3ds Max × V-Ray ライティング徹底ガイド|室内・屋外・GIの実数値設定

3ds MaxとV-Rayの組み合わせは、建築VIZ(建築ビジュアライゼーション)の業界標準として長く使われてきました。2026年4月にリリースされたV-Ray 7 Update 3では、V-Ray GPUがAMD GPUに正式対応し、Native Parallax Interiors(窓ガラス越しの内装錯覚マテリアル)も追加されました。とはいえ、最終画の品質を決めるのはレンダラーの新機能ではなく、主光源の選択と露出・GI(Global Illumination:間接光のシミュレーション)の整合性です。

この記事では、室内ダイライト・屋外晴天/曇天・夜景の4シーン別に、VRaySun/Dome Light+HDRI/Sky Portal/VRayPhysicalCameraの組み合わせを2026年4月時点の公式ドキュメントベースで説明します。Brute Force × Light Cacheの実数値テンプレ、マルチパスEXR出力までを通して見ていきます。

数値はChaos公式ドキュメントと制作現場の経験則をすり合わせた目安で、シーン規模やカメラ位置によって微調整が要ります。3ds Max は 2024〜2027、V-Ray は 6/7 系を前提にしています。

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目次

V-Ray建築パースのライティング設計|3つの主光源と決め手

V-Rayでの建築パースライティングは、VRaySun+VRaySky/Dome Light+HDRI/VRayLight(Plane・Sphere・Mesh)/VRayIESの4系統を、シーンの目的別に組み合わせる設計が出発点です。主光源を1つに決めてから、人工光と補助光を足し算する順序で設計するとブレません。

主光源 向いている場面 太陽の方向制御 雰囲気の自由度
VRaySun + VRaySky 屋外晴天/屋内ダイライト全般 ◎(Sun実体を回す) △(Sky Modelに依存)
Dome Light + HDRI 屋外で背景の建物・空を写したい/曇天 △(HDRI回転で代用) ◎(HDRI素材で決まる)
VRayLight(人工光) 室内夜景/間接照明/補助光
VRayIES ダウンライト・ペンダント等の配光再現 ◎(メーカー配光に依拠)

VRaySun+VRaySkyが向く場面と原理

VRaySun+VRaySkyは、太陽の位置を空間内のオブジェクトとして直接動かせる設計です。設計事務所の打ち合わせで「夕方17時の差し込みを見たい」という要望に最短で応えられるでしょう。VRaySunは現実の太陽光に近い物理量で発光し、ペアになるVRaySkyが空全体を覆うグラデーションのドームとして機能します。

太陽高度・方位・大気の混濁度(Turbidity)・オゾン量を変えると、朝・昼・夕の色温度と空のグラデーションが連動して変わります。住宅案件で南向きリビングのカット制作中に施主から「もう少し午後寄りで」と言われた場合、Sunを数度回すだけで空全体の色味も追従します。動かしながら整合が取れる設計、と捉えるとイメージしやすいです。

Dome Light+HDRIが向く場面と原理

Dome Light+HDRIは、シーン全体を360度のHDRI(高ダイナミックレンジ画像)でドームから照らす方式です。背景の街並みや空の雲をそのまま画面に写したい場面で力を発揮します。郊外の戸建てを街並みごと写すパースや、夕景の劇的な空が要件にある外観パースで第一候補。

HDRIには太陽情報も含まれているので、別途VRaySunを置く必要は基本的にありません。曇天で柔らかい影を出したいときも、CIE Overcast Skyを使うよりHDRIで「曇天の実写」を貼ったほうが自然な見え方になることがほとんどです。

VRayLight/VRayIESで人工光を補う場面

夜景パースや、室内で日中でも照明をつける表現では、VRayLight Plane/Sphere/Meshと、VRayIESを組み合わせて人工光を足します。VRayLightはランプシェードの中に置く実体としての光源、VRayIESはダウンライトやペンダントの配光カーブを再現するための光源、という役割分担で設計します。

ホテルロビーの夜景で天井のダウンライトを20灯並べたい場合、VRayIESにメーカー配布のIESファイルを読み込ませて配置すれば、配光の絞り具合まで現実に近づきます。VRayLight Sphereを電球ガラスの中心に置くと、画面に映ったときの「光源の見え」を作れます。

4シーン別の主光源マトリクス

シーン 主光源 補助光 カメラ露出の目安
晴天屋外 VRaySun + VRaySky 反射板代替のVRayLight Plane ISO 100/F8〜F16/1/200前後
曇天屋外 Dome Light + 曇天HDRI なし or 弱いVRayLight ISO 200/F8/1/125前後
室内ダイライト VRaySun + VRaySky(窓越し) Sky Portal or Adaptive Dome Light ISO 200/F8/1/100〜1/300
夜景/室内人工光 VRayLight Plane/Sphere/VRayIES VRaySky を実質オフ ISO 400/F4〜F8/1/30〜1/60

このマトリクスを「シーンの性格→主光源→露出」で固定しておくと、案件が変わっても設定の組み立て順が安定します。具体的なカメラ値は後ほど『VRayPhysicalCameraと露出設計』で実数値レンジを示します。

VRaySun & VRaySkyの設定|屋外・屋内ダイライトの実数値

VRaySunの実数値は、Intensity multiplierとSize multiplierを既定の1.0に置いたまま、TurbidityとOzoneで時間帯と空気感を操作するのが基本。Sky ModelをHosek et al.に切り替えると、最も新しい大気散乱モデルに沿った空が得られます。

VRaySunの基本パラメータ

VRaySunの主要パラメータは、Chaos公式ドキュメント(VRaySun)に整理されています。Intensity multiplierは太陽光の強さを掛け算で調整するパラメータで、既定の1.0は現実の太陽の物理量に対応します。Size multiplierは太陽円盤の見かけサイズと影のボケ量を制御します。

Turbidityは大気中のチリ・水蒸気の量を表すパラメータで、値が大きいほど太陽と空が黄〜赤寄りに変わり、小さいほどクリアな青空に近づきます。Ozoneは太陽光の色のみに作用し、値が大きいほど青寄りの光になるでしょう。

VRaySun 既定値(2026年4月時点)
  Intensity multiplier: 1.0
  Size multiplier: 1.0
  Turbidity: 3.0
  Ozone: 0.35
  Sky model: Hosek et al.(推奨)

時間帯別の推奨レンジ

時間帯ごとに、Turbidity・Ozone・Sun sizeを少しずつ動かすと、雰囲気が大きく変わります。商業施設の外観パースで朝7時を表現したいなら、太陽高度を5〜10度に設定し、Turbidityを3.0〜4.5、Ozoneを0.6〜0.8、Sun sizeを2〜3まで上げると、朝靄と柔らかい影が両立するでしょう。

時間帯 太陽高度 Turbidity Ozone Size multiplier
朝日・夕日 5〜10° 3.0〜4.5 0.6〜0.8 2〜3
日中(クリア) 45〜70° 2.0〜3.0 0.35 1.0
日中(やや霞) 45〜70° 4.0〜5.0 0.4〜0.6 1.0〜1.5
曇天 Sun実質オフ/Sky ModelをCIE Overcastに

これらは2026年4月時点のV-Ray 7系ドキュメントとChaos公式ブログ(9 steps interior lighting 3ds Max)の事例値を基にした目安です。シーンの規模・素材・カメラの向きで微調整が必要になります。曇天は太陽位置の概念がないので、SunをオフにしてSky ModelだけCIE Overcastに切り替えるのが標準ルートです。

Sky Modelの選択と環境マップへの適用

Sky Modelには Preetham et al./CIE Clear/CIE Overcast/Hosek et al. の4種類があり、建築VIZでは Hosek et al. が推奨されます。Hosekモデルは2012年に発表された改良版の大気散乱モデルで、太陽高度が低い時間帯(朝日・夕日)の空の色再現が特に自然でしょう。

Sky Modelを反映させるには、Environment(メニュー:Rendering > Environment)の Background スロットに VRaySky マップを割り当て、その VRaySky の Sun nodeに既存の VRaySun を紐づけます。これでSunを回せばSkyの色も連動します。詳細はChaos公式ドキュメント(VRaySky)を押さえておきましょう。

Dome Light+HDRIの設定|屋外HDRIで一発照明する手順

Dome Light+HDRIは、シーン全体を1枚のHDRIで覆う方式です。設定手順を覚えてしまえば3クリック程度で「絵になる外光」が用意できます。Adaptive Dome Light を有効にすると、重要度サンプリング(HDRI内の明るい部分に優先的にレイを撃つ最適化)が効いて、ノイズ収束が速くなるでしょう。

Dome Light作成と「use texture」へのVRayHDRI割り当て手順

Create > Lights > V-Ray > VRayLight でライトを作成し、Type を Dome に切り替えます。Modify タブの Texture セクションで「use texture」にチェックを入れ、None ボタンから VRayHDRI を選択。VRayHDRI の File スロットに HDRI(.hdr / .exr)を指定すると、Dome Light がそのHDRIを発光源として使う構成になります(Dome Light – V-Ray for 3ds Max)。

Multiplier は既定の 1.0 のままで、Mapping は Spherical(球面マッピング)が標準。HDRIによっては縦横比が3:1の Latitude/Longitude 形式のものがありますが、その場合も Spherical で正しく展開されます。

Adaptive Dome Lightで重要度サンプリングを効かせる

Adaptive Dome Light を有効にすると、Dome Light に貼られたHDRIの明るい範囲(太陽や強い光源)を自動検出して、そこへ優先的にサンプルを集める動作になります。そのため、室内ダイライトの場面でも別途 Sky Portal を置かずに済むケースが増えました。

V-Ray Render Settings の VRay タブ > Global illumination > Adaptive lights をオンにし、Dome Light 側の Adaptive チェックも入れる二段構成。住宅リビングで窓を5枚並べた構成なら、Sky Portal を5枚置くより Adaptive Dome Light 1枚のほうがセットアップが軽く、サンプリング効率も上がります。

HDRIが二重照明にならないGI Environment上書き設定

Dome Light を使う場合、GI Environment(Render Settings > Environment > GI Environment)が同じHDRIで上書きされていると、シーンが二重に照らされて露出オーバーになります。GI Environment は黒(color: 0,0,0)に設定するか、Override をオフにして Dome Light のみで照明を完結させるのが安全です。

Reflection/Refraction 用の Environment override も同様で、ガラスや金属の映り込みに別のHDRIを使いたいときだけ個別に指定します。背景に同じHDRIを写したいなら、VRayPhysicalCamera の Environment Texture か、Environment Background に別途指定する設計です。

HDRIの回転・露出補正

HDRI内の太陽位置が画面に対して向いていない場合、VRayHDRI の Horizontal rotation で水平方向に回転させて太陽の差し込み方向を調整しましょう。Vertical rotation は通常0のままが安全で、傾けすぎると地平線が歪みます。

Overall multiplier(または Render multiplier)でHDRI全体の明るさを微調整できますが、まずは VRayPhysicalCamera 側の ISO・F値・シャッターで露出を合わせてから、それでも明るすぎ・暗すぎる場合のみ HDRI multiplier を 0.5〜2.0 のレンジで動かす順序が安全です。

室内ダイライトの作り方|Sky Portalとガラス越し太陽光のサンプリング

室内ダイライトは、窓ガラス越しに入る太陽光のサンプリングが収束しにくく、ノイズと色被りが起きやすい場面。VRayLight Plane の Skylight Portal モードを窓に置く古典的な手法と、Adaptive Dome Light でPortal自体を不要にする2026年現行の手法のどちらを使うかが最初の決め手になります。

窓に置くVRayLight Plane(Skylight Portalモード)

VRayLight Planeを窓ガラスの内側にぴったり貼るように作成し、パラメータの Skylight portal にチェックを入れると、その面から外光をサンプルする「ポータル」として機能します(VRayLight)。窓1枚に対してPlane 1枚を貼り、ノーマル(向き)が室内側を向くように配置するのが基本です。

Skylight portal が有効なときの Simple オプションは、Portal が環境マップの色のみを使い、Portalの背後にあるシーンオブジェクトは無視する高速モードです。ガラスや網戸越しの太陽光を正確に拾いたい場合は Simple を切り、それ以外は Simple オンで高速化できます。

Adaptive Dome LightがPortalを不要にする理屈

Adaptive Dome Light は、HDRI内の明るい部分に重要度サンプリングを集中させる仕組みなので、窓のように「外の光が抜けてくる開口部」が多い室内シーンでも、Sky Portal を別途置かなくてもノイズが収束しやすくなりました。

ただし、窓が小さくて室内が深いケース(細長い廊下・倉庫・地下室)では、Adaptive Dome Light だけだとサンプル不足になることがあります。その場合は窓側に Sky Portal を併用する二段構成に戻すと、結果的にレンダリング時間が短く済むケースがあります。

ガラスマテリアルの太陽光サンプリング負荷を下げる工夫

VRayMtl で Refraction(屈折)が有効なガラスマテリアルは、屈折経由で太陽光を追跡するため、窓を通過する光のサンプリング負荷が大きく増します。Affect Shadows を有効にし、Affect Channels を Color+Alpha にすると、影と Alpha チャンネルでガラスを通った光が正しく扱われるでしょう。

カット数が多い住宅案件では、Refraction の IOR を 1.0(屈折なし)に下げ、Refraction Glossiness を 1.0 のまま、Reflection だけ残す簡易ガラスを使うと、ライティングの収束時間を大きく短縮できます。最終仕上げカットだけ正規ガラス、ドラフトレンダリングは簡易ガラス、という運用が現実的でしょうか。

室内が暗い/色被りするときのチェックリスト

室内ダイライトで「暗すぎる」「黄色く転ぶ」状態が起きたら、以下を順に確認すると原因にたどり着きます。

  • VRayPhysicalCamera の Exposure(露出)がオフになっていないか
  • VRaySun の Intensity multiplier が極端に下げられていないか(既定1.0が基準)
  • 壁・床のVRayMtlの Diffuse 色が明るすぎないか(白い壁でも 0.7〜0.85 が物理的に妥当)
  • Reflection Glossiness の値が極端に低くなっていないか
  • GI Environment が黒で上書きされ、Dome Light が外光を出していないか

色被りは壁・床・天井の Diffuse 色が原因のことが多く、純白を避けて 0.75 程度に落とすと、間接光が壁色に転ぶ現象(カラーブリーディング)が落ち着きます。

人工光のVRayLight/VRayIES|ダウンライト・間接照明の実装

人工光は、VRayLight の Plane/Sphere/Mesh タイプと、VRayIES を使い分けます。設計図上の照明計画をそのまま3D化したいときは VRayIES、画作り重視で雰囲気を整えたいときは VRayLight、という役割分担が基本です。

VRayLight Plane/Sphere/Meshの選び分け

VRayLight Plane は、コーブ照明(建築化照明)や大型の平面光源を表現する用途に向きます。VRayLight Sphere は電球そのものや、丸い間接光源を作るときに使い、VRayLight Mesh は任意のメッシュを発光体として扱える型式で、ネオン管や複雑な形状の照明器具に有効です。

リビングの天井埋め込み照明を素早く再現したい場合、ダウンライトの開口部に直接 Plane を貼るより、後述のVRayIESを使うほうが配光カーブが自然になります。一方、シャンデリアの中の電球1つひとつを発光させたいときは VRayLight Sphere を電球の数だけ配置するのが正攻法でしょう。

VRayIESによる配光カーブ再現

VRayIES は、メーカーが配布する .ies ファイル(光源の配光を記述したフォーマット)を読み込み、現実のダウンライトやスポットライトの配光を再現する光源です(VRayIES)。Panasonic・KOIZUMI・遠藤照明などの照明メーカーは、製品ページから .ies ファイルを無償で提供しています。

VRayIES の Override shape を有効にすると、Point/Rectangle/Circle/Sphere/Vertical Cylinder/Horizontal Cylinder/Ellipse/Ellipsoid から発光形状を選べます。配光は .ies ファイルに準拠したまま、光源の形だけを四角や丸に切り替えられる設計です。

Intensity単位(lm/W/cd)と現実の照明スペック

VRayIES の Intensity type は Power(W)/Lumens(lm)/Candelas(cd)/Default(IESファイルに含まれる値)から選べます。設計図に「全光束1200 lm」と書かれているなら Lumens を選び、1200 を入力すれば、設計図のスペックがそのままレンダリングに反映される構成になります。

オフィスのデスク面照度を JIS Z 9110-2010 の推奨値(750 lx)に合わせたい、といった照度設計をする場合は、Lumens 単位で入力したうえでカメラ露出側を物理的に整合させると、計画値との乖離が小さくなるでしょう。

間接照明(コーブ照明・建築化照明)のVRayLight Plane配置テンプレ

天井のコーブ照明を表現する場合、天井の凹み部分(建築化照明の溝)に細長い VRayLight Plane を貼り付け、上向きに発光させて天井からの反射光で部屋を照らす構成が定番です。Multiplier は 30〜80 W/m²(仮想的な単位として運用)で開始し、カメラ露出側で最終調整します。

ホテルロビーの間接照明では、Plane の Color Temperature を 2700〜3000K(電球色)に設定し、Plane を照明溝の中央に配置、上下方向に2cmほど壁から離しておくと、エッジが当たって白飛びする現象を避けられるでしょう。Plane の Invisible にチェックを入れると、Plane 自体が画面に映らず、光だけが現れます。

VRayPhysicalCameraと露出設計|物理ライトと整合させる

VRayPhysicalCamera は ISO・F値・シャッタースピードの3つで露出を決める「物理カメラ」です。デフォルト値は ISO 100/F-number 4.0/Shutter speed 8.0 で、物理ライトを使う限り、これら3つの値を動かすだけで露出を整えられます(VRayPhysicalCamera)。

VRayPhysicalCameraの基本3パラメータ

ISO はフィルム感度に対応し、値が大きいほど画面が明るくなります。F-number は絞り値で、値が小さいほど絞りが開いて明るくなり、被写界深度が浅くなる設計。Shutter speed は値が大きいほど短いシャッターを意味し、画面が暗くなります(V-Rayの内部単位は実機の1/N秒とは異なる独自表記)。

3つのパラメータは互いに影響し合います。被写界深度(DOF)の表現を優先するなら F-number から決め、ノイズ抑制を優先するなら ISO を低めに固定して F値とシャッターで合わせる順序が現場では使われているでしょう。

室内ダイライト推奨レンジ

室内ダイライトでは、ISO 200/F-number 8.0/Shutter speed 100〜300前後が出発点として安定します。窓の数や日射の強さで明るさが変わるため、ISO を 200 に固定したまま、Shutter で 100(明るめ)〜300(暗め)の範囲で動かすと露出感が掴みやすくなるでしょう。

商業ビルのエントランスホール内観で、外の眩しい光を抑えつつ室内を明るく見せたいケースでは、ISO 200/F8/Shutter 200 を起点に、Highlight burn を 0.5 程度に設定して白飛び部分を抑える後処理を併用します。

屋外推奨レンジ

屋外晴天では、ISO 100〜400/F-number 8〜16/Shutter speed 1/125〜1/250(V-Ray換算で125〜250前後)が現実的なレンジ。集合住宅外観パースで日中の強い日差しを表現する場合、ISO 100/F11/Shutter 200 を起点にし、白い外壁が飛びすぎる場合は F値を上げて絞り、暗ければシャッターを下げて開く順で調整します。

夕景で太陽が低い場合は、ISO 200〜400/F8/Shutter 100 で光量を増やし、Color Mapping を Reinhard(Burn 0.5〜0.75)にしておくと、空のグラデーションが破綻せず残るでしょう。

ホワイトバランスとSky Modelの色温度整合

VRayPhysicalCamera の White balance を「white」に置くと、シーンの白色光(5500K相当)を白く写します。Sky Model に Hosek et al. を使うと、太陽の色温度は時間帯で5500〜6500K付近に振れます。White balance を「neutral」または明示的に5500K に設定して、Sky Model の色温度に合わせると整合性が取れるでしょう。

夕景で「夕焼けらしい赤さ」を残したい場合は、White balance を「neutral」に固定したまま、Color temperature を5500Kから動かさないでください。White balance を auto にすると赤みが補正されて消えてしまうため、夕景には不向きです。

GIとImage Samplerの実務テンプレ|Brute Force × Light Cache

GI(Global Illumination:間接光のシミュレーション)の組み合わせは、Primary engine = Brute Force/Secondary engine = Light Cache が建築VIZのデファクト。Image Sampler は Adaptive(Bucket)を Min Subdivs 1/Max Subdivs 4/Noise Threshold 0.005〜0.01 で開始するのが2026年4月時点の標準テンプレです。

Primary=Brute Force/Secondary=Light Cacheが推奨される理由

Brute Force は「直接光と1次反射の間接光を、レイトレースでそのまま計算する」最も愚直な方式で、誤差が出にくい代わりに計算が重いエンジンです。Light Cache は「2次以降の間接光を、視点ベースのキャッシュで近似する」高速エンジンで、両者を組み合わせると正確さと速度のバランスが取れます(Brute Force GILight Cache Settings)。

過去に主流だった Irradiance Map は静止画では強いものの、アニメーションでフリッカー(光のチラつき)が出やすい弱点があります。現在は静止画でも Brute Force × Light Cache が選ばれる場面が増えました。

Light Cache subdivsの目安

Light Cache の Subdivs は、テスト用と最終用で値が大きく変わります。Chaos 公式の指針では、テスト用に 100(大規模シーン)〜250(小規模・室内)、プロダクション用にはその10倍となる 1,000〜2,500 が目安です。

シーン規模 テスト Subdivs プロダクション Subdivs
小規模(室内1部屋) 250 2,500
中規模(一戸建て1棟) 200 1,500〜2,000
大規模(外観・街並み) 100 1,000

Subdivs を上げすぎても画質改善は頭打ちで、レンダリング時間だけ伸びます。ノイズが目立つカットだけ Subdivs を上げ、それ以外は1,000〜1,500に抑える運用が現実的でしょう。

公式ドキュメントを読み解いた編集部の見解|Retrace 2.0で光漏れ抑制

Image Sampler は Bucket(または Progressive)を Adaptive モードで使い、Min Subdivs 1/Max Subdivs 4/Noise Threshold 0.005(高品質)〜0.01(標準)が出発点です。Max Subdivs は最大8まで上げられますが、4までで止めて Noise Threshold を絞るほうが時間効率が良い場面が多いといえます(Image Sampler)。

Chaos公式ドキュメントを読み解くと、室内に外光が入るシーンでよく起きる「壁の角で光が漏れる」現象は、Light Cache の Retrace を 2.0 に設定すると大半が解消するとされています。海外レビューの共通見解では、Retrace は Light Cache が苦手な箇所だけ Brute Force で再計算する切り戻し機構で、室内+外光のシーンで特に効果が出る、と指摘されています。

編集部としても、Chaos 公式ブログの9 steps interior lightingと公式フォーラムの議論を読み解いた範囲では、住宅リビングのカットを Brute Force × Light Cache(Subdivs 1500)で組む際、Retrace を既定の 1.0 のままにしておくと窓枠付近に薄黒い線が残るケースが多いと感じています。Retrace 2.0 の設定は、デフォルト 1.0 では足りない場面があると捉えておくと安心です。

V-Ray Denoiserで残ノイズを仕上げる前提

最終出力では、Render Elements に VRayDenoiser を追加し、NVIDIA AI Denoiser または Intel Open Image Denoise(OIDN)でノイズを後処理する前提が標準です。Light Cache の Subdivs や Image Sampler の Max Subdivs を上げ続けてノイズを完全消去するより、5〜15%のノイズを Denoiser で仕上げる前提のほうがレンダリング時間が大幅に短くなるでしょう。

V-Ray 7 では VRayDenoiser に NVIDIA OptiX のリアルタイムプレビュー機能も追加されており、IPR(Interactive Production Rendering)中にノイズが取れた画面で雰囲気を確認できます。

出力設計|V-Ray Frame BufferとマルチパスEXR

V-Ray Frame Buffer(VFB:レンダリング結果を表示・後処理する専用ビューア)の出力は、Render Elements を multi-channel EXR で1ファイルに束ねる方式が建築VIZ実務の標準です。After Effects や DaVinci Fusion でのコンポジット工程にそのまま接続できる設計になっています。

Render Elements 主要パスの選び方

Render Elements は、レンダリング結果を「成分ごと」に書き出す機能です(Render Elements)。建築VIZで採用頻度が高いパスは以下のとおりです。

Render Element 役割 後処理での使いどころ
VRayLighting 直接光のみ 光の強度をAfter Effectsで個別調整
VRayGI 間接光のみ カラーブリーディングの調整
VRayReflection 反射成分 ガラス・金属の映り込み強弱
VRayRefraction 屈折成分 ガラス越しの色味調整
VRayWireColor / VRayObjectID オブジェクトID 部位別マスク作成
VRayZDepth 深度マップ 被写界深度・霧の追加
VRayCryptomatte ピクセル完全マスク アンチエイリアス境界も含むID抽出

VRayCryptomatte は、Wire Color/Object ID の限界(半透明や髪の毛のエッジで欠ける)を補う後継機能で、現在は標準で採用されます(VRayCryptomatte)。

Raw Image File/Separate Render Channels/Deep EXRの使い分け

VFB の Output 設定には、Raw Image File(.vrimg/.exr の生データ)/Separate Render Channels(Render Element ごとに別ファイル)/Deep EXR(深度情報をピクセルごとに持つ EXR)の3系統があります。

After Effects で読み込むなら、multi-channel EXR を1ファイルにまとめる Raw Image File(.exr 形式)が最も扱いやすく、Cryptomatte もこの形式で正しく動作するでしょう。Deep EXR は霧やパーティクルとの合成精度が必要な動画案件で使い、静止画建築パースでは原則不要です。

Multipart EXRで全要素を1ファイルに束ねる出力手順

Render Settings > V-Ray > Frame Buffer > V-Ray raw image file をオンにして、ファイル形式を OpenEXR(.exr)に指定。Save separate render channels はオフのまま、Render Elements に追加した全パスが multi-channel として1ファイルに格納される構成です。

Cryptomatte だけは互換性の都合で別ファイルに切り出す運用もあります。Cryptomatte が複雑な合成ソフト側でうまく読めないケースに備えて、メインの multi-channel EXR とは別に、Cryptomatte 単独 EXR も出しておくと事故が起きません。

After Effectsへ渡す前提のビット深度・色空間

After Effects で建築VIZのコンポジットを行う場合、ビット深度は 32bit float(HDRが扱える唯一のモード)、色空間は ACEScg または sRGB linear が推奨。8bit/16bit に落としてしまうと、白飛び部分の階調が完全に欠落するため、最終出力前のすべての工程は32bit floatで保つのが鉄則になります。

After Effects のプロジェクト設定で「色深度: 32 bits per channel」を選び、「色管理: ACES 1.3 ACEScg」または「sRGB IEC61966-2.1 linear」に設定すると、V-Ray からの EXR をそのまま読み込んで色破綻なく合成できるでしょう。

この設定が定着した後の建築VIZ実務シナリオ

ここまでのVRaySun/Dome Light+HDRI/VRayPhysicalCamera/Brute Force × Light Cacheの実数値テンプレが手元のシーンに馴染むと、案件ごとに「ライティングの初期検証30分・最終追い込み2時間」というリズムが見えてくるはずです。施主の「夕方寄りで」「曇天で」という差し戻しに対しても、Sun角度とSky Modelを切り替える数分の作業で初稿を返せるようになります。

V-Ray 7 Update 3 の Native Parallax Interiors を組み合わせると、1棟100戸クラスの集合住宅外観で、各戸の窓内側を個別モデリングしなくても、それらしい内装の透けが得られる流れが標準化しつつあります。AI Material Generator と Quick Sun Caustics、3D Gaussian Splats relighting を含めると、これまで「人手で1枚2時間」かかっていた素材検討が、Chaos Cloud 経由のAI機能と既存テンプレで「30分以内」に縮む未来も見えてきました。

業界全体の動きとして、Chaos が AMD GPU 対応を復活させた意味は単なるハードウェア選択肢の追加にとどまらないでしょう。NVIDIA一択だった建築VIZのレンダリング基盤が、コスト・電力面で別の選択肢を持つようになり、スタジオの設備投資判断そのものが変わる流れです。室内ダイライトの設定値を覚えた次の一歩は、こうしたハードウェア構成と AI 仕上げ工程まで含めて自分の制作パイプラインを設計し直すことになります。

まとめ

3ds Max × V-Rayの建築パースライティングは、主光源の判断・サンプリング最適化・カメラ露出・GIテンプレ・マルチパス出力という5層で設計するとブレません。室内ダイライトなら VRaySun + Sky Portal もしくは Adaptive Dome Light が選択肢になります。屋外晴天なら VRaySun + VRaySky、曇天や背景重視のカットなら Dome Light + HDRI、夜景なら VRayLight + VRayIES、という主光源の決め手から入りましょう。

そのうえで、VRayPhysicalCamera の ISO 100〜400/F8前後/Shutter 100〜250レンジで露出を合わせ、Brute Force × Light Cache の標準テンプレに乗せていく順序が、迷わず到達できる経路です。

V-Ray 7 Update 3(2026年4月リリース)の Native Parallax Interiors と AMD GPU 対応復活は、外観パースの作業負荷とハードウェア構成の前提を変えました。AI Material Generator と AI Enhancer も含め、Chaos Cloud 経由のAI機能は仕上げ工程をさらに圧縮していくでしょう。この記事の数値はChaos公式ドキュメント(2026年4月時点のV-Ray 7系)と制作現場の経験則をすり合わせた目安で、シーン規模・素材・カメラの向きで微調整が必要です。

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実践編① 太陽光の入る白い部屋

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