Blenderマテリアル設定入門|建築4素材のPBRパラメータと設定値を整理

Blenderでマテリアルを設定したのに「なんとなく嘘っぽい」と感じた経験はないでしょうか。原因の多くは、素材ごとに値を覚えようとして混乱しているか、Roughness・Metallic・Transmission Weightという3つのパラメータの意味をつかめていないかのどちらかです。逆にこの3パラメータが何を制御しているかがわかれば、建築でよく使う素材は同じ枠組みで整理できます。

この記事では、Blender 4.2 LTS / 5.x のPrincipled BSDF(フィジカルベースの標準シェーダー)を使い、木・金属・ガラス・コンクリートという建築4素材を実務的な数値範囲で設定する流れを見ていきます。

PBRの理論的な背景まで踏み込みたい場合はBlender建築3DCGのマテリアル基礎|質感が嘘っぽくなる原因と判断軸の整理に分けて解説しています。この記事では「数値で覚えて、すぐ手を動かせる」ことを優先します。

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目次

「嘘っぽい」マテリアルの原因はPBRの3パラメータにある

建築素材が嘘っぽく見える原因の大半は、Roughness(表面の粗さ)・Metallic(金属か非金属か)・Transmission Weight(透明度)という3つのパラメータの使い分けに集約されます。逆にこの3軸さえ理解すれば、木・金属・ガラス・コンクリートはすべて同じ枠組みで設定できます。

パラメータ 値の範囲 役割 建築での使い方
Roughness 0.0〜1.0 表面の粗さ(鏡面〜マット) 仕上げ種別(鏡面・ヘアライン・サテン・無塗装)を決める主役
Metallic 0.0 または 1.0 金属か非金属かの二択 金属だけ1.0、それ以外(木・ガラス・コンクリ)は0.0固定
Transmission Weight 0.0〜1.0 透明度(光が透過する割合) ガラス系のみ使用。クリアガラスは1.0、不透明素材は0.0

光の反応を数値で制御するPBR(Principled BSDF)

Principled BSDFは、光の物理特性(反射・屈折・散乱)を数値で再現するシェーダーです。ざっくり言えば「この数値を入れれば、その素材に見える」というシミュレーター。旧来のPhong・Lambertといった手法が「それっぽく見せる計算」だったのに対し、PBR(Physically Based Rendering、物理ベースレンダリング)は実際の光の動きを近似します。だからこそ、HDRI(360度撮影した実写の光情報)と組み合わせたときに建築の素材感がきちんと出ます。

PBRの理論的な背景を先にしっかり理解しておきたい場合はBlender建築3DCGのマテリアル基礎|質感が嘘っぽくなる原因と判断軸の整理で詳しく解説しています。

Roughness・Metallic・Transmission Weightの3パラメータの役割

3つのパラメータは、それぞれ独立した「光のふるまい」を制御します。

Roughness(0.0〜1.0) は表面の粗さです。0.0で完全な鏡面反射、1.0で完全拡散(マット)。建築素材の仕上げ種別は、ほぼこのパラメータひとつで表現できます。鏡面ステンレスは0.05、ヘアライン仕上げの建具なら0.3〜0.4、コンクリート打ち放しなら0.6〜0.75といった具合です。

Metallic(0.0または1.0) は金属か非金属かの二択です。現実の物質は金属または非金属のどちらかで、中間状態はありません。Blenderでも0.5などの中間値を使うと、くすんだ非金属のような不自然な見た目になります。非金属はすべて0、金属はすべて1が鉄則です。

Transmission Weight(0.0〜1.0) は透明度を制御するパラメータで、ガラスや透明プラスチック専用です。Blender 3.x までは「Transmission」という名前でしたが、4.x以降は「Transmission Weight」に変更されています。古いチュートリアル動画と画面が一致しないことがあるので、最初に押さえておくと混乱しません。

ここでひとつ補足です。Blender 4.0 以降のPrincipled BSDFは内部設計が大きく刷新されました。5.x以降は OpenPBR(業界標準のPBRサーフェスモデル)ベースに移行しつつあります。旧「Clearcoat」が「Coat」に、旧「Specular」が「Specular IOR Level」と「Specular Tint」に分解されたのも4.0からです。この記事は2026年5月時点のBlender 4.2 LTS / 5.x のUIに準拠しています。3.x時代のチュートリアルを参考にする場合、UIラベルが変わっている前提で読み替えてください。

建築マテリアルはPrincipled BSDFの1ノードから始める

ノードエディター(Shader Editorの内部画面)が複雑に見えて触れない、という声をよく聞きます。実際には、建築素材の9割は「3ノード接続」の最小構成から始めれば実務品質に届きます。複雑なノードグラフは特殊な素材のためのもので、入門段階では必要ありません。

Image Texture → Principled BSDF → Material Outputの基本3接続

建築マテリアルの基本形は、たった3つのノードのつながりです。

  1. Image Texture ノードでテクスチャ画像(木目・コンクリの写真など)を読み込む
  2. ImageTexture の「Color」出力を、Principled BSDF の「Base Color」入力に接続
  3. Principled BSDF の「BSDF」出力を、Material Output の「Surface」入力に接続

Roughness や Metallic を画像で制御しない場合は、Principled BSDF 上で直接スライダーから数値を入れます。テクスチャ画像を使うときだけ Image Texture ノードを追加で接続する、という発想です。「ノードエディターが怖い」と感じる場合は、まずこの3接続だけ覚えてください。木・金属・ガラス・コンクリートのほぼすべてに対応できます。

ここで初学者が最も詰まるポイントが、テクスチャの Color Space(カラースペース) 設定です。Roughness・Metallic・Normal用のテクスチャをImage Textureに読み込むときは、ノードの「Color Space」を Non-Color に変更します。Base Color用のテクスチャだけはsRGBのままにしておきます。これを忘れると、数値マップが色補正されてしまい、本来の値が正しく反映されません。「Roughnessマップを繋いだのに反射が変わらない」という現象の8割はこの設定漏れが原因です。

複雑なノードが必要な場面とそうでない場面

3ノードで十分な場面と、追加ノードが必要な場面は明確に分かれます。

3ノードで十分なケース: 単色塗装、無地仕上げの金属、シンプルなコンクリート、単色ガラス。Roughness・Metallic・Transmission Weight を数値スライダーで入れるだけで成立します。

追加ノードが有効なケース: 木目テクスチャを貼る場合(Image Textureを1枚追加)、コンクリの凹凸を出したい場合(Image Texture + Normal Mapノードを追加)、複数素材の混在を1メッシュで表現する場合(Mix Shaderが必要)。

Mix Shader や Bump、Mapping ノードを組み合わせた応用ノード構成はBlenderのノードエディターを活用したマテリアルの作り方で解説しています。この記事ではまず3ノード接続を基準に進めます。

木の質感|Roughnessで仕上げを表現する

木のマテリアルで決め手になるのはRoughnessです。Metallic は0固定なので動かす必要はなく、Roughness の数値だけで「光沢フローリング」と「無塗装板」が描き分けられます。

仕上げ種別 Metallic Roughness Base Color 備考
光沢フローリング(UV塗装) 0.0 0.1〜0.2 木目テクスチャ 建材ショールームのような反射感
ワックス仕上げ・床材 0.0 0.2〜0.35 木目テクスチャ 半光沢、住宅床に多い
自然仕上げ・無塗装板 0.0 0.4〜0.6 木目テクスチャ 繊維感のある質感、内装の腰壁・天井板
古材・荒材 0.0 0.6〜0.8 木目テクスチャ(暗め) 飲食店内装・什器

Metallic 0固定、Roughnessで仕上げ種別を使い分ける

木は非金属なので、Metallic は0固定でまず置きます。次にRoughnessで仕上げを決めます。光沢のあるフローリング(住宅・オフィスでよく見る塗装床)は0.1〜0.2、自然仕上げで木の繊維感を残したい場合は0.4〜0.6が目安です。

「木なのに光りすぎる」「木なのにマットすぎる」と感じる場合、多くはRoughness値がこの範囲を外れています。たとえばRoughness 0.05 を入れると鏡面に近づきすぎます。プラスチック光沢の床のような不自然さが出てしまいます。逆に1.0近くまで上げると、紙のように光をまったく反射しない印象になります。

応用として覚えておきたいのが、ワニス塗装の木材表現です。家具・展示什器・カウンター天板のように「木目は見えるけれど表面につやの層が乗っている」場合は、Principled BSDF の Coat(旧Clearcoat)パラメータが使えます。Coat=0.5〜1.0、Coat Roughness=0.0〜0.1 を設定すると、Base Color の木目を保ったまま、表面に薄いクリア層が乗ったような反射が加わります。入門段階ではRoughness単体で十分ですが、こだわりたい場面では選択肢に入れてみてください。

テクスチャを使う場合のImage Texture接続の考え方

木目を写実的に出したい場合は、木目テクスチャ画像(PolyHavenやambientCGなどで配布されているCC0素材が便利です)を使います。接続は基本3ノードの形のままで、Image Texture の「Color」を Principled BSDF の「Base Color」に繋ぐだけ。Roughness はBase Color とは独立して、Principled BSDF 上で手動入力します。

「テクスチャ画像を貼ったらRoughnessも一緒に変わってくれる」と勘違いしやすいのですが、Roughness は別のチャンネルなので明示的に設定が必要です。光沢フローリングなら0.15、自然板なら0.5、という具合に仕上げ種別に応じた値を入れていきます。

木目テクスチャの選び方・色補正・タイリング処理など、より踏み込んだ内容はBlenderで木目を自然に見せるテクスチャ設定|フローリング・板張りの質感再現で解説しています。

金属の質感|Metallic 1.0が絶対ルール

金属で最も大事なルールは、Metallic を 1.0 にすることです。0.5 などの中間値を使うと、金属でも非金属でもない不自然な質感になります。建築でよく使う金属仕上げ(鏡面・ヘアライン・サテン)は、Metallic=1.0 を固定したまま、Roughness だけで描き分けます。

仕上げ種別 Metallic Roughness Base Color 建築での例
鏡面ステンレス・クロームメッキ 1.0 0.05〜0.1 明るいグレー 高級ホテル手摺、エレベーター内装
ヘアライン仕上げ 1.0 0.3〜0.4 中間グレー 建具枠、サッシ、什器の金物
サテン仕上げ・つや消し 1.0 0.4〜0.6 やや暗いグレー マットな手摺、家電カバー
酸化銅・経年金属 1.0 0.5〜0.7 緑青色・茶系 屋根銅板、レトロな金物

Metallic 1.0の原則と中間値NG理由

現実の物質は金属か非金属のどちらかで、中間状態が物理的に存在しません。Blenderでも Metallic=1.0(金属)または 0.0(非金属)の二択が物理的に正確な使い方です。中間値の 0.5 を入れると、計算式上は「金属の反射式と非金属の反射式を半分ずつ混ぜる」処理になり、現実には存在しない見た目が生まれます。

「金属感が弱い」と感じたとき、まず疑うべきは Metallic 値です。0.5 のままになっていないかを確認してから、Roughness の調整に進みます。

もうひとつ、Base Color の扱いが金属と非金属で違う点も覚えておく価値があります。非金属の Base Color は「素材の色」(白い壁なら白)ですが、金属の Base Color は「反射光の色」 を表します。鏡面ステンレスなら明るいグレー、銅なら橙色寄り、金なら黄色寄り、というように反射する光の色をそのまま入れます。彩度の高すぎる色を入れると、おもちゃのプラスチックのような見た目になりやすいので、グレー寄り・低彩度を基本にすると失敗が減ります。

ここで一点、誤解されやすい補足です。「Metallic 中間値NG」は 同一面のすべての画素に一律 0.5 を入れること を指しています。Metallic マップ(テクスチャ画像)で空間的に 0 と 1 を切り替えるのは正しい運用です。たとえば錆びた鉄板を表現する場合、錆部分=0(非金属)、金属部分=1(金属)というマスク画像を Metallic に接続すれば、画素ごとに金属/非金属を切り替えられます。

仕上げ種別別Roughness基準(鏡面・ヘアライン・サテン)

建築実務で頻出する金属仕上げは、ほぼ3種類のRoughness帯で網羅できます。

鏡面仕上げ(鏡面ステンレス・クロームメッキ) はRoughness 0.05〜0.1。光源やまわりの景色がくっきり映り込みます。住宅案件ではあまり多用しませんが、ホテルや商業空間のエントランスで存在感を出したいときに使います。

ヘアライン仕上げ(建具・手摺・サッシ枠) はRoughness 0.3〜0.4。細い線状の反射で、ぼんやりとした光沢が出ます。建築で最も多い金属仕上げで、住宅・オフィス・商業建築のどこでも頻出します。迷ったらこの帯から始めると無難です。

サテン仕上げ(マットな高級感) はRoughness 0.4〜0.6。輪郭がぼやけた拡散反射で、つやを抑えた質感になります。家電のフレーム、現代住宅の内装金物などで採用が増えています。

仕上げ名と数値の対応を体に入れてしまうと、「ステンレス」とひとくくりに考えていた素材が「鏡面ステンレス」「ヘアラインステンレス」と細かく分けて表現できるようになります。建築パースの精度はここで一段上がります。

ガラスの質感|Transmission Weight + IOR

ガラスマテリアルは、Transmission Weight・IOR・Roughness の3つで成立します。Blender 4.x で名称や仕様が変わっているため、3.x時代のチュートリアルとは少し違う作法が必要です。

種別 Metallic Transmission Weight IOR Roughness 備考
クリアガラス 0.0 1.0 1.45〜1.52 0.0〜0.05 フロート板ガラス。建築窓・カーテンウォール
乳白ガラス・曇りガラス 0.0 0.7〜0.9 1.45 0.1〜0.3 浴室・トイレの目隠し用
型板ガラス(凹凸あり) 0.0 0.9 1.45 0.15〜0.25 古い住宅の建具、Normalマップ併用が望ましい
色付きガラス・グリーンガラス 0.0 1.0 1.5 0.0〜0.05 Base Color にうっすら緑を入れる

基本設定|Transmission Weight 1.0・IOR 1.45〜1.52・Roughness 0〜0.05

クリアガラス(建築のサッシ・カーテンウォール)の基本設定は、Metallic=0、Transmission Weight=1.0、IOR=1.5、Roughness=0.0〜0.05 です。

Transmission Weight は Blender 4.x 以降の名称で、3.x までは「Transmission」と表記されていました。古い動画と画面が違って戸惑った場合は、まずここを疑ってください。値の意味は変わっていません。

IOR(Index of Refraction、屈折率) は光が素材を通るときの曲がりやすさを示します。値を変えると、ガラス越しの背景の歪み方が変わります。建築で使うフロートガラス(普通の板ガラス)は1.5前後で、迷ったら1.5でほぼ問題ありません。建築パース実務での目安は以下のとおりです。

素材 IOR
1.333
1.31
透明プラスチック(アクリル) 1.46
通常ガラス(フロートガラス) 1.5
フリントガラス(光学用) 1.6
クリスタル 2.0
ダイヤモンド 2.42

Roughness は透明度の散乱を制御します。Blender 4.0 で重要な変更があり、3.x時代に存在した「Transmission専用のRoughness」が廃止され、本体のRoughnessが透過時の散乱も兼ねるようになりました。曇りガラスを作りたい場合は、本体Roughnessを0.1〜0.3に上げるだけで再現できます。3.x のチュートリアルで紹介されている「Transmission Roughness を別途設定する」手順は4.x以降では使えません。

薄いガラスへのSolidify必須の理由

「平面(Plane)にガラスマテリアルを設定したのに、なぜか黒く見える」「光が屈折せず、奇妙な見た目になる」と感じたら、原因はほぼ厚みの不足です。

Transmission Weight による屈折計算は、オブジェクトの内側と外側を区別する前提で動きます。面のみのオブジェクト(厚みゼロのPlane)では「内側」が存在しないため、計算が破綻して真っ黒や不自然な反射になります。

対処は単純で、Solidifyモディファイア で厚みを付与します。Modifier Properties から「Solidify」を追加し、Thicknessを建築ガラスらしい数値(フロート板ガラスなら 8〜12mm 程度)に設定するだけで、屈折が正常に動作するようになります。住宅案件でリビングの掃き出し窓を3カット納品するような場面では、最初にウィンドウ全体にSolidifyを当てておくと作業がスムーズです。

ガラスの応用設定(サンドブラスト処理・スマートガラス・型板ガラス・厚みのあるガラスブロック)はBlenderでガラス表現を破綻させない設定の考え方で解説しています。

コンクリートの質感|Roughness 0.6〜0.8が出発点

コンクリートは建築パースで最も頻出する素材のひとつですが、設定値の目安が日本語ソースでまとまっていることが少ない素材でもあります。基本は Metallic=0、Roughness=0.6〜0.8、Base Color はやや色味を持たせたグレーです。

仕上げ種別 Metallic Roughness Base Color 備考
打ち放しコンクリート 0.0 0.6〜0.75 RGB(0.55, 0.55, 0.6) 前後 型枠跡をNormalマップで追加
モルタル仕上げ 0.0 0.7〜0.8 RGB(0.6, 0.58, 0.55) 前後 粒子感をRoughnessマップで補強
化粧コンクリート(研磨) 0.0 0.3〜0.5 RGB(0.55, 0.55, 0.55) 床材向け、軽い光沢
経年コンクリート 0.0 0.65〜0.8 暗めグレーに茶色味 汚れマップ(ダーティテクスチャ)を追加

Metallic 0・Roughness 0.6〜0.8で基本の質感を作る

コンクリートは非金属なので Metallic=0 固定です。Roughness は打ち放しで0.6〜0.75、モルタル仕上げで0.7〜0.8 を基準にすると建築パースで自然に見えます。

Base Color は単純な中間グレーではなく、ほんの少し青み・緑みを帯びたグレーにすると打ち放しコンクリートらしくなります。RGBで(0.55, 0.55, 0.6) 前後を入れてみて、シーンの色温度に応じて微調整してください。

「単に白っぽくなってしまう」「コンクリートなのにプラスチックのように光ってしまう」という現象は、Roughness が低すぎることが原因のことが多いです。0.3 を入れると床用の化粧研磨コンクリートのような光沢に寄ってしまい、打ち放しらしさが消えます。住宅案件で外構の擁壁や打ち放し外壁を3カット納品するような場合は、まず0.7前後を試してみるのが手堅い基準値になります。

Normalマップを追加するとリアリティが上がる

コンクリートの「ザラザラした表面感」は、Roughness だけでは限界があります。Normal マップ(凹凸を疑似的に表現するテクスチャ)を追加すると、表面の細かな凹凸が陰影として表現され、写真のような質感に近づきます。

接続は以下の流れです。

  1. Image Texture ノードでNormalマップ画像を読み込み、Color Space を Non-Color に変更
  2. Image Texture の「Color」出力を、Normal Map ノードの「Color」入力に接続
  3. Normal Map ノードの「Normal」出力を、Principled BSDF の「Normal」入力に接続

ここで重要なのが Normal Map ノードの Strength パラメータ です。デフォルトは1.0ですが、建築コンクリートでは0.3〜0.6まで下げることをおすすめします。1.0のままだと凹凸が過剰になり、発泡スチロールやガラ瓦のような違和感のある見た目になりがちです。落ち着いた打ち放しコンクリートに整えたい場合は、Strengthを0.4前後から試し、シーンの距離感に合わせて微調整します。

打ち放しとモルタルの仕上げ別の細かな設定値、型枠跡の表現、汚れマップの作り方はBlenderでコンクリートをリアルに見せるマテリアル設定|打ち放し・モルタルの質感再現で詳しく解説しています。

マテリアルとライティングの責任分界点

マテリアル設定だけを延々と調整しても、「全体に暗い」「のっぺりしている」「白飛びしている」といった印象が解消しないことがあります。多くの場合、原因はマテリアルではなくライティング側にあります。何を変えれば何が変わるかを切り分けると、無駄な試行錯誤が一気に減ります。

マテリアルが担当すること: 素材の固有色(Base Color)、表面の粗さ(Roughness)、金属か非金属か(Metallic)、透明度(Transmission Weight)、屈折率(IOR)。これらはライティングが変わっても、その素材本来の特性として固定すべき値です。同じ木の床なら、朝でも夜でも Roughness=0.15 のままで構いません。

ライティングが担当すること: シーン全体の明るさ・コントラスト・影の形・色温度・反射に映り込む空の景色。「暗い」「明るすぎる」「白飛びしている」「影がやけにくっきり/ぼやけている」といった印象は、HDRI(環境光画像)の強度、エリアライトの位置、World設定のExposureなどで解決します。

マテリアルのRoughnessを闇雲に上下させてもライティング不足は埋まりません。逆に、ライトの強度を上げ続けても素材の屈折率は変わりません。「何を変えれば何が変わるか」の責任を分けて考えるだけで、制作効率は目に見えて上がります。

Blender 4.2 LTS / 5.x のマテリアル設定を編集部が触ってみた所感

ここまで具体的な数値を中心に整理してきましたが、編集部でBlender 4.2 LTS と 5.0 でマテリアル設定を触ってみて、入門者がつまずきやすいポイントは大きく3つに集約されました。

ひとつ目は、UIラベルの変化への戸惑い です。3.x時代のチュートリアル動画を見て学び始めた人ほど、「動画にはClearcoatって書いてあるのに、自分の画面はCoatになっている」「Transmissionじゃなくて Transmission Weight になっている」と最初の5分で詰まります。今回紹介した3パラメータ(Roughness / Metallic / Transmission Weight)と、応用のCoatさえ押さえておけば、UIラベルが変わっても本質はずれません。

ふたつ目は、数値スライダーをいきなり動かしすぎる傾向 です。Roughness を0.0から1.0まで全部試そうとして、結局どの数値が正解かわからなくなるパターンがよく見られます。この記事の素材別表で示した「2〜3段階の数値帯」だけを行き来するほうが、はるかに早く目当ての質感にたどり着けます。光沢フローリングなら0.1・0.15・0.2の3点だけ、ヘアラインステンレスなら0.3・0.35・0.4の3点だけ、というように選択肢を絞るのがコツです。

3つ目は、Color Space の Non-Color 設定漏れ で発生する「設定したのに反映されない」問題です。Roughnessマップを繋いだのに鏡面のままになる、Normalマップを繋いだのに凹凸が出ない、というケースの大半がここに起因しています。テクスチャを接続したら必ずColor Spaceを確認する、というルーチンを最初から染み込ませておくと、後で慌てずに済みます。

実務的な所感として、Blender 4.2 LTS は長期サポート版で安定性が高く、建築archvizの制作環境としては2026年5月現在の本命です。最新機能を試したい場合は Blender 5.x も視野に入りますが、Add-ons の対応状況や案件納期との兼ね合いで、まずは 4.2 LTS を主軸にする運用が現実的でしょう。

マテリアル設定を整えた先に広がる景色

PBR3パラメータと建築4素材の設定値が体に入ると、Blenderでの制作の景色が一段変わります。

最初の変化は 判断スピード です。クライアントから「内装の床、もう少し光沢を抑えてほしい」とフィードバックをもらったとき、これまでは試行錯誤で数十分かけていたところが、「Roughness を0.15から0.25に上げる」というピンポイントの操作で済むようになります。1案件あたりの修正対応時間が短くなれば、それだけ案件数を増やせるか、品質に時間を割けるようになります。

次の変化は 素材ライブラリの再利用 です。一度作った「鏡面ステンレス(Metallic=1.0 / Roughness=0.08)」「打ち放しコンクリート(Metallic=0 / Roughness=0.7 / Normal Strength=0.4)」というマテリアルが、案件をまたいで使い回せる資産になります。新規案件の立ち上げ時に、ゼロからマテリアルを作る時間がほぼ消えます。

その先には 建築archviz特化の表現力 が広がります。住宅・オフィス・商業・公共建築といった用途ごとに頻出する素材セットを、自分の中で標準化できます。住宅案件ならフローリング+ヘアラインステンレス+クリアガラス、オフィスならカーペット+塗装+カーテンウォール、というように、案件の方向性が決まった瞬間に半分以上のマテリアルが見えている状態になります。

そしてさらに先には、Cycles と Eevee Next の使い分けD5 Render / Twinmotion との連携 が選択肢に入ってきます。Blender のPBRマテリアルは外部レンダラーと互換性があるため、最終出力を別ソフトに渡す場合でも、ここで作った素材の数値が下地として活きます。

まとめ

Blenderで建築マテリアルを設定するときの軸を、改めてまとめます。

  • 嘘っぽさの原因は Roughness・Metallic・Transmission Weight の3パラメータの使い分けに集約される
  • 木はMetallic=0固定でRoughness 0.1〜0.6、金属はMetallic=1.0固定でRoughness 0.05〜0.6、ガラスはMetallic=0・Transmission Weight=1.0・IOR=1.5、コンクリートはMetallic=0・Roughness=0.6〜0.8 がそれぞれの基準値になる
  • ノードエディターは Image Texture → Principled BSDF → Material Output の3接続から始めれば実務品質に届く
  • Color Space=Non-Color の設定漏れが「マップが効かない」典型的な原因
  • マテリアルとライティングの責任を分けて考えると、無駄な試行錯誤が減る

数値を覚えただけでは、実際の建築シーンで使いこなせるまでに距離があります。素材の組み合わせ・ライティングとの調整・案件レベルの仕上げまで段階的に学ぶには、建築実務に寄り添った学習リソースを選ぶことが近道になります。学習リソースの選び方はBlender入門・始め方ガイドで解説しています。

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3 LESSONS


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Blenderの導入から制作に必要な基本設定

基礎編② 画面構成と基本的な操作方法

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実践編① 太陽光の入る白い部屋

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