォーカスを当て、奥のキッチンを軽くボカす

DOFを強くかけすぎると建築のドキュメンタリー性(図面としての正確さ)が失われます。「効いているかどうか分からない程度」が建築の目安で、F-Stopは1.4〜2.0から試すと安全です。

CameraプロパティのDOF設定とコンポジターDOFには明確な違いがあります。Camera設定はレンダリング時に計算されるため処理時間が伸びます。コンポジターDOFはレンダリング後に適用するため、後から強さを調整でき処理時間も節約できます。仕上げ段階で微調整したい場合はコンポジターDOFが向いています。

Mistパスで遠景に空気感を足す

外観パースの遠景に空気感を加えるときは、Mistパスを使います。シーン内距離を0.0〜1.0で出力する専用パスで、Zパスと違いanti-aliasingが入っているため画像合成に向いています。

有効化の手順は次のとおりです。

  1. WorldタブのMist PassでStart / Depth / Falloffを設定
  2. View Layer → Passes → Data → MistをON
  3. コンポジット側でRender LayersのMist出力をColor Rampにつなぎ、密度カーブを作成
  4. Mix nodeのFactorにColor Ramp出力、Imageに元レンダリング、Color2に薄い白〜灰色を入れて合成

ボリュメトリクスは光線立体追跡で重い計算になります。一方Mistパスは計算が軽く、外観の広いシーンでも実用的です(Adding Mist and Fog – Tripo3D / Mist Pass Tutorial – Digital Art Hub)。

Cryptomatte|素材別マスクをコンポジットで作る

Cryptomatte(クリプトマット)は、レンダリング時にオブジェクトやマテリアル別のマスクを自動生成する仕組みです。手書きマスクの代わりに使うと、建築の色パターン展開や部分調整の手間が大きく減ります。

Cryptomatteの有効化とマスク選択の手順

Cryptomatteの設定は4ステップで完了します。

  1. STEP 1:View Layer Properties → Passes → Cryptomatte → ObjectまたはMaterialをON
  2. STEP 2:出力フォーマットをOpenEXR MultiLayerに設定(PNG/JPEGではCryptomatte情報が保存されない最重要ポイント
  3. STEP 3:コンポジット画面でShift + A → Matte → Cryptomatte Nodeを追加。Render LayersのImage出力 + Cryptomatte出力を接続
  4. STEP 4:Cryptomatte NodeのPickボタンをONにして、レンダリング画像上でマスクしたいオブジェクト/マテリアルをクリック

取得したマスクをColor BalanceなどのFactor入力につなぐと、そのオブジェクトやマテリアル部分だけに色調補正が効きます。手書きマスクと違いオブジェクト境界が正確に取れるのが大きな利点です。

建築パースでCryptomatteが役立つ具体的なケース

建築実務でCryptomatteが効くのは、主に次の2場面です。

  • 色パターン展開:住宅案件のリビング・ダイニング・キッチンの3カット納品で「壁紙の色を3パターン」「家具のクッション色のバリエーション」を再レンダリングなしで対応
  • 部分調整:特定家具・植栽の明るさだけ調整/窓ガラス部分だけグロー演出/玄関の暖色光源だけ色温度変更

マスクを手で塗る必要がない時短メリットは、複雑なシーンほど大きくなります。マテリアル設計の前提はBlender建築パース マテリアル設定ガイドで解説しています。

実務前提として、出力フォーマットをEXR MultiLayerに設定しておくことが事実上の条件です。PNG/JPEG出力のままではCryptomatte情報が保存されず、後からマスク選択ができなくなる点に注意してください。

Photoshopとの使い分け|Blenderコンポジットの限界

Blenderコンポジットは色補正・グロー・DOF・マスクには強い一方で、写真合成やグラフィック追加には不向きです。archviz業界全体ではBlenderとPhotoshopの併用が一般的で、両者の得意分野を切り分けて使うのが効率的です。

archviz 業界調査と使い分け

Rebusfarmが2024年に行ったarchviz post-productionツール調査では、Photoshopが約68%で1位でした。Blenderユーザーは前回4%から8%に倍増しています(State of Archviz Tools – Rebusfarm)。業界全体ではBlender + Photoshopの併用が一般的です。

作業 Blender コンポジット Photoshop
全体トーン調整 得意(ノード非破壊) 得意
Glare・グロー演出 得意 得意
被写界深度(DOF) 得意(Defocus + Z パス) 苦手
素材別マスク色調整 得意(Cryptomatte) 得意
人物・植栽の切り抜き合成 苦手 得意
文字・ロゴ・矢印追加 不向き 得意
多数の人物スタッフィング 不向き 得意

5.0でSequencer統合によりBlender側の動画ワークフローが強化されたことで、動画案件ではBlender完結度がさらに高まりました。一方で人物合成や文字入れはPhotoshopのほうが効率的なので、納品物の構成によって役割分担を決めるのが現実的です。

Blenderコンポジットを編集部が使ってみた所感

編集部の調査と検証ではレンダーパス活用はBlender、画像加工汎用はPhotoshopの使い分けに落ち着きました。続いて、Blender 4.5 LTS / 5.0 / 5.1のバージョン別の選び方を見ていきます。

レンダーパス活用は Blender / 画像加工汎用は Photoshop の使い分け

編集部ではBlenderで建築パースを完結させる前提で、コンポジット側にどこまで仕上げを寄せられるかを公式ドキュメントと海外レビューをベースに整理してきました。総合所感としては、レンダーパスを活かす作業はBlenderが向いており、画像加工の汎用作業はPhotoshopが向いている、という使い分けで運用するのが現実的です。

コストと実用面では、Blenderは無料で完結する強みがあります。4ノード + MistパスはBlender単体で十分こなせる構成ですし、EXR MultiLayerでマスクを保持しておけば後日の修正依頼にも再レンダリングなしで対応できます。

一方で、人物・植栽の切り抜き合成/文字・ロゴ・矢印グラフィック追加/多数の人物スタッフィングなどは、Blenderでは現実的に運用できません。これらはPhotoshopに渡すのが効率の良い分担です。

Blender 4.5 LTS / 5.0 / 5.1 の使い分け

5.x時代のバージョン選びには、用途に応じた決め手があります。

  • Blender 4.5 LTS(2027年7月までサポート):安定運用・既存チュートリアル互換性重視。コンポジット主要機能は揃っており、現場運用の本命
  • Blender 5.0(2025年11月リリース):Compositor のVideo Sequencer統合/Realtime Compositor安定化/SDF・Volumesノード標準化/旧options完全削除/OpenPBR Surface準拠/ACES 1.3/2.0標準対応
  • Blender 5.1(2026年3月リリース):Glare/Blur系1.2〜2倍高速化/OIDN 2 GPU加速強化/Eevee Next planar reflection/Cycles GPU 5-10%高速化

選び方のポイントは次のとおりです。

  • 安定運用・既存ファイル中心 → 4.5 LTS
  • 動画ワークフローをBlender完結化したい → 5.0以降(Sequencer統合)
  • グレーディング・グロー演出を高頻度で詰めたい → 5.1(Glare高速化 + Realtime Compositor)

納品中心が静止画レンダリングで、色補正と照明演出を行うフリーランス・小規模スタジオであれば業界主流の2段階フローが向いています。「EXRで出力 → Blenderコンポジットで色調整・グロー・Cryptomatte・DOF → PNG出力 → Photoshopで人物合成・文字入れ」の流れです。この型に乗せると、コンポジット工程の時間配分が安定します。

Blenderコンポジットを学んだ先に広がる仕事の幅

Blenderコンポジットの感覚が体に染みつくと、制作フロー全体が変わり、対応できる案件の幅も広がります。

レンダリング時間半減 + 修正依頼への耐性向上

「8割の完成度のレンダリング + 2割のコンポジット」という発想が体に入ると、1案件あたりの制作時間が確実に短縮されます。レンダリングを早く切り上げてコンポジット側で仕上げを詰めるフローに切り替わると、同じソフトを使っていても1日あたりのアウトプットが変わってきます。

「壁の色を別案で」「窓のグローを強めに」といった差し戻しに、CryptomatteとGlareのStrength入力だけで対応できれば、再レンダリングを回避できる依頼が増えます。月稼働カット数が増えると、フリーランスでも小規模スタジオでも収益構造が安定しやすくなります。

5.0のSequencer統合で動画案件もBlender完結化が進んだことで、動画プレゼン需要の高まりに対応しやすくなりました。外観の遠景にMistパスで空気感を足す、内観の主役家具に薄くDOFをかける、コンペ用A1サイズプレゼンボードでバリエーション展開する、と表現の引き出しが2〜3手増えていきます。

Blenderコンポジットを学んだ人は、レンダリングを早く切り上げてコンポジット側で仕上げを詰める制作フローに自然と切り替わっていきます。コンポジットの引き出しを増やすほど、対応できる案件タイプの幅も広がっていきます。

まとめ

Blenderコンポジットは、建築パース制作の「20%の作業時間で40%の品質向上」を狙う仕上げ工程です。この記事の要点は次の5つです。

  1. コンポジットは「20%の作業時間で40%の品質向上」を狙う仕上げ工程。レンダリング80% + コンポジット20%の発想で時間効率が上がる
  2. 建築実務で使うのは4ノード + Mistパス(Color Balance / Glare / Defocus / Cryptomatte + Mist)。全機能を覚える必要はない
  3. Blender 5.0でCompositorがVideo Sequencerに統合され、動画ワークフローがBlender完結化。5.1でGlare/Blur系が1.2〜2倍高速化、Realtime Compositorで試行錯誤コストが下がる
  4. Glareノードは4.4でinputs化・5.0で旧options完全削除 → 4.5 LTS / 5.1ユーザーは新しいinputs構造(Strength / Threshold / Smoothness / Maximum / Size / Saturation / Tint)で操作
  5. DefocusはZパス・Mistは専用パスで切り分け(混同するとアーティファクト発生)。CryptomatteはEXR MultiLayer出力が前提

Photoshopとの併用は前提として、Blenderコンポジットで EXR レンダーパスを活かす仕上げまでをこなし、人物合成や文字入れだけPhotoshopに渡す形がarchviz業界の主流です。最初はBloomとRGB Curvesから触り始めると、迷わずに仕上げの感覚をつかめます。

あわせて読みたい

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

PERSC Experience Course

未経験から、
最初の一枚を完成させる。

未経験から、
最初の一枚を完成させる。

Blenderの導入から基本操作、
そして建築パースを1作品完成させるところまで。
全3本の体験カリキュラムを無料体験できます。

Blenderの導入から基本操作、
そして建築パースを1作品完成させるところまで。
全3本の体験カリキュラムを無料体験できます。


CONTENTS

3 LESSONS


基礎編① インストール&7項目の初期設定

Blenderの導入から制作に必要な基本設定

基礎編② 画面構成と基本的な操作方法

未経験でも迷わない画面の見方と操作の基本

実践編① 太陽光の入る白い部屋

建築パースを1作品完成させるまでを体験


BONUSES
体験カリキュラム限定の3大特典


実践編完成データ(.blend)

ショートカット・チートシート

マテリアル ライブラリセット

この記事を書いた人

目次