Blenderガラスが破綻する5つの原因と設定の直し方|建築パース実務向け

建築パースを Blender でレンダリングしたとき、ガラスが真っ黒になったり、透明にならなかったり、屈折がおかしくなったりして手が止まる人は多いはずです。Blender 4.2 LTS で Eevee Next が正式統合され、5.1 では Principled BSDF が OpenPBR Surface 準拠へと再定義されました。ガラスの作り方は確実に進化していますが、同時に「以前のチュートリアル通りにやると動かない」場面も増えています。

この記事では、Blenderでガラスが破綻する代表的な5つの原因と直し方を、建築パース実務の視点で整理します。

クリアガラス・すりガラス・色付きガラス・ガラスブロックといった素材タイプ別の設定値と、Cycles と Eevee Next で見え方が変わる仕組み、サッシ周りの実務課題までを一通りカバーします。基本となる Transmission Weight・IOR・Roughness の3パラメータの考え方は Blenderのマテリアル設定入門|木・金属・ガラスの考え方 で解説していますので、まだ読まれていない方はそちらから入るとスムーズです。

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目次

ガラスマテリアルが「破綻する」のはなぜか

ガラスの破綻は、ガラスが「反射・透過・屈折の3つの光学現象を同時に起こす素材」であることに根本原因があります。3パラメータをただ設定するだけでなく、3現象それぞれが破綻するポイントを押さえておくと、症状から原因を一直線にたどれます。

ガラスは「反射・透過・屈折の3現象が同時に起きる」素材

クリアガラスは、当たった光の一部を反射し、一部を内部に通し(透過)、通った光を曲げて(屈折)裏側に届けます。Blender の Principled BSDF では、Transmission Weight が透過量、IOR(屈折率)が屈折角度、Roughness が表面のぼけ方をそれぞれ受け持ちます。

3現象のどれが壊れても見た目は崩れます。透過が0なら不透明な板、IORが空気と同じ1.0なら屈折せずただの透明板、Roughness が高すぎれば一面の曇りガラス。建築用ガラスは反射・透過・屈折の3つを同時に物理的に正しく動かす必要があり、これがガラスの設定がコンクリートや木材より一段難しい理由です。

なお、Blender 5.1 では Principled BSDF が OpenPBR Surface 準拠で再定義されており、Maya や 3ds Max、Houdini など他DCCツールから建築用素材を持ち込む場合の互換性が大きく向上しています。ガラスを含む PBR マテリアル全般で「業界標準のシェーダー記述に揃った」と捉えてよいでしょう。

「透明にならない」「黒くなる」「屈折がおかしい」3パターンの正体

ガラスが破綻する症状は、現場では大きく3パターンに集約されます。それぞれの原因と直す場所を最初に押さえておくと、後続セクションで紹介する各設定値の意味が立体的に理解できます。

「透明にならない」は Eevee 系で最も多い症状で、Material Properties の Render Method が Opaque のままになっていることが原因です。Blender 4.2 以降は「Raytraced Transmission」に切り替える必要があります。「黒くなる」は Cycles 側で起きやすく、Light Paths の Transmission Bounces 不足で光線がガラスを抜けきれずに途切れる現象です。「屈折がおかしい・歪まない」は厚みのない1枚面ポリゴンのままで Solidify を当てていないケースが大半。IOR の値はあくまで「厚みを持った物質」前提で計算されるためです。

3パターンの直し方は、素材タイプ別の設定値・エンジンごとの仕様・サッシ周りの実務という3つの切り口で次節以降にまとめます。

建築パースでよく使うガラスタイプ別の設定値

建築パースのガラスは「Transmission Weight 1.0/IOR 1.5/Roughness 0」がベース値で、そこから素材タイプに応じて Roughness と Volume Absorption、Bump を足し引きするだけで一通り作れます。素材ごとの実務的なレンジを表にまとめました。

ガラスタイプ Transmission Weight IOR Roughness Solidify 厚み 補足
クリアガラス(カーテンウォール) 1.0 1.5 0.0 8〜12mm フロートガラス標準
Low-Eガラス(複層) 1.0 1.5 0.02〜0.05 6〜12mm×2層 わずかな粗さで複層感
フロストガラス(軽め) 1.0 1.45 0.05〜0.12 8〜10mm うっすら透けるレベル
すりガラス(サンドブラスト) 1.0 1.45 0.15〜0.25 8〜10mm Noise で粗さを揺らす
型板ガラス(凹凸あり) 1.0 1.5 0.1〜0.2 6〜8mm Bump で凹凸を追加
色付きガラス(薄い着色) 1.0 1.5 0.0 8〜12mm Base Color で着色
ステインドグラス 1.0 1.5 0〜0.05 4〜6mm Volume Absorption 併用
ガラスブロック 1.0 1.5 0.2〜0.35 80〜100mm Roughness 高めで光拡散

この表は「まずこの値で置いてからカメラで見え方を微調整する」たたき台として使えるレンジです。以下で代表的な4タイプの作り込みを解説します。

クリアガラス(カーテンウォール・窓ガラス)の基本設定

クリアガラスは Transmission Weight 1.0/IOR 1.5/Roughness 0 が出発点です。住宅・オフィスビルの窓やカーテンウォール、ガラス手すり、ガラステーブル天板など、建築実務で最も登場頻度が高い設定値といえます。

Solidify モディファイアで8〜12mmの厚みを必ず付けてください。Blender のガラスは IOR が「内部に厚みを持った物体」前提で動くため、面ポリゴン1枚のままでは屈折が出ません。フロートガラスの建築基準厚みは住宅用が3〜6mm、店舗・大規模ビルでは8〜12mm、強化ガラスは5〜19mmが目安です。

カーテンウォール等の曲面・複雑形状では、Solidify の「Even Thickness」と「High Quality Normals」を必ずONにします。湾曲面でも厚みが均一になり、法線の乱れによる屈折歪みを防げます。マンションのバルコニー手すりやガラスドームのような曲面ガラスを作るときに、この2つのオプションが効いてきます。海外の建築パース現場では Solidify の Complex モードと併せて標準的に使われている設定です(出典: Solidify Modifier(Blender 5.1 Manual))。

Metallic は必ず0.0に。Metallic が1に近づくと Transmission Weight の値が無効化され、ガラスではなく金属面として描かれてしまいます。「透過にしたのに鏡みたいに反射するだけ」になったら、まず Metallic を疑ってください。

すりガラス・サンドブラストガラスの設定

すりガラスは Roughness を 0.15〜0.25 に上げるのが基本ですが、均一な値だけで仕上げると「全面のっぺりした曇りガラス」になりがちです。住宅の浴室の窓やオフィスの間仕切りで実物を見ると、表面の粗さには微妙なムラがあり、その不均一さが「いかにも建築用すりガラス」の雰囲気を生んでいます。

Roughness ソケットに Noise Texture ノードを接続し、Color Ramp で 0.1〜0.25 程度の振れ幅で揺らぎを作ると、自然なすりガラスに近づきます。Scale を 50〜200 くらいの中粒度に設定すると、サンドブラスト加工の不規則な粒立ちが再現できます。サンドブラスト相当の強めの粗さは 0.2〜0.3、フロストガラス(軽めの曇り)は 0.05〜0.12 がレンジの目安です。

Blender 4.0 以降は、旧バージョンにあった「Transmission Roughness」パラメータが削除され、Roughness パラメータで一元的にガラスの粗さを制御する仕様になりました(出典: Blender Projects #114956)。3.x以前のチュートリアル動画を参考にする場合、Transmission Roughness の項目自体が見当たらず詰まることがあるので、現行版では「Roughness1つだけ」を覚えておけば大丈夫です。

色付きガラス・ステインドグラスの設定

色付きガラスは「薄い着色」と「奥行きある着色」で作り方を分けます。薄いブルーガラスや薄緑のスクリーンガラスのように軽く色がついている素材は、Principled BSDF の Base Color に薄い色(RGB 0.9, 0.95, 1.0 のような白に近い青)を入れるだけで十分です。

教会や記念館のステインドグラス、深い色のボトルガラスのように「光が通り抜けた先で色が濃く感じられる」表現には、Volume Absorption ノードを使います。Material Output の Volume ソケットに Volume Absorption を接続し、Color に色味、Density に 0.5〜2.5 を設定します。Density 0.5〜0.8 が薄い着色板ガラス、1.5〜2.5 が濃いステインドグラスの目安です。

Volume Absorption は物理学の Beer-Lambert 法則(物質の厚みが増えるほど吸収される光量が指数関数的に増える)に従って動くため、Solidify の厚みを2倍にすると見かけの色も明確に濃くなります。ステインドグラス1枚を厚く作ったときに「思ったより色が濃すぎる」現象が出たら、厚みを薄くするか Density を下げてバランスを取ります。

Blender 4.2 以降は Principled BSDF に「Thin Film Iridescence(薄膜干渉)」が追加されました(出典: Cycles: Add thin film iridescence to Principled BSDF #118477)。Coat IOR と Coat Thickness で制御でき、薄い膜状の干渉色(虹色効果・特殊コーティング・反射防止膜の色味)を再現できます。Low-Eガラスや遮熱コーティングガラスの微妙な色味を出す場合に、Volume Absorption の代替・追加選択肢として使えます。

ガラスブロックの設定

ガラスブロックは「光は通すが、向こうの形ははっきり見えない」半透明素材です。Roughness を 0.2〜0.35 と高めに設定して光を内部で拡散させ、IOR 1.5 と組み合わせると、内側がぼんやりにじむあの独特の質感になります。

メッシュには Solidify で 80〜100mm 程度の厚みを与えて立方体に近い形状にします。住宅の浴室の腰壁やカフェの間仕切り、エントランスの装飾壁などで使われる定型サイズが、おおむね190×190×95mmです。建築パースでは Array モディファイアと組み合わせて格子状に並べると、目地と陰影が一気にリアルになります。

ガラスブロック表面の中心が膨らんだ形状や、内部の格子モールドを再現したい場合は、Bump マップで凹凸を加えます。Voronoi Texture を Bump の Height に通すと、不規則な凹凸を持つ気泡入りガラスブロック風に仕上がります。

CyclesとEevee Nextでガラスの見え方はどう違うか

Cyclesは物理的に正確で遅く、Eevee Nextは近似計算で速い、というのが答えです。同じ Transmission Weight 1.0/IOR 1.5 を設定しても、Cycles はパストレーシングで物理計算通りに、Eevee Next は近似計算で高速に描きます。建築パースでは「検討用は Eevee Next、最終納品は Cycles」の使い分けが実務の主流です。

観点 Cycles Eevee Next(Blender 4.2 以降)
屈折の正確さ パストレーシングで物理的に正確 Raytraced Transmission で大幅向上、ただし近似
レンダリング速度 遅い(数分〜十数分/枚) 速い(数秒〜数十秒/枚)
多重ガラス(複層・複数面) Transmission Bounces 調整で対応 多重重なりでズレが出やすい
コースティクス(光斑) Reflective/Refractive を個別ON可 厳密な計算は非対応
推奨場面 最終レンダリング・内観・カーテンウォール 検討段階・プレゼン下書き・外観の素早い確認

エンジン選択は最終的な絵の品質を大きく左右しますが、ガラス1枚の作り込み自体は両エンジン共通です。違うのは「同じ作り込みをどう描画するか」の部分だけです。

Cyclesのガラス挙動(正確だが設定が必要)

Cycles は光線を一本ずつ追跡するパストレーシングで、Transmission Weight 1.0/IOR 1.5 を設定するだけで、屈折・反射・透過がすべて物理的に正確に計算されます。建築の窓ガラスやカーテンウォールを「設定値通りに見える」状態で仕上げるには Cycles が最も信頼できます。

注意点は Transmission Bounces の値です。Render Properties → Light Paths → Max Bounces → Transmission のデフォルトは12ですが、複数のガラス面が重なるシーン(カーテンウォール建築の内観、複層ガラスの寝室など)では光線が途中で打ち切られて黒くなる症状が頻発します。複数ガラスがあるシーンでは Transmission Bounces を16以上、複層ガラスや内観でガラスが10枚以上あるシーンでは24〜32が安全圏とされています(出典: SuperRenders Blender Render Settings Guide)。

床面にガラス越しの光斑(コースティクス)を出したい場合は、Render Properties → Light Paths → Caustics で「Reflective Caustics」「Refractive Caustics」を個別にONにします(出典: Light Paths(Blender 5.1 Manual))。プールサイドや吹き抜けの大窓の下に揺れる光のパターンが必要なシーンで効果的ですが、計算コストは大きく増えます。外観パースでは OFF が標準、内観や採光重視のシーンでのみ ON にする使い分けが実務的です。Transparent Shadows は ON のままで構いません。Cycles はガラス越しの影の柔らかさを自動的に計算します。

Eevee Nextのガラス挙動(速いが追加設定が必要)

Blender 4.2 LTS で Eevee Next が正式統合され、ガラス周りの挙動が大きく変わりました。最大の変更点は、従来 Render Properties で有効化していた「Screen Space Refraction」が廃止され、「Raytraced Transmission」というマテリアル単位の設定に統合されたことです(出典: Blender 4.2 EEVEE Release Notes)。

設定場所は Material Properties → Settings → Surface → Render Method で、ここを「Raytraced Transmission」に切り替えます。ONにしないとガラスが透明にならず、Eevee で「設定値通りに作ったのに透けない」と詰まる最多原因がここです。Blender 4.5 LTS / 5.1 でも同じ場所で同じ挙動になりますので、現行 LTS でガラスを扱う場合は最初に必ずチェックする項目です。

Blender 4.2 以降は、光源そのものがガラス越しに見えるようになりました(出典: Steve Haiman Art「Blender 4.2 Ray Tracing Test」)。4.1以前は太陽光や室内ランプが屈折面を通り抜けて見えなかったため、室内パースで窓越しに屋外の照明や夕日を見せる演出が Eevee では難しかったのですが、4.2 で Cycles 並みの自然さに近づきました。さらに「Thickness Output」ノードも追加され、薄い1枚面ポリゴンでも擬似的に厚みを与えてより自然な屈折に近づける手段が増えています。

Render Method は通常 Dithered(デフォルト)のままで構いません。ノイズが気になる場合はサンプル数を128〜256に増やして対処します。Blended モードは半透明オブジェクトを多用するシーンでソート順の問題が出やすく、建築のガラス用途では Dithered のほうが安全です(出典: Katsbits Dithered Transparency)。

建築パースでの使い分けの決め手

検討段階・プレゼン下書きでは Eevee Next を選びます。Raytraced Transmission を ON にして Transmission Weight 1.0/IOR 1.5 の標準設定で素早く確認し、構図やカメラアングルを詰めていく作業に向きます。1枚あたり数秒〜数十秒で結果が見えるため、施主とのオンライン打ち合わせで画面共有しながら修正していく場面でも実用に耐えます。

最終レンダリングは Cycles に切り替えます。特に多重ガラスが入る内観パースとカーテンウォール建築は、Eevee Next でも見え方の精度が落ちやすいため、Cycles で Transmission Bounces 24〜32 まで上げた最終出力が安全です。外観パースでガラス面が比較的少ないシーンであれば、Eevee Next の最終出力でも十分通用するケースが増えています。

建築サッシ・建具周りのガラス配置で起きる実務課題

ガラス単体の設定が正しくても、サッシ(窓枠)との取り合いや複層ガラスの再現で詰まることが多々あります。建築パース固有の課題として、モデリング側の作り込みとマテリアル設定の連携を整理しておきます。

サッシ(窓枠)とガラスの素材分け

窓を1つのメッシュで作ったとき、サッシとガラスを別マテリアルに分けるには「マテリアルスロット」を使います。Properties → Material Properties で「+」を押してスロットを追加し、エディットモードでガラス面を選択して該当スロットに Assign します。

Solidify モディファイアはガラス面のみに適用するのが基本です。サッシ部分のフレームは別途モデリングで厚みを持たせ、Solidify はガラス用として薄板状にだけ使います。同じメッシュ全体に Solidify を当てると、サッシまで膨らんで形が崩れます。

建築図面から窓サイズを転写する際は、ガラス面は内法(うちのり)サイズ、サッシは外法(そとのり)サイズで設定します。実物のサッシではガラスがフレームの内側に挟まる構造になっているため、この寸法の取り方を間違えると、見た目はそれっぽくてもライティング時に隙間光が変な場所に漏れる原因になります。

二重ガラス・複層ガラスの表現

物理的に正確な二重ガラス(Low-E複層ガラスやペアガラス)を再現するには、2枚のガラスメッシュを6〜12mm(空気層)離して配置します。窓1枚あたりガラス4面(外側ガラス×2、内側ガラス×2)になる計算で、ここで Cycles の Transmission Bounces 不足が一気に表面化します。

Cycles 使用時は Transmission Bounces を最低24、複層ガラスがある内観パースでは32まで上げておくと安全です。Eevee Next では Raytraced Transmission がONでも、4枚以上のガラス面が重なると見え方にズレが出やすいため、最終納品では Cycles を選ぶ判断になります。

ガラス面が多く「全部正確に再現するとレンダリングが重い」場合、外側ガラスのみ Transmission Weight 1.0/IOR 1.5 で正確に設定し、内側ガラスは Roughness 0.02〜0.05 で「存在感だけ」出すトレードオフが実務的です。施主への確認用パースでは、複層ガラスを単層として処理し、最終納品時のみ複層化する運用も建築事務所では一般的です。

ガラスとライティングの責任分界点

ガラスの設定が正しくても「ガラス越しに室内が見えない」「反射が暗い」場面では、原因はガラス側ではなくライティング側にあります。HDRI 照明が暗すぎると、ガラスは透過先の光量も反射先の輝度も拾えないため、結果として黒い板にしか見えません。

「マテリアルを変えても改善しない」と感じたら、World Properties の HDRI の Strength や、Sun Light の Power、Area Light の Watt 値に切り替えて調査します。マテリアル設定の問題か、ライティングの問題かを見極められると、建築パース実務での試行錯誤時間が大きく短縮できます。

ガラス越しに室内が見えない外観パースの解決策として、海外建築パース現場で広く使われるのが「Interior Mapping」または「Parallax Window」と呼ばれる擬似内観技法です(出典: Blender Artists「Interior Mapping through Nodes」)。実際の室内をモデリングせず、テクスチャと視差計算で「奥に部屋がある」見え方を作る手法で、大規模ビル外観の窓量産で標準的に使われます。Blender ではノードベース(Mapping ノード+Math ノードで視差を再現)または FakeInterior 系のアドオンで実装可能です。住宅やオフィスの単体パースでは過剰ですが、超高層ビルやマンション全景の作り込みでは、内観モデリング負荷を1/10以下に抑える有効な選択肢になります。

Blenderのガラス設定を編集部が読み解いた所感

Blender 4.2 LTS から 5.1 までの公式マニュアルとリリースノート、海外建築パース系の主要チュートリアルを読み解くと、ガラス周りは「Eevee Next の Raytraced Transmission 統合」と「Principled BSDF の OpenPBR 準拠」の2つで一段成熟したという見方ができます。

設定の起点は変わっていません。Transmission Weight 1.0/IOR 1.5/Roughness 0/Solidify 8〜12mm は2026年現在も Blender でクリアガラスを作る出発点で、ここに素材タイプ別の調整を足していく構造です。編集部としては、「設定値だけ覚えれば十分」という時代ではなくなった、というのが今回の取材で得た一番の感触でした。Eevee Next での Render Method 切り替え、Cycles の Transmission Bounces 調整、Blender 4.0 での Transmission Roughness 削除といった「バージョン固有の挙動」を押さえないと、過去のチュートリアル通りに動かない場面が出てきます。

コスト面で見ると、Blender 自体は無料で 4.5 LTS(長期サポート)か 5.1(最新版)のどちらでも建築ガラス表現は一通り可能です。実務では商用建築パースの納品でも 4.5 LTS で十分通用しているケースが多く、安定性を取るなら LTS、新機能(Thin Film Iridescence、Thickness Output、OpenPBR 準拠)を試したいなら 5.1 という分け方ができます。

制約として大きいのは、Cycles でガラスの多い建築シーンを Transmission Bounces 24〜32 に上げてレンダリングする場合、1枚あたりの計算時間が大幅に増える点です。GPU レンダリング(CUDA/OptiX/HIP)を前提に、コア数とVRAM容量の見通しを立てておかないと、最終納品段階で時間切れになるリスクがあります。建築事務所では検討段階を Eevee Next、最終納品を Cycles という二段構えで時間配分する運用が現実解になっています。

推奨ユーザー像として、編集部としては建築実務の駆け出しからベテランまで幅広く当てはまると見ています。特にガラスを多用する商業施設・オフィスビル・カーテンウォール建築を扱う方は、Cycles の Transmission Bounces と Caustics、Eevee Next の Raytraced Transmission の3つだけは早い段階で押さえておくと、後の試行錯誤コストが大きく減ります。

Blenderガラスを整えた先に広がる建築パース表現

Blender でガラス設定を一通り扱えるようになると、建築パースの表現は単に「キレイな絵が作れる」段階を超えていきます。実務で具体的にどう変わるかを、4つのシナリオでまとめます。

カーテンウォール建築や全面ガラス張りオフィスのコンペ案件で、Cycles の Transmission Bounces 24+複層ガラスの組み合わせを使いこなせると、ライバル事務所のパースと「ガラスの透き通り方」「内部の見え方」で差が出ます。建築コンペの審査員はガラスの破綻に敏感で、黒ずんだガラスや屈折のない平面板のような見え方は、それだけで作品の説得力を削ります。逆に、複層ガラスの微妙な色味と適切なコースティクスが入った1枚は、設計提案の質そのものを底上げします。

住宅パースで「すりガラスの間仕切り」「色付きガラスのアクセント」「ガラスブロックの腰壁」を素材タイプ別に作り分けられるようになると、施主への提案幅が広がります。これまで「ガラスは1種類だけ」だったプレゼンに、Volume Absorption の薄い緑、Thin Film Iridescence の虹色コーティング、Bump Voronoi のガラスブロックといった選択肢が加わると、施主の「思っていたのと違う」を初回提案で防げる確率が上がります。

外観パースで Interior Mapping を導入できると、超高層ビルやマンション全景の作業時間が劇的に変わります。窓1つひとつに室内モデルを置く必要がなくなり、テクスチャと視差計算で「奥に部屋がある」見え方を量産できるため、これまで1棟あたり数日かかっていた窓モデリングが半日以下に短縮できる現場もあります。

ガラスを学ぶ前と後で決定的に違うのは、「破綻が出ても原因の切り分けが速い」点です。透明にならない/黒くなる/屈折がおかしいの3パターンを症状から特定でき、Render Method・Transmission Bounces・Solidify のどれを直すべきかが瞬時に判断できます。この見極めは他の建築素材(コンクリ、木材、金属)にも応用が効き、Blender 全体でのトラブル解決力が一段引き上がります。

ガラス表現を破綻させないためのチェックリスト

新しいシーンでガラスを置く前に、上から順に確認していく形で使えるチェックリストです。

確認項目 対象 チェック内容
Metallic は 0.0 か 共通 Metallic がガラスを無効化していないか確認
Solidify で厚みを付けたか 共通 1枚面ポリゴンのままでは屈折が出ない(8〜12mm 推奨)
Even Thickness / High Quality Normals カーテンウォール・曲面 湾曲面で厚みムラと法線歪みを防ぐ
Render Method の切り替え Eevee Next Raytraced Transmission に変更(Blender 4.2 以降)
Transmission Bounces の値 Cycles 単層 16 以上、複層・多重 24 以上、内観 32 推奨
Caustics の ON/OFF Cycles 床の光斑が必要なら Reflective/Refractive を ON
マテリアルスロット分割 サッシ+ガラス サッシとガラスを別マテリアルに
複層ガラスの空気層 高品質案件 2枚を6〜12mm 離して配置
Volume Absorption の Density 色付き・ステインドグラス 0.5〜2.5、Solidify 厚みとセットで調整
Noise Texture で Roughness 揺らぎ すりガラス 均質すぎる曇りガラスを避ける

このチェックリストを作業フローに組み込むと、ガラス周りの手戻りが減らせます。特に上から3項目(Metallic・Solidify・Even Thickness/HQN)は「破綻したらまず最初に疑う」基本3点として覚えておくと、原因の切り分けが速くなります。

まとめ

この記事では、Blender でガラスが破綻する代表的な5つの原因と直し方を、建築パース実務の視点で整理しました。要点は次の5つです。

  1. ガラスの破綻は「反射・透過・屈折の3現象」のどこかが壊れたときに起きる。3パラメータ(Transmission Weight・IOR・Roughness)と Solidify、Metallic の確認が出発点
  2. クリアガラスは Transmission Weight 1.0/IOR 1.5/Roughness 0/Solidify 8〜12mm がベース値。すり・色付き・ガラスブロックはここから素材タイプ別に Roughness・Volume Absorption・Bump を足し引き
  3. Cycles と Eevee Next で見え方が変わる。検討段階は Eevee Next(Raytraced Transmission ON)、最終納品は Cycles(Transmission Bounces 16〜32)の二段構えが実務の主流
  4. Blender 4.2 LTS で Eevee Next が正式統合、4.0 で Transmission Roughness 削除、5.1 で Principled BSDF が OpenPBR 準拠化。バージョン固有の挙動を押さえておく
  5. サッシ周りはマテリアルスロット分割、複層ガラスは2枚配置と Bounces 増、外観パースは Interior Mapping で量産化、という建築特有の運用パターンを使い分ける

ガラス1つの作り込みは「Blenderで建築マテリアル全体を扱う力」の縮図でもあります。3パラメータ・Solidify・エンジン設定の3点さえ押さえれば、コンクリート・木目・金属の設定にも同じ考え方が転用できます。建築パースで実際に頼られる素材の作り分けを、症状ベースで切り分けられる状態が一つのゴールです。

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