
BIM×Blender連携完全ガイド|Revit・ArchiCAD対応の実践手法と可視化ワークフロー
建築設計やプレゼンで「BIMモデルをもっと魅力的に見せたい」と感じたことはありませんか?RevitやArchiCADといったBIMソフトでは設計情報の整理に優れている一方、ビジュアル表現や感覚的な伝達には限界があります。そこで注目されているのが、無料で高機能な3DCGツール「Blender」との連携です。
本記事では、BIMモデルをBlenderで可視化する方法を、アドオン活用・中間形式の使い分け・実際の事例とともに詳しく解説します。設計者目線で再現性のある手順を紹介しながら、リアルなレンダリング・アニメーション・VR活用まで網羅。さらに、RevitやArchiCADとの具体的な連携手法、データ最適化、スムーズな可視化フローまで実務に役立つ内容を整理しました。
BIMとBlenderを組み合わせれば、設計の意図をもっと伝えやすくなり、施主やチームとの合意形成もスピードアップします。ぜひご自身の設計プロセスに取り入れてみてください。
BIMモデルをBlenderに連携する理由と導入メリット
BIMモデルをBlenderに連携する最大の理由は、表現力の強化と可視化の自由度です。RevitやArchiCADでは難しいビジュアル表現やインタラクティブな活用が、無料のBlenderを使えば実現できます。ここでは、設計レビューやプレゼンでの効果、コスト削減の観点から、Blender導入のメリットを整理します。
BlenderでBIMモデルを扱う価値(リアルレンダリング・アニメーション・VR対応)
BIMモデルをそのままでは表現しにくいリアルな質感やアニメーション、VR化がBlenderを使えば可能になります。特にBlenderは無料でありながら、フォトリアルなレンダリングやインタラクティブなウォークスルーに対応している点が魅力です。
例えば、Cyclesレンダーでは実際の光の挙動を再現した物理ベースレンダリング(PBR)が可能です。Eeveeを使えば、リアルタイムでの確認やVRプレビューがサクサク進められます。これにより、設計段階から質感や空間の印象を高精度で確認できます。
また、BIMモデルをアニメーションさせることで、施工プロセスの説明や可動部の動作確認など、図面では伝えにくい情報を効果的に可視化できます。
つまり、Blenderを導入することで、静的な図面から動的で説得力のあるプレゼンへと進化させることができます。
RevitやArchiCADだけでは難しいビジュアル表現の幅を広げる
RevitやArchiCADにはレンダリング機能がありますが、光の反射や透明度、金属感、被写界深度(DOF)などの繊細な表現は苦手です。Blenderを使うと、これらの演出が格段に向上します。
具体的には、HDRI(高ダイナミックレンジ画像)を使った自然光の再現や、IESデータを用いたリアルな照明表現が可能になります。これにより、昼光・夜景・間接照明の効果も簡単に確認できます。
加えて、被写界深度やブラーといったカメラ効果により、印象的な構図を作りやすくなり、プレゼン資料の説得力が格段に上がります。
このように、BIMソフトだけでは限界があった「見せ方」を、Blenderが大きく広げてくれます。
デザインレビューや施主プレゼンにおけるBlender活用の効果
施主との合意形成や社内レビューでは、視覚的な精度が高いほどコミュニケーションがスムーズになります。Blenderを使うことで、完成に近いリアルな空間を可視化でき、言葉や図面では伝わらない部分まで共有できます。
特にVRウォークスルーやアニメーションは、空間スケールや素材感を直感的に伝えるのに効果的です。たとえば、ある中規模オフィスの改修プロジェクトでは、Blenderで作成した仮想空間を使い、施主からの設計変更が1/3に減りました。
このように、早い段階で高精度な完成イメージを見せることで、手戻りや誤解を防ぎやすくなります。
無料ツールBlenderを活かした低コストな可視化環境の構築方法
商用の建築ビジュアライゼーションツールは高額なライセンス費用がかかる一方、Blenderは完全無料で高機能です。加えて、アドオンやPythonスクリプトを活用することで、作業を自動化・効率化することも可能です。
たとえば、PBRマテリアルを自動割り当てするスクリプトや、カメラアニメーションをテンプレート化するアドオンなどを組み合わせれば、導入直後から実務で使える環境を整えられます。
コストをかけずに高品質なビジュアルを作れることは、特に個人事務所や中小規模の設計事務所にとって大きなメリットです。
RevitからBlenderへの連携方法【アドオン・IFC・glTF比較】
RevitからBlenderにデータを渡す方法はいくつかありますが、目的や表現精度によって選び方が変わります。ここでは、公式アドオンやIFC、glTF、FBXといった形式ごとの特徴を整理し、実務で使える出力方法を紹介します。モデル崩れやマテリアル欠落といったトラブルの回避方法も含め、安定した連携を目指します。
Revit to Blender Exporterアドオンの導入と基本設定手順
RevitにはBlender向けの公式アドオン「Revit to Blender Exporter」が用意されています。このアドオンを使えば、ワンクリックでFBX形式に変換でき、手軽にBlenderで編集を始められます。
まず、Autodesk App StoreまたはGitHubからアドオンをダウンロードし、Revitのアドインフォルダに配置します。Revitを再起動すると「Blender Exporter」メニューが追加されているはずです。
出力時は以下の設定を見直しておくと安心です。
- エクスポート単位:メートル(Blenderと一致させる)
- エクスポート対象:3Dビューで選択されたオブジェクトのみ
- マテリアルの出力:ON(FBXに含める設定)
一度設定しておけば、以降のエクスポート作業がスムーズになります。アドオン経由ならジオメトリの正確性も高く、テクスチャ情報も維持されやすいです。
IFC形式で出力する際の構造保持・マテリアル維持のポイント
IFC(Industry Foundation Classes)は中立的なBIMデータ形式で、Revit以外のソフトとも連携しやすいのが特長です。構造階層や属性情報が保持されるため、BlenderBIMとの相性も良好です。
出力時のポイントは以下の通りです。
- 出力形式:IFC2x3 または IFC4
- 空間階層:プロジェクト→階→スペース→オブジェクトの構造を維持
- マテリアル:Revit上で要素に適切なカテゴリ設定が必要
Revitの「IFCエクスポート設定」から階層やカテゴリを調整しておくと、Blender側での編集がしやすくなります。特に公共案件や多人数チームではIFCが推奨されます。
glTF形式での軽量かつ高速なデータ受け渡し手法
glTF(GL Transmission Format)は、リアルタイム表示に特化した軽量な3D形式です。モデル容量が小さく、WebGLやVR系アプリとの連携にも向いています。
Revit単体ではglTF形式を直接出力できませんが、中間変換として「FBX → glTF」や「IFC → glTF」が可能です。変換には無料ツール「Blender」「FBX2glTF」などが使えます。
glTFのメリット:
- 表現の軽さ:WebやVR環境で高速表示が可能
- マテリアル保持:PBRベースのマテリアルにも対応
- テクスチャ埋め込み:glb形式にすれば1ファイルで完結
リアルタイム可視化やAR表示を想定するなら、glTF形式が最適です。
FBX形式を使う場合の注意点と最適化テクニック
FBX形式はRevitとBlenderをつなぐ際によく使われる形式ですが、注意点もあります。特に法線反転・スムージングの乱れ・マテリアル欠落といった問題が頻出します。
対策として、以下の手順がおすすめです。
- Revitエクスポート時に「スムーズ化」設定をOFF
- Blender読み込み時に「自動スムーズ」をON
- マテリアルスロットの再確認とノード再構築
また、FBXはバージョンの互換性にも注意が必要です。2020形式以降で出力し、Blender側で正常に読み込めるか確認しましょう。
正しく扱えば、手軽に質感付きでモデルを移行できます。
エクスポート時にありがちなトラブルと対処法(例:法線反転・テクスチャ欠落)
BIMモデルのBlender連携では、以下のようなトラブルがよく発生します。
- 法線反転:面が裏返って表示される → Blenderで「Recalculate Outside」
- テクスチャ欠落:画像ファイルのリンク切れ → 絶対パスではなく相対パスで保存
- スケール誤差:モデルが巨大or小さすぎる → 単位設定を統一(Revit=m/Blender=m)
エクスポート前後でチェックリストを使い、これらの項目を事前に確認しておくと安心です。
再現性の高い変換フローを確立しておくことで、作業の手戻りが大幅に減ります。
ArchiCADからBlenderへの連携方法【最適設定と精度維持】
ArchiCADとBlenderを連携する際は、データの正確さを保ちつつ軽量に変換する工夫が欠かせません。出力形式や階層構造の維持、Blenderでの調整ステップまでを把握することで、ミスを防ぎつつスムーズに可視化作業へ移行できます。本章では、ArchiCADからBlenderへの変換手順とトラブル回避のポイントを実務レベルで解説します。
ArchiCADでのIFC出力設定とオブジェクト階層の保持方法
ArchiCADからBlenderへ正確なデータを渡すためには、IFC形式でのエクスポートが基本となります。IFCはBIM情報を含めたまま構造的にデータを保持でき、BlenderBIMなどのプラグインとも高相性です。
まず、エクスポート前にArchiCAD内のモデル構成を見直します。以下の設定が特に重要です。
- 分類とプロパティ:要素ごとに「IFC要素タイプ」を設定(例:壁→IfcWall)
- 構造の階層化:ゾーンやストーリー構成を正しく分けておく
- マテリアル割当て:サーフェスにマテリアル名をつけておく
IFC出力時は「一般的な建築モデル」テンプレートを選び、詳細レベルを「高」に設定するとジオメトリが崩れにくくなります。
この設定を整えることで、Blenderでインポート後の階層整理や分類がしやすくなります。
Collada(.dae)やOBJ形式を使うケースとメリット・デメリット
IFC以外の形式として、Collada(.dae)やOBJもよく使われます。どちらも簡易的な変換が可能ですが、それぞれ向き不向きがあります。
| 形式 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| Collada (.dae) | テクスチャ付き出力が可能/階層保持に強い | 属性情報は保持できない/スケール調整が必要 |
| OBJ | 対応ソフトが多い/変換が速い | マテリアルが崩れやすい/階層構造が失われる |
プレゼン用の静的ビジュアルならOBJでも十分ですが、属性編集や階層管理が必要な場合はIFCまたはColladaが安心です。
Blender側でのインポート時に行う調整作業(スケール・原点・マテリアル)
ArchiCADから出力したモデルをBlenderに取り込んだら、まず最初に確認すべきはスケールと位置です。これを誤ると、シーンの照明やカメラ設定に影響します。
調整手順は以下の通りです。
- Blenderの「Scene」設定で単位を「Metric(メートル)」に統一
- インポート時のスケール倍率を1.0に(スケールが合っていれば)
- 原点の位置を確認し、必要に応じて「Set Origin → Geometry to Origin」
- マテリアルのノード設定を確認し、必要なら再構築(特にPBRの場合)
また、透明素材や金属表現はArchiCAD側では正確に伝わらないため、Blenderでノードを組み直すことが多いです。
モデル精度を保ちながら軽量化するための実践的アプローチ
詳細なBIMモデルをそのままBlenderに取り込むと、動作が重くなるケースがあります。そこで、精度を落とさずに軽量化する工夫が重要です。
実務で使われる手順としては:
- 不要オブジェクトの削除(家具や仮設材など)
- 補助線や2D要素の除去
- モディファイア(例:Subdivision)の無効化
- マテリアル数の統一と再利用
特にレンダリング時の負荷を考えると、見えない要素や不要ディテールは早めに整理しておくのが効果的です。
ArchiCAD→Blender連携でよくある問題と解決策
ArchiCADからBlenderに移行する際、よくあるトラブルには以下のようなものがあります。
- 属性欠落:IFC出力時に「プロパティを含む」にチェックがないと、属性情報が消える
- スムージングエラー:曲面に変な影が出る → Blenderで「Auto Smooth」を設定
- 原点ずれ:モデルが極端に遠くに表示される → ArchiCAD側のエクスポート範囲を確認
これらの問題は出力前の確認と、インポート後の調整でほとんど回避できます。ルール化しておくとチーム全体の安定運用につながります。
Blenderでの最適化と仕上げワークフロー
BIMモデルをBlenderに取り込んだあと、最適化と仕上げ作業をどれだけ丁寧に進めるかが、最終的な表現の品質と効率を左右します。本章では、階層整理からマテリアル調整、照明・カメラ設定、レンダリング、VR対応まで、実務で使えるワークフローをステップごとに解説します。
①インポート直後の階層整理と不要オブジェクトの削除
BIMモデルをBlenderにインポートすると、不要な階層や空オブジェクトが多数混在することが多いです。そのまま編集を始めると管理が煩雑になるため、最初に階層整理と不要データの削除を行うのが効率的です。
まずは「Outliner」ウィンドウを確認し、以下の手順で整理します。
- 空オブジェクト(Empty)や不要なコレクションを削除
- 階層を「建築要素」ごとに分類(例:壁/床/家具)
- 名前の自動リネーム機能で識別性を高める
- リンクされている外部テクスチャやマテリアルを再整理
モデルが複雑な場合は、「Purge Orphan Data」機能も併用すると無駄なデータを一括削除できます。
この工程を最初に済ませておくことで、後の編集・仕上げがスムーズに進みます。
②マテリアルノードの再設定とリアルな質感の再現(PBRマテリアル対応)
BIMモデルをそのまま読み込んだ場合、マテリアル設定が簡素だったり、ノードが適切に構築されていないことがよくあります。Blenderでは、PBR(物理ベースレンダリング)に対応したノード設定を使うことで、よりリアルな質感を再現できます。
標準の手順は次の通りです。
- マテリアルエディタでノード構成を確認
- 必要に応じて「Principled BSDF」ノードを追加
- Albedo(色)/Roughness(粗さ)/Normal(法線)マップをそれぞれ接続
- UVのスケールを調整して質感の密度を最適化
例えば、床材に木目テクスチャを使う際は、Roughnessを調整することで光沢の強弱が表現できます。
ノードは再利用できるので、「Node Group」でテンプレ化しておくと効率的です。
③照明とカメラ設定の最適化(Eevee/Cycles両対応)
可視化の印象を大きく左右するのが照明とカメラの設定です。EeveeとCyclesでは適した光の扱いが異なるため、目的に応じた最適化が必要です。
共通の基本設定は以下の通りです。
- HDRI使用:背景に環境光を加えることで、自然な陰影を演出(World→Environment Texture)
- エリアライト配置:窓際や天井に面光源を設置し、建築空間らしい明るさを確保
- カメラ設定:焦点距離(35〜50mm)、被写界深度(F値)を調整して奥行き感を演出
Cyclesでは「Light Paths」設定でバウンス数を調整し、ノイズと処理時間のバランスを取ります。
Eeveeでは「Bloom」「Ambient Occlusion」をONにすることで、簡易ながらもリアルな光の演出が可能です。
④レンダリング設定のベストプラクティス(解像度・出力形式・サンプル数)
最終出力の品質と処理速度は、レンダリング設定によって大きく左右されます。以下は、実務で使われる代表的な設定例です。
- 解像度:1920×1080(プレゼン用)/3840×2160(高精細出力)
- 出力形式:PNG(透過あり)/EXR(ポスト処理用)
- サンプル数:Eevee=64〜128/Cycles=512〜1024(ノイズ除去あり)
また、Cycles使用時は「Denoising」をONにして、レンダリング後のノイズを自動処理すると時間を節約できます。
複数のカメラアングルを一括出力したい場合は、「Render Queue」や「スクリプト化」も視野に入れると効率的です。
⑤アニメーション・ウォークスルー・VR化の基本ステップ
静止画だけでなく、動的な表現もBlenderでは簡単に作れます。特にウォークスルーやパースのカメラ移動は、施主向けプレゼンに効果的です。
基本の手順は以下の通りです。
- カメラを配置し、「Track To」コンストレイントで注視点を固定
- タイムラインに沿ってキーフレームを設定(移動・回転など)
- 出力設定で「動画形式(MP4など)」と解像度を選択
- VR化したい場合は「360度カメラ」アドオンや「WebVR」向け出力を検討
簡易的なウォークスルーであれば、1日もかからずに完成できるケースも多いです。
アニメーションは動作確認だけでなく、施工段階の説明資料としても活用できます。
実例:BIMモデルをBlenderで可視化したプロジェクトケーススタディ
BIMとBlenderの連携は、理論だけでなく実務での成果が求められます。この章では、住宅から大規模施設まで、さまざまなプロジェクトでの連携事例を紹介します。ワークフローや工夫点、得られた効果を具体的に見ることで、導入の参考になります。
小規模住宅プロジェクトでのBIM→Blender連携実践例
ある木造2階建て住宅の設計では、ArchiCADで基本設計を行い、施主向けプレゼンに向けてBlenderで可視化を実施しました。狙いは、内装の仕上げイメージを明確に伝えることと、光の入り方を体感的に示すことです。
ワークフローは以下の通りです。
- ArchiCADからIFC形式で出力(階層・マテリアル名を整理)
- Blenderでインポート後、マテリアルノードをPBR対応に調整
- 窓際にHDRI光源を配置し、昼光表現を演出
- Eeveeでレンダリングし、複数アングルのパースを作成
施主からは「空間のスケール感がよくわかった」と評価され、カラー選定のやり直しが不要となりました。
大規模複合施設でのパフォーマンス最適化手法
商業施設とオフィスを併設する複合ビル(延床12,000㎡)の設計検討で、Revit→Blender連携が使われました。モデルの重さが課題だったため、連携時に徹底した軽量化が行われました。
具体的には:
- Revitで構造・仕上げ・設備を分離出力
- 不要要素(仮設・内部什器)を除外
- Blenderで「Decimate」モディファイアを使いポリゴン数を半減
最終的に、Cyclesでレンダリング可能なレベルまで軽量化でき、施設内の流動シミュレーション用素材としても活用されました。
BIMデータを活かしたリアルタイムレンダリング事例(Eevee使用)
中規模オフィス改修の案件では、ウォークスルー用のリアルタイム映像をEeveeで制作しました。VR表示こそしなかったものの、Web共有用のMP4動画を作成し、施主や関係者と画面越しにレビューできる仕組みを構築。
実施手順は次の通りです。
- Blenderでカメラパスを設定(各ゾーンを通過)
- Eeveeでライティング調整+AO・BloomをON
- 30秒程度のループ動画をMP4で出力
Eeveeのリアルタイム性により、変更対応も早く、毎週の設計打ち合わせに動画を活用できました。
設計チームとCGチームの協働によるワークフロー構築例
大手設計事務所では、社内CGチームと設計チームが連携し、Blenderでの表現を早期から組み込むワークフローを構築しました。BIMモデルを受け取ったCGチームがその日のうちにレンダリング素材を出力できるよう、自動スクリプトも導入されています。
ポイントは以下の通りです。
- モデル受け渡しにglTF形式を採用(軽量で扱いやすい)
- Blenderにインポート後、ノード再構成をスクリプト化
- 1シーンあたりの作業時間を30%短縮
こうした連携によって、設計初期から「見せ方」を意識したデザイン調整が可能になりました。
導入後の効果と改善点(制作工数・品質・プレゼン効果)
Blender導入による可視化ワークフローの成果は以下のように整理できます。
- 制作時間の削減:Revit/ArchiCAD単体での表現より30〜50%効率化
- ビジュアル品質の向上:PBR・DOFなど高精度表現が可能に
- コミュニケーションの改善:施主・現場との認識ギャップが減少
一方で、「チーム内での知識差」や「ファイル整理ルールの統一」が課題として挙げられており、テンプレートやマニュアル整備が今後の課題とされています。
BlenderでのBIMデータ管理を効率化するプラグイン・アドオン紹介
BlenderでBIMデータを扱うには、モデリングだけでなく属性管理や階層整理といった「建築特有の整理力」が求められます。ここでは、BlenderBIMをはじめとする実務に使えるプラグインや、スクリプトによる自動化テクニックを紹介します。効率よく管理・可視化する仕組みづくりに役立ちます。
BlenderBIM Add-onの機能と活用例
BlenderBIM Add-onは、IFC形式のBIMデータをBlender上で直接扱えるようにする無料プラグインです。オープンソースながら高機能で、属性管理や階層構造の保持、ビューの切り替えなど、設計に近い視点での操作が可能になります。
主な機能は以下の通りです。
- IFCモデルのインポート・編集・エクスポート
- BIM要素(壁/床/柱など)のカテゴリ管理
- プロパティ(属性)情報の表示・編集
- クラッシュテストやジオメトリ修正
たとえば、複数階層の住宅モデルをIFCで取り込み、階ごとの要素をON/OFF切り替えてチェックする作業が、BlenderBIM内で完結できます。業務フローをIFC中心にしたい方には非常に有用です。
IFCモデルの属性管理を行う方法
BIMにおいて「形状」だけでなく「情報」が重要な資産です。BlenderBIMを使えば、インポートしたIFCモデル内の属性(材料名・面積・用途など)を確認・編集できます。
操作手順は以下の通りです。
- BlenderBIMでIFCモデルを読み込み
- 「IFC属性」パネルで要素を選択
- 属性名と値を直接編集(例:壁の厚みや素材名)
- 編集結果をIFCファイルとして再エクスポート
このように、RevitやArchiCADで設定した属性情報を、Blender内でも維持・更新できる点が大きなメリットです。設計からプレゼン・解析までを一貫して管理したい場合に向いています。
RevitやArchiCADとのデータ同期を支援する最新ツール
BIMソフトとBlenderの間でデータの一貫性を保つためのツールとして、以下のような拡張機能が登場しています。
- Speckle:BIM間連携のクラウド基盤(Revit/ArchiCAD/Blender連携対応)
- IfcOpenShell:IFC処理ライブラリ(BlenderBIMの基礎技術)
- USD(Universal Scene Description):複数ソフト間で階層・マテリアルを保持
たとえばSpeckleを使えば、RevitからBlenderへライブ同期的にモデルを転送でき、設計変更にも即応できます。
これらのツールは開発が活発であり、BIM×CGの融合を加速させる基盤となっています。
Pythonスクリプトによる自動処理・最適化テクニック
BlenderではPythonを使って、煩雑な作業を自動化することが可能です。建築分野でも以下のような用途で活用が広がっています。
- マテリアル再割り当てスクリプト
- カメラ配置のテンプレ化
- 重複オブジェクトの一括削除
- レンダリング設定のプリセット化
たとえば、IFCインポート後にノードを一括で再構成するスクリプトを作っておけば、毎回手作業で質感を直す手間がなくなります。
内製のテンプレート化を進めることで、チーム作業のブレも減り、作業時間を短縮できます。
よくある質問(FAQ)
BIMモデルをBlenderと連携する過程では、形式の選び方や設定の不一致によるトラブルがよく発生します。この章では、実務でよくある疑問点をQ&A形式で整理し、原因と具体的な対処法をわかりやすく解説します。変換ミスを防ぎ、スムーズに可視化作業を進めるための参考にしてください。
Q1.IFCエクスポート時に形状が崩れる場合の原因と対処法は?
IFCで出力した際に形状が崩れる原因は、元のBIMモデル側のモデリング精度や設定ミスにあります。特にArchiCADでは「複合構造」や「カスタム形状」の要素が変換時に簡略化され、正しく出力されないことがあります。
対処法は以下の通りです。
- モデリング前に「幾何形状を標準化」しておく(単純なソリッド構成が望ましい)
- IFC出力設定で「BREP出力」を有効にする(形状精度が向上)
- 問題箇所だけOBJなどで個別出力し、Blenderで合成する
また、スナップエラーや結合ミスも原因になりやすいため、出力前にモデルの結合状態を確認しておくと安心です。
Q2.RevitモデルのマテリアルがBlenderに反映されないときの解決方法は?
Revitではマテリアル名が表示用とレンダリング用で分かれており、FBXやIFCで出力する際に正しい情報が渡らないことがあります。そのため、Blenderで読み込んでも灰色のまま、あるいはテクスチャが消失するケースが発生します。
解決方法は以下の通りです。
- Revit側で「カテゴリベースのマテリアル名」に統一
- 出力形式は「FBX」を選び、テクスチャ埋め込みをONに設定
- Blenderでマテリアルスロットを再割り当てし、ノードを手動で再構成
特にCyclesでの質感調整には「Principled BSDF」に再接続しておくと、リアルな仕上がりが得られます。
Q3.Blenderにインポート後スケールがずれる場合の修正方法は?
スケールの不一致は、出力元とBlender側の単位設定が異なることで発生します。例えば、Revitはフィート・インチベース、Blenderはメートル設定が初期状態なので、モデルが極端に小さく/大きく見えることがあります。
修正方法は以下の通りです。
- BIMソフト側で「メートル」単位に設定してエクスポート
- Blenderの「Scene」タブで「Unit→Metric」に変更
- インポート時の「Scale」パラメータを1.0に調整
既にスケールが崩れている場合は、「Apply All Transforms(Ctrl+A)」でサイズ調整を適用して整えます。
Q4.glTFとIFC、どちらを選ぶべき?軽量化と精度のバランスの取り方
用途によってglTFとIFCは使い分けが必要です。それぞれの違いは以下の通りです。
| 形式 | 特徴 | 適した用途 |
|---|---|---|
| IFC | 属性や階層情報を保持/正確な構造伝達が可能 | 設計情報を維持したプレゼン・協働 |
| glTF | 軽量/PBR対応/Web・VRに強い | 動画・ウォークスルー・AR連携 |
要は、「構造と情報」を重視するならIFC、「表現と軽さ」を重視するならglTFです。どちらも状況に応じて使い分けるとよいでしょう。
Q5.ArchiCADのオブジェクト属性を保持したまま連携する方法は?
ArchiCADからBlenderに属性付きでモデルを渡すには、IFC形式が最も適しています。ただし、出力時に属性情報が落ちないように、設定を細かく見直す必要があります。
ポイントは次の通りです。
- IFCエクスポートで「プロパティと分類情報を含める」にチェック
- 「属性マッピング」設定で必要な情報(材料・構造タイプなど)を指定
- BlenderBIMでインポート後、「IFC属性パネル」で確認
この手順を踏めば、要素単位での編集やフィルタ表示が可能になり、可視化作業の精度と効率が上がります。
