Inpaintingとは?家具消し・差し替え・部分修正で使うAIの基本

3DCGで仕上げた建築パースに「このソファだけ別のデザインにしたい」「映り込んだ配管を消したい」といった部分的な修正依頼が入ることは珍しくありません。

従来であればモデルの差し替えや再レンダリングが必要でしたが、AIのInpainting技術を使えば、画像の一部分だけを指定して再生成できます。

この記事では、Inpaintingの基本的な仕組みから、建築パースでの具体的な活用シーン、品質を高めるためのマスク設定やパラメータ調整のコツまでを整理します。Image to Image(全体変換)との違いも押さえておくと、修正作業の効率が大きく変わるでしょう。

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目次

Inpaintingとは何か——画像の一部だけをAIで修正する技術

Inpaintingは、画像の「変えたい部分」だけをAIに再生成させ、残りはそのまま保持する部分修正技術です。全体の構図やレイアウトを崩さずに局所的な変更ができるため、建築パース制作の後処理で重宝します。

Inpaintingの基本的な仕組み

Inpaintingの核心は「マスク」にあります。修正したい部分をマスク(塗りつぶした領域)で指定すると、AIがその領域だけを周囲の文脈に合わせて再生成する——これが基本的な処理の流れです。塗り分けの外側には一切手を加えないため、画像全体の構図・色味・光の方向を維持したまま、必要な箇所だけを変更できます。

変化の度合いはDenoising Strength(ノイズ除去強度)で制御します。0.3〜0.5に設定すると元画像に近い微修正になり、0.7〜1.0に上げると大きく異なる要素への差し替えが可能です。家具の色味を少し変える程度なら低めの値、まったく別の家具に入れ替えるなら高めの値を選ぶのが基本的な考え方になります。

なお、マスクの白黒が示す意味(白=修正領域、黒=保持領域)はツールによって異なる場合があります。ComfyUIとStable Diffusion WebUIでは挙動が逆転するケースもあるため、使用するツールのドキュメントで必ず確認してください。

ちなみに、Inpaintingが「画像の内側を修正する」技術であるのに対し、Outpaintingは「画像の外側を拡張する」技術です。レンダリングの画角が足りなかった場合に周囲を補完する用途で活用できます。

Image to Image(全体変換)との違い

Inpaintingと混同されやすいのがImage to Image(Img2Img)です。Img2Imgは画像全体の雰囲気・質感を変換する技術であり、構図を保ちつつスタイル全体を変える用途に適しています。

一方、Inpaintingは「この部分だけ変えたい」という局所的な修正に特化しており、指定した範囲以外には影響を与えません。建築パース制作における使い分けの判断軸はシンプルです。全体の雰囲気やトーンを変更したい場合はImg2Imgを選択し、家具の差し替えや不要物の除去といった部分修正にはInpaintingを選択します。

実務では、まずImg2Imgで全体のスタイルを仕上げてから、気になる部分をInpaintingで修正する——という2段階の流れが効率的でしょう。

建築パースでのInpainting活用シーン

Inpaintingは3DCGの再レンダリングなしに部分修正を完結できるため、クライアントの細かな修正依頼への対応速度を大きく変える技術です。

家具・インテリアの差し替え

内観パースで最も頻度が高い活用法が家具の差し替えです。3DCGで作成した内観パースのソファやテーブル、照明器具などを、Inpaintingで別のデザインに入れ替えられます。

クライアントから「このソファだけ北欧スタイルにしてほしい」といった要望があった場合、3DCGモデルを探して配置し直す手間をかけずに、AIで素早く対応できる点がメリットです。差し替え精度の鍵を握るのは、マスクを家具の輪郭に沿って正確に作成すること。ComfyUIではSAM/SAM2(Segment Anything Model)などのセグメンテーションノードを使い、家具の輪郭を自動検出して塗り分けを生成する方法もあります。

ただし、自動生成された塗り分けは輪郭の精度が不完全な場合があるため、手動で微調整するのが実務的です。また、ControlNetのInpaintingモデルを併用すると、家具を差し替えつつ空間の奥行き(Depth情報)を保持した修正が可能になります。

不要な要素の除去と背景の変更

3DCGレンダリング時に映り込んだ不要な配管・手すり・電線などを、Inpaintingで自然に除去できます。対象物をマスクで覆い、プロンプトで周囲と馴染む表現を指示すれば、違和感の少ない仕上がりが得られるでしょう。

窓の外の景色変更も実用的な活用法の一つです。隣のビルが映り込んだ窓ガラス部分に修正範囲を適用し、「緑豊かな景観」や「青空」といったプロンプトで再生成すると、物件の印象を大きく変えられます。外観パースの空の差し替え(曇天から晴天、昼から夕焼け)にも同じ手法が使えます。

ホームステージングへの応用

空室の写真やCGに家具を追加する「ホームステージング」でも、Inpainting技術が活用されています。空室写真の床面や壁面をマスクし、インテリアを配置する手法が不動産業界で広がりつつあります。

REimagine HomeやVirtual Staging AIなどのAIホームステージングサービス(2026年3月時点)では、Inpainting技術をベースにした家具配置・インテリア変更が可能で、月額数千円程度から利用できるものもあります。建築パース制作者にとっては、竣工後の空室写真をステージングするという新しい業務領域の可能性が開けるかもしれません。

Inpaintingの品質を上げるコツ

Inpaintingの出力品質は、マスクの作り方とパラメータ設定で大きく変わります。適切な設定を押さえておくと、手戻りの少ない効率的な修正が実現できるでしょう。

マスクの作り方と主要パラメータ

マスクは対象物の輪郭よりやや大きめに取るのがポイントです。数ピクセル程度の余白を設けると(画像解像度に応じて調整)、AIが周囲の情報を参照しやすくなり、境界が自然に仕上がります。逆にマスクが対象物にぴったりすぎると、修正部分と元画像の境界が目立ちやすくなるため注意が必要です。

Inpaintの参照範囲には「マスク部分のみ」と「画像全体」の2モードがあります。小さな修正(照明器具の変更など)は指定領域のみで十分ですが、大きな家具の差し替えでは画像全体を参照させた方が空間との整合性が保たれます。

Denoising Strengthの目安は用途で異なります。家具の色味や質感の微調整であれば0.4〜0.6の範囲が安定し、まったく別の家具への完全な差し替えでは0.7〜0.9程度まで上げるのが一般的です。

解像度も品質に直結する要素です。Inpaint対象領域を使用モデルの推奨解像度以上にクロップして処理すると、細部の品質が向上します。SD1.5であれば512×512以上、SDXLであれば1024×1024以上が目安になるでしょう。

さらに、Inpainting専用にファインチューニングされたモデル(SDXL-Inpainting等)を使用すると、通常モデルでのInpaintingよりもマスク境界の自然さや再生成品質が大幅に向上します。品質にこだわる場合は、通常モデルとInpainting専用モデルを使い分けてみてください。

まとめ

Inpaintingはマスクで指定した部分だけをAIで再生成する部分修正技術です。本記事の要点を振り返ります。

  • Inpaintingはマスクで指定した領域のみを再生成し、それ以外を保持する技術です。Denoising Strengthで変化の度合いを制御します
  • 建築パースでは家具の差し替え、不要物の除去、窓の外の景色変更など、部分的な修正に実用的です
  • 全体の雰囲気やトーンを変えるにはImg2Img、部分修正にはInpaintingという使い分けが基本になります
  • マスクは対象物より少し大きめに作成し、Inpainting専用モデルの活用で品質をさらに高められます

Inpaintingと組み合わせて使う機会が多い関連技術についても、あわせて確認しておくと実務での応用幅が広がります。

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