ArchiCADとは？設計からビジュアライゼーションまで一貫できるBIMツール

建築設計の現場では、設計・図面・プレゼン・数量・施工までの一貫した流れを効率化するために、BIM（Building Information Modeling）の導入が進んでいます。その中でも「ArchiCAD（アーキキャド）」は、直感的な操作性と高品質なビジュアライゼーション機能を兼ね備えたツールとして注目されています。

この記事では、ArchiCADの基本機能から他ソフトとの違い、設計フローへの具体的な導入方法、そして実際の活用事例やトレーニング方法まで、実務で役立つ視点で解説しています。設計者目線で「何ができて、どこが便利なのか」を体系的に理解できる内容になっています。

BIMに初めて触れる方はもちろん、既存のCADからの移行を検討している方にも、ArchiCADがもたらす業務改善の可能性を具体的に知ってもらえる構成です。ぜひ、設計の未来を切り拓く一歩としてご活用ください。

ArchiCADの概要とBIMの基本概念

ArchiCADはBIM（Building Information Modeling）に対応した建築設計ソフトで、設計情報を3Dで一元管理できます。この章では、そもそもBIMとは何か、ArchiCADがどう進化してきたのか、そして他のBIMツールと比べたときの特徴を整理します。最初に全体像をつかんでおくことで、後続の機能解説や導入検討がスムーズになります。

BIM（Building Information Modeling）とは？建築情報を統合する新しい設計手法

BIMとは「Building Information Modeling」の略で、建物の形や寸法だけでなく、仕上げ・材料・性能などの情報も含めた3Dモデルを作る設計手法です。これにより、図面や数量、工程などの建築情報をすべて一つのモデルで管理できるようになります。

たとえば、壁の仕上げを変更すれば、図面・パース・数量表にも自動で反映されるため、従来のような二重管理や図面の描き直しが不要になります。設計・施工・運用の全フェーズで情報共有できるのがBIMの最大の特長です。

実務では、BIMを活用することで以下のようなメリットがあります。

• 設計変更が即時に全体に反映される
• 干渉チェックが早期にできる
• クライアントへの可視化説明が容易になる
• 工程・コスト管理と連携しやすくなる

つまり、BIMは「図面から情報へ」のパラダイムシフトであり、建築プロセス全体の効率を底上げする仕組みなのです。

一言でまとめると、BIMは「情報を持った3Dモデル」で設計・施工・運用をつなぐ橋渡し役です。

ArchiCADの開発元Graphisoftとその思想

ArchiCADを開発しているGraphisoft（グラフィソフト）は、1982年にハンガリーで設立されたBIMソフトの老舗企業です。建築家が建築家のために開発したという思想があり、設計者目線での使いやすさが一貫して重視されています。

特に注目されるのは、ユーザー中心の設計ワークフローです。Graphisoftは早くからBIMを実務で使えるようにすることに注力し、軽快な操作性や直感的なインターフェース、柔軟なカスタマイズ性などを磨いてきました。

また、世界中の建築事務所や教育機関と連携し、ユーザーフィードバックを積極的に取り入れるスタイルも特徴です。そのため、ArchiCADは設計現場で「使いやすいBIM」として高く評価されています。

一言でいえば、Graphisoftは「現場感覚のあるBIMソフト」を追求し続けている開発企業です。

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他のBIMソフト（RevitやVectorworks）との違いと比較ポイント

BIMソフトにはいくつかの選択肢がありますが、ArchiCADは操作性とデザイン性のバランスに優れています。ここでは、Revit（Autodesk）やVectorworks（Nemetschek）と比較してみましょう。

項目	ArchiCAD	Revit	Vectorworks
操作性	軽快で直感的	重め・細かい設定が必要	直感的だが2D寄り
レンダリング	内蔵CineRenderで高品質	外部連携前提	質感表現はやや弱い
BIM連携	IFC対応・BIMcloudあり	Autodesk製品との強力な連携	BIM対応だが一部限定的
カスタマイズ性	GDLで部品作成可	Dynamoでの自動化	Marionetteでのパラメトリック設計

たとえば、デザイン重視で見た目にこだわる事務所ならArchiCAD、施工BIMや他業種との連携を重視するならRevitが向いています。一方、Vectorworksは2D作図からBIMへ移行したいユーザーに適しています。

つまり、ArchiCADは「建築設計者が使いやすく、表現力の高いBIMソフト」として独自のポジションを持っています。

ArchiCADが設計業務を効率化する理由

ArchiCADが支持される最大の理由は、「モデル・図面・数量がすべて連動している点」です。この一貫性により、設計変更や確認作業が圧倒的にスムーズになります。

具体的には、以下のような流れで効率化されます。

1. 3Dモデルを作るだけで、平面・立面・断面図が自動生成される
2. 材料や面積を設定すれば、数量拾いも自動で行える
3. 変更が発生しても、図面と数量が自動で更新される

たとえば、窓のサイズを変更した場合、対応する立面図や建具表、仕上げ表も自動で修正されます。手作業での修正が不要になるため、ミスが減り、時間短縮にもつながります。

さらに、BIMcloudを活用すれば、複数人での同時作業も可能です。これにより、設計の初期段階から協業体制を築きやすくなります。

まとめると、ArchiCADは「一元管理によって、設計業務の無駄とリスクを大幅に減らせるBIMソフト」です。

ArchiCADの主要機能と設計プロセスの流れ

ArchiCADは、建物の3Dモデリングから図面化、数量拾い出しまでをひとつのデータで管理できるBIMソフトです。この章では、設計業務全体の中でArchiCADがどう活用されるか、各機能がどのように連携しているのかを詳しく見ていきます。作図や修正の手間を減らし、品質を保ちながらスピーディに進めるための基盤を理解しましょう。

モデリングから図面作成までを一元化する統合ワークフロー

ArchiCADでは、建物の設計を3Dモデルで行いながら、同時に図面や数量情報も生成できます。これにより、モデルと図面の整合性を保ちながら、作業を効率化できます。

基本的な流れは以下の通りです。

1. 3Dモデリング：壁・柱・屋根・開口などの要素を3Dで配置していきます。
2. 図面の自動生成：平面・立面・断面図が自動的にモデルから作成されます。
3. 数量算出：面積・体積・部材数量などをモデルから自動抽出できます。

たとえば、階段や開口部を3Dで配置すれば、それに対応する平面図・断面図・スケジュール表も自動で作られるため、手描きや二重管理の必要がなくなります。

このような統合型のワークフローにより、設計者の作業時間が大きく削減されるだけでなく、クライアントへのプレゼン資料の質も向上します。

一言でいえば、「ArchiCADは、ひとつの3Dモデルからすべてを作る設計スタイル」を実現するツールです。

パラメトリックデザインによる柔軟な設計変更

ArchiCADは「パラメトリックデザイン」に対応しており、数値や条件を変更するだけでモデル全体が連動して更新されます。これにより、複雑な変更も短時間で反映できる柔軟な設計が可能になります。

たとえば、開口部の幅を600mmから900mmに変えると、それに対応する壁の開口寸法・窓スケジュール・立面図・3D表示までが自動で更新されます。

この仕組みは以下のような場面で効果を発揮します。

• 施主との打ち合わせ中に即座に変更対応したいとき
• 複数のバリエーションを比較したいとき
• 変更履歴を残しておきたいとき

パラメトリック機能により、「設計変更は手間がかかる」という常識を覆す柔軟な設計運用が可能になります。

自動更新機能による図面整合性の確保

ArchiCADの大きな特長のひとつが「図面間の整合性を自動で保つ機能」です。ひとつの3Dモデルに基づいてすべての図面が生成されるため、変更がどこか一箇所に起きても、他の図面に自動で反映されます。

たとえば、外壁の仕上げを「サイディング」から「左官」に変更した場合、その情報は以下にも反映されます。

• 立面図の仕上げ表記
• 仕上げ一覧表
• 材料拾い出しの数量

このように、各図面が独立せず連動していることで、「修正漏れ」「整合ミス」「ダブルチェックの手間」を大幅に減らすことができます。

つまり、図面の「一貫性と正確性」をソフトが自動で保証してくれる点が、ArchiCADの大きな魅力です。

設計から施工図面、数量拾い出しまでの連携

ArchiCADでは、設計段階の3Dモデルから、施工に必要な図面や数量情報もスムーズに取り出すことができます。これにより、設計から施工・見積もりへの移行がとても効率的になります。

具体的には以下のような活用が可能です。

• 施工図の生成：構造図や詳細図も3Dモデルを元に生成できる
• 数量拾い出し：部材ごとの面積・体積・個数を自動抽出
• 見積データの連携：CSVやIFC形式で数量情報を他ソフトと連携

たとえば、外構の舗装面積を設計段階で設定しておけば、そのまま見積部門が数量データを取得して費用算出に使えます。

このような「設計と見積・施工の橋渡し」ができることで、プロジェクト全体の効率と精度が格段に高まります。

ビジュアライゼーションと3DCG表現の活用

ArchiCADは設計だけでなく、建築CG（3DCG）による視覚表現にも強みを持っています。この章では、内蔵レンダリング機能から外部ツールとのリアルタイム連携、VR・AR体験まで、プレゼン力を高めるための実践的なビジュアライゼーション手法を解説します。施主や関係者との意思疎通を円滑にするための武器として、3D表現をどう活かすかがポイントです。

内蔵レンダリングエンジン「CineRender」の高品質表現力

ArchiCADには「CineRender（シネレンダー）」という内蔵レンダリングエンジンが搭載されています。これはMaxon社のCinema 4Dと同じレンダリングコアをベースにしており、高品質な光表現やマテリアル表現が可能です。

具体的には、以下のような表現が実現できます。

• グローバルイルミネーション（間接光の表現）
• HDRI（高ダイナミックレンジ画像）による自然光シミュレーション
• PBR（物理ベースレンダリング）によるリアルな質感設定
• IESライトによる配光の再現

たとえば、リビングの朝の光を表現したい場合、東側の窓にHDRIの環境画像を設定するだけで、自然な日差しと影を自動で再現できます。

操作も比較的直感的で、ArchiCADのビュー設定からすぐにレンダリング出力が可能です。Cinema 4Dとデータ連携も可能なので、本格CG制作にステップアップする土台にもなります。

つまり、CineRenderは「設計者自身が手軽に使えるフォトリアルCGエンジン」と言えるでしょう。

TwinmotionやLumionとのリアルタイム連携によるプレゼンテーション強化

リアルタイムレンダリングツールとして人気のある「Twinmotion」や「Lumion」とも、ArchiCADは直接連携できます。これにより、設計変更の都度レンダリングデータを再出力する必要がなく、スピーディな可視化が可能です。

連携は以下のように行います。

1. LiveSync機能を使用：ArchiCAD側で変更した内容が即座にTwinmotionやLumionに反映
2. マテリアル・カメラ情報の転送：ArchiCAD内の設定を外部ツールでも引き継げる
3. リアルタイムウォークスルー：クライアントとその場で空間を歩いて確認可能

たとえば、外構の植栽を変えたり、外壁の素材を変更した場合、Twinmotion上で即座にその変化を見ながら打ち合わせができます。修正もその場で反映できるため、設計とプレゼンのスピードが格段に向上します。

このように、ArchiCADとリアルタイムビジュアライゼーションツールの組み合わせは、「設計の即応性」と「表現力」の両方を高める手段として有効です。

VR・ARを活用した没入型の建築プレゼンテーション事例

近年では、VR（仮想現実）やAR（拡張現実）を使ったプレゼンテーションが増えています。ArchiCADの3Dモデルは、これらの技術とも相性がよく、施主や関係者に「実際に空間にいるかのような体験」を提供できます。

実例としては以下のようなものがあります。

• VRヘッドセット（Oculus RiftやMeta Quest）でウォークスルー体験
• AR表示で、実際の敷地に建物を重ねて確認
• 360度パノラマビューで空間全体を共有

たとえば、住宅設計で施主が空間の広さや窓の位置を体感したい場合、VRでの確認は非常に効果的です。紙の図面では伝わりにくい“空間のスケール感”が、視覚と体感で理解できるようになります。

これにより、「図面では納得していたが、実際に建ってから後悔した」というミスマッチを未然に防ぐことができます。

要するに、VR・ARは「設計の意図を伝えるツール」から「体験できる設計」へと進化させる鍵になります。

ArchiCADから3ds MaxやUnreal Engineへのデータ連携手順

より高度なビジュアライゼーションを目指す場合、3ds MaxやUnreal Engineとの連携が必要になります。ArchiCADでは以下の方法でスムーズにデータを渡すことができます。

主な連携手順は次の通りです。

1. FBX形式で書き出し：形状・マテリアル・カメラ情報を保持
2. Datasmithプラグイン（Unreal Engine）を利用：高精度でインポート
3. 素材・光源情報の最適化：リアルタイム表示に適した設定を調整

たとえば、Unreal Engineへデータを渡す際は「Datasmith形式」でエクスポートすることで、マテリアルやレイヤー構造を維持したままインポートが可能です。

この連携により、ゲームエンジンレベルの没入感ある建築体験を提供できるだけでなく、インタラクティブな操作（ドアの開閉、ライティングの切り替え）も実現できます。

まとめると、ArchiCADは「表現力をさらに高めたいユーザー向けに、上位ツールへの連携経路も豊富に用意されている」という点が強みです。

チーム設計とBIMデータ共有の仕組み

ArchiCADは複数人での設計作業や、遠隔地とのコラボレーションを円滑に進めるための機能が豊富です。この章では、Teamwork機能やクラウド連携、IFCを活用した他ソフトとの連携方法など、BIMデータの共有と管理に関する実践的な仕組みを解説します。設計のスピードと正確性を保ちつつ、チームで協力して進めるための要となる内容です。

Teamwork機能による複数人での同時編集とロック管理

ArchiCADの「Teamwork機能」は、同じプロジェクトを複数人で同時に編集できるコラボレーション機能です。設計チームが一つのBIMデータを共有しながら、それぞれの担当部分を並行して作業できます。

この機能の核心は「ロックと予約」の仕組みです。要素やレイアウトは作業者が一時的に“予約”して編集し、他メンバーには閲覧のみ許可されます。これにより、作業の衝突や上書きミスを防げます。

具体的な流れは以下の通りです。

1. プロジェクトを「BIMcloud」にアップロード
2. 各メンバーが作業部分を予約して編集開始
3. 編集内容を「送信」し、他メンバーは「受信」で更新

たとえば、Aさんが1階の壁を編集している間、Bさんは2階の家具配置を進められるため、無駄がありません。万が一、編集が重なった場合も、どちらかが予約を取るまで他方の編集は保留される仕組みです。

要するに、Teamwork機能は「安全に分担し、効率よく進めるための同時編集システム」です。

BIMcloudを活用した遠隔コラボレーション

Teamworkをさらに支えるのが「BIMcloud（ビムクラウド）」です。これはインターネット経由でプロジェクトを共有できるGraphisoftのクラウドサービスで、拠点が離れていてもリアルタイムに作業が可能です。

主な機能は以下のとおりです。

• クラウドサーバー上の中央プロジェクトを共有
• 作業内容を随時同期（Push/Pull）
• 権限管理・履歴管理も可能

たとえば、東京と福岡の事務所で同じプロジェクトを進めている場合でも、BIMcloudに接続することで距離を意識せず作業できます。また、ローカルに一時保存されるため、通信が切れても一時的に作業継続が可能です。

BIMcloudには「BIMcloud Basic（無料版）」と「BIMcloud（有料版）」があり、プロジェクトの規模やセキュリティ要件に応じて選択できます。

まとめると、BIMcloudは「場所に縛られないチーム設計のインフラ」です。

IFC形式でのデータ互換性と他ソフトとの連携方法

BIMプロジェクトでは、構造・設備・施工など他業種と情報をやり取りする必要があります。そのとき重要なのが「IFC形式」の活用です。

IFC（Industry Foundation Classes）は、異なるBIMソフト間で情報を共有するための中立的なデータ形式で、ArchiCADはこのIFCに完全対応しています。

連携例は以下の通りです。

• RevitやSolibriとの設計データ共有
• 構造計算ソフト（MIDAS、STAAD）との連携
• 施工シミュレーションや積算ソフトへのデータ移行

IFC出力時には「モデルビュー定義（MVD）」という用途別の書き出し設定を使うことで、必要な情報だけを抽出して軽量なデータにすることも可能です。

要は、ArchiCADは「オープンBIM」として、他ツールと柔軟に連携できる体制を整えています。

クラウド保存・バージョン管理での業務効率化

設計作業を効率的かつ安全に進めるには、データの履歴管理とバックアップが欠かせません。ArchiCADではクラウド保存とバージョン管理が連携しており、過去の状態にすぐ戻れる安心感があります。

具体的な機能には以下があります。

• 自動バックアップと復元
• バージョン履歴の記録と比較
• 任意の時点に「ロールバック」可能

たとえば、数日前の図面構成に戻したい場合、BIMcloudで履歴を確認し、該当バージョンを呼び出すだけで再現できます。別のファイルを開く必要もありません。

また、クラウド保存により、PCトラブルやファイル破損といったリスクにも強くなります。作業ごとの履歴が残るので、共同作業時の「誰が、いつ、何を変えたか」も追跡できます。

一言でいえば、「バージョン管理は設計の保険」です。

ArchiCAD導入のメリット・デメリットと活用のコツ

ArchiCADを導入する前には、自社に合うかどうか、運用が現実的かどうかを見極めることが重要です。この章では、対応できるプロジェクト規模、他ソフトからの移行時の注意点、学習方法、そして導入コストまで、実際に使い始める前に知っておきたい情報を整理します。導入判断の材料としてぜひ参考にしてください。

中小事務所から大規模設計まで対応できる柔軟性

ArchiCADは、プロジェクト規模やチーム人数に関係なく柔軟に対応できるBIMツールです。小規模な戸建て設計から、大規模な商業施設・集合住宅の計画まで、同じ操作感で一貫して進められる点が魅力です。

たとえば、2〜3人の小さな設計事務所では「Soloライセンス」を使って単独作業に集中できます。一方で、10人以上の設計チームであれば、Teamwork機能を使った分業体制やBIMcloud連携でスムーズに作業を分担できます。

ライセンスの種類も以下のように選べます。

• Solo版：1人で作業する用途に最適
• Full版：TeamworkやBIMcloudなど全機能を利用可能
• 教育版／トライアル版：学習・評価目的で無料利用可

つまり、ArchiCADは「1人でも、大人数でも、同じBIM体験を提供できる」柔軟性を持っています。

他ソフトからの移行で知っておきたい注意点

ArchiCADを他のCADやBIMソフトから乗り換える際には、いくつかの注意点があります。特に重要なのは「データ形式の互換性」と「ワークフローの違い」です。

主な注意点は次の通りです。

• DWGからの変換：線情報は読み込めるが、属性情報は保持されない
• Revit（RVT）との互換性：直接読込不可。IFC経由またはアドオンで変換
• テンプレート設計の違い：図面スタイルや部材定義の考え方が異なる
• **ファミリ（Revit）→GDLオブジェクト（ArchiCAD）**への変換には手直しが必要

たとえば、Revitで使っていた窓部品（ファミリ）をそのままArchiCADに移そうとすると、形状は移ってもパラメーターや制御機能は再設定が必要になることがあります。

移行前には「どこまで再利用できるか」を把握し、テンプレートやオブジェクトの再構築を前提にした計画が必要です。

操作習得を早めるトレーニング方法と学習リソース

ArchiCADは直感的な操作性が特徴ですが、本格的に使いこなすには段階的な学習が欠かせません。公式の学習リソースや、ユーザー向けの教材を活用することで、効率よく習得できます。

おすすめの学習方法は以下の通りです。

1. Graphisoft Learn（公式eラーニング）：基本操作〜応用まで体系的に学べる
2. スタートアップガイド：導入時に最低限の設定と作業を確認できる
3. YouTubeの公式チャンネルやWebセミナー：短時間で実践例を学べる
4. ユーザーコミュニティ／フォーラム：疑問点を解決できる場として有効

たとえば、初めての方は「Graphisoft Learn」で基礎から操作を学び、その後、自分の業務に近いテンプレートを作ることでスムーズに実務に移行できます。

重要なのは「独学での限界を早めに見極め、公式リソースを使うこと」です。

導入コスト・運用コスト・ライセンス形態の整理

ArchiCADを導入する際は、初期費用だけでなく、ライセンス形態や運用費用の違いも理解しておくことが大切です。以下に代表的なコスト構成を示します。

費用項目	内容
初期導入費	永久ライセンス（買い切り） or サブスクリプション
年間保守費	ArchiPLUS契約でアップデートやサポートを受けられる
BIMcloud運用費	自社運用（Basic） or 有料クラウド利用（有償版）
トレーニング費	任意。社内研修や外部セミナーの受講費用

ライセンス形態には次の2種類があります。

• 永久ライセンス型：初期に高額だがランニングコストは低め
• サブスクリプション型：初期費用は抑えられるが毎年支払いが発生

たとえば、短期プロジェクトやトライアル的に導入する場合はサブスクリプションが向いています。長期的に使うなら永久ライセンスの方がコストパフォーマンスは高くなります。

まとめると、「導入前に目的と期間を明確にしてライセンスを選ぶこと」がコスト最適化の第一歩です。

ArchiCADを使った設計からビジュアライゼーションまでの実践例

機能や理論だけでは、実際の業務イメージがつかみにくいものです。この章では、ArchiCADを使った実際の住宅プロジェクトをもとに、設計からビジュアライゼーションまでの流れを具体的に紹介します。ワークフローや使用ツール、出力事例を確認することで、自社の活用イメージを明確にしていきましょう。

実際の住宅設計プロジェクトにおけるワークフロー紹介

住宅設計では、ゾーニングから基本設計、意匠調整、ビジュアライゼーションまでを効率よく進める必要があります。ArchiCADを使えば、すべての工程をひとつのモデルで一貫して管理できます。

実際の流れは以下の通りです。

1. ゾーニングと敷地図作成：敷地条件を入力し、各部屋の配置を3Dで配置
2. 基本設計：壁・屋根・床・階段などを3Dモデリング
3. 詳細設計と図面生成：断面・立面・建具表などを自動生成
4. 3Dビューとパース作成：設計の検討や施主との確認に使用
5. 数量拾い出しと施工図の準備：自動で集計し、見積・施工と連携

たとえば、設計変更が入った際には、該当部分のモデリングを修正するだけで、図面・パース・数量がすべて連動して更新されます。

このように、ArchiCADは「図面と3Dが切り離されていない」ため、スピードと精度を両立できます。

ArchiCADデータを用いたリアルタイムレンダリングの流れ

リアルタイムレンダリングを活用すれば、施主との打ち合わせや社内検討がよりスムーズになります。ここでは、Twinmotionとの連携による実践的な流れを紹介します。

基本手順は以下の通りです。

1. LiveSyncで連携：ArchiCADからTwinmotionへリアルタイム送信
2. マテリアル調整・ライティング設定：質感や時間帯を視覚的に変更
3. ウォークスルーとスクリーンショット作成：即時に施主へ共有可能

たとえば、内装の色や家具配置を変えながら、その場で反映したパースを施主に見せることで、意思決定を加速できます。

この連携により、「パースを描く」から「一緒に空間を体験する」へとプレゼンの質が変わります。

プレゼン資料や動画作成に活用できる出力機能

ArchiCADでは、静止画だけでなく、アニメーションや360度ビューなどのプレゼン資料も作成できます。これにより、プロジェクトの魅力を多角的に伝えることができます。

主な出力機能は以下の通りです。

• レンダリング画像（CineRender）：完成イメージをリアルに表現
• ウォークスルー動画：空間の動線を伝える動画出力が可能
• 360度パノラマビュー：Web上でのバーチャルプレゼンに活用
• PDF・BIMx出力：施主や施工側と情報共有がしやすい形式

たとえば、玄関からリビングまでの動線をウォークスルー動画で出力すれば、紙の図面では伝わりにくい“動き”のイメージを直感的に伝えられます。

このような出力機能を使えば、「設計意図を伝える資料」が簡単に作れます。

3Dモデルから建築確認申請までの効率化プロセス

ArchiCADを使えば、設計データをもとに建築確認申請に必要な図面や情報も効率よく作成できます。法規チェックや申請書類の準備も、モデルと図面の一貫性によりスムーズに進められます。

実務での流れは以下の通りです。

1. 用途地域・斜線・採光条件の設定：法規に合わせたモデリング
2. 確認申請図面の自動生成：配置図・立面図・断面図などを一括出力
3. BIMxやPDFでの提出書類作成：電子申請にも対応

たとえば、天空率や採光の確保が必要な場合も、断面ビューや日影チェックを活用すれば、検討と図面作成を並行して進められます。

つまり、ArchiCADは「設計から申請までをひとつのデータで完結できる」仕組みを提供しています。

よくある質問（FAQ）

最後に、ArchiCAD導入前に多くの方が疑問に思うポイントをQ&A形式でまとめました。機能比較や推奨スペック、ライセンスの取得方法まで、判断材料となる基本情報をチェックできます。導入を検討している方は、ここで気になる点をひと通り解決しておきましょう。

Q1.ArchiCADとRevitのどちらを選ぶべき？

ArchiCADとRevitは、どちらもBIMに対応した強力な設計ツールですが、得意分野や使いやすさに違いがあります。選ぶ際のポイントは「重視する業務プロセス」と「操作感の相性」です。

比較項目	ArchiCAD	Revit
操作性	直感的で軽快	設定が細かくやや重い
表現力	CineRender内蔵で高品質パース	外部レンダリング推奨
連携性	IFC・BIMcloud中心（オープンBIM）	Autodesk製品との連携が強力
カスタマイズ	GDLスクリプトで柔軟に対応	Dynamoで自動化可能
利用層	建築設計事務所に多い	ゼネコン・設備・構造系にも多い

たとえば、デザイン性やパース表現を重視する設計事務所ならArchiCADが向いています。一方で、構造や設備との連携が多い大規模プロジェクトではRevitが選ばれる傾向があります。

つまり、「どちらが優れているか」ではなく「業務に合っているか」で選ぶのがポイントです。

Q2.ArchiCADでリアルタイムレンダリングを行うには？

ArchiCAD単体でもレンダリングは可能ですが、リアルタイムで高品質な表現をしたい場合は、外部ツールとの連携が効果的です。代表的なのは「Twinmotion」や「Enscape」です。

導入手順の一例を紹介します。

1. Twinmotion LiveSyncアドオンを導入（無料で提供）
2. ArchiCADからリアルタイム転送を開始
3. Twinmotionでマテリアルや光源を調整
4. ウォークスルーや動画を書き出す

TwinmotionはEpic Games社が提供しており、無料版でも高品質なレンダリングが可能です。Enscapeは建材や光の表現に強く、より現実的なビジュアライゼーションを求める場面で活躍します。

要するに、リアルタイムレンダリングには「ArchiCAD＋専用アドオンや外部ツール」が最適です。

Q3.ArchiCADを使うために必要なPCスペックは？

ArchiCADは3Dモデリング・レンダリングを行うため、一定のスペックが求められます。用途別に推奨スペックをまとめると以下のようになります。

用途	最低スペック	推奨スペック
CPU	Intel Core i5／Ryzen 5	Intel Core i7以上
メモリ	8GB	16〜32GB
GPU	NVIDIA GTX 1650以上	NVIDIA RTX 3060以上
ストレージ	SSD推奨	500GB以上のSSD

たとえば、設計のみであればi5＋GTXクラスでも動作しますが、Twinmotionなど外部レンダリング連携も行うなら、i7＋RTXクラスを推奨します。

また、クラウド保存やチームワーク機能を使う場合は、ネットワークの安定性も重要になります。

結論としては、「BIM＋3DCGを快適に使うなら、ゲーミングクラスのPCが目安」です。

Q4.ArchiCADは学生や個人でも利用できる？

はい、Graphisoftは教育機関・学生・個人学習者向けに無償の教育ライセンスを提供しています。機能制限はなく、商用利用不可という制限があるだけです。

取得条件と流れは以下のとおりです。

1. Graphisoft公式サイトで「教育版」申請
2. 学生証や所属証明をアップロード
3. 承認後、ライセンスとインストーラーを入手
4. 1年間利用可能（更新可）

この教育版は、ポートフォリオ作成やBIM学習にも最適で、他ソフトと比べても習得しやすいインターフェースが魅力です。

つまり、「学生や独学者でもプロと同じ環境で練習できる」のがArchiCADの強みです。