建築パースの価格相場と見積もりの作り方【クライアント向け】

建築パースは、建築設計のプレゼンや広告、不動産販売、施工計画など、さまざまな場面で活用される重要なビジュアルツールです。しかし、「建築パースの価格はどのくらい？」 「どのように見積もりを作成すればいいのか？」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

実際、建築パースの価格は制作内容や目的、使用するソフトウェアによって大きく変動 します。また、見積もりの作成方法を理解しておくことで、適正な価格で依頼し、コストを最適化することが可能です。

本記事では、建築パースの一般的な価格相場や料金が変動する要因、見積もり作成のステップ を詳しく解説します。建築パースを依頼する際の参考にして、納得のいく取引を進めましょう。

1.建築パースの価格相場とは？

建築パースの価格は、制作の目的やクオリティ、使用するソフトウェアによって大きく異なります。クライアントが求める仕上がりや納期によっても変動するため、適正な価格を理解することが重要です。

一般的な価格帯（国内市場）

パースの種類	価格相場
内観パース（室内のデザイン表現）	3万円〜15万円
外観パース（建物の外観・ファサード表現）	5万円〜20万円
鳥瞰パース（俯瞰視点の全体図）	7万円〜30万円

一般的に、内観パースは比較的安価に制作できる一方で、鳥瞰パースは情報量が多いため高額になりやすい傾向があります。また、プレゼン用や広告用など、用途によっても価格が異なります。

建築パースの価格を決定する5つの要素

1. 制作範囲
   • 内観・外観・鳥瞰のどれを制作するかで価格が変わります。
2. ディテールの細かさ
   • 家具や装飾品の数が多いほど作業量が増加し、価格も高くなります。
3. 納期の長さ
   • 短納期での対応が必要な場合、追加料金が発生することが一般的です。
4. 使用ソフトウェア
   • BlenderやSketchUpを用いた比較的安価なパースもあれば、3ds MaxやLumionを活用した高品質なパースもあります。
5. 修正回数
   • 修正が多くなるほど工数が増え、追加料金が発生しやすくなります。

価格を適切に把握し、目的に合ったパースを選択することが重要です。

関連記事
→ 建築パースの用途｜プレゼン・広告・施工・コンペでの活用法

2.用途別｜建築パースの価格相場一覧

建築パースの価格は、用途によっても異なります。プレゼンや広告、施工用途など、それぞれの目的に応じて求められるクオリティや作業工程が異なるためです。以下に、代表的な用途ごとの価格相場を紹介します。

用途別の建築パース価格相場

用途	内容	価格相場
プレゼン資料	クライアント向け提案・コンペ用	5万円〜15万円
広告・パンフレット	不動産広告・ウェブサイト・パンフレット掲載用	7万円〜20万円
施工図・現場資料	現場での確認・指示資料用	4万円〜10万円
VR・動画用	VR・AR・アニメーション用の3Dパース	15万円〜50万円
SNS・販促コンテンツ	Instagram・Pinterest・YouTube広告用	3万円〜10万円

各用途におけるポイント

1. プレゼン資料用パース
   • クライアントやコンペ審査員に伝わりやすいように、リアルな表現が求められる。
   • 短期間での制作が必要な場合が多く、納期による価格変動が大きい。
2. 広告・パンフレット用パース
   • 視覚的なインパクトが求められるため、高品質なレンダリングやライティングが重要。
   • Photoshopによるレタッチや演出を加えるため、制作費が高くなる傾向。
3. 施工図・現場資料用パース
   • 設計図に忠実な正確な表現が求められる。
   • 視覚的な美しさよりも、寸法や構造の明確さが重視される。
4. VR・動画用パース
   • 動きのある表現や360度の視点を考慮した設計が必要。
   • 通常の静止画パースよりも制作工程が多く、費用が高額になりやすい。
5. SNS・販促コンテンツ用パース
   • 短時間で制作しやすいシンプルなパースが多い。
   • SNS向けのトレンドを取り入れたデザインや加工が重要。

用途に応じて適切なパースを選ぶことで、コストを抑えつつ目的に合った効果的なビジュアルを制作できます。

関連記事
→ 建築パースのレンダリング設定｜フォトリアルな仕上げ方のコツ

3.建築パースの料金が変動する要因

建築パースの料金は一律ではなく、さまざまな要素によって変動します。モデリングの難易度やライティングの設定、納期の長さなどが影響を与えるため、依頼前にどの要素が価格に影響するのかを理解しておくことが重要です。

1. モデリングの複雑さ

3Dモデルの作成は、建築パースの基盤となる工程です。建物の形状や家具のディテールが複雑になるほど、作業時間が増え、料金も上がります。

モデリングの種類	価格目安
シンプルな空間（オフィス、ワンルーム）	3万円前後
中程度の複雑さ（住宅、飲食店）	5万円〜10万円
高度なモデリング（ホテルロビー、商業施設）	10万円以上

2. マテリアル設定の難易度

建築パースのリアルさを決定づける要素のひとつが、マテリアル（素材）の設定です。シンプルなホワイトモデルと、リアルな木目や金属の質感を持つパースでは、作業工程が大きく異なります。

マテリアルの種類	価格目安
単純な素材（ホワイトモデル）	3万円〜
フォトリアルなテクスチャ表現（木材・金属・ガラス）	5万円以上

3. ライティングとレンダリング設定

ライティング（照明設定）は、建築パースの印象を大きく左右する重要な要素です。シンプルな昼間の光設定と、ドラマチックな夕景・夜景では、必要な調整作業が異なります。

ライティングの種類	価格目安
標準的な昼間のライティング	3万円〜
夕景・夜景・HDRIライト使用	5万円以上

また、レンダリング（画像生成）の解像度が高くなるほど、計算時間が増え、制作費用も高くなります。特に4K以上の超高解像度パースは、処理時間の増加によりコストが上昇しやすい傾向があります。

4. ポストプロダクション（後処理）

レンダリング後の画像をより美しく仕上げるために、Photoshopなどで調整を行います。影の強調や色補正、背景合成などの作業が含まれます。

ポストプロダクションの種類	価格目安
基本的な色補正・影調整	2万円〜
Photoshopでの詳細な合成・演出追加	5万円以上

5. 納期と修正回数

短納期での制作は、追加料金が発生することが一般的です。また、修正回数が多い場合も、追加コストがかかる可能性があります。

納期・修正の条件	価格目安
通常納期（2〜3週間）	基本料金
特急納期（1週間以内）	基本料金の1.2〜1.5倍
修正2回まで	基本料金に含まれる
3回以上の修正	追加料金が発生

建築パースの料金を適正に抑えるためには、事前に修正回数や納期の調整を行い、無駄なコストを発生させないことがポイントです。

関連記事
→ 建築パースの影の付け方｜リアルな陰影表現を作る方法

4.クライアント向け｜見積もりの作り方ステップ

建築パースを依頼する際は、見積もりを適切に作成することで、制作コストの透明性を確保できます。ここでは、見積もりの作成手順を4つのステップに分けて解説します。

STEP 1: 依頼内容の明確化

見積もりを取る前に、まず 「どのような建築パースが必要なのか」 を具体的に整理しましょう。

主なポイント:

• 目的: プレゼン用か？広告用か？施工用か？
• 必要なアングル: 内観・外観・鳥瞰のどれか？
• 納期と希望の修正回数: 短納期か？修正は何回まで可能か？

依頼例:
「住宅展示場の広告用に、外観パース2枚・内観パース3枚。納期3週間、修正2回まで希望」

このように詳細を整理すると、スムーズな見積もりが可能になります。

STEP 2: 参考資料の準備

パース制作を依頼する際、参考資料が整っているほど見積もりの精度が上がり、制作コストを抑えやすくなります。

必要な資料:

• 設計図面（CAD・DXF・PDFなど）
• 参考イメージ（Pinterest・Houzz・Instagramなどからピックアップ）
• マテリアル指定（木目・タイル・ガラスなど、使用する素材を明確に）

資料が不足していると、制作側が試行錯誤する必要があるため、追加作業費が発生することがあります。

STEP 3: 必要な作業工程を洗い出す

見積もりを正確にするために、必要な作業工程をリストアップします。

作業工程	内容	作業時間の目安
モデリング	建物・家具・植栽などの3Dモデル作成	5〜10時間
マテリアル設定	木材・金属・布などの質感を再現	4〜6時間
ライティング	自然光・人工光・時間帯に合わせた光源設定	3〜5時間
レンダリング	高解像度画像の生成（2K・4Kなど）	2〜6時間
ポストプロダクション	Photoshopでの色調補正・影追加・演出	4〜8時間

作業時間が長くなるほど費用も上がるため、どの工程が必要かを明確にしましょう。

STEP 4: 見積もり書の作成

見積もり書には、作業内容・時間・単価を明確に記載 しましょう。

見積もり書のサンプル:

作業内容	数量	単価	金額
外観パース（昼景）	1枚	¥80,000	¥80,000
内観パース（リビング）	2枚	¥50,000	¥100,000
ポストプロダクション	3枚	¥10,000	¥30,000
特急納期（1週間）	1回	¥30,000	¥30,000
合計金額（税込）			¥240,000

見積もり書に含めるべき情報:

• 作業内容（パースの種類、枚数、納品形式など）
• 単価と作業時間の明記
• 修正回数の制限（例: 2回まで無料、3回目以降は追加料金）
• 支払い条件（着手金・納品後支払い・分割払いなど）

5.クライアントが知っておくべき見積もりのポイント

建築パースの見積もりを依頼する際は、価格だけでなく 「何が含まれているのか」 をしっかり確認することが重要です。ここでは、見積もりの際に注意すべきポイントを紹介します。

1. 「一式価格」に注意する

「建築パース制作 一式 10万円」といった 一式価格の見積もり では、具体的な内訳が不明な場合があります。追加費用が発生しやすいため、見積もりの内訳を明確にしてもらいましょう。

チェックすべきポイント:

• 作業内容は詳細に記載されているか？（モデリング・マテリアル設定・レンダリングなど）
• 修正回数の上限は決まっているか？（追加修正にかかる費用も要確認）
• 納品形式と解像度は明記されているか？（印刷用・ウェブ用の違い）

2. 修正ポリシーを確認する

建築パースの修正は、回数が増えると追加料金が発生することが一般的です。

確認すべき点:

• 無料で修正できる回数は何回か？（通常は2回まで無料が一般的）
• 3回目以降の修正費用はいくらか？
• 修正範囲に制限はあるか？（大幅なデザイン変更は追加費用になることが多い）

事前に修正ルールを把握しておくことで、余計なコストを防げます。

3. 納品形式と解像度を確認する

納品データのフォーマットや解像度は、用途に応じて適切なものを指定する必要があります。

用途	推奨解像度・フォーマット
印刷用（パンフレット・広告）	4K（3840×2160px）・TIFF形式
ウェブ用（SNS・HP掲載）	2K（1920×1080px）・JPEG/PNG
施工用（図面の確認用）	3K（3000×2000px）・PDF/DWG

解像度の指定がないと、用途に合わない画像が納品される可能性があるため注意が必要です。

4. 支払い条件を確認する

支払いのタイミングや方法も、事前に確認しておくべきポイントです。

一般的な支払い条件:

• 着手金あり（50%前払い・50%納品後） → フリーランスや小規模制作会社に多い
• 納品後一括払い → 法人取引や大手制作会社で一般的
• 分割払い（長期プロジェクト向け） → 継続発注がある場合に利用可能なケースも

支払い条件の認識違いを防ぐために、契約前にしっかり確認しましょう。

6.コストを抑えるための4つのヒント

建築パースの制作は、高品質なものほど費用がかかる傾向があります。しかし、依頼方法を工夫することで、必要なクオリティを維持しつつコストを抑えることが可能です。ここでは、コストを抑えるための具体的な方法を4つ紹介します。

1. 依頼内容を具体的にする

建築パースのコストが上がる要因の一つが「修正回数の増加」です。修正が多くなると追加費用が発生するため、最初の依頼時点でできるだけ詳細な指示を伝えることが重要です。

具体的な指示例:

• 「外観パースは昼景、内観パースはナチュラルな木目調の仕上げにしてください。」
• 「壁紙や床の素材は、添付した参考画像と同じ雰囲気でお願いします。」

このように、イメージを具体的に伝えることで、手戻りを減らし、無駄な修正費用を防げます。

2. 参考資料を充実させる

制作会社やフリーランスに依頼する際、参考資料が不足していると 「どのような仕上がりを求めているのか」 の認識違いが生じやすくなります。その結果、方向性のずれによる修正回数の増加や、追加費用の発生につながることも。

準備すべき参考資料:

• 設計図面（CADデータ・DXF・PDF）
• 完成イメージに近い写真やパース（Pinterest・Instagramなど）
• 使用したいマテリアルの種類（木材・タイル・金属など）

事前に十分な情報を共有すれば、制作時間が短縮され、コスト削減につながります。

3. 定期的な発注を検討する

フリーランスや制作会社と継続契約を結ぶことで、ボリュームディスカウント（割引） を受けられる場合があります。特に、不動産会社や設計事務所など、定期的に建築パースが必要な場合は、「年間契約」や「まとめ発注」 を検討すると良いでしょう。

コスト削減のポイント:

• 同じデザイナーに継続依頼することで、最適なワークフローを確立できる
• 一括で複数枚発注すると、単価が下がることが多い
• 短納期の特急料金を回避しやすくなる

単発の発注よりも、長期的な視点で依頼することで、結果的にコストを抑えることが可能になります。

4. 必要なアングルを絞る

建築パースの費用は、制作するパースの枚数に比例して増加 します。そのため、必要最低限のアングルに絞ることで、コストを削減できます。

適切なアングル選びのポイント:

• プレゼン用: メインとなるファサード1枚＋内観1〜2枚
• 広告用: 魅力を強調できるアングルのみ（不要な角度のパースを削減）
• 施工用: 施工に必要な視点のみを選定

不要なアングルまで制作すると、その分の費用が上乗せされてしまいます。事前に「どの視点が必要か」を整理 し、適切な枚数だけ依頼することでコストを最適化できます。

上記のポイントを押さえれば、クオリティを落とすことなく、効率的に建築パースを発注できます。

7.見積もり依頼時のチェックリスト

建築パースの見積もりを依頼する際は、必要な情報を事前に整理し、明確に伝えることが重要です。情報が不足していると、適正な見積もりが出せなかったり、後から追加費用が発生する可能性があります。ここでは、スムーズに見積もりを依頼するためのチェックリストを紹介します。

1. 用途・目的を明確に伝える

まず、建築パースの使用目的を明確にする ことで、適切なクオリティや作業工程が決まります。

用途	主な特徴
プレゼン用	コンペ・クライアント提案向け。デザイン性が重要
広告・パンフレット用	魅力的なビジュアルが必要。ライティング・加工が重要
施工用	正確な寸法・構造を重視。視覚的な美しさよりも情報の正確さが優先

2. 必要なパースの枚数・アングルを指定する

パースの種類によって価格が変わるため、事前に 「何枚・どのアングルで制作するか」 を決めておきましょう。

指定すべき内容:

• 外観パース（正面・側面・背面）
• 内観パース（リビング・キッチン・バスルームなど）
• 鳥瞰パース（全体の配置図）

3. 希望する納期・修正回数を提示する

納期が短いほど特急料金が発生する可能性があるため、余裕をもったスケジュールで依頼する ことをおすすめします。

納期の種類	価格への影響
標準納期（2〜3週間）	基本料金
特急納期（1週間以内）	基本料金の1.2〜1.5倍
超特急納期（3日以内）	追加料金が大幅に発生

また、修正回数が増えると追加費用がかかる ことが多いため、無料修正の範囲を事前に確認しておきましょう。

4. 設計図面・マテリアル指定・参考イメージを準備する

事前に資料を用意することで、手戻りを減らし、コストを抑えること ができます。

必要な資料:

• 設計図面（CADデータ・DXF・PDF）
• 完成イメージに近い写真やスケッチ（Pinterest・Instagramなど）
• 使用したいマテリアルの指定（木目・タイル・ガラスなど）

5. 予算目安がある場合は事前に共有する

「いくらくらいで制作できるか？」を事前に相談することで、予算内で可能な範囲の提案を受けられる 可能性が高まります。

予算に応じた調整例:

• 予算が少ない場合: ディテールを簡略化し、シンプルなパースにする
• 高品質が必要な場合: フォトリアルなレンダリングやポストプロダクションを追加

これらの項目を事前に整理しておくことで、スムーズに見積もりを依頼でき、トラブルを未然に防ぐことができます。

8.まとめ

建築パースの価格は、制作内容・目的・使用ソフトによって大きく異なる ため、適正な価格で依頼するには、相場や費用が変動する要因を理解しておくことが重要です。

 価格相場の目安

• 内観パース: 3万円〜15万円
• 外観パース: 5万円〜20万円
• 鳥瞰パース: 7万円〜30万円

 費用を左右する主な要因

• モデリングの複雑さ: シンプルな構造ほど安価
• マテリアルの設定: フォトリアルな仕上げほどコスト増加
• ライティングとレンダリング: HDRIや夕景の設定は追加料金の可能性
• ポストプロダクション: Photoshopでの編集が入ると費用アップ
• 納期と修正回数: 短納期や多くの修正が発生すると追加料金がかかる

また、見積もりを作成する際は、作業内容・時間・単価を明確に記載 し、不要なトラブルを防ぐことが大切です。さらに、コストを抑えるためには、依頼内容を具体化し、参考資料を充実させる ことが効果的です。

建築パースは、設計意図を正確に伝えたり、クライアントへのプレゼンテーションを成功させたりするために欠かせないツールです。適正な価格で高品質なパースを依頼するために、見積もりのポイントを押さえ、信頼できる制作会社やフリーランスと協力しましょう。