
V-Rayとは?フォトリアル建築パースの世界基準レンダラー
建築ビジュアライゼーションの世界では、どれだけリアルに表現できるかが説得力や提案力を大きく左右します。そんな中で、V-Rayは「フォトリアルな表現」と「業務に耐える安定性」の両方を兼ね備えたレンダラーとして、世界中の建築CG制作者から支持を集めています。
この記事では、V-Rayの基本から、なぜ建築パース制作で選ばれているのか、実際の活用方法、導入の流れ、そして学習リソースまでを体系的にまとめました。これからV-Rayを使い始める方にも、すでに導入している方にも役立つ情報を網羅しています。実務に直結する内容で、表現力と生産性を一段上に引き上げたい方はぜひ参考にしてください。
V-Rayの基本概要と建築ビジュアライゼーションでの役割
V-Rayは、建築パースをはじめとする3DCG分野で広く活用されているフォトリアルレンダリングエンジンです。開発元のChaos社は業界内で長年の実績を持ち、V-Rayはその信頼性と表現力で「世界標準」と呼ばれる存在になりました。この章では、V-Rayの背景と業界内での立ち位置を整理し、なぜ建築ビジュアライゼーションで選ばれ続けているのかを見ていきます。
Chaos社が開発したプロフェッショナル向けレンダリングエンジン
V-Rayは、ブルガリアに本社を構えるChaos社が開発したレンダリングエンジンです。1997年に設立されたChaos社は、V-Rayの開発を通じて20年以上にわたり3DCG業界をリードしてきました。特に、映画、広告、建築、プロダクトなどの分野で、写実的なCG表現を求めるプロフェッショナルから高く評価されています。
もともとは3ds Max向けのプラグインとしてスタートしましたが、その品質の高さから次第に対応ソフトを広げ、今では複数のDCC(Digital Content Creation)ツールに対応するクロスプラットフォームなレンダラーへと進化しました。
現在では、Chaos社はV-Rayに加え、Phoenix(流体シミュレーション)やChaos Cloud、Chaos Cosmosといった周辺ツールも開発・提供しており、V-Rayは単なるレンダラーではなく、制作パイプライン全体を支える“エコシステムの中核”となっています。
建築・インテリア・プロダクト分野で支持される理由
V-Rayは、建築やインテリアのCG制作において圧倒的な支持を集めています。その理由は大きく3つあります。
まず、現実と見間違うほどの高精度な写実表現が可能な点です。物理ベースのライティングやマテリアル設定に対応しており、建築パースでも実際の素材や光環境に近い再現ができます。
次に、長時間のバッチ処理や高解像度レンダリングにも安定して対応できる堅牢性があります。大規模なプロジェクトや複数シーンの連続レンダリングでも、エラーが少なく実務で安心して使えます。
最後に、主要な3DCG/BIMソフトとの互換性の高さです。SketchUp、3ds Max、Revit、Rhino、Cinema 4Dなど、多くの建築ビジュアライゼーション系ソフトに対応しており、チームのワークフローに自然に組み込むことができます。
他レンダラー(Corona・Enscape・Twinmotion)との特徴比較
V-Rayとよく比較されるレンダラーには、Corona、Enscape、Twinmotionがあります。それぞれに強みが異なり、目的に応じて使い分けるのが一般的です。
- Corona Renderer:同じくChaos社が開発。UIがシンプルで初心者にも扱いやすく、比較的短時間で高品質な結果が得られます。
- Enscape:BIMとの親和性が高く、リアルタイム性能に優れています。設計中の確認用ビジュアルやVR出力に最適です。
- Twinmotion:Unreal Engineベースでリアルタイム性能が高く、操作も直感的。プレゼン用ムービーや簡易CG制作に向いています。
一方、V-Rayは高品質と自由度を最重視するプロ向けの選択肢です。ライティング・マテリアル・ポスト処理まで細かく調整できるため、フォトリアル表現にこだわる制作には最適です。
V-Rayが選ばれる理由|高品質なフォトリアル表現と安定性
V-Rayが多くの建築CG制作者に選ばれる最大の理由は、その「品質と安定性」です。自然な光や素材の質感を忠実に再現できるだけでなく、大規模なシーンでも安定して動作し、商業利用にも十分な信頼性を備えています。この章では、V-Rayの技術的な強みと、それが実際の制作現場でどう活かされているのかを詳しく解説します。
グローバルイルミネーション(GI)によるリアルな光の再現
V-Rayがフォトリアルな画づくりに優れている理由のひとつが、「グローバルイルミネーション(GI)」の精度です。GIとは、シーン内の間接光(反射光)を正確に計算する仕組みで、現実のような柔らかい陰影や空間全体の明るさを表現できます。
たとえば、室内に自然光が差し込んだ場合、壁や床に反射した光が周囲に拡散します。これを忠実に再現できるのがV-RayのGIです。具体的には、「Irradiance Map」や「Light Cache」などの手法を使い、速度と品質のバランスを取りながら高精度な光表現を実現します。
レンダリング設定では、GIの品質を左右するサンプル数やバウンス回数を細かく調整可能です。たとえば、外観パースならバウンス数を「2〜3回」、室内なら「4回以上」に設定することで、光の回り込みが自然になります。
物理ベースレンダリング(PBR)で素材の質感を正確に再現
V-Rayは「物理ベースレンダリング(PBR)」に対応しており、現実の素材のような見た目を再現できます。PBRとは、光と物体の相互作用を物理法則に基づいてシミュレーションする手法で、マテリアル設定の信頼性が高くなります。
PBRでは「反射率」「粗さ(Roughness)」「屈折率(IOR)」などのパラメータを使って、金属・木材・ガラスなどの質感を細かく調整できます。たとえば、ガラスのIORは1.52前後、金属はおおむね1.8〜2.5を目安に設定すると自然な見え方になります。
また、V-Rayでは「Metalness/Specular」どちらのPBRフローにも対応しており、外部素材ライブラリ(例:Substanceなど)との互換性も高いです。これにより、ワークフロー全体の効率が向上します。
ノイズを抑えるDenoiserと効率的なレンダリング最適化技術
レンダリング時のノイズは、作業時間や画質に直結する悩みのひとつです。V-Rayでは「Denoiser」というノイズ除去機能が標準搭載されており、短時間で高品質な画像を出力できます。
とくに「NVIDIA AI Denoiser」は、レンダリング途中でもノイズをリアルタイムに除去してくれるため、プレビュー段階でも仕上がりを確認しやすくなります。最終出力時には「V-Ray Denoiser」を使い、サンプル数を抑えつつ滑らかな結果を得られます。
また、レンダリング時間を短縮するための「Adaptive Sampling」や「Bucket/Progressiveモード切替」なども用意されています。これらを適切に設定すれば、制作全体の効率がぐっと上がります。
高解像度パースやアニメーション制作にも対応する柔軟性
V-Rayは、静止画だけでなく動画制作にも対応できる柔軟性を持っています。特に建築プレゼンなどでは、ウォークスルーや外観アニメーションが求められる場面も多く、V-Rayの安定性と画質は大きな武器になります。
たとえば、アニメーションでは「レンダリングパス」を分けて出力し、ポストプロダクションで合成する方法が一般的です。V-Rayでは「Render Elements」機能を使って、Z-Depth、Reflection、LightMixなどを個別に出力でき、編集の自由度が高まります。
高解像度パース(例:8K出力)にも対応しており、ポスターや大型パネル用途でも問題なく使用できます。メモリ使用量や出力時間は増えますが、プロジェクトの規模に応じて十分な拡張性を備えています。
対応プラットフォームと主要ソフト連携
V-Rayは、さまざまな3DCGやBIMソフトと連携できることで、業務フローへの導入がしやすいのも魅力です。建築設計やビジュアライゼーションの現場では、使用するソフトに応じて最適なV-Ray製品を選ぶ必要があります。この章では、対応ソフトの違いや特徴、推奨環境まで、選定に役立つ情報を整理して紹介します。
SketchUp・3ds Max・Rhino・Revit・Cinema 4Dなどの対応環境
V-Rayは、建築・設計・CG業界で使われる主要な3DCG・BIMソフトに対応しています。用途や業務フローに応じて、必要なバージョンを選ぶのがポイントです。
対応ソフトには以下のようなものがあります:
- V-Ray for SketchUp:建築設計者に人気。手軽に使えて操作が直感的。
- V-Ray for 3ds Max:高機能・拡張性重視。大規模・高精度なビジュアライゼーションに向いています。
- V-Ray for Rhino/Revit:CADベースのワークフローと連携しやすく、設計検討からCG制作までスムーズに進められます。
- V-Ray for Cinema 4D:映像制作寄りのワークフローに最適で、モーショングラフィックスにも強みがあります。
それぞれの製品は、ソフト固有のUIに最適化されているため、導入時に操作の習熟度をチェックすると安心です。
V-Ray for SketchUpとV-Ray for 3ds Maxの違いと選び方
同じV-Rayでも、SketchUp版と3ds Max版では機能や自由度に違いがあります。選定基準は、制作物の規模と目的です。
- V-Ray for SketchUpは、操作がシンプルで直感的。建築設計の確認やプレゼン用のパース制作に向いています。小規模なプロジェクトや初学者には十分な機能がそろっています。
- V-Ray for 3ds Maxは、プロフェッショナル向け。マテリアルエディタやライティング、Render Elementsの出力など、細かな設定が可能です。大規模なビジュアライゼーションやアニメーション制作に最適です。
たとえば「SketchUpで設計→3ds Maxで仕上げ」というワークフローも実務で多く見られます。
Chaos CloudやChaos Cosmosとの連携で制作効率を向上
V-Rayは、単体でも高機能ですが、Chaos社が提供するクラウドおよび素材ライブラリと連携させることで、作業効率が飛躍的に向上します。
- Chaos Cloud:クラウド上でレンダリングを実行できるサービス。重い計算処理をローカルPCに依存せず、他作業と並行して進められます。アップロード後はブラウザから進行状況を確認でき、複数ジョブの同時処理も可能です。
- Chaos Cosmos:高品質なマテリアル・HDRI・家具・植栽などをすぐ使える素材ライブラリです。商用利用OKのアセットが多く、ドラッグ&ドロップで簡単に挿入できます。
特に短納期案件では、これらを併用することでクオリティを保ちながらスピードアップが図れます。
GPUレンダリング対応と推奨PCスペック(CPU・GPUの選び方)
V-RayはCPU・GPUのどちらでもレンダリングできますが、最近はGPU対応の強化が進み、NVIDIA RTXシリーズによる高速化が大きなメリットとなっています。
- GPUレンダリング:速度重視。試行回数を増やしたい人やリアルタイムプレビューを活用したい人に向いています。
- CPUレンダリング:安定性重視。メモリ容量に余裕がある場合、大規模シーンでも破綻しにくいです。
推奨構成の一例
| 項目 | 推奨スペック |
|---|---|
| GPU | NVIDIA RTX 3080以上(VRAM12GB以上推奨) |
| CPU | Intel Core i9 / AMD Ryzen 9 |
| メモリ | 32GB以上(大規模シーンなら64GB推奨) |
| ストレージ | NVMe SSD(キャッシュ書き出しが速い) |
制作規模や求める画質によって必要スペックは変わるので、プロジェクトに合わせて構成を調整すると安心です。
建築パース制作におけるV-Ray活用術
V-Rayの真価は、建築パース制作における実践的な活用で発揮されます。素材の設定、光の演出、カメラ構図、仕上げ処理まで、細部にこだわることでフォトリアルな表現が可能になります。この章では、V-Rayを用いた建築CG制作の具体的な手法を順を追って解説します。
①リアルな素材設定と反射・屈折の表現テクニック
V-Rayで建築パースをフォトリアルに仕上げるうえで、マテリアル設定は最も重要な要素のひとつです。特に、反射や屈折の表現が現実感を左右します。
基本は「PBR(物理ベースレンダリング)」の考え方に沿って設定します。マテリアルには、次のようなパラメータがあります:
- Diffuse:素材のベースカラー。テクスチャを使うとリアルになります。
- Reflection(反射):0〜1で強さを調整。金属なら高め、木材や布は控えめに。
- Glossiness/Roughness(光沢):鏡面反射の粗さ。数値が高いほどシャープな反射に。
- IOR(屈折率):透明素材で重要。ガラスは1.52、プラスチックは1.48などが目安です。
- Bump/Normal Map:微細な凹凸を表現し、質感に深みを加えます。
たとえば、窓ガラスをリアルに見せたい場合は、「Reflection:0.95」「Glossiness:0.98」「IOR:1.52」「薄くBump Mapを追加」などの設定が効果的です。
素材設定だけでも画の印象は大きく変わるため、参考写真と見比べながら微調整すると仕上がりに差が出ます。
②HDRIと物理ライティングを使った自然光シミュレーション
リアルな光の再現には、「HDRI(高輝度画像)」を使った環境ライティングが効果的です。HDRIは空や都市風景などの光を360度包み込んでシミュレーションでき、自然光の柔らかい陰影や色温度を再現できます。
設定の流れは以下の通りです:
- V-Ray Dome Lightを設置
- HDRI画像(.hdrまたは.exr)を「Texture」に読み込み
- 「Spherical」と「Invisible」にチェック
- 必要に応じて「Rotation」で太陽の方向を調整
たとえば、晴れた昼間のシーンなら「HDRI:8K、晴天」、夕景なら「HDRI:黄昏、太陽が低い角度」のように目的に合ったHDRIを選ぶとリアルに仕上がります。
さらに、屋内シーンでは「V-Ray Sun+Sky」や「IESライト」を併用して、現実の光源を模倣すると効果的です。
③カメラ設定(露出・被写界深度)による写真のような画作り
V-Rayでは「物理カメラ」を使って、実写のような画作りが可能です。とくに、露出や被写界深度の設定は、写真表現の完成度を大きく左右します。
基本設定の例:
- F Number(絞り値):f/8〜f/16(風景向け)、f/2.8〜f/5.6(背景ぼかし向け)
- Shutter Speed:1/60〜1/250秒程度が標準
- ISO:100〜400程度で調整(高すぎるとノイズ増)
- Focus Distance:主被写体に合わせる
- Bokeh(ボケ効果):オンにすると背景がやわらかくなりリアリティが増します
たとえば、エントランスの詳細を強調したいときは「F Number:2.8」「Focus Distance:ドア前面」などにすると、背景が適度にボケて主題が引き立ちます。
自然な構図と光量を意識することで、レンダリング結果が“CGっぽさ”から一歩抜け出せます。
④ポストプロダクションでの色調調整とトーンマッピングのコツ
レンダリング後の仕上げには、「V-Ray Frame Buffer(VFB)」を活用します。VFB内にはトーンマッピング機能やカラーバランス調整機能があり、画像をPhotoshopなしでも整えることができます。
代表的な操作:
- Exposure:全体の明るさを調整
- Highlight Burn:白飛びを抑える
- White Balance:色温度(暖色・寒色)を調整
- Curves/Levels:コントラストと階調を整える
- LUT(Look-Up Table):写真風の色調に一発変換できるプリセット
たとえば、室内シーンでやや黄ばんだ照明に見える場合、「White Balanceを青寄りに」「Highlight Burnを抑える」だけで清潔感のある印象に変わります。
VFB上で完結できる処理が増えることで、効率よくプロ品質に仕上げることができます。
導入方法とライセンスプラン
V-Rayの導入には、用途や規模に応じたライセンスの選定と、適切なインストール手順が必要です。また、教育機関向けの無料プランやクラウド環境の活用も可能で、柔軟な運用ができます。この章では、V-Rayの購入形態と基本的な導入手順を詳しく解説します。
V-Ray Solo/Premium/Enterpriseの違いと選び方
V-Rayのライセンスは大きく分けて「Solo」「Premium」「Enterprise」の3種類があり、チームの規模や利用スタイルに応じて選ぶことができます。
- Solo:1人のユーザーが1台のPCで使用する前提のライセンスです。価格が最も抑えられており、個人制作者やフリーランスに向いています。
- Premium:複数のPCで利用可能なフローティングライセンス形式で、Chaos Cloud・Chaos Cosmosなどの機能もすべて利用できます。中〜大規模チーム向けです。
- Enterprise:多数のライセンスをまとめて管理できる法人・教育機関向けプラン。一括管理やボリュームディスカウントが可能です。
たとえば、フリーランスでSketchUp向けに1台だけ使うならSoloで十分です。一方、3ds MaxとRhinoを使い分けるチームならPremium以上が現実的です。
学生・教育機関向けライセンスと無料トライアルの活用法
V-Rayには、学生や教育機関向けの特別ライセンスが用意されています。これらは商用利用は不可ですが、製品版と同じ機能を使うことができます。
- 教育ライセンス(Student/Teacher):Chaos公式サイトから申請し、在籍証明を提出すれば1年単位で利用可能です。
- 教育機関ライセンス:学内のPCで一括導入が可能。学科単位の導入実績も多く、授業や研究に利用されています。
- 無料トライアル:公式サイトより14日間の試用版を申請可能。初回導入の動作確認や評価に便利です。
特に学生ユーザーは、卒業後に商用版へスムーズに移行できるメリットもあり、将来のキャリア形成にも役立ちます。
インストールから初回レンダリングまでの基本セットアップ
V-Rayの導入は、Chaosアカウントの作成から始まります。基本的な流れは以下の通りです。
- Chaos公式サイトでアカウントを作成
- ライセンスを購入またはトライアルを申請
- 対応ソフトに合ったV-Rayをダウンロード・インストール
- ログインしてライセンスをアクティベート
- 起動後、簡単なテストシーンでレンダリング確認
たとえば、SketchUp版の場合は「V-Ray for SketchUp」をインストール後、ツールバーにV-Rayボタンが追加され、そこからすぐにレンダリングが可能になります。
初期設定のままでもレンダリングは可能ですが、「出力サイズ」「レンダーエンジン(CPU/GPU)」「DenoiserのON/OFF」などはあらかじめ確認しておくとスムーズです。
Chaos Cloudを利用したクラウドレンダリングの始め方
Chaos Cloudは、レンダリングをクラウド上で実行できるサービスです。PCに負荷をかけず、他の作業と並行して進められるのが大きな利点です。
基本的な使い方:
- Chaos Cloudクレジットを購入(初回は無料分あり)
- V-RayのRender Settingsで「Cloud Rendering」を選択
- プロジェクトをアップロード(.vrsceneファイルが自動生成)
- クラウド上でレンダリング開始、進捗はブラウザで確認
- 完成後、画像をダウンロードして確認・修正へ
たとえば、8Kサイズの高解像度パースや大量のバリエーションを一気に処理したいときに便利です。ローカルのスペックに依存せず、品質を保ったまま効率的に作業を進められます。
V-Rayを使いこなすための学習リソース
V-Rayは多機能で柔軟なレンダラーですが、効果的に使いこなすには継続的な学習が欠かせません。公式のドキュメントや講座、コミュニティを活用することで、初心者から上級者まで段階的にスキルを伸ばせます。この章では、信頼できる学習リソースを紹介します。
公式ドキュメント・チュートリアル・ユーザーコミュニティ
V-Rayを学ぶ第一歩として、Chaos社が提供する公式ドキュメントとチュートリアルは非常に有用です。製品別に細かく分類されており、各機能の使い方や設定項目を体系的に確認できます。
- 公式ドキュメント:https://docs.chaos.com よりアクセス。SketchUpや3ds Maxごとに解説が分かれています。
- 公式チュートリアル:初心者向けのスタートガイドから、高度なテクニックまでカバー。YouTubeのChaos公式チャンネルにも動画が豊富です。
- フォーラム&コミュニティ:Chaos Community(https://forums.chaos.com)では、世界中のユーザーが質問・回答・作例共有を行っています。
特に、具体的なトラブルや設定例はユーザー同士のやりとりが役立ちます。過去スレッドの検索もおすすめです。
Chaos Academyや認定トレーニングプログラムの紹介
より体系的に学びたい方には、Chaosが提供する「Chaos Academy」や認定トレーナーによる講座が有効です。
- Chaos Academy:オンライン形式で、V-Rayの基本から応用までを順に学べる有料講座。修了者には修了証も発行されます。
- 認定トレーナー(CTP:Chaos Certified Trainer):国内外に複数存在し、対面・オンラインでのトレーニングが可能。日本国内にも対応可能な講師が増えています。
企業研修や建築系学校でのカリキュラムにも導入が進んでおり、プロフェッショナルを目指す方にとって信頼性の高い学習手段です。
実践で学ぶ建築パース制作のワークフロー
V-Rayを深く理解するには、実際にシーンを作ってレンダリングする「実践型の学習」が最も効果的です。以下は、一般的な建築パース制作のワークフローです。
- モデル作成(SketchUpなど)
- マテリアル設定(PBRマテリアルの割当)
- ライティング(HDRI+補助光)
- カメラ設定(構図・露出・被写界深度)
- レンダリング設定(解像度・Denoiser・Render Elements)
- VFBでポストプロセス(色調整・LUT適用)
- 出力→プレゼン用加工(Photoshop等)
実務では、1〜2パターンのカットを決めてから、ライティングとカメラを細かく調整していく流れが多いです。1シーンを通して仕上げることで、設定の因果関係が実感できます。
よくあるトラブルとその解決方法
V-Rayは高機能ゆえに、設定ミスや環境依存によるトラブルも起こりやすいです。以下は特によくあるケースと対処法です。
| トラブル内容 | 解決方法 |
|---|---|
| ライセンスが認識されない | Chaos License Serverの再起動/ログイン確認 |
| レンダリングが止まる・落ちる | メモリ不足→解像度を下げる/Render Elementsを減らす |
| 黒い画面が出力される | カメラ露出の見直し/ライトONか確認 |
| マテリアルが反映されない | UV展開/マテリアルリンクの再確認 |
| GPUレンダリングで異常が出る | GPUドライバの更新/VRAM超過を疑う |
Chaosのサポートチームやコミュニティも活用しつつ、問題を一つひとつ整理して対応していくのがポイントです。
よくある質問(FAQ)
V-Rayの導入や運用を検討する際には、初心者からプロまで多くの共通した疑問が出てきます。この章では、そうしたよくある質問に対して、実務経験に基づいた視点から具体的に答えていきます。導入判断や日常の運用でつまずかないためにも、事前にチェックしておくと安心です。
Q1.V-RayとCoronaはどちらが初心者に向いている?
初心者にとっての使いやすさを比較するなら、「Corona」のほうが学習コストは低いです。UIが直感的で、デフォルト設定でも比較的高品質なレンダリング結果が得られるため、初期のつまずきが少ないのが特徴です。
一方で、「V-Ray」は設定の自由度が高く、表現力の幅も広いため、応用的な制御やプロフェッショナル用途に強みがあります。習得には少し時間がかかりますが、実務で通用するスキルが身につきます。
たとえば、操作性を優先するならCorona、将来的に多様な案件に対応したいならV-Rayがおすすめです。
Q2.GPUレンダリングとCPUレンダリング、どちらを選ぶべき?
選び方のポイントは、重視するのが「処理速度」か「安定性」かです。
- GPUレンダリングは、NVIDIA RTXなどの高性能GPUを使って高速に処理できるのが特長です。試行回数を重ねたい人や、リアルタイムに近いワークフローを求める人に向いています。
- CPUレンダリングは、VRAMの制約がなく、大規模・高解像度シーンに強く、メモリの多い環境で安定して動作します。
たとえば、建築外観の静止画を高精度で仕上げるならCPU、室内のライティングを何パターンも試したい場合はGPUが効率的です。
Q3.SketchUp版と3ds Max版のレンダリング品質に差はある?
最終的なレンダリング品質そのものに大きな差はありません。V-Rayのレンダリングエンジン自体は共通だからです。
ただし、3ds Max版はより細かな設定や拡張機能が利用できるため、表現力の幅や制御性において優位性があります。たとえば、Render Elementsやパス出力、アニメーション制御の自由度が高いのは3ds Max版です。
一方で、SketchUp版はUIがシンプルで導入しやすく、設計者でも扱いやすいのが特長です。
Q4.商用利用ライセンスと教育ライセンスの制限について
教育ライセンスは、学生・教職員・教育機関向けに提供されており、非商用利用に限定されています。つまり、商業案件での使用や成果物の販売は不可です。
一方、商用利用には**正規のV-Rayライセンス(Solo/Premiumなど)**を契約する必要があります。違反するとライセンス停止や違約金などのリスクもあるため、利用目的に応じたライセンス選定が重要です。
初めは教育ライセンスで学習し、商用化タイミングで正式なライセンスに移行する流れがおすすめです。
Q5.他の3DCGソフトへの乗り換えはスムーズにできる?
V-RayはChaos社の共通ライセンス管理「Chaos ID」を通じて運用されており、ライセンスの乗り換えや複数環境での併用が比較的スムーズです。
たとえば、SketchUp版から3ds Max版に乗り換える場合も、Chaos IDを共通で使ってアクティベーションできます。ただし、ライセンスの種類(Solo or Premium)によって使える台数や同時利用数に制限がある点には注意が必要です。
また、マテリアルやライティング設定の移行には手直しが必要になることが多いため、完全な互換ではない点も理解しておくと安心です。
