
建築3DCGに必要なPCスペックとは?初心者でもわかる基礎知識
建築3DCGを始めようとしたとき、多くの方が最初に悩むのが「どんなPCを用意すればいいのか?」という疑問です。CGソフトは高性能なパソコンが必要なイメージがありますが、実際には目的や作業内容に応じて求められるスペックは大きく異なります。やみくもに高額なパーツを揃えるのではなく、作業負荷に見合った適切な構成を知ることが、快適な制作環境の第一歩です。
本記事では、世界最高峰の建築CG制作者としての視点から、建築3DCGに必要なPCスペックを初心者にもわかりやすく解説します。CPUやGPUなどの各パーツごとの役割と推奨構成、ソフト別の最適なスペック、初心者向けの具体的なモデル提案までを網羅的に紹介しています。記事を読めば、自分に合ったPC構成を自信を持って選べるようになります。
これから建築3DCGを始めたい方、PC買い替えを検討している方は、まずこの記事で基本を押さえてください。
建築3DCGとPC性能の関係
建築3DCGを制作するには、想像以上にPC性能が重要です。美しいレンダリングや滑らかなモデリング作業の裏には、CPUやGPUをはじめとする各パーツの処理能力が深く関わっています。この章では、建築3DCGとPCスペックの関係を、初心者にもわかるように全体像から丁寧に解説します。
なぜ建築3DCGでは高性能PCが必要なのか
建築3DCGでは、一般的な事務作業や画像編集とは比べものにならないほど、PCに高い処理能力が求められます。理由はシンプルで、「データ量が大きい」「処理内容が複雑」「リアルタイム性が高い」の3点が重なっているからです。
例えば、1棟の建物をフルスケールでモデリングする場合、壁・窓・建具・家具・植栽など数千のオブジェクトが存在します。それぞれが3D空間で座標・面・法線・マテリアル情報を持ち、さらにHDRIやPBRなどのリアルな質感処理も加わります。これらを一度に扱うには、CPUとGPUの両方に相当な処理能力が求められます。
また、静止画レンダリングでは、計算量が膨大な光のシミュレーションを行います。ここで活躍するのがGPUによる並列処理ですが、そもそもの処理ベースを担うCPUも非力ではレンダリングが極端に遅くなります。加えて、リアルタイムプレビューやウォークスルー操作も、フレームレートを維持するためにGPUパワーが不可欠です。
つまり、建築3DCGでは単に「動けばよい」ではなく、「スムーズに扱えて」「美しく仕上がる」ことが求められるため、PCスペックの高さが直結するのです。
制作工程とPC負荷の関係(モデリング・レンダリング・ポスト)
建築3DCGのワークフローは、「モデリング→レンダリング→ポストプロセス」の3段階に分かれます。各工程によって、PCのどのパーツに負荷がかかるかが異なります。
- モデリング:多くの場合、CPUとGPUの両方を使います。特に高解像度メッシュや複雑なアセットを扱うときは、メモリ使用量も増大します。
- レンダリング:ここが最も負荷の大きい工程です。CPUレンダー(Coronaなど)ではコア数とクロック数が重要、GPUレンダー(D5 RenderやOctaneなど)ではVRAMとCUDAコア数が効きます。
- ポストプロセス:PhotoshopやAfterEffectsを使うケースでは、ストレージ速度やメモリ容量が快適性を左右します。
たとえば、Blenderで重たい都市モデルを扱うと、CPUが100%近く稼働し、GPUメモリも8GB以上使用されます。ソフトの最適化にもよりますが、各工程の負荷に合わせてバランスよくPCを構成することが重要です。
初心者が陥りやすい「スペック過不足」の問題
初めてPCを選ぶときにありがちなのが、「やたら高性能」「逆に低スペックすぎ」の両極端に走ってしまうことです。どちらもコストと効果のバランスを崩す原因になります。
- 過剰スペックの例:
必要ないのにCore i9やRTX 4090を選び、価格だけ高くなってしまうケース。 - 不足スペックの例:
中古ノートPCで始めた結果、ソフトが開くだけで数分かかるなど、学習効率が著しく低下するケース。
特に学生や初心者は、「何を重視すべきか」を知らないまま選んでしまう傾向があります。たとえば、SketchUp中心の作業なら軽量GPUでも十分ですが、Lumionを使うならRTX 3060以上はほぼ必須です。
最初に「どのソフトを使うか」「どんな作業を重視するか」を明確にした上で、それに見合った構成を選ぶことが、快適な3DCGライフの第一歩です。
CPUの役割と推奨スペック
CPUは、建築3DCG制作における頭脳のような存在です。モデルの生成やレンダリング計算など、あらゆる工程でPC全体の処理をコントロールします。この章では、CPUの役割から性能指標の見方、実際の選び方までを順を追って解説します。
CPUが担う処理(演算・レンダリング計算など)
CPU(セントラル・プロセッシング・ユニット)は、3DCG制作のあらゆる処理を管理する頭脳です。モデリング中の動作処理からレンダリング計算、アドオンやプラグインの実行に至るまで、基本的な動作はすべてCPUを経由して行われます。
特にCPUが主役となるのは、「レンダリング」と「大量オブジェクトの管理」です。たとえば、Corona RendererやV-Ray(CPUモード)などは、CPUコアを使って1ピクセルずつ光の挙動を計算するため、マルチコア性能が直接スピードに影響します。
また、Blenderや3ds Maxなどのモデリングソフトでは、オブジェクト移動や視点操作などのインタラクティブな作業もCPU依存です。CPUが非力だと、重いシーンでの操作がもたついたり、ソフトが落ちる原因にもなります。
つまり、GPUが注目されがちな3DCGですが、CPUがボトルネックになれば全体のパフォーマンスが落ちるため、CPU選びはとても重要です。
コア数・クロック数の基礎理解
CPUの性能を測る主な指標は「コア数」と「クロック数(GHz)」の2つです。3DCG制作では、この2つをどう見るかがポイントです。
- コア数:
同時並行で処理できる単位の数。コア数が多いほど、レンダリングなどの重い処理を速く終えられます。 - クロック数:
1コアあたりの動作スピード。高ければプレビュー操作など1つ1つの動きがスムーズになります。
たとえば、リアルタイム操作が多いSketchUpでは「クロック数重視」が快適さのカギ。一方で、静止画レンダリング中心のV-RayやCoronaでは「コア数重視」が処理時間短縮に効きます。
また最近のIntel Core UltraシリーズやRyzenのハイブリッド構成では、「Pコア(高性能)+Eコア(省電力)」のように複数タイプのコアが混在します。これにより、多様な作業を効率よく処理できます。
作業内容に応じて、どちらを優先すべきかを見極めることが大切です。
建築3DCG向けおすすめCPUと選び方の基準【2025年版】
2025年現在のトレンドとして、Intelの「Core Ultra」シリーズが建築3DCGにも最適な選択肢となっています。AI処理用のNPUも内蔵し、モデリング・レンダリング・プレビューをバランスよくこなせます。
| 用途 | 推奨CPU | 特徴 |
|---|---|---|
| 入門・学習向け(SketchUp/Blender軽作業) | Core Ultra 5 240 / Ryzen 5 7600 | 軽快さとコスパを両立 |
| 実務向けバランス構成(モデリング+中負荷レンダリング) | Core Ultra 7 265K / Ryzen 7 7700X | Pコア多めで万能型 |
| 高負荷レンダリング(Corona/V-Ray) | Core Ultra 9 285K / Ryzen 9 7950X | 最大24コアクラスの処理性能 |
| GPUレンダー主体(D5 Render等) | Core i5-14600K / Ryzen 7 7800X3D | CPUはミドル、GPUに予算を回す |
注意点:Core Ultraシリーズは新ソケット(LGA1851)対応が必要で、マザーボード選びも重要になります。また、TDPが高いモデルでは、冷却性能も確保する必要があります(空冷大型 or 簡易水冷が安心です)。
予算に余裕があるなら「Core Ultra 9 285K」は長く使える万能CPUです。一方、GPUレンダリング中心ならCPUは「Core Ultra 7」またはRyzen 7クラスで十分。あくまでバランスが大切です。
GPU(グラフィックボード)の重要性
建築3DCG制作において、GPUは「描画の速さ」と「レンダリングの質」を大きく左右します。特にリアルタイムビューやGPUレンダラーを使う場合、GPU性能が作業効率と成果物のクオリティに直結します。この章では、GPUの基本機能から選び方まで、実務に沿って解説します。
GPUレンダリングとリアルタイム描画の仕組み(最新版)
GPU(Graphics Processing Unit)は、建築3DCGのレンダリングやプレビュー描画を高速化するために欠かせないパーツです。2025年現在では、NVIDIA RTX 5000番台(Blackwell世代)が主流となっており、従来よりも圧倒的にリアルタイム処理やAI支援に強くなっています。
GPUは、CPUのような逐次処理ではなく、「並列処理」に特化しています。これにより、複雑な光の反射やシャドウ、マテリアルの質感などをリアルタイムで計算できるようになります。たとえば、D5 RenderやOctane RenderなどのGPUレンダラーでは、フレーム単位でこれらの情報を処理しながら即座に画面に反映します。
また、建築パースのプレビューやウォークスルー表示など、操作時の画面表示もすべてGPUが処理します。ここでGPU性能が足りないと、操作が遅くなったり、描画が崩れるなどのトラブルにつながります。
RTX 5090や5080クラスであれば、8K解像度の建築動画でもスムーズに再生でき、リアルタイムライティングの表示もほぼタイムラグなしで確認できます。今後はGPUがレンダリングとAI処理の両方を担う場面がさらに増えていくでしょう。
GPUメモリ容量と性能の関係(VRAM)
GPUのスペックを見るうえで、まずチェックすべきなのが「メモリ容量(VRAM)」です。これは、3Dモデルの形状・マテリアル・HDRI・テクスチャなどを一時的に保存しておく専用メモリで、容量が不足すると描画エラーやクラッシュの原因になります。
建築3DCGでは、最低でも12GB以上のVRAMが現実的なラインです。特にD5 RenderやUnreal Engineなど高負荷ソフトを使うなら、16GB以上を推奨します。RTX 5080や5090はそれぞれ16GB〜24GB以上を搭載しており、大規模プロジェクトでも安定して作業が可能です。
ただし、VRAM容量だけでなく、コア性能(CUDA/RT/Tensorコア)も重要です。たとえばRTX 5060(VRAM 12GB)よりもRTX 5080(同容量)の方が、レンダリング処理速度は圧倒的に速くなります。
目安としては以下の通りです:
| 用途 | 推奨VRAM | 推奨GPU例(2025年) |
|---|---|---|
| 軽作業(SketchUp等) | 8GB以上 | RTX 5060 / 5070 |
| 中〜大型プロジェクト | 12〜16GB | RTX 5080 |
| 高解像度動画・VR対応 | 16GB〜24GB | RTX 5090 |
VRAMが足りないと、ソフトが強制終了したり画面が真っ黒になるリスクがあるので、性能だけでなく「容量面の余裕」も意識しましょう。
主要GPUブランド(NVIDIA/AMD)と選定ポイント(2025年版)
現在、建築3DCGにおいてはNVIDIA製GPU(特にRTXシリーズ)が事実上のスタンダードです。理由は以下の通りです。
- 多くのGPUレンダラー(Octane / Redshift / V-Ray GPUなど)がCUDAコア(NVIDIA特有)に最適化されている
- OptiXやDLSS、レイトレーシング対応など、リアルタイム描画に必要な技術が豊富
- 安定性とソフト側の対応状況が優秀
一方で、AMD製GPUは価格が抑えられており、ゲーミングや映像再生には強い傾向がありますが、レンダリング互換性の観点で制限が多く、建築3DCG用途では非推奨です。
| ブランド | 対応ソフト | 建築3DCG適性 |
|---|---|---|
| NVIDIA(RTX 5000番台) | D5 Render, Lumion, Blender Cycles, Octane, Redshiftなど多数 | ◎ 最適 |
| AMD(Radeon) | 一部ソフトは動作、レンダリング対応は限定的 | △ サブ用途 |
とくに注意したいのは、ノートPC向けGPU(例:RTX 5080 Laptop)はデスクトップ版より大幅に性能が劣る点です。同じ名前でもTDPやクロックが異なるため、型番だけで判断せず、ベンチマークや実測性能で確認しましょう。
メモリ(RAM)の容量と速度
メモリ(RAM)は、建築3DCG制作中のデータ処理を一時的に記憶するパーツで、作業の快適さに直結します。とくに大規模なシーンや高解像度レンダリングを扱う際、メモリ容量が不足すると動作が不安定になります。この章では、必要な容量や速度、よくあるトラブルとその対策について解説します。
3DCGデータ処理におけるメモリの役割
メモリ(RAM)は、建築3DCG制作中にソフトやデータが一時的に作業するための「作業机」のような役割を果たします。容量が広ければ広いほど、多くのデータを同時に展開・処理できるため、操作の快適さが大きく変わります。
たとえば、Blenderで100万ポリゴン以上の建築モデルを扱うとき、テクスチャ・マテリアル・ライト情報などのデータが一気に展開されます。これらをCPUやGPUが処理する前に、一時的にRAMに乗せる必要があるのです。
また、複数のソフト(例:3ds Max+Photoshop+ブラウザ)を同時に開くケースでは、それぞれのソフトがメモリを大量に消費します。メモリに余裕がないと、ページファイル(仮想メモリ)を使うようになり、極端に動作が遅くなります。
つまり、メモリは単なる「容量」ではなく、PC全体の快適さと安定性を左右する非常に重要な要素なのです。
容量不足が発生する典型的なケース
建築3DCGの現場では、メモリ不足によるトラブルは意外と多く発生します。以下に、よくあるケースをいくつか紹介します。
- 高解像度レンダリング時(4K以上):
1枚あたり数GBのデータが発生し、レンダラーがクラッシュすることも。 - 大規模な建築モデルを扱うとき:
街区全体をモデリングするようなケースでは、20GB以上のRAMを使用することもあります。 - ソフトを複数立ち上げた状態:
Blender+Photoshop+ブラウザ(参考資料)を同時に使うと、16GBではすぐに限界に達します。 - 大量のテクスチャ・HDRIを使用:
高解像度のPBRマテリアルやHDRIは、読み込み時に多くのRAMを消費します。
一見すると軽い作業でも、プレビュー表示やバックグラウンド処理の蓄積で、徐々にメモリを圧迫していきます。定期的にメモリ使用量をモニターする習慣をつけると、こうした不具合を未然に防げます。
快適に作業できるメモリ容量の目安
では、どのくらいのメモリがあれば建築3DCG制作を快適に進められるのでしょうか。以下に、作業内容別の目安を示します。
| 用途 | 推奨メモリ容量 | 備考 |
|---|---|---|
| 学習・入門(軽作業) | 16GB | 単一ソフト使用時は最低限これでOK |
| 実務(中規模モデル+Photoshop等併用) | 32GB | 複数ソフトを併用しても安定 |
| 高負荷制作(アニメーション・高解像度レンダー) | 64GB以上 | 予算が許せば最初から搭載推奨 |
現在主流のDDR5メモリでは、速度(MHz)よりもまず容量の確保が優先です。とくに16GB以下では、作業がまともに進まない場面もあるため、最低でも32GBからの構成をおすすめします。
また、将来的にメモリを追加する予定がある場合は、空きスロット数を確保しておくか、最初から2枚構成(16GB×2など)で導入しておくと後が楽です。
ストレージ(SSD・HDD)の構成と最適化
建築3DCG制作では、大容量の3Dデータやテクスチャ、レンダリング画像などを頻繁に読み書きします。そこで重要になるのが、ストレージの「速度」と「容量」です。この章では、SSDとHDDの違いや最適な使い分け、プロジェクト保存の工夫について解説します。
データ読み書き速度が作業効率に与える影響
ストレージの読み書き速度は、建築3DCG制作の快適さに大きく関わります。特にソフトの起動・保存・読み込みの時間や、レンダリング画像の出力スピードに直結します。
たとえば、NVMe SSD(PCIe Gen4)であれば、読み込み速度が最大7000MB/sを超えるため、数GBあるBlenderプロジェクトファイルでも数秒で開けます。対して、HDD(5400rpm)では数十秒〜1分以上かかることもあります。
また、キャッシュデータや仮想メモリの読み書きもストレージを経由するため、速度が遅いと全体のレスポンスが低下します。モデリングやレンダリング時のプレビュー切り替えにも影響が出るため、「ストレージは速ければ速いほど良い」と言えます。
とくに最近は、BlenderやUnreal Engineなどが大容量ファイルをリアルタイムに扱うため、SSD前提の作業環境が常識になっています。
SSD・HDDの違いと使い分け方
SSD(Solid State Drive)とHDD(Hard Disk Drive)は、データの保存方法と速度に大きな違いがあります。それぞれの特徴を理解し、適材適所で使い分けることが大切です。
| 項目 | SSD(NVMe/SATA) | HDD |
|---|---|---|
| 読み書き速度 | 高速(最大7000MB/s) | 低速(100〜200MB/s) |
| 静音性 | 無音 | 回転音あり |
| 耐衝撃性 | 強い | 弱い |
| 容量あたり価格 | 高い | 安い |
| 主な用途 | OS、ソフト、作業中プロジェクト | アーカイブ、バックアップ用 |
具体的な使い分けとしては:
- Cドライブ(OS・ソフト) → NVMe SSD(500GB〜1TB)
- Dドライブ(作業ファイル) → NVMe SSD(1TB以上)
- Eドライブ(バックアップ) → HDD(2〜6TB)
このように、速度が必要な場所にはSSDを、保存用にはHDDを使うのが基本です。なお、最近はGen5対応SSDも出ていますが、発熱や価格の観点から、Gen4 NVMe SSDがバランス的におすすめです。
プロジェクト保存・バックアップの推奨構成
建築3DCGのプロジェクトは、1件あたり数GB〜数十GBになることが珍しくありません。しかも、途中保存やレンダリング画像、テクスチャ素材などが増えると、あっという間に容量が圧迫されます。
そこでおすすめなのが、作業用と保存用を分けたストレージ構成です。以下に一例を示します。
| 用途 | デバイス | 容量目安 |
|---|---|---|
| OS・ソフト | NVMe SSD(Cドライブ) | 500GB〜1TB |
| 作業中のプロジェクト | NVMe SSD(Dドライブ) | 1TB以上 |
| 完了プロジェクト保存 | HDDまたは外付けSSD | 2TB〜6TB |
| バックアップ | クラウド+外付けHDD(RAID推奨) | 同容量以上 |
また、自動バックアップソフト(例:AOMEI/Macrium Reflect)を活用して、定期的に保存・復元体制を整えておくと安心です。
万が一に備えて「RAID構成」「NAS導入」などの中級対策も視野に入れつつ、まずはSSDの分散運用から始めてみるとよいでしょう。
ディスプレイと周辺機器の基礎知識
建築3DCGの制作環境では、ディスプレイや入力デバイスといった周辺機器も作業効率に大きな影響を与えます。色の正確さや解像度、入力のしやすさなど、道具としての「使いやすさ」が成果に直結します。この章では、ディスプレイと周辺機器の選び方について基礎から解説します。
カラーマネジメントと解像度の重要性
建築パースやプレゼン資料を正確に仕上げるには、ディスプレイの色再現性と解像度がとても重要です。とくにクライアント提出用の静止画や動画では、「自分の画面で見えていた色」と「他人の画面で見える色」に差が出ないようにすることが求められます。
まず基本として、色域(sRGB/AdobeRGB)を正確に表示できるディスプレイを選ぶのが第一歩です。たとえば、EIZOのColorEdgeシリーズや、BenQのPD・SWシリーズは、出荷時に工場キャリブレーションが施されており、信頼性が高いです。
また、解像度も作業のしやすさを左右します。1920×1080(フルHD)は最低限のラインであり、WQHD(2560×1440)や4K(3840×2160)が推奨されます。特に4Kでは、UIを縮小せずに広い作業領域が確保でき、レンダリング画像の細部チェックにも有効です。
実務では、sRGB 100%対応かつWQHD以上のディスプレイがあれば、9割以上の業務に対応できます。あとは、適切なキャリブレーション(例:i1Display Proなど)を定期的に行うことで、色のズレを最小限に抑えることができます。
入力デバイス(マウス・ペンタブ)の選び方
建築3DCG制作では、入力デバイスの使いやすさも作業効率に直結します。とくに長時間の操作や、細かいモデリング作業では、標準のマウスやキーボードだけでは疲れやすくなってしまいます。
まず、マウスについては、「手のサイズに合った形状」「ショートカットを登録できるボタン数」「センサー精度」が選定ポイントになります。3Dマウス(例:3Dconnexion SpaceMouse)も非常に便利で、ビューポートの視点移動が直感的に行えます。
次に、ペンタブレットは、特にスカルプトやテクスチャペイントに向いています。Wacom製のIntuosやCintiqは高精度で、筆圧感知により繊細な調整が可能です。BlenderやZBrushとの相性も良く、手描き感覚でモデリングが行えます。
さらに、作業スピードを上げるには「左手デバイス」(例:TourBox、Loupedeck)もおすすめです。よく使う操作を割り当てておくことで、ショートカット入力を大幅に効率化できます。
入力デバイスは「慣れ」と「フィット感」が重要なので、可能であれば量販店などで実機を試してみるのが安心です。
複数モニター環境による作業効率化
作業効率を劇的に上げたいなら、デュアルモニター以上の環境を導入するのがおすすめです。建築3DCGでは、1画面ではUIが煩雑になりがちで、操作やプレビューにストレスがたまりやすくなります。
たとえば、以下のような分担が有効です:
- メインモニター:3Dソフト(Blender/3ds Max等)のビューポート表示
- サブモニター:タイムライン・ノードエディタ・資料PDF・参考画像など
こうすることで、画面の切り替えが減り、作業集中力が途切れにくくなります。特に4K+WQHDの組み合わせや、ウルトラワイドモニター+縦型モニターなど、配置の工夫によってさらに快適性が上がります。
注意点としては、GPUの出力ポートと解像度の対応数を事前に確認しておくこと。最新のGPUなら3〜4画面まで出力可能ですが、ミドルクラスでは同時出力に制限がある場合もあります。
一度使うと戻れなくなるのが複数モニター環境。作業効率を上げたい方は、最初から導入を前提に構成しておくと無駄がありません。
ノートPC vs デスクトップ:どちらを選ぶべきか
建築3DCG制作用PCを選ぶ際、「ノートPC」と「デスクトップ」のどちらを選ぶべきかは大きな悩みどころです。それぞれに長所と短所があり、作業スタイルによって最適な選択は変わります。この章では、性能・携帯性・コストの観点から比較し、選定のヒントを紹介します。
性能・拡張性・冷却性の比較
建築3DCGのように高い処理性能を求める作業では、PCの基本性能が成果物の質や作業スピードに直結します。その点で、デスクトップPCの方がノートPCよりも有利です。
まず、デスクトップは物理的に大型のため、CPUやGPUにハイエンドモデルを搭載しやすく、冷却性能も確保しやすい構造です。RTX 5090やCore Ultra 9など、発熱の大きなパーツでも安定して動かせるのがメリットです。さらに、メモリやストレージの増設、GPUの交換など拡張性が高く、長期的に運用する上での柔軟性があります。
一方ノートPCは、省スペース・軽量化のために性能が抑えられているケースが多く、同じ型番でも「Laptop向け」はデスクトップ向けより処理能力が大きく劣ります。また、冷却性能も限られており、長時間のレンダリングで熱暴走や性能低下(サーマルスロットリング)を起こすリスクがあります。
モデリングや軽めのプレビュー作業まではノートでも可能ですが、静止画レンダリングやVR用途など高負荷作業にはデスクトップが基本と考えるのが無難です。
外出先での作業ニーズと携帯性
外出先や学校・クライアント先での作業が必要な場合は、ノートPCの携帯性が非常に大きなメリットになります。とくに学生やプレゼン用途では、「どこでも作業できる」こと自体が大きな武器になります。
最近のノートPCは、RTX 4070 Laptop搭載など一定以上のスペックを持つモデルも登場しており、SketchUpやLight版のBlender作業なら十分に対応可能です。また、Thunderbolt接続で外部GPU(eGPU)を使うことで、帰宅後はデスクトップ並の性能を発揮する構成も選択できます。
ただし、ノートPCで高性能を求めると価格が跳ね上がり、発熱やファン音の問題が付きまとうのが現実です。また、液晶サイズやキーボードの操作性も限定的で、長時間作業には不向きな場面も多いです。
用途が「外出先での確認・調整」中心ならノートPCで十分ですが、「制作そのものを行う」なら性能と作業環境に妥協が必要です。
コストパフォーマンスの観点からの判断基準
コストパフォーマンスという点では、同じ価格帯であればデスクトップの方が性能は圧倒的に高いです。たとえば、20万円のノートPCと20万円の自作デスクトップを比較すると、CPU性能・GPU性能・拡張性すべてにおいてデスクトップが優位になります。
また、ノートPCは基本的にパーツの交換が難しく、買い替えでしか性能アップができません。一方、デスクトップならGPUだけ入れ替える、メモリを増設するなど段階的なアップグレードが可能です。
さらに、冷却効率の良さは故障リスクの低下にもつながり、長期運用の安定性を支えます。つまり、「初期投資の効率性」「ランニングコスト」「将来の拡張性」をすべて含めて考えると、デスクトップは非常に合理的な選択です。
ただし、設置スペースや持ち運びの制約がある場合には、ノートPC+クラウドレンダリングの組み合わせも一つの選択肢になります。
モデリングソフト別の推奨スペック
建築3DCGのモデリングに使われるソフトは数多くあり、それぞれで求められるPCスペックが異なります。レンダリング重視か、軽快な操作性を優先するかによって最適な構成も変わってきます。この章では、主要なモデリングソフトごとに推奨されるPCスペックと構成例を紹介します。
Blenderの推奨スペックと最適構成(2025年版)
Blenderは、建築CGの入門から商用制作まで幅広く対応できる無料の3DCGソフトです。CyclesによるGPUレンダリングやEeveeでのリアルタイム表示など、PCスペックによって操作性・画質・制作スピードが大きく変わります。
| 項目 | 最小スペック | 推奨スペック | 最高スペック (実務・高解像度向け) |
|---|---|---|---|
| CPU | Core i5-13400 / Ryzen 5 5600X | Core Ultra 7 265K / Ryzen 7 7700X | Core Ultra 9 285K / Ryzen 9 7950X |
| GPU | RTX 4060(8GB) | RTX 5080(16GB) | RTX 5090(24GB以上) |
| メモリ | 16GB | 32GB | 64GB以上 |
| ストレージ | SATA SSD 500GB | NVMe SSD 1TB | NVMe Gen4 SSD 2TB+HDD併用 |
| 備考 | 学習・Eevee中心 | Cycles実務レンダーOK | 高負荷作業/4Kアニメ対応 |
たとえば、静止画レンダリングで128サンプル×デノイズON設定を使う場合、RTX 5080クラスがあれば数十秒〜数分でプレビュー可能です。ハイエンド構成では、複数カメラレンダーや動画書き出しも快適にこなせます。
SketchUpの推奨スペックと最適構成(2025年版)
SketchUpは、建築やインテリアのモデリング・プレゼンに特化した軽快なソフトです。本体の負荷は軽めですが、V-RayやEnscapeといったレンダリングプラグインを使う場合、GPUやメモリに余裕が必要になります。
| 項目 | 最小スペック | 推奨スペック | 最高スペック (プラグイン併用) |
|---|---|---|---|
| CPU | Core i3-13100 / Ryzen 5 5500 | Core Ultra 5 240 / Ryzen 5 7600 | Core Ultra 7 265K / Ryzen 7 7700X |
| GPU | 内蔵GPU可(Intel Iris Xe) | RTX 4060 / 4060Ti | RTX 5080以上(16GB) |
| メモリ | 8GB | 16〜32GB | 32GB以上 |
| ストレージ | SATA SSD 256GB | SSD 500GB | NVMe SSD 1TB+HDD併用 |
| 備考 | 図面確認・初学者向け | 通常モデリング全般 | レンダー連携・実務利用 |
SketchUpだけを使うならライト構成で十分ですが、V-RayやEnscapeと連携する場合はRTXシリーズ+16GB以上のメモリが事実上の必須条件になります。
3ds Maxの推奨スペックと最適構成(2025年版)
3ds Maxは、プロ向けの建築ビジュアライゼーションやアセット制作に広く使われる高機能なモデリングソフトです。V-RayやCorona Rendererとの連携を前提に設計されており、高負荷なレンダリング処理や複雑なモデリングにも耐えられるPC構成が求められます。
| 項目 | 最小スペック | 推奨スペック | 最高スペック (実務・高負荷レンダリング) |
|---|---|---|---|
| CPU | Core i5-13400 / Ryzen 5 5600X | Core Ultra 7 265K / Ryzen 7 7700X | Core Ultra 9 285K / Ryzen 9 7950X |
| GPU | RTX 4060(8GB) | RTX 5080(16GB) | RTX 5090(24GB以上) |
| メモリ | 16GB | 32GB | 64GB以上 |
| ストレージ | SSD 500GB | NVMe SSD 1TB | NVMe Gen4 SSD 2TB+HDD(保存用) |
| 備考 | 基本モデリングのみ | モデリング+中負荷レンダリング | V-Ray/Coronaで4Kレンダー対応 |
3ds Maxでは、CPUによるレンダリング(Corona/V-Ray CPU)とGPUレンダリング(V-Ray GPUなど)の両方が利用されるため、CPUとGPU両方の強さが必要になります。また、数千万ポリゴン規模の都市モデルを扱う場面では、64GB以上のメモリも現場レベルでは珍しくありません。
Rhinoの推奨スペックと最適構成(2025年版)
Rhino(Rhinoceros)は、精密なNURBSモデリングに特化した設計向けソフトで、建築・プロダクト・ジュエリー設計など幅広い分野で使われています。幾何処理が中心のためGPU負荷は比較的低めですが、Grasshopperなどのビジュアルプログラミングを多用する場合はCPUとメモリ性能も重視されます。
| 項目 | 最小スペック | 推奨スペック | 最高スペック (Grasshopper・連携ソフト使用) |
|---|---|---|---|
| CPU | Core i5-13400 / Ryzen 5 5500 | Core Ultra 5 240 / Ryzen 5 7600 | Core Ultra 7 265K / Ryzen 7 7700X |
| GPU | 内蔵GPU可(Intel UHD) | RTX 4060(8GB) | RTX 5070〜5080(16GB) |
| メモリ | 8GB | 16GB | 32GB以上 |
| ストレージ | SATA SSD 256GB | SSD 500GB | NVMe SSD 1TB+外部HDD(保存用) |
| 備考 | 軽作業・初学者 | 通常モデリング全般 | Grasshopper+V-Ray連携や解析用途 |
Rhino自体は軽量なソフトですが、V-Ray for RhinoやEnscapeとの連携、またBIMや解析ソフトとのデータ連携を行う場合は、GPUとメモリの強化が必要になります。
Cinema 4Dの推奨スペックと最適構成(2025年版)
Cinema 4Dは、モーショングラフィックスや建築ビジュアル、アニメーションに強みを持つ3DCGソフトです。特にRedshiftとの連携に優れており、GPUレンダリングを前提にした構成が求められます。リアルタイム性やアニメ処理にも対応できるバランスの取れたPC構成が鍵になります。
| 項目 | 最小スペック | 推奨スペック | 最高スペック (Redshift+アニメ制作) |
|---|---|---|---|
| CPU | Core i5-13400 / Ryzen 5 5600X | Core Ultra 7 265K / Ryzen 7 7700X | Core Ultra 9 285K / Ryzen 9 7950X |
| GPU | RTX 4060(8GB) | RTX 5080(16GB) | RTX 5090(24GB以上) |
| メモリ | 16GB | 32GB | 64GB以上 |
| ストレージ | SSD 500GB | NVMe SSD 1TB | NVMe SSD 2TB+HDD(素材保存) |
| 備考 | プロモ用静止画中心 | 通常モーション制作OK | 長尺動画・大量テクスチャ使用時対応 |
RedshiftはNVIDIA CUDAベースのGPUレンダラーのため、NVIDIA RTXシリーズの中位以上を選ぶのが前提になります。また、アニメーション用途ではRAMとストレージの速度がボトルネックになりやすく、NVMe SSD+64GBメモリの構成で運用するのが安心です。
Shade3Dの推奨スペックと最適構成(2025年版)
Shade3Dは、国産の3DCGソフトとして建築パース・プロダクト設計・3Dプリント向けなど幅広く使われています。安定動作と日本語UIが特徴ですが、内部レンダラーやパストレーサー使用時は一定の処理性能が必要です。比較的軽量なソフトのため、中スペック構成でも実務に対応可能です。
| 項目 | 最小スペック | 推奨スペック | 最高スペック (建築パース・高品質レンダー) |
|---|---|---|---|
| CPU | Core i3-13100 / Ryzen 5 5500 | Core Ultra 5 240 / Ryzen 5 7600 | Core Ultra 7 265K / Ryzen 7 7700X |
| GPU | 内蔵GPUでも可(Iris Xe) | RTX 4060 / 4060Ti | RTX 5070 / 5080(16GB) |
| メモリ | 8GB | 16〜32GB | 32GB以上 |
| ストレージ | SATA SSD 256GB | SSD 500GB | NVMe SSD 1TB+外部HDD |
| 備考 | 学習・初期設計向け | 実務図面・軽レンダーOK | 建築プレゼン・高解像度出力向け構成 |
Shade3Dはレンダラーの種類によってCPU/GPUの依存度が変わりますが、CPUメインでも快適に動作します。アニメーションやスクリプト処理も可能なため、シンプルな構成から拡張していける柔軟性も魅力です。
Mayaの推奨スペックと最適構成(2025年版)
Mayaは、映画・建築・ゲーム・アニメーションなど、プロフェッショナル用途で広く使われている3DCGソフトです。特にアニメーション制作やArnoldレンダラーとの連携では、CPUとメモリ、そして安定したGPU性能が求められます。高解像度レンダリングや複雑なリグ構造にも対応する構成が理想です。
| 項目 | 最小スペック | 推奨スペック | 最高スペック (アニメ・Arnoldフル活用) |
|---|---|---|---|
| CPU | Core i5-13400 / Ryzen 5 5600X | Core Ultra 7 265K / Ryzen 7 7700X | Core Ultra 9 285K / Ryzen 9 7950X |
| GPU | RTX 4060(8GB) | RTX 5080(16GB) | RTX 5090(24GB以上) |
| メモリ | 16GB | 32GB | 64GB以上 |
| ストレージ | SSD 500GB | NVMe SSD 1TB | NVMe Gen4 SSD 2TB+HDD併用 |
| 備考 | モデリング・軽いアニメ向け | 標準アニメ制作+中負荷レンダー | 高解像度映像・複数シーン並列処理対応構成 |
MayaはArnoldレンダーがCPUベースであることから、マルチコア性能の高いCPUがレンダリング速度に直結します。RTX GPUはビューポート表示の快適性に効きますが、レンダリング自体はCPU依存なので、GPUよりCPUを重視した構成が基本です。
レンダリングソフト別の推奨スペック
レンダリングソフトは、建築3DCGの最終的な「見た目」を決定づける重要なツールです。しかし、使うソフトによって処理方式(CPUかGPUか)や負荷の特性が大きく異なり、それに応じたPC構成が必要になります。この章では、主要なレンダリングソフトごとの推奨スペックと構成例を、最新環境に基づいて解説します。
D5 Renderの推奨スペックと最適構成(2025年版)
D5 Renderは、建築ビジュアライゼーションに特化したリアルタイムGPUレンダラーで、使いやすさと画質の両立が評価されています。完全にGPU依存型のため、GPU性能とVRAM容量がレンダリング速度と品質に直結します。
| 項目 | 最小スペック | 推奨スペック | 最高スペック (8K動画・重いシーン) |
|---|---|---|---|
| CPU | Core i5-13400 / Ryzen 5 5600 | Core Ultra 5 240 / Ryzen 5 7600 | Core Ultra 7 265K / Ryzen 7 7700X |
| GPU | RTX 4060(8GB) | RTX 5080(16GB) | RTX 5090(24GB以上) |
| メモリ | 16GB | 32GB | 64GB以上 |
| ストレージ | SSD 500GB | NVMe SSD 1TB | NVMe SSD 2TB+HDD(書き出し保存) |
| 備考 | 軽量外観パース向け | 実務の静止画・動画制作に対応 | 大規模建築・高解像度動画対応構成 |
D5 Renderは「RTX必須」であり、AMD GPUは非対応です。GPUが性能のボトルネックになりやすいため、特に動画やアニメーション制作を行う場合は、RTX 5080以上のクラスが安定動作のカギとなります。
Twinmotionの推奨スペックと最適構成(2025年版)
Twinmotionは、Unreal Engineベースのリアルタイムレンダラーで、建築・都市計画・インテリア分野でのインタラクティブなビジュアライゼーションに活用されています。リアルタイム性を重視するため、GPUとストレージ速度のバランスが重要です。
| 項目 | 最小スペック | 推奨スペック | 最高スペック (高解像度+VR活用) |
|---|---|---|---|
| CPU | Core i5-13400 / Ryzen 5 5600X | Core Ultra 5 240 / Ryzen 5 7600 | Core Ultra 7 265K / Ryzen 7 7700X |
| GPU | RTX 4060(8GB) | RTX 5070〜5080(16GB) | RTX 5090(24GB以上) |
| メモリ | 16GB | 32GB | 64GB以上 |
| ストレージ | SSD 500GB | NVMe SSD 1TB | NVMe SSD 2TB+外部SSD(素材管理) |
| 備考 | プレゼン用パース確認向け | 中規模プロジェクトの実務使用 | VR+動画+大規模開発対応構成 |
TwinmotionはUnreal Engine 5ベースの描画処理を採用しているため、GPUのレイトレーシング性能とVRAM容量が出力品質に大きく影響します。多数の植栽・交通表現を含むシーンでは、RTX 5080以上が快適です。
Lumionの推奨スペックと最適構成(2025年版)
Lumionは、建築パースや動画プレゼンの作成に特化したリアルタイムレンダラーで、手軽な操作と高品質なビジュアル表現が特徴です。全ての処理がGPU依存のため、グラフィックボードの性能とVRAM容量が制作体験を左右します。
| 項目 | 最小スペック | 推奨スペック | 最高スペック (高品質動画・大規模景観) |
|---|---|---|---|
| CPU | Core i5-13400 / Ryzen 5 5600 | Core Ultra 5 240 / Ryzen 5 7600 | Core Ultra 7 265K / Ryzen 7 7700X |
| GPU | RTX 4060(8GB) | RTX 5080(16GB) | RTX 5090(24GB以上) |
| メモリ | 16GB | 32GB | 64GB以上 |
| ストレージ | SSD 500GB | NVMe SSD 1TB | NVMe SSD 2TB+外部ストレージ |
| 備考 | ライトな外構パース用 | 通常の建築動画プレゼン対応 | 森林・水面・群衆などの重負荷対応構成 |
LumionはマルチGPUに対応していないため、単一GPUの性能が最重要です。また、Lumion 2025では最低8GBのVRAMが必須条件となっており、RTX 4060以上が実質的なスタートラインです。アセット数が多くなると、VRAM不足での強制終了も発生するため、余裕を持った構成が重要です。
V-Rayの推奨スペックと最適構成(2025年版)
V-Rayは、建築CGにおける業界標準のフォトリアルレンダラーです。CPU・GPUどちらでもレンダリング可能な柔軟性を持ち、モデリングソフト(3ds Max/SketchUp/Rhino/Mayaなど)との連携が前提になります。選ぶレンダリングモードに応じて、CPUかGPU、あるいは両方の性能が問われます。
| 項目 | 最小スペック | 推奨スペック | 最高スペック (4K・複数シーン同時処理) |
|---|---|---|---|
| CPU | Core i5-13400 / Ryzen 5 5600X | Core Ultra 7 265K / Ryzen 7 7700X | Core Ultra 9 285K / Ryzen 9 7950X |
| GPU | RTX 4060(8GB) | RTX 5080(16GB) | RTX 5090(24GB以上) |
| メモリ | 16GB | 32GB | 64GB以上 |
| ストレージ | SSD 500GB | NVMe SSD 1TB | NVMe SSD 2TB+HDD |
| 備考 | 軽めの静止画レンダー用 | 通常レンダー+リアルタイム確認対応 | 複雑な照明・マテリアル設定にも耐える構成 |
V-Ray GPUを選ぶ場合、CUDA対応+充分なVRAM(最低8GB)が前提です。一方、V-Ray CPUはスレッド数とクロック数のバランスが重要になります。実務では両方を併用するケースも多いため、CPU・GPU両方のバランスが取れた構成が理想です。
Corona Rendererの推奨スペックと最適構成(2025年版)
Corona Rendererは、建築CG分野で高い人気を誇るCPUベースのフォトリアルレンダラーです。操作性のシンプルさと美しい出力が特徴で、主に3ds MaxやCinema 4Dと組み合わせて使われます。GPU性能よりもCPUのコア数とクロックが最重要になります。
| 項目 | 最小スペック | 推奨スペック | 最高スペック (高解像度+大量レンダー) |
|---|---|---|---|
| CPU | Core i5-13400 / Ryzen 5 5600X | Core Ultra 9 285K / Ryzen 9 7900X | Ryzen Threadripper PRO 7965WX |
| GPU | 必須なし(内蔵GPU可) | 任意のRTXシリーズ | RTX 4060〜(ビューポート支援用) |
| メモリ | 16GB | 32GB | 64GB以上 |
| ストレージ | SSD 500GB | NVMe SSD 1TB | NVMe SSD 2TB+HDD(書き出し保存) |
| 備考 | テストレンダー・軽負荷作業用 | 実務パース作成全般に対応 | 並列レンダーや多光源表現対応構成 |
Coronaは完全にCPUレンダーであるため、レンダリング性能はCPUに100%依存します。RTXなどのGPUはビューポート表示や連携ソフトの動作補助用として使う程度です。建築内観でGIや複雑な反射を多用するシーンでは、CPU性能の高さがそのまま作業時間の差になります。
Enscapeの推奨スペックと最適構成(2025年版)
Enscapeは、RevitやSketchUp、ArchicadなどのBIM/モデリングソフトとリアルタイムに連携するレンダリングプラグインです。操作がシンプルで即時反映型のプレビューが可能な一方、GPUに強く依存する構造のため、グラフィックボードの選定が最重要ポイントです。
| 項目 | 最小スペック | 推奨スペック | 最高スペック (VR・高負荷シーン) |
|---|---|---|---|
| CPU | Core i5-13400 / Ryzen 5 5600 | Core Ultra 5 240 / Ryzen 5 7600 | Core Ultra 7 265K / Ryzen 7 7700X |
| GPU | RTX 4060(8GB) | RTX 5080(16GB) | RTX 5090(24GB以上) |
| メモリ | 16GB | 32GB | 64GB以上 |
| ストレージ | SSD 500GB | NVMe SSD 1TB | NVMe SSD 2TB+外部SSD |
| 備考 | ライトな建築プレゼン向け | 実務プロジェクト全般対応 | VR/群衆/複雑照明に対応可能な構成 |
Enscapeは「RTX必須」と明言されており、最低でもRTX 4060以上、実務ではRTX 5070〜5080クラスが快適です。特にBIMモデルとの連携で数十万ポリゴンを扱うシーンでは、GPUメモリが8GBを下回ると不安定になるため、16GB以上を推奨します。
Cyclesの推奨スペックと最適構成(2025年版)
Cyclesは、Blenderに標準搭載されているパストレーシング方式のレンダリングエンジンです。GPUベースとCPUベースのどちらでも動作しますが、リアルタイム性やレンダリング速度を考えると、GPUを中心に構成するのが定番です。RTXシリーズとの相性がよく、特にOptiX対応のGPUが望まれます。
| 項目 | 最小スペック | 推奨スペック | 最高スペック (4K+アニメーション対応) |
|---|---|---|---|
| CPU | Core i5-13400 / Ryzen 5 5600X | Core Ultra 7 265K / Ryzen 7 7700X | Core Ultra 9 285K / Ryzen 9 7950X |
| GPU | RTX 4060(8GB) | RTX 5080(16GB) | RTX 5090(24GB以上) |
| メモリ | 16GB | 32GB | 64GB以上 |
| ストレージ | SSD 500GB | NVMe SSD 1TB | NVMe SSD 2TB+HDD(アセット保存) |
| 備考 | ライトな静止画作成用 | 通常の建築パース・動画に対応 | 長尺アニメ・高精度GI対応構成 |
Cyclesでは、GPUレンダー時にVRAMが不足すると処理が中断されることがあるため、8GB以上、理想は16GB以上のVRAMを推奨します。また、CPUレンダーを選ぶ場合はスレッド数重視の構成が必要です。実務では「GPUレンダー+デノイズON」構成が高速で安定です。
Octane Renderの推奨スペックと最適構成(2025年版)
Octane Renderは、NVIDIA CUDAベースのGPU専用パストレーサーで、リアルな光の表現と高速な処理が特徴です。完全なGPU依存設計のため、CPU性能よりもGPUのCUDAコア数とVRAM容量が最重要になります。また、NVIDIA GPU専用のため、AMD製GPUでは動作しません。
| 項目 | 最小スペック | 推奨スペック | 最高スペック (8K・マルチGPU運用) |
|---|---|---|---|
| CPU | Core i5-13400 / Ryzen 5 5600X | Core Ultra 5 240 / Ryzen 5 7600 | Core Ultra 7 265K / Ryzen 7 7700X |
| GPU | RTX 4060(8GB) | RTX 5080(16GB) | RTX 5090(24GB以上)×2 |
| メモリ | 16GB | 32GB | 64GB以上 |
| ストレージ | SSD 500GB | NVMe SSD 1TB | NVMe SSD 2TB+高速外部SSD |
| 備考 | 学習・軽めの作例向け | 実務レベルの高品質静止画に対応 | アニメ/超高解像度対応のプロ構成 |
OctaneはVRAM容量に収まりきらないシーンではレンダーが停止するため、実務では16GB以上が現実的です。また、マルチGPUに正式対応しているため、将来的な拡張性を見込んだケース設計や電源構成も重要になります。
Redshiftの推奨スペックと最適構成(2025年版)
Redshiftは、Cinema 4DやMayaと親和性の高い、GPUアクセラレーション型のバイアスレンダラーです。アニメーションやモーショングラフィックスとの連携が前提で、高いGPU性能と十分なVRAMがスムーズな制作を支えます。正式にマルチGPUもサポートしています。
| 項目 | 最小スペック | 推奨スペック | 最高スペック (Cinema4D+4Kアニメ) |
|---|---|---|---|
| CPU | Core i5-13400 / Ryzen 5 5600X | Core Ultra 7 265K / Ryzen 7 7700X | Core Ultra 9 285K / Ryzen 9 7950X |
| GPU | RTX 4060(8GB) | RTX 5080(16GB) | RTX 5090(24GB以上)×2 |
| メモリ | 16GB | 32GB | 64GB以上 |
| ストレージ | SSD 500GB | NVMe SSD 1TB | NVMe SSD 2TB+外部SSD(書き出し用) |
| 備考 | 軽作業・基本出力用 | 通常アニメ・複雑シーン対応 | フルHD超・大量フレーム処理向け構成 |
RedshiftではOptiXによるレイトレース最適化が有効なため、RTX世代での運用が必須です。特にアニメ制作では1フレームごとの処理速度が全体工数に直結するため、VRAMが16GB未満だと実務では厳しくなります。
Unreal Engineの推奨スペックと最適構成(2025年版)
Unreal Engineは、建築ビジュアライゼーションからVRプレゼン、リアルタイム映像制作まで対応する強力なゲームエンジンです。建築用途では高精度ライティングやLumen、Naniteなどの機能を使うため、GPU性能とVRAM容量がレンダリングやプレビュー品質に大きく影響します。
| 項目 | 最小スペック | 推奨スペック | 最高スペック (建築VR・大規模シーン) |
|---|---|---|---|
| CPU | Core i5-13400 / Ryzen 5 5600 | Core Ultra 5 240 / Ryzen 5 7600 | Core Ultra 9 285K / Ryzen 9 7900X |
| GPU | RTX 4060(8GB) | RTX 5080(16GB) | RTX 5090(24GB以上) |
| メモリ | 16GB | 32GB | 64GB以上 |
| ストレージ | SSD 500GB | NVMe SSD 1TB | NVMe SSD 2TB+HDD(アセット保存) |
| 備考 | 軽量建築モデル向け | 建築プレゼン・Lumen活用可 | VR・群衆・広域都市設計対応構成 |
Unreal Engine 5以降は、レイトレーシング処理(Lumen)や高解像ジオメトリ(Nanite)に対応しており、RTX 5080以上のGPUでないとフル活用は難しいです。また、アセット数が多いシーンではメモリ消費も激しいため、32GB以上が事実上の標準構成となっています。
Arnoldの推奨スペックと最適構成(2025年版)
Arnoldは、Maya・3ds Maxなどで標準搭載されている物理ベースレンダラー(PBR)で、映画品質のビジュアルや高精度な建築CGに適しています。基本的にはCPUベースのレンダラーですが、近年はGPUレンダリングにも対応しており、制作内容によって構成を選べます。
| 項目 | 最小スペック | 推奨スペック | 最高スペック (映画品質・複雑演算) |
|---|---|---|---|
| CPU | Core i5-13400 / Ryzen 5 5600X | Core Ultra 9 285K / Ryzen 9 7900X | Ryzen Threadripper PRO 7965WX |
| GPU | 任意(GPUレンダー使用時) | RTX 5080(16GB) | RTX 5090(24GB以上) |
| メモリ | 16GB | 32GB | 64〜128GB |
| ストレージ | SSD 500GB | NVMe SSD 1TB | NVMe SSD 2TB+RAID HDD構成 |
| 備考 | ライトな静止画作成用 | 一般建築パース+軽アニメ対応 | 複数同時レンダー・大量パス処理構成 |
ArnoldのCPUレンダリングではマルチスレッド性能が重要で、レンダー時間短縮にはThreadripperなどの高スレッドCPUが有効です。一方、GPUレンダリングを使う場合は、CUDA対応かつVRAM16GB以上のRTXが安定動作の条件になります。
初心者向けPC構成モデル例
これまでに各パーツやソフト別の推奨スペックを紹介してきましたが、「結局どんな構成を選べばいいのか分からない」という声も多く聞きます。この章では、初心者や学生向けに、目的や予算に応じたPC構成モデルを具体的に紹介します。各構成は2025年時点のパーツ価格・性能をもとに、バランスよく設計しています。
学習用ミドルレンジ構成例(コスパ重視)
これから建築3DCGを学ぶ初心者や学生におすすめなのが、ミドルレンジの構成です。価格を抑えつつも、主要なモデリング・レンダリングソフトが快適に動作するスペックを備えています。BlenderやSketchUp、Enscapeなどの軽量ソフトなら、この構成で十分に対応できます。
| パーツ | 構成例(2025年時点) |
|---|---|
| CPU | Intel Core Ultra 5 240 または Ryzen 5 7600 |
| GPU | NVIDIA RTX 4060(8GB) |
| メモリ | 16GB(DDR5推奨) |
| ストレージ | 500GB SSD(NVMe) |
| マザーボード | B650 / B760 チップセット |
| 電源 | 550〜600W 80+ Bronze |
| ケース | MicroATXスリム/静音タイプ |
この構成なら、建築モデリング・軽いレンダー・学生の課題制作まで快適にこなせます。将来GPUやメモリの増設も視野に入れて、拡張性を確保しておくのがおすすめです。
実務・レンダリング対応構成例(性能重視)
建築3DCGを実務で扱うなら、レンダリング処理や大規模プロジェクトにも耐えられる構成が必要です。特にD5 RenderやV-Ray GPUなど、GPUレンダーを活用する場合は16GB以上のVRAMを持つ上位GPUが安定性と効率に直結します。
| パーツ | 構成例(2025年時点) |
|---|---|
| CPU | Intel Core Ultra 7 265K または Ryzen 7 7700X |
| GPU | NVIDIA RTX 5080(16GB) |
| メモリ | 32GB(DDR5 6000MHz以上) |
| ストレージ | NVMe SSD 1TB+外部HDD |
| マザーボード | B650E / Z790 チップセット |
| 電源 | 750W 80+ Gold |
| ケース | ATXミドルタワー(エアフロー重視) |
この構成なら、レンダリングの待ち時間を大幅に短縮でき、クライアント案件やプレゼン制作にも安心して対応できます。
予算別のバランス設計(10万・20万・30万円台)
最後に、2025年の市場価格をベースに、価格帯別のおすすめ構成を紹介します。用途に応じて、どこにコストをかけるべきかの指針としても使えます。
| 予算帯 | CPU | GPU | メモリ | ストレージ | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 約10万円台 | Core i3-14100 | GTX 1650 / 内蔵GPU | 8〜16GB | 256GB SSD | 学習用・軽い建築CGに限定 |
| 約20万円台 | Core Ultra 5 240 / Ryzen 5 7600 | RTX 4060 | 16GB | 500GB SSD | 入門〜学生制作に最適 |
| 約30万円台 | Core Ultra 7 265K / Ryzen 7 7700X | RTX 5070〜5080 | 32GB | 1TB SSD+外部HDD | 実務〜長期運用前提の構成 |
「GPUはなるべく妥協しない」ことが快適性のカギです。特に20万円台ではRTX 4060以上を確保し、メモリとストレージは後から拡張する戦略が有効です。
まとめ:スペック理解から始める建築3DCG環境づくり
建築3DCGの制作には、目的に合ったPCスペックの理解と選定が欠かせません。何となく高性能を選ぶのではなく、「どこに負荷がかかるか」を理解した上で構成を考えることが、快適な制作環境づくりへの近道です。この章では、パーツごとの優先順位や構成判断の基準、長期的に見たPC選びの考え方をまとめます。
理解すべき主要パーツの優先順位
PCを構成する各パーツは、建築3DCGにおいて重要度が異なります。限られた予算の中でどこに重点を置くべきかを明確にすることで、無駄のない構成が可能になります。ここでは実務経験を踏まえ、CG用途におけるパーツの優先順位を整理します。
- GPU(グラフィックボード)
ほとんどのモデリング・レンダリングソフトで最も負荷がかかるのがGPUです。特にリアルタイムレンダラー(D5 Render/Twinmotion/Enscapeなど)やCycles・OctaneのようなGPUレンダーでは、VRAM容量とCUDAコア数が処理能力を大きく左右します。 - CPU(プロセッサ)
レンダリング時間や複雑なシーンの処理速度に関わるため、CPU性能も重要です。V-RayやCoronaのようなCPUレンダーを使う場合はコア数が多いCPUが有利です。 - メモリ(RAM)
作業中のデータ保持に関係するため、シーンが大きくなるとメモリ不足で動作が不安定になります。16GBが最低ライン、快適に作業するなら32GB以上を推奨します。 - ストレージ(SSD/HDD)
保存速度や起動の速さに直結します。NVMe SSDが標準ですが、プロジェクトのバックアップ用にHDDとの併用が望ましいです。 - 電源・冷却・ケース設計
直接的な性能に影響しないものの、安定動作や将来的な拡張性を左右する重要な要素です。電源は80+ Gold以上が理想です。
つまり、最優先はGPU>CPU>メモリ>ストレージ>その他の順になります。高負荷ソフトを使う場合ほど、GPUを中心に予算配分する構成が失敗しにくくなります。
自分の制作スタイルに合う構成の見極め方
スペックを選ぶ際は、性能の高さよりも「何に使うか」「どの程度の規模で使うか」を明確にすることが重要です。以下のように、目的別に構成の方向性が変わります。
| 制作スタイル | 向いている構成 |
|---|---|
| 静止画中心・パース制作 | CPU重視+中位GPU(例:RTX 4060) |
| 建築プレゼン・リアルタイム確認 | GPU重視+高速SSD+32GBメモリ |
| 長尺アニメやVR連携 | 高性能GPU(RTX 5080以上)+64GBメモリ以上 |
| BIM連携+Enscapeなど軽レンダー | RTX 4060程度+Ultra 5クラスのCPU |
使用ソフトによっても変わるため、「普段使うモデラー+レンダラーの組み合わせ」に合わせて構成を調整するのがベストです。
長期的に使えるPC選びの考え方
PCは一度組んだら数年は使い続けるものです。特に建築3DCGでは、プロジェクトの規模やソフトのアップデートによって要求スペックが年々上昇しています。以下のような視点で、長期的に使える構成を目指すと安心です。
- GPUは2世代先を見据えて選ぶ
例:今RTX 4060を選ぶより、RTX 5080にしておくと2〜3年は安心です。 - メモリは32GBを基準に
増設余地のある構成にしておけば、将来的な拡張も簡単です。 - ストレージは最低1TB+HDD運用
素材や出力データはすぐに増えるため、保存領域に余裕を持つことが重要です。 - ケースと電源は拡張性重視で選定
ハイスペックGPUや水冷を導入する際に、電源容量と内部スペースがネックになることがあります。
よくある質問(FAQ)
最後に、これから建築3DCG用のPCを選ぶ方がよく疑問に感じるポイントをQ&A形式でまとめます。初心者の方がつまずきやすい点や、構成選びで迷いやすい部分を中心に、2025年の最新事情にもとづいて簡潔に回答しています。
Q1. GPUレンダリングは必ず必要?
使うソフトによって異なりますが、近年はGPUレンダリングが主流です。
例えば、D5 Render・Lumion・Enscape・Cycles(GPUモード)・Octane RenderなどはGPUベースです。これらを使うなら、RTX 4060以上のGPUはほぼ必須といえます。一方で、V-RayやCorona RendererなどはCPUレンダリングにも対応しているため、用途次第ではGPUなし構成も可能です。
ただし、ソフトが対応していたとしても、処理速度や操作感を考えるとGPUありの構成が圧倒的に有利です。リアルタイム性が求められる建築CGでは、GPUの重要度が年々高まっています。
Q2. ノートPCでも建築CGは作れる?
作れますが、構成に注意が必要です。
モデリングや軽いレンダリングは問題ありませんが、VRや4K出力、動画レンダリングなどは性能的に厳しい場面もあります。特にノートPCはGPUの冷却性能やVRAM容量に制限があるため、RTX 4060以上+16GBメモリの構成が最低ラインと考えると安心です。
また、デスクトップと比べると拡張性・コスパ・長時間処理の安定性において劣るため、本格的に取り組むならデスクトップPCがおすすめです。
Q3. どのくらいのメモリ容量が理想?
最低でも16GB、実務では32GBが標準、余裕を見るなら64GBです。
小規模なパース制作や学生課題であれば16GBでも動作は可能ですが、建築プレゼンや複雑なマテリアル・ライティングを扱う場合は32GBが快適性の目安です。特にD5 RenderやUnreal Engineのようなリアルタイム系では、VRAMと合わせてRAMの消費も大きいため注意が必要です。
Q4. 自作PCとメーカー製PCどちらが良い?
コストとカスタマイズ性を重視するなら自作、保証や安定性を重視するならメーカー製が無難です。
自作PCはパーツを自由に選べるため、予算内で性能を最大化しやすく、将来的なアップグレードも楽です。ただし、トラブル対応やBIOS設定に慣れていないと難しく感じるかもしれません。
一方、メーカー製PC(BTO含む)はサポートや動作確認が安心材料になります。最近は「クリエイター向けモデル」も増えており、建築3DCG向け構成も手軽に選べます。
Q5. 学生向けにおすすめの構成は?
予算20〜25万円前後で、将来の実務にも対応できる構成を目指しましょう。
例としては、以下のような構成がおすすめです。
| パーツ | 推奨構成 |
|---|---|
| CPU | Core Ultra 5 240 / Ryzen 5 7600 |
| GPU | RTX 4060(8GB) |
| メモリ | 16GB(DDR5) |
| ストレージ | NVMe SSD 500GB〜1TB |
| 備考 | 将来的にメモリやSSDの増設ができる構成を選ぶと安心です |
この構成なら、Blender・SketchUp・Enscapeなどを使った学生作品制作から、インターン先での軽作業まで幅広く対応できます。
