
3ds Maxとは?プロが使う建築ビジュアライゼーションの標準ソフト
建築ビジュアライゼーションの世界では、「リアルに伝える力」が求められます。3ds Maxは、その表現力と制作効率の高さから、世界中の設計事務所やCGプロダクションに採用されている3Dソフトです。
この記事では、3ds Maxの基本概要から、建築パース制作における強み、他ソフトとの違い、学習方法までを体系的に解説しました。特に「フォトリアルな質感を再現したい」「設計意図を正確に伝えたい」と考えている方にとって、本記事がソフト選定や導入検討の一助となれば幸いです。
プロ視点での実務ノウハウも盛り込みながら、初心者にもわかりやすく整理しましたので、ぜひ導入前の参考にしてください。
3ds Maxとはどんなソフト?基本概要と特徴
3ds Maxは、Autodesk社が開発した3Dモデリング・レンダリング・アニメーションの統合ソフトです。建築やインテリア、製品デザインなど、幅広い業界で活用されており、特に建築ビジュアライゼーションの分野ではプロ標準のツールとされています。ここでは、3ds Maxの基本的な特徴とその用途をわかりやすく紹介します。
Autodeskが開発した3Dモデリング・レンダリングの総合ツール
3ds Maxは、Autodesk社によって開発された3D制作ソフトで、モデリング・レンダリング・アニメーションといった工程を1つの環境で完結できます。建築分野だけでなく、映像制作やゲーム開発でも使われており、特に建築ビジュアライゼーションでは、設計の意図を高い精度で可視化できるツールとして定評があります。
UI(ユーザーインターフェース)は直感的で、複雑な形状の作成や編集も視覚的に操作しやすい点が魅力です。特にポリゴンモデリングの自由度が高く、建築意匠の微調整やディテール作成に強みがあります。
たとえば、壁面の曲線デザインや複雑なファサードのパネル構成も、スプラインやモディファイヤを組み合わせることで柔軟に対応可能です。このような高精度の制作を一貫して行えるのが、3ds Maxの基本的な強みです。
まとめると、3ds Maxはあらゆる3D制作に対応するオールインワンのソフトであり、建築表現においても非常に有力な選択肢です。
建築ビジュアライゼーションで選ばれる理由
建築ビジュアライゼーションでは、設計図やBIMデータだけでは伝わりにくい「空間の印象」や「素材の質感」を、ビジュアルで直感的に伝えることが求められます。3ds Maxはこの分野で高く評価されており、選ばれる理由は大きく3つあります。
まず、表現力の高さです。物理ベースレンダリング(PBR)に対応しており、実際の光や素材の反応を再現できるため、説得力のあるフォトリアルなパースを作成できます。
次に、精度の高さです。ミリ単位のモデリングが可能で、図面やBIMデータとの整合性も取りやすく、設計意図を正確に反映したビジュアライズが可能です。
最後に、導入実績の豊富さです。多くの建築設計事務所やCGプロダクションで導入されており、社内外でのデータ共有や引き継ぎにも安心感があります。
要は、3ds Maxは「リアルに見せる」だけでなく、「設計意図を正しく伝える」ことに優れている点が、プロに選ばれる理由です。
世界中の建築事務所・CGプロダクションでの採用事例
3ds Maxは、建築CGの分野で世界的にスタンダードな存在です。特にV-RayやCoronaといった高品質なレンダラーとの組み合わせは、リアルさと制作効率を両立できる点で支持されています。
たとえば、イギリスのFoster + PartnersやアメリカのGenslerといった国際的な設計事務所では、3ds MaxとV-Rayの組み合わせが定番となっています。国内でも日建設計や大林組といった大手企業が、設計検討やプレゼン資料の作成に3ds Maxを活用しています。
また、CGプロダクションでは、建築コンペや不動産広告向けに、3ds Maxを使った高品質な静止画・アニメーションの制作が一般的です。これらの現場では、複数の案件を並行処理しながらも安定して運用できる性能が重要視されています。
このように、世界中の現場で活躍している実績が、3ds Maxの信頼性と導入価値を物語っています。
建築ビジュアライゼーションにおける3ds Maxの強み
建築ビジュアライゼーションにおいては、「どれだけリアルに、魅力的に伝えられるか」が勝負です。3ds Maxは、フォトリアルな質感表現と一貫した制作ワークフローにより、設計意図を正確に、しかも印象的にビジュアル化できます。この章では、建築CG制作における具体的な強みを詳しく見ていきましょう。
フォトリアルな建築パースを再現できるPBR
3ds Maxは、フォトリアルな建築パース制作に強みを発揮する理由のひとつとして、**PBR(物理ベースレンダリング)**への対応が挙げられます。PBRとは、実際の光や素材の性質に基づいてレンダリングを行う手法で、リアルな表現を可能にします。
たとえば、金属や木材、大理石といった建材が持つ光沢や粗さは、数値やマップで正確に設定できます。さらに、HDRI(ハイダイナミックレンジイメージ)を使って、自然光に近いライティングを加えることで、現実に限りなく近い雰囲気を再現できます。
実務では、外構やインテリアの素材感をリアルに伝えることが提案の成否を分ける場面も多く、PBRはそのための必須技術といえます。3ds MaxはこのPBRを標準的にサポートしており、建築CG表現における精度とリアリティを両立できます。
V-RayやCorona対応で光の表現力が高い
3ds Maxは、業界標準の高品質レンダラーであるV-RayやCorona Rendererに対応しています。これにより、現実に近い光の反射や屈折、陰影の再現が可能になります。
たとえば、V-Rayを使えば、日中の自然光から夜の人工照明まで幅広いシーンを高精度で描けます。また、IES(照明器具の配光データ)を利用すれば、実際の照明メーカーの光の広がりを忠実に再現することもできます。
Coronaは操作がシンプルで、テストレンダリングの速度も速いため、プレゼン資料を短期間で仕上げたい場面で重宝します。どちらも3ds Maxに直接統合できるため、複雑な設定不要で高品質なレンダリングが可能です。
つまり、光の設計・演出を行う上で、3ds Maxとこれらのレンダラーの組み合わせは非常に相性がよく、ビジュアライゼーションの品質を大きく引き上げてくれます。
モデリングからレンダリングまで一貫制作が可能
3ds Maxは、モデリング・マテリアル設定・カメラワーク・レンダリングまでを1つのソフト内で完結できます。これは、制作工程が多段階になる建築ビジュアライゼーションにおいて、大きなアドバンテージです。
他のソフトでは、モデリングはA、レンダリングはBといったようにツールを切り替える必要があり、データ変換や設定の再構築が発生します。しかし3ds Maxなら、最初から最後までシームレスに進行できるため、作業時間の短縮やミスの防止につながります。
たとえば、建築CGの修正対応で「壁材を変えたい」「夜景に変更したい」といった要望が出た場合も、モデリングやライト設定をその場で調整し、即座に再レンダリングが可能です。
こうした一貫性が、実務での対応力や制作スピードに直結し、多忙な建築プロジェクトでも安心して使える理由となっています。
建築CG制作で活用できる主な機能と応用シーン
3ds Maxは、リアルな建築パースだけでなく、アニメーションやVR/ARといった多様な表現にも対応できます。空間の質感や光の演出にこだわりたいシーンから、没入感あるプレゼンまで、建築CG制作の幅を広げる機能が豊富です。ここでは、活用シーンごとにその具体的な機能を紹介します。
インテリアパース:質感・照明を再現したリアルな空間表現
インテリアパースの制作では、素材の質感と照明の組み合わせが印象を大きく左右します。3ds Maxは、マテリアル設定の自由度が高く、金属・木材・ファブリックなど、さまざまな素材をリアルに再現できます。
たとえば、床材の光沢、壁紙の凹凸、ソファの布地の柔らかさまで、ディテールを細かく作り込むことが可能です。さらに、HDRIを使った自然光や、IESデータによる照明演出を加えることで、現実に近い雰囲気の空間が描けます。
このような表現により、設計者の意図や空間のコンセプトが伝わりやすくなり、クライアントへのプレゼンや販促資料にも説得力を持たせられます。特に住宅や商業施設の提案時に効果的です。
外観パース:自然光を活かした昼夜の演出
外観パースでは、建物のスケール感や立地環境をどう見せるかが重要です。3ds Maxでは、太陽光・空気遠近法・環境マップなどを組み合わせることで、昼夜や天候の違いをリアルに演出できます。
たとえば、昼の晴天シーンでは影の落ち方や建物の陰影が強調され、建築の輪郭がはっきりします。一方で、夕景や夜景では室内の照明が建物の印象をやわらかく演出し、温かみや高級感を表現できます。
こうした時間帯ごとの印象の違いは、プレゼン時のインパクトにも直結します。設計意図を視覚的に伝えるための手段として、外観パースにおける時間演出は欠かせない技術です。
建築アニメーション:ウォークスルーやプレゼン動画
3ds Maxは、カメラワークやアニメーションの設定も柔軟で、建物内外を歩いているようなウォークスルー動画や、空撮風のカメラ移動も簡単に作れます。これにより、空間の広がりや導線をより具体的に伝えることができます。
アニメーションに加えて、カメラの被写界深度(フォーカス)や、時間経過による照明変化も演出可能です。たとえば、日の出から夜までの光の移り変わりを動画で表現することで、建物の魅力をより豊かに伝えられます。
コンペ資料や営業プレゼンにおいて、静止画だけでなく動画を活用することで、提案の説得力が格段に上がります。特に大規模施設や複雑なプランの紹介におすすめです。
VR/AR:Unreal Engine・Twinmotionとの連携活用
近年、建築業界でもVR(仮想現実)やAR(拡張現実)を活用した提案が増えています。3ds Maxは、Unreal EngineやTwinmotionといったリアルタイムエンジンと連携でき、没入型体験を提供するコンテンツ制作にも対応しています。
たとえば、3ds Maxで設計したモデルをFBX形式で書き出し、Unreal Engineにインポートすれば、空間を360度自由に見渡せるVR体験が実現します。設計変更があっても、3ds Max側で修正して再出力するだけで簡単に反映できます。
このように、プレゼン手法としてのVR/AR活用は、クライアントとのコミュニケーションをより円滑にし、設計意図の共有にも役立ちます。特に大型プロジェクトや体験型の販促ツールとして注目されています。
プロが3ds Maxを選ぶ理由:精度・安定性・拡張性
プロの現場では、「リアルに見せる」だけではなく、「確実に動き続ける」「多様な要望に対応できる」ことも求められます。3ds Maxは、長年の開発で培われた安定性や、高精度なモデリング性能、豊富なレンダラーやプラグインの拡張性により、プロユースに耐えるソフトとして信頼されています。
高精度なポリゴンモデリングと編集ツール
建築ビジュアライゼーションでは、寸法や形状の正確さが非常に重要です。3ds Maxは、ミリ単位の精度でモデリングができるため、設計図に忠実な建築構造をそのまま3D化できます。
操作も視覚的で、スナップ機能や数値入力による調整が可能なので、細かな部材や家具の位置合わせも正確に行えます。さらに、モディファイヤ(変形機能)を重ねて非破壊的に編集できる点も、試行錯誤を重ねる建築設計には重宝されます。
たとえば、複雑な天井の格子パターンを「Array」「Bend」「Symmetry」などのモディファイヤで簡単に量産・編集でき、変更が入った際も元の構造を保ちながら調整が可能です。
このような高精度かつ柔軟なモデリング環境は、設計意図を正確に伝えるうえで非常に有効です。
V-Ray・Corona・Arnoldとの高い互換性
3ds Maxは、建築業界で定番となっているV-RayやCorona Renderer、そしてAutodesk製のArnold Rendererといった高性能レンダラーとスムーズに連携できます。
これらのレンダラーは、PBRマテリアル、ライティングの再現性、被写界深度やブルームなどの演出効果が豊富で、リアリティのある建築CGを効率的に制作できます。3ds Maxでは、これらのレンダラーをプラグイン不要で導入・設定できる点も大きな強みです。
たとえば、Coronaは「インタラクティブレンダリング」によって、マテリアルやライトの変更結果を即座に確認でき、作業スピードが格段に上がります。一方でV-Rayは、複雑な光の演出や商業広告向けの超高精細なレンダリングに適しています。
このように、用途に応じたレンダラーの使い分けができるのも、3ds Maxならではの柔軟性です。
大規模データでも安定動作する処理能力
3ds Maxは、数百万ポリゴンを超えるような大規模な建築モデルや都市モデルでも安定して動作する設計になっています。これは、商用現場で求められる信頼性の高さにつながっています。
たとえば、大規模な再開発エリアのCG制作では、数十棟の建物・樹木・車両・人物などを含んだ巨大なシーンを扱うこともあります。そのような重いシーンでも、3ds Maxならビューポート操作やレンダリングが比較的スムーズです。
加えて、シーンを軽く保つための「プロキシ機能」や、表示・レンダリング用にモデルを最適化するLOD(Level of Detail)設定も可能です。これにより、パフォーマンスを犠牲にせずに高品質なCGを制作できます。
業界標準フォーマットで他ソフトとの連携が容易
3ds Maxは、FBX・OBJ・3DSなどの業界標準フォーマットに対応しており、他の3DソフトやBIMソフトとのデータ連携もスムーズです。これは、RevitやSketchUp、Blender、Unreal Engineといったツールと併用する上で大きな利点です。
たとえば、Revitで作成したBIMモデルをFBXで3ds Maxに読み込み、質感やライティングを調整してレンダリングする、というワークフローは建築業界で一般的です。逆に、3ds Maxで作成した詳細なモデルを、UnityやUnreal Engineへ持ち込みVRコンテンツ化することも容易です。
このような連携性が高いことで、ソフト間の使い分けやチーム内での役割分担がスムーズになり、プロジェクトの効率を高めることができます。
他ソフトとの比較:SketchUp・Blender・Revitとの違い
3ds Maxを検討する際に、多くの人が気になるのが他ソフトとの違いです。特に建築分野では、SketchUp・Blender・Revit・Cinema 4D・Lumionといった選択肢があります。それぞれの特徴を理解することで、自分の目的に最適なソフトを見極めやすくなります。
SketchUpとの違い:簡易設計vsリアル表現
SketchUpは直感的な操作で3Dモデルを素早く作成できるソフトで、初学者にも扱いやすいのが魅力です。一方で、リアルな表現や高精度なレンダリングには限界があり、設計の検討や初期スケッチ段階で使われることが多いです。
一方、3ds Maxは建築ビジュアライゼーションに特化したリアル表現が得意なソフトです。マテリアルやライティング設定が細かく調整でき、フォトリアルな建築パースやアニメーションの制作に向いています。
つまり、SketchUpは「簡易な設計提案」には適していますが、「本格的なビジュアライズ」には3ds Maxが優れています。両者は競合ではなく、設計フローの中で役割分担して使われることが多いです。
Blenderとの違い:商用現場での安定性
Blenderはオープンソースの3Dソフトで、無料ながら多機能で注目されています。個人やフリーランスに人気があり、最近ではアドオンも豊富です。ただし、商用現場での運用にはやや注意が必要です。
3ds Maxは商用ライセンスに裏打ちされた業務向けの安定性・互換性・サポート体制があります。特に、商業施設や都市開発など大規模な建築プロジェクトでは、予測不能なトラブルを避けるためにも安定した動作とサポートが重視されます。
たとえば、Blenderでは大規模データや高精度レンダリングで不安定になることもあり、クライアント案件では3ds Maxが選ばれるケースが多いです。業務用としての信頼性は、商用ソフトならではの強みといえます。
Revitとの違い:BIMとビジュアライズの分担
Revitは、建築設計や施工情報を統合管理するBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソフトで、設計・施工ドキュメントの作成に適しています。一方で、レンダリングやビジュアライゼーションの表現力は限定的です。
3ds Maxは、Revitで作成したBIMモデルをインポートし、質感や光の表現を加えてリアルなCGに仕上げるために使われます。この連携はAutodesk製品間で特にスムーズで、設計者とビジュアライザーが連携しやすい環境が整っています。
つまり、設計はRevit、ビジュアライズは3ds Maxという役割分担が実務では一般的で、それぞれの得意分野を活かす形で併用されます。
Cinema 4DやLumionとの違い:表現と効率のバランス
Cinema 4Dはモーショングラフィックスや映像業界で強みがあり、UIもわかりやすいためデザイン性の高いビジュアライズに向いています。Lumionはリアルタイムレンダリングに特化しており、建築プレゼンのスピード重視で選ばれます。
一方、3ds Maxはリアル表現の幅の広さと、制作効率のバランスに優れており、静止画・動画・VRコンテンツまで一貫して対応可能です。特にV-RayやCoronaとの連携により、表現力と品質管理の両立が可能です。
たとえば、Lumionで一度表現できる質感の限界を感じた場合、3ds Maxで再構成することでクオリティアップが図れます。プロの現場では「短期はLumion、中長期は3ds Max」と使い分けられることも多いです。
3ds Maxのメリットとデメリット
3ds Maxはプロ向けの高機能な3Dソフトですが、すべての人にとって万能とは限りません。導入前には、その強みと弱点を理解し、自分の目的や環境に合うかどうかを見極めることが大切です。この章では、3ds Maxのメリットとデメリット、さらにどんな人に向いているかを整理します。
メリット:表現力・信頼性・プラグインの豊富さ
3ds Maxは、建築ビジュアライゼーションに必要な要素を高次元で兼ね備えています。最大のメリットはその表現の自由度と業界標準としての信頼性です。
まず、PBRやHDRIといった最新のレンダリング手法を活用することで、現実に限りなく近い建築表現が可能です。質感・光・構成要素まで細かくコントロールでき、設計意図を忠実に伝えるCGを制作できます。
さらに、長年の開発で積み重ねた実績により、業界内での知名度と信頼度が非常に高く、クライアントへの安心感にもつながります。また、V-RayやForest Pack、RailCloneなどの強力なプラグインが豊富に揃っており、用途に応じて機能を拡張できる点もプロにとっては大きな魅力です。
要するに、3ds Maxは「表現したいものを妥協なく再現できる環境」が整っており、建築CGに本気で取り組む人にとって強力なツールです。
デメリット:価格・学習コスト・PCスペック
一方で、3ds Maxにはいくつかのハードルもあります。まず挙げられるのは導入コストの高さです。サブスクリプション制で年間数十万円の費用がかかるため、個人や小規模事務所には負担となる場合があります。
次に、学習コストの高さです。高機能なぶん、最初は覚えることが多く、特にレンダリングやマテリアル設定に時間がかかります。ただし、慣れてしまえば柔軟な操作が可能になり、応用範囲も広がります。
また、高スペックなPCが必要という点も見逃せません。特にレンダリング作業では、GPUやRAMに負荷がかかるため、十分なマシン環境が求められます。レンダリング専用PCやクラウドサービスを併用するケースも多いです。
このように、3ds Maxは強力な反面、初期投資や学習負荷、環境整備などをクリアする覚悟が必要です。
向いている人・向いていない人
3ds Maxは、リアルな建築表現を重視するプロフェッショナルに向いているソフトです。建築設計の意図を正確に、かつ魅力的に伝えたい方には最適です。
逆に、短期間での習得や軽い操作性を求める方、簡易な3D確認が目的の方には、SketchUpやLumionなど他ソフトの方が向いている場合もあります。
また、学生や初心者が触れる場合は、教育ライセンスや無料体験版を利用して、まずは基本操作を体験するのがおすすめです。そのうえで、自身の用途に合うかどうかを見極めると失敗がありません。
要は、「プロを目指す」「リアリティを追求したい」「案件で使いたい」といった明確な目的がある人にとって、3ds Maxは大きな力となるツールです。
学習方法と導入ステップ
3ds Maxは多機能でプロ向けのソフトですが、正しいステップで学習すれば初心者でも着実に使いこなせるようになります。ここでは、導入から実践レベルまでの流れを段階ごとに紹介します。無理なくスキルを高めていくための参考にしてください。
無料体験版・教育ライセンスの使い方
3ds Maxは、有償ライセンスを購入する前に、30日間の無料体験版を公式サイトからダウンロードして試せます。また、学生や教育機関向けには1年間の無償ライセンスも提供されています。
Autodesk公式サイトでアカウントを作成し、使用目的を「学習」に設定すれば、教育版のライセンス申請ができます。機能制限はなく、商用利用以外であればプロと同じ環境で学習可能です。
最初の導入では、インストールと基本設定で戸惑うかもしれませんが、公式ガイドやユーザーコミュニティの情報を参考にすればスムーズに始められます。PCスペックのチェックも忘れずに行いましょう。
Autodesk公式チュートリアルと国内教材
初学者がつまずきやすいのが「最初の壁」です。3ds Maxには、Autodesk公式による日本語のチュートリアルや動画教材が充実しており、体系的に学びやすい環境が整っています。
とくに「Learning Path(学習パス)」は、初心者→中級者→応用編と段階的にスキルを積み上げられる構成で、独学でも進めやすいです。国内ではYouTubeやUdemyでも、日本語解説付きの講座が多く公開されています。
おすすめは、基本操作を学んだら「インテリアパースを1つ完成させる」ことを目標にすると、自然と必要な知識が身につきます。作例に沿った教材を選ぶのが効率的です。
レンダラー設定(V-Ray・Corona)の習得
建築ビジュアライゼーションでは、モデリングだけでなくレンダリング設定の習得が不可欠です。とくにV-RayとCorona Rendererは業界標準のレンダラーであり、使い方を学ぶことでプロ並みの表現力が得られます。
初心者はまず「プリセット設定でのレンダリング」から始め、次第にマテリアルの調整、ライトの配置、カメラ設定へとステップアップすると無理がありません。Coronaでは「ライトミックス」機能を使うと、レンダリング後に光の強さを調整できて便利です。
また、V-Rayでは「インタラクティブレンダリング」でリアルタイムに結果を確認でき、作業効率を大きく向上させられます。設定方法はYouTubeの公式チュートリアルがわかりやすく、作例を真似しながら覚えるのがおすすめです。
ポートフォリオ制作でスキルを高める
学習の最終段階としておすすめなのが、ポートフォリオ制作です。実際の住宅・店舗・施設などを題材に、自分なりのテーマでCG作品を作ることで、スキルの応用力と完成度が一気に上がります。
ポートフォリオは、就職活動や案件獲得時の重要な判断材料になります。3ds Maxで制作した静止画・動画・ワイヤーフレーム画像などを組み合わせ、作品の意図や工夫点を短く説明する構成が理想的です。
また、SNSやポートフォリオサイトで公開することで、他者からのフィードバックや仕事のチャンスにつながることもあります。自分のスキルを「見える化」することで、次のステップへ進む土台が整います。
よくある質問(FAQ)
3ds Maxについて、これから始める方や導入を検討中の方からよく寄せられる質問をまとめました。初心者の不安や現場での運用に関する疑問に、実務視点でわかりやすく答えます。
Q1. 初心者でも使えますか?学習のコツは?
初心者でも3ds Maxを使えます。ただし多機能なぶん最初は戸惑う場面もあります。学習のコツは、「目的を絞った小さな作品から始めること」です。
たとえば「リビングのパースを1枚仕上げる」と決めて、家具の配置、ライトの設置、カメラ設定などを順番に覚えていけば、自然と必要な操作が身につきます。操作体系に慣れるまでは、公式チュートリアルやYouTube講座を活用すると効率的です。
また、Coronaのようなシンプルなレンダラーを併用すると、仕上がりの達成感が早く得られ、モチベーション維持にもつながります。
Q2. 建築以外(製品・映像・ゲーム)でも使えますか?
3ds Maxは建築だけでなく、製品デザイン・映像制作・ゲーム開発など幅広い分野で利用されています。
たとえば、製品CGでは質感の精密な再現やライティング調整が求められるシーンに向いています。映像分野では、アニメーションやカメラワークの制御が強力で、CMやモーショングラフィックスにも対応可能です。
ゲーム業界では、背景モデルやアセット制作、Unreal EngineやUnityへの出力用としても活躍しています。業界横断で使用されることの多いソフトです。
Q3. Macでは使えませんか?BootCampやクラウド利用の選択肢
基本的に3ds MaxはWindows専用ですが、Macでの利用方法もいくつかあります。
1つはBootCampを使ってWindows環境を構築する方法。Intel Macであれば安定して動作します。ただし、Appleシリコン(M1/M2)には非対応です。
もう1つは、クラウド型のリモートワークステーションを使う方法。レンダリングや重い処理をクラウド上で行えるため、Macでもブラウザ経由で3ds Maxを操作できます。
どちらの方法も実務で使われており、「Macユーザーだから無理」とは限りません。
Q4. BlenderやRevitとの併用は可能ですか?
データ形式が共通しているため併用は可能です。特にFBX形式でのモデルのやりとりが一般的です。
たとえば、Blenderでラフモデリングを行い、3ds Maxで仕上げやレンダリングを行うといった使い方もできます。逆に、3ds Maxで作成したモデルをRevitに渡して設計資料に組み込むケースもあります。
ただし、マテリアルの互換性には一部制限があるため、移行後の再設定が必要な場合もあります。併用する場合は、工程ごとの役割を明確にしておくとスムーズです。
Q5. どのレンダラーを選べばよいですか?
用途によって使い分けがベストです。
- V-Ray:リアリティを追求した表現に強く、細かな光表現やシーン演出が可能。商業施設や高級物件向けに最適。
- Corona Renderer:設定がシンプルで初心者にも扱いやすく、短時間で高品質なレンダリングが可能。住宅やプレゼン用CGに向いています。
最初のうちはCoronaで基本を習得し、必要に応じてV-Rayにステップアップする流れが無理なく進められておすすめです。
