Blenderでコンクリートをリアルに見せるマテリアル設定|打ち放し・モルタルの質感再現
コンクリートは建築パースで最も使用頻度の高い素材の1つですが、CGでリアルに再現するのは意外と難しい素材でもあります。単にグレーの色を割り当てただけでは「塗り壁」のような均一な見た目になり、コンクリートらしさが出ません。リアルなコンクリート表現の核心は「不均一さ」の再現にあります。
この記事では、コンクリートの光学特性の理解から、打ち放し・モルタル・ブロックの種類別パラメータ設定、PBRテクスチャの適用手順、プロシージャルテクスチャの活用法まで、Blenderでのコンクリートマテリアル設定を実践的に解説しています。
建築3DCGパースの全体像については「建築3DCGパースとは?モデリング・ライティング・マテリアルで建築を再現する仕組み」を参照してください。
コンクリートの質感を決める要素
コンクリートの嘘っぽさの大半はRoughnessの均一さと色ムラの不足に起因します。この素材特有の光学特性と表面の「不均一さ」を理解することが出発点です。
コンクリートの光学特性:なぜ「嘘っぽく」なるのか
コンクリートは非金属(Metallic=0)で高Roughness(0.7〜0.95)の拡散反射素材です。しかし、均一なRoughnessを設定しただけでは「塗り壁」のようになり、コンクリート特有のリアリティが出ません。
現実のコンクリートには微細な色ムラ、気泡跡(ピンホール)、型枠の継ぎ目、表面の含水率の差による明暗が存在します。これらの「不均一さ」を再現することが、リアルなコンクリートマテリアルを作る上での核心です。
建築パース実務では、コンクリートの質感チェックに「1m離れて見たときに均一に見えないか」というテストが有効です。均一に見える場合は、Roughnessマップや色ムラの追加が不足しています。
建築パースで使うコンクリートの種類
建築パースで頻出するコンクリートは主に3種類に分けられます。
打ち放しコンクリートは型枠のテクスチャが転写された表面を持ち、Pコン跡(セパレーター穴跡)や型枠継ぎ目が特徴です。Roughnessは0.7〜0.85が目安で、型枠パターンの再現が品質を左右します。安藤忠雄建築のような美しい打ち放しから、経年変化の激しいものまで表情の幅が広い素材です。
モルタル仕上げはコテ仕上げによる滑らかな表面が特徴です。Roughnessは0.5〜0.7で、打ち放しより均一な色味を持ちます。左官仕上げの種類によって表面のテクスチャが異なる点も意識しましょう。
コンクリートブロックは表面が粗く多孔質で、Roughnessは0.85〜0.95が目安です。Displacementで凹凸を強調することで、表面の粗さをよりリアルに再現できます。
テクスチャを使ったコンクリートのマテリアル設定
テクスチャセットの3本接続に加えて、色ムラと型枠パターンの追加がコンクリートのリアリティを決定づけます。テクスチャの入手先については「建築パースで使えるBlenderのUV展開・テクスチャマッピング」を参照してください。
PBRテクスチャセットの適用手順
コンクリート用テクスチャセットをPrincipled BSDFに接続する手順は以下のとおりです。
- Color → Base Color(Color Space: sRGB)
- Roughness → Roughness(Color Space: Non-Color)
- Normal → Normal Mapノード → Normal(Color Space: Non-Color)
コンクリートの場合、Metallic=0固定です。Specularはデフォルト(0.5)のままで問題ありません。PBRテクスチャの汎用的な接続手順は「Blenderでリアルな建築パース用マテリアルを作る方法」で詳しく解説しています。
テクスチャのスケールは壁面の実寸から逆算します。例えば1m四方のテクスチャを2m x 3mの壁面に貼る場合、MappingのScaleを(0.5, 0.33, 1)に設定します。
凹凸表現についてはNormalマップとDisplacementの判断基準を押さえておくことが重要です。通常はNormalマップで十分ですが、カメラに近い壁面でシルエットの凹凸まで再現したい場合はDisplacementを使用します。Displacementを使用する際は、CyclesでAdaptive Subdivisionを有効化する必要があります。
色ムラと汚れの追加でリアリティを高める
テクスチャだけでは不足するリアリティを、追加のノード構成で補います。
Noise TextureをMixノードでBase Colorに薄く混合(Factor 0.05〜0.15)し、微妙な色ムラを追加します。コンクリートの色ムラはスケールが大きめ(Noise TextureのScale: 5〜20)のゆるやかな変化です。
AOテクスチャを乗算で重ねると、角や隅の汚れ・影を表現できます。ただしCyclesがAOを自動計算するため、乗算の強度は0.3〜0.5程度に抑えるのが適切です。
雨だれ跡の表現にはGradient Texture(Linear)とColor Rampの組み合わせが有効です。上から下へのグラデーションを作り、Roughnessに影響させることで、上部は乾いた粗い質感、下部は水が流れて滑らかになった質感を再現できます。白華(エフロレッセンス)の表現もこの手法の応用で対応可能です。
型枠パターンの再現
打ち放しコンクリートの品質を決めるのは、型枠パターンの再現精度です。
Pコン跡(タイロッド穴)はVoronoi TextureのF1出力とMathノード(Less Than)を組み合わせて、ランダムな位置に小さな円形の凹みとして再現します。Less Thanの閾値は0.02〜0.05程度が目安です。この出力をNormalやDisplacementに接続することで、打ち放し面の特徴的なディテールが加わります。
型枠継ぎ目はBrick Textureをベースにしたグリッドパターンで再現可能です。型枠の標準サイズ(900mm x 1800mm程度)に合わせたスケール設定を行い、NormalまたはBumpに薄く接続します。
プロシージャルテクスチャでコンクリートを作る
テクスチャ画像なしでコンクリートの質感を生成する方法です。本記事では「コンクリート素材としての完成形」を目指します。ノード構成パターンの一般的な考え方は「Blenderのノードエディターを活用したマテリアルの作り方」で解説しています。
Noise TextureとVoronoi Textureの組み合わせ
2つのプロシージャルテクスチャを組み合わせてコンクリートの基本質感を作ります。
Noise Texture(Scale: 50〜100、Detail: 10〜16)でコンクリートの微細な粒状感を生成します。Color Rampで色域をグレー系の狭い範囲(RGB値0.3〜0.6程度)に制限し、コンクリートらしい色味に仕上げます。
気泡跡(ピンホール)の再現にはVoronoi Texture(Scale: 200〜500、Feature: Distance to Edge)を使用します。Pコン跡の再現とは別の手法で、こちらは表面全体に散らばる微細な穴を表現するものです。
Roughnessにも同様のNoise Textureを接続して粗さのムラを加えると、表面の不均一さがさらに増してリアルな仕上がりになるでしょう。
プロシージャルの利点と限界
プロシージャルテクスチャには明確な利点と限界があります。
利点は3つあります。解像度に依存しないためどこまで寄ってもぼやけません。パラメータの変更で質感を即座に調整できます。テクスチャのタイリング(繰り返しパターン)の問題も発生しません。
一方、打ち放しコンクリートの型枠跡やPコン跡など規則的なパターンの再現は難しいという限界があります。こうしたディテールはテクスチャ画像との組み合わせで対応するのが現実的です。
PERSCでは「遠景はプロシージャル、近景はテクスチャ」の使い分けを推奨しています。カメラから離れた面ではプロシージャルの効率性が活き、カメラに近い面ではテクスチャの精度が必要になるためです。
まとめ
Blenderでコンクリートをリアルに見せるマテリアル設定の手順を解説しました。本記事の要点を整理します。
- コンクリートのリアリティは「不均一さ」の再現がポイントです。均一なRoughnessを避け、色ムラやRoughnessのムラを意識的に追加してください
- 打ち放し・モルタル・ブロックの種類によってRoughnessの範囲が異なるため、まず素材の種類を特定してからパラメータを設定します
- テクスチャとプロシージャルの併用が実務的なアプローチです。遠景はプロシージャル、近景はテクスチャという使い分けが効率的です
- 打ち放しコンクリートではPコン跡・型枠継ぎ目の再現が品質を左右します
マテリアルの基礎概念を確認したい方は「Blender建築パースのマテリアル基礎」を、木材の設定手順は「Blenderで木目を自然に見せるテクスチャ設定」を、ノードエディターの操作は「Blenderのノードエディターを活用したマテリアルの作り方」を参考にしてください。

